住宅ローンの繰り上げ返済はするべきなのか?メリットやデメリットを紹介!

この人に聞きました高槻翔太

宅地建物取引士、FP2級保有 不動産・建設会社の土地有効活用のコンサルティング営業を6年担当。現在は不動産や建設業界の知見を活かした不動産や金融ジャンルのライターとして活動しています。

「住宅ローンの繰り上げ返済はしたほうがいいの?」「繰り上げ返済をするメリットやデメリットは?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、住宅ローンの繰り上げ返済について

  • 繰り上げ返済の2つのタイプについて
  • 繰り上げ返済のメリット
  • 繰り上げ返済のデメリット
  • 繰り上げ返済で後悔しないための方法
  • 繰り上げ返済はいくらたまったらするべきか
  • 繰り上げ返済の注意点

上記を体系的に紹介します。

この記事を読むことで、住宅ローンの繰り上げ返済についての情報を網羅できますので、最後まで読んでみてください。

目次

住宅ローンの繰り上げ返済とは?2つのタイプについて知っておこう

住宅ローンの繰り上げ返済をしたくても、具体的にどのような方法があるのかわからない方もいるのではないでしょうか。

住宅ローンの繰り上げ返済には以下の2つの方法があります。

  • 返済期間短縮型
  • 返済額軽減型

ライフプランなどを考えたうえで、自分に合った返済方法選択しましょう。

繰り上げ返済とは

繰り上げ返済とは、住宅ローンの返済期間中にローンの一部または全部を返済することです。

住宅ローンの返済額は元金と利息で成り立っており、繰り上げ返済をすることで元金を減らすことができます。元金を減らすことで支払う予定だった利息が減り、結果的に総返済額が減ることになります。

住宅ローンの繰り上げ返済をすることで得られるメリットがあるため、余剰資金がある場合は検討してみましょう。

返済期間短縮型

住宅ローンの繰り上げ返済の1つ目は「返済期間短縮型」です。

「返済期間短縮型」とは、その名の通り返済期間を短縮することで、毎月の返済額が変わることはありません。

返済期間が短縮されることで、支払う予定だった利息を減らすことにつながります。たとえば、3,000万円を金利1.5%で30年のローンを組んでいる場合に、500万円繰り上げ返済をすることで、返済期間を約6年短縮できます。

返済期間が6年短縮されれば気持ち的にも楽になり「住宅ローンの重圧」からも解放されるでしょう。

また、定年後も住宅ローンの返済が続く人が多い中で、返済期間が短縮され、定年までに返済できる可能性が高くなるのも魅力の一つと言えるでしょう。

この「返済期間短縮型」で住宅ローンを繰り上げ返済することで、後述する返済額軽減型よりも大きな効果が得られます。

返済額軽減型

住宅ローンの繰り上げ返済の2つ目は「返済額軽減型」です。

「返済額軽減型」とは、その名の通り毎月の返済額が軽減することで、返済期間が変わることはありません。

毎月の返済額を減らすことで、総返済額が軽減されるとともに生活費にも余裕が生まれます。たとえば、3,000万円を金利1.5%で30年のローンを組んでいる場合の毎月の返済額は103,536円ですが、500万円繰り上げ返済をすることで、毎月の返済額が86,280円になります。

毎月の返済額が17,256円減れば、その分子どもの教育費や貯蓄、投資などに費用を充当でき、ライフプランの幅が広がります。

また、変動金利の期間固定金利を選択している人は、将来金利が上昇するリスクもあるため、毎月の返済額を減らしておくのも良いでしょう。

総返済額を軽減するには「返済期間短縮型」の方が効果が大きいですが、家庭の状況やライフプランによって目先の支出を減らすために「返済額軽減型」を選択するのがおすすめです。

