宅地建物取引士、FP2級保有 不動産・建設会社の土地有効活用のコンサルティング営業を6年担当。現在は不動産や建設業界の知見を活かした不動産や金融ジャンルのライターとして活動しています。
「住宅ローンの金利が上がるって本当?」「今後の金利はどうなるの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、住宅ローンの金利について
- 住宅ローンの金利の決まり方
- 2024年以降の住宅ローンの金利の動向
- 住宅ローン金利の過去の推移
- 住宅ローンの金利が上昇した時の対策
を紹介します。住宅ローンの金利についてしっかりと理解するためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
住宅ローンの金利の決まり方とは
住宅ローンの金利によって、家計の支出に大きな影響を与えることは言うまでもありません。しかし、金利の決まり方をしっかりと把握していない方も多いのではないでしょうか。
ここでは、変動金利と固定金利の決まり方を解説します。住宅ローンの金利の決まり方をしっかりと理解しておくことで、ご自身にとって最適な選択をすることができるようになるでしょう。
変動金利の決まり方
変動金利は、短期プライムレートと連動しています。「短期プライムレート」は、主要な銀行が優良企業に対して適用する短期の融資金利で、日本では三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行などのメガバンクが設定します。
短期プライムレートは金融市場の動向に基づいて毎月変動する可能性がありますが、実際には2009年1月以降、年1.475%から変更されていない状況です。(2024年4月時点)その理由としては、日本銀行の政策金利が非常に低い水準を維持していることが挙げられます。
日本銀行の低金利政策により、市場の金利も低いままの状態が続いており、短期プライムレートも頻繁には変わりません。一般的に、短期プライムレートに連動する変動金利では、金利の見直しは半年ごとに行われます。金利見直し時は、短期プライムレートの水準によって金利が決定されます。
また、短期プライムレートに影響を及ぼす要因の一つが無担保コールレート(オーバーナイト物)です。「無担保コールレート(オーバーナイト物)」とは、金融機関が担保なしで一夜の間に資金を貸し借りする金利のことです。
「無担保コールレート(オーバーナイト物)」は日本銀行の金融政策によって調整されるため、変動金利の金利は日本銀行の政策の変更や経済全体の動向などの複数の要素によって変動することになります。
固定金利の決まり方
固定金利は、新発10年物国債の利回りに基づいて決められます。新発10年物国債は、日本の長期金利の代表的な指標であり、市場で取引される国債の利回りが反映されます。投資家たちが将来の金融情勢を予測して行う取引により、この利回りは日々変動するため、固定金利の設定にはこれらの市場動向が大きく影響を与えるのです。
また、住宅ローンの固定金利においては「円金利スワップレート」が用いられることがあります。円金利スワップレートは、金利の変動リスクを回避するために金融機関間で行われる金利スワップ取引の際に用いられるもので、長期金利と密接に連動しています。これにより、新発10年物国債の利回りが上昇すると、住宅ローンの固定金利も上昇するのです。
これらの要因を総合すると、固定金利は単に現在の市場状況を反映するだけではなく、将来の経済予測や政策変更によっても変動することがわかります。そのため、住宅ローンの金利を選択する際には、長期的な視点が必要になるでしょう。
2024年以降の住宅ローンの金利はどうなる?
住宅の購入を検討している方は、2024年以降の住宅ローンの金利がどうなるか気になっているでしょう。日本銀行がマイナス金利から実質的なゼロ金利にすることを発表したため、今後変動金利と固定金利のどちらを選択すれば良いのでしょうか。
ここでは、変動金利と固定金利の2024年以降の動向について解説します。変動金利と固定金利のこれからの動向を知ることで、家計にとって最適な選択ができるようになるでしょう。
変動金利の動向
先述したように、変動金利は短期プライムレートに連動して決定されます。
変動金利は、多くの銀行で短期プライムレートに1%上乗せした金利を設定しており、これは日本銀行の金利政策に大きく影響されます。特に住宅ローンの変動金利に関しては、銀行によって設定される優遇金利も返済額に大きく影響を与えるでしょう。
日銀の金融政策は、短期金利をマイナス0.1%に維持していました。しかし、2024年に大規模な金融緩和策の一環として、マイナス金利政策を解除し、短期金利を0.0~0.1%程度の間に誘導することを発表しました。
また、長期金利の上限を1.0%に設定することも発表されています。そのため、変動金利は大幅な上昇はしないものの、今後も利上げが続くことで金利上昇をする可能性が高いです。
将来的な動向を予測する際には、これらの政策金利の変更に注目しておく必要があります。金利がどのように、またいつ変わるかは不確実ですが、金利が上昇する可能性が高いため、住宅の購入を検討している方は、早めに動き出すと良いでしょう。
固定金利の動向
固定金利については、一部の金融機関で金利の引き上げが行われています。金融機関によっては金利の維持・引き下げが行われているところもあるため、複数の金融機関を比較検討したり、お金のプロに相談したりするのがおすすめです。
これまで、日本銀行はイールドカーブ・コントロール政策を用いて長期金利の目標を事実上ゼロ%に保ちつつ、金利の上昇を段階的に許容してきました。実質金利が低水準で維持されることを強調しており、即座の大幅な金融政策の変更は予想されていません。
そのため、市場の動向や国際経済の変化によって長期金利にわずかな上昇が見られた場合でも、固定金利は大幅には上昇しないと見られます。この状況は、住宅ローンを検討している方にとって、比較的安定した金利環境が続く可能性があると言えるでしょう。
住宅ローン金利の過去の推移とは
住宅ローンの金利がどのように推移してきたのかを理解することは、これからの金利の動向を予測し、適切なローンプランを選択するためのカギとなります。
ここでは、住宅金融支援機構や三井住友銀行などの主要な金融機関が過去にどのような金利政策を取ってきたのかを詳細に解説します。
過去の推移を知り、金利が上昇する可能性に備える戦略や、より安定した資金計画を立てられるようになりましょう。
住宅金融支援機構
住宅金融支援機構が提供している「フラット35」は、金利が全期間固定となっていることが最大の特徴です。これは、借入時に決定した金利が、返済期間終了まで変わらないというもので、今回のような金融政策の変化があったとしても金利が変わることはありません。
例えば、住宅ローンを組む時の金利が1.5%だった場合、返済期間が終わるまでずっとその金利で返済額が計算されます。そのため、将来的な金利の上昇による返済額の増加の心配がなく、ライフプランを組み立てやすくなるのが特徴です。
フラット35の返済期間は最長35年までと長く、借入金額も最大で8000万円までと幅広いため、さまざまなニーズに対応できます。しかし、フラット35は技術基準を満たした住宅に限り利用可能で、必要な保険への加入などが求められることもあります。
このように、フラット35はその固定金利が大きな魅力で、将来的な金利変動の不安がなく、長期間安定した返済計画を立てやすい住宅ローンです。
そんな住宅金融支援機構のフラット35の過去の金利推移は、以下のとおりです。
最低金利 | 最高金利 | |
---|---|---|
平成16年1月 |
2.89% |
3.95% |
平成17年1月 |
2.23% |
3.59% |
平成18年1月 |
2.521% |
3.57% |
平成19年1月 |
2.75% |
3.55% |
平成20年1月 |
2.82% |
3.46% |
平成21年1月 |
2.88% |
3.83% |
平成22年1月 |
2.57% |
3.52% |
平成23年1月 |
2.41% |
3.40% |
平成24年1月 |
2.14% |
3.20% |
平成25年1月 |
1.99% |
2.94% |
平成26年1月 |
1.80% |
2.45% |
平成27年1月 |
1.47% |
2.12% |
平成28年1月 |
1.54% |
2.09% |
平成29年1月 |
1.12% |
1.69% |
平成30年1月 |
1.36% |