住宅ローンの繰り上げ返済をしてよかった?メリットを整理しよう

住宅ローンの繰り上げ返済にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

多くのメリットがある中で、今回は以下の3つのメリットについて解説していきます。

  • 利息を減らすことができる
  • ライフプランに合わせた資金計画を立てられる
  • 退職後の支出を減らすことができる

それでは、1つずつ見ていきましょう。

利息を減らすことができる

1つ目のメリットは、利息を減らせることです。

利息を減らし、総返済額を減らすことが繰り上げ返済をする最大のメリットと言えます。先述したように「返済期間短縮型」でも「返済額軽減型」でも利息を減らすことで総返済額を軽減できます。

また、多くの人が元利均等返済で住宅ローンを組んでいるでしょう。元利均等返済とは毎月の返済額を一定にする返済方式で、返済期間の経過とともに元金の割合が高く、利息の割合が低くなります。

そのため、繰り上げ返済をすることで元金が減り、本来支払う予定だった利息を減らすことができます。

ライフプランに合わせた資金計画を立てられる

2つ目のメリットは、ライフプランに合わせた資金計画を立てられることです。

毎月支払いをしていた住宅ローンの繰り上げ返済をすることで、その分の費用を資産形成や子どもの養育費、両親の介護費用などに充当できます。先程「返済額軽減型」で毎月の返済額が約17,000円減ることを例に挙げました。

仮にこの17,000円を利回り5%で10年間積立運用した場合、10年後には約60万円の利益が生まれることになります。

毎月の支出ではなく、未来を見据えた資産形成に充当できるようになるのは、住宅ローンの繰り上げ返済をする大きなメリットと言えるでしょう。

退職後の支出を減らすことができる

3つ目のメリットは、退職後の支出を減らせることです。

住宅ローンが毎月の固定費の中でも大きな割合を占めている家庭が多いのではないでしょうか。

会社員などで勤めている間に住宅ローンを繰り上げ返済することで、退職後の固定費の負担を軽減できます。退職後は給料がなくなるため、退職金や年金などから住宅ローンの支払いをする必要があります。

勤務しているときよりも収入が減り、住宅ローンの支払いを続けるのは負担が大きくなります。住宅ローンの繰り上げ返済をすることで、収入が減る退職後の支出を減らすことができます。

住宅ローンの繰り上げ返済はしないほうがいい?デメリットを整理しよう

住宅ローンの繰り上げ返済にはデメリットもあります。

今回は以下の5つのデメリットについて解説していきます。

  • 金利が低く利息が軽減される効果が薄い
  • 住宅ローン控除額の減額
  • 団信の保険金額の減額
  • 急な出費に対応できなくなる
  • 手数料を支払う必要がある

先述したメリットと合わせて効果を得られやすい人は、積極的に住宅ローンの繰り上げ返済を検討してみましょう。

金利が低く利息が軽減される効果が薄い

1つ目のデメリットは、金利が低く利息が軽減される効果が薄いことです。

1990年代は8%を超えていた住宅ローンも、今では日銀のゼロ金利政策などをきっかけに1%台や2%台で借りられるようになりました。

金利が低くなることで月々の返済額が小さくなることはありがたい話ですが、金利が高かった時代と比べると繰り上げ返済をしたときの効果は得られにくいです。

先ほど紹介した例で言えば月々約2万円の返済額が減ることになりますが、金利が8%であれば月々約4万円の返済額が減ることになります。

このように、低金利の現代は月々の返済額が小さく済んでいるメリットがありながらも、以前と比べると繰り上げ返済の効果が薄くなってしまうのも一つの事実として受け止める必要があるでしょう。

住宅ローン控除額の減額

2つ目のデメリットは、住宅ローン控除額の減額です。

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を購入している場合に一定の条件を満たすことで所得税や住民税が控除される制度です。この住宅ローン控除は、年末のローン残高によって控除される金額が決まり、残高が多い方が控除額が増えます。

そのため、繰り上げ返済をすることが控除額を減らすことにつながります。住宅ローン控除は新築物件で13年、中古物件で10年受けることができるため(2023年2月現在)、最大限控除を受けてから繰り上げ返済をすると良いでしょう。

ただし、金利などの条件によっては控除期間中でもお得になるケースもあるため、細かく計算したうえで効果を得られやすい方法を選択することが大切です。

団信の保険金額の減額

3つ目のデメリットは、団信の保険金額の減額です。

団信とは、住宅ローンの返済中に契約者が死亡した場合に住宅ローンを完済する保険の制度です。民間の金融機関で住宅ローンを組む場合は、基本的に団信への加入が義務付けられているため、多くの人が加入しているでしょう。

団信の保険金額は契約者が死亡した時点での住宅ローンの残高と同額ということになるため、繰り上げ返済をすることが保険金額を減らすことにつながります。つまり、契約者が亡くなる直前に繰り上げ返済をしたとしても、その分は保険金額として戻ってきません。これを「損をした」と感じる人もいるでしょう。

また、団信には死亡時以外にも長期間労働ができなくなったときやがんになったときのための保険に特約付きで加入ができるため、心配な人は加入を検討しても良いでしょう。

急な出費に対応できなくなる

4つ目のデメリットは、急な出費に対応できなくなることです。

将来は何が起こるかわからず、入院や教育費など急に高額な出費が発生する可能性もあります。繰り上げ返済は総返済額を減らすことはできますが、急な出費に対応できなくなってしまう可能性もあるでしょう。

「繰り上げ返済をしなければ払えたのに」と後悔をしないためにも、急な出費にも対応できるようにある程度の資金を確保しておくことが大切です。

手数料を支払う必要がある

5つ目のデメリットは、手数料を支払う必要があることです。

繰り上げ返済をする際には手数料がかかるため、複数回に分ければ毎回手数料がかかることになります。

そのため、無駄な手数料を支払わないためにも、繰り上げ返済をする際はある程度まとまった資金を準備してから行うのがおすすめです。

住宅ローンの繰り上げ返済で後悔しないためには?4つの方法を紹介!

住宅ローンの繰り上げ返済では、誰しも後悔はしたくないですよね。

住宅ローンの繰り上げ返済で後悔しないための方法はいくつかありますが、今回は以下の4つの方法について解説していきます。

  • 収支を見直して固定費などを削減する
  • 浮いた資金で資産運用してお金を増やす
  • 住宅ローンの借り換えを検討する
  • 最適な時期に繰り上げ返済をする

上手に繰り上げ返済をするためにも、1つずつ確認していきましょう。

収支を見直して固定費などを削減する

後悔しないための1つ目の方法は、収支を見直して固定費などを削減することです。

住宅ローンの返済を固定費の削減として考える人が多いと思いますが、まずは毎月の固定費で削減できるものがないか考えてみましょう。具体的には、サブスクや生命保険、公共料金、スマホ料金などが挙げられます。

特に公共料金はプランや契約会社の見直しをすることで固定費を大幅に削減できる可能性があります。電力会社によっては使用する時間帯ごとに電気料金が異なるプランなどもあるため、夜にまとめて家事を行うなどの工夫をすれば電気代を下げられます。

このように、少しの工夫で簡単に固定費を削減できる可能性もあるため、実践していきましょう。

浮いた資金で資産運用してお金を増やす

後悔しないための2つ目の方法は、浮いた資金で資産運用してお金を増やすことです。

浮いた資金で資産運用をすることで、将来のためにお金を増やせる可能性があるからです。先ほども紹介したように、住宅ローンの繰り上げ返済をして浮いた17,000円を資産運用することで資金を増やすことができます。

浮いた資金を生活費に充当するのも大切ですが、老後や教育費のことを考えて将来のための資金を増やすことにも目を向けてみましょう。

ただし、資産運用は必ずお金が増えるわけではない点には注意が必要です。

住宅ローンの借り換えを検討する

後悔しないための3つ目の方法は、住宅ローンの借り換えを検討することです。

現在借り入れをしている金融機関の金利が高いのであれば