1.99% |
平成31年1月 |
1.33% |
1.96% |
令和2年1月 |
1.27% |
1.94% |
令和3年1月 |
1.29% |
2.06% |
令和4年1月 |
1.30% |
2.21% |
令和5年1月 |
1.68% |
3.27% |
令和6年1月 |
1.87% |
3.37% |
※借入期間が21年以上35年以下、融資率が9割以下、新機構団信付きの場合の数値を記載しています。
数値だけを見ると大幅な増減はないように見えるかもしれませんが、35年ローンで金利が1%増えることで、以下のように総返済額が500万円以上増えることになります。
【前提条件】
- 借入金額:3,000万円
- 返済期間:35年
- 返済方法:元利均等返済
金利1.0% | 金利2.0% | |
---|---|---|
月々の返済額 |
84,685円 |
99,378円 |
総返済額 |
35,567,804円 |
41,738,968円 |
今後金利が上昇する可能性もあるため、住宅ローンを検討している方は、専門家に相談のうえ早めに動き出すと良いでしょう。
三井住友銀行
三井住友銀行の住宅ローン金利には、変動金利型、固定金利型、固定金利特約型がありますが、ここでは変動金利型と固定金利型を紹介します。
三井住友銀行の住宅ローン金利の過去推移は、以下のとおりです。
変動金利 | 固定金利 | |
---|---|---|
平成16年1月 |
2.375% |
3.95% |
平成17年1月 |
2.375% |
3.43% |
平成18年1月 |
2.375% |
2.80% |
平成19年1月 |
2.625% |
3.15% |
平成20年1月 |
2.875% |
3.15% |
平成21年1月 |
2.475% |
3.20% |
平成22年1月 |
2.475% |
3.18% |
平成23年1月 |
2.475% |
3.04% |
平成24年1月 |
2.475% |
2.64% |
平成25年1月 |
2.475% |
2.58% |
平成26年1月 |
2.475% |
2.49% |
平成27年1月 |
2.475% |
2.09% |
平成28年1月 |
2.475% |
2.03% |
平成29年1月 |
2.475% |
1.69% |
平成30年1月 |
2.475% |
1.71% |
平成31年1月 |
2.475% |
1.68% |
令和2年1月 |
2.475% |
1.66% |
令和3年1月 |
2.475% |
1.78% |
令和4年1月 |
2.475% |
1.93% |
令和5年1月 |
2.475% |
2.72% |
令和6年1月 |
2.475% |
3.09% |
※固定金利は20年超35年以内の金利を記載しています。
変動金利は期間全体で見て2.475%と非常に安定していますが、固定金利は1.68~3.95%まで変動していることがわかります。
先述したように、金利が1%上がるだけで総返済額が500万円以上変わるなかで、経済状況の影響で2%以上の増減があります。
住宅ローンの金利が上昇した時の5つの対策
金利の予測は難しいものですが、住宅ローンの金利が上昇する場合、その影響は避けられません。このような金利上昇のリスクにどう備えれば良いのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、金利上昇による負担を軽減するための5つの具体的な対策を解説します。ご自身の家計を守りながら、最良の選択をするための方法を知ることで、将来的な金利の上昇に対しても余裕を持って対応することができるようになるでしょう。
資金力を高める
金利の上昇に対処するために資金力を強化する際には、以下のような具体的な方法を試すのがおすすめです。
収入を上げる
世帯年収を上げることで、住宅ローンの金利が上昇し、月々の支払いが増えてしまったとしても、対応することができます。具体的には、共働きをしたり、副業で副収入を得たりする方法が挙げられます。
貯蓄口座を開設する
毎月の収入から一定の割合を自動で振り分ける自動貯蓄プランを取り入れることで、無理なく貯蓄をする基盤を整えられます。
リスクが低い投資商品の購入
固定の収益を生み出す債券や定期預金などを活用することで、資産運用による安定した収益が期待できます。
家計の見直し
月々の支出を分析して、不要な支出は削減することで、資金力を上げることができます。具体的には、使用頻度が低いサブスクリプションの解約や、通信費用・光熱費の見直しなどが挙げられます。
これらの対策をしっかりと取っておくことで、金利の変動に対しても安定した家計の状態を維持することができるでしょう。
繰り上げ返済を検討する
金利上昇が見込まれる中で、繰り上げ返済は特に住宅ローンの利息負担を軽減する効果的な方法です。繰り上げ返済を検討する際には、ご自身の収入の見通しと予想される支出を把握し、返済計画を現実的に設定することが重要です。
具体的には、追加の収入があるタイミング、例えば年次ボーナスの支給時や副収入が入った際に追加で返済を行うことをおすすめします。これにより、予定外の収入を効率的に利用し、長期的な利息の負担を減らすことができます。
さらに、市場の金利が変動するなど、経済状況が変わった時に備えて、返済プランを定期的に見直し、必要に応じて資金計画を調整しましょう。このように、柔軟かつ計画的に繰り上げ返済を行うことで、借入期間を短縮し、将来的な利息支払いを最小限に抑えることが可能になります。
借り換えを検討する
金利が上昇する市場環境において、住宅ローンの借り換えを検討することは、返済負担を軽減する有効な手段です。借り換えは、より低い金利を提供するプランや金融機関への移行をすることで、これによって月々の返済額が減少する可能性があります。
ただし、借り換えには手数料が発生するため、これらのコストと新しい住宅ローンの条件を比較する必要があります。
借り換えの判断を行う際には、金利や残債額、返済期間などを明らかにしたうえで、市場の金利動向や将来の金融政策の変更を予測し、複数の金融機関で比較検討をしましょう。借り換えの検討に当たっては、各金融機関が提供する住宅ローン条件の情報を収集し、手数料、利率、返済オプションの違いを精査する必要があります。
また、借り換えによる家計の利益を最大化するためには、長期的な視点を持ち、現在の返済額と比較してどの程度節約が見込めるかを計算することが不可欠です。そうすることで、借り換えがもたらすメリットとデメリットを基に、ご自身の家計の状況に最も適した選択を行うことができます。
借り換えは単なる金利の比較以上のものであり、返済計画全体を見直す良い機会となるため、賢明な決断を下すためには全体的な資金計画を検討し直してみましょう。
キャッシュフロー表を作成しておく
金利変動に備えて家計の収支を効果的に管理するため、キャッシュフロー表の作成が非常に有効です。キャッシュフロー表は、家計の収入、支出、貯蓄を時系列に沿って詳細に記録し、これを基に将来の金融状況を予測するための材料となります。
特に、変動金利の住宅ローンを利用している場合には、金利の上昇がどのように家計に影響を及ぼすかを具体的に把握するのに役立ちます。キャッシュフロー表を用いることで、金利の上昇がもたらす可能性のある収支の悪化を事前に分析することが可能です。
例えば、金利変動の度にキャッシュフロー表を更新し、どの程度収支が変化するかを確認することで、必要に応じて資金計画の調整を行うことができます。
さらに、固定金利での借入れを検討している場合には、キャッシュフロー表を用いて、固定金利と変動金利を比較することができます。この比較を通じて、どちらの金利タイプが長期的に見て家計にとって最適かを判断することが可能です。
キャッシュフロー表を作成し、定期的に見直すことは、感覚的な判断ではなく、具体的な数字に基づいた賢明な判断を下すための重要な手段です。これにより、金利変動によるリスクを事前に把握し、それに対する備えをより確実に行うことができるでしょう。
専門家に相談する
金利の変動や住宅購入に伴う資金計画などは非常に複雑であり、専門的な知識を要する分野です。このため、専門家のアドバイスを求めることは、適切な資金計画を立てる上で非常に有効な手段と言えるでしょう。
例えば、HDC神戸では「お家のお金」に関して相談ができるコンシェルジュサービスを提供しています。このサービスでは、住宅ローンの選択から将来的な資金計画に至るまで、専門家が一貫したサポートを提供し、将来的な家計のリスクを回避するお手伝いをします。
住宅の購入やローンの借り換えを考えている場合、HDC神戸のコンシェルジュに相談してみましょう。専門家との相談を通じて、自分の財務状況に最適なアドバイスを受けることができるため、より良い決断を下すことが可能です。不安や疑問がある場合は、ぜひこの機会を利用して、専門家から具体的なアドバイスを受けることを検討してみてください。
まとめ|住宅ローンの金利は上昇する可能性が高い
2024年以降、住宅ローンの金利は変動要因により上昇する可能性が高いです。変動金利と固定金利、双方の動向が不透明感を増しており、借入時の選択が重要です。
住宅金融支援機構や三井住友銀行などの過去の金利推移を振り返ると、過去には金利の変動が起きていることがわかります。
金利上昇に備えるため、資金力の強化、繰り上げ返済、借り換えの検討、キャッシュフローの管理、専門家との相談など、具体的な対策を講じることが賢明です。これらを通じて、将来の住宅ローン計画を慎重に検討していきましょう。
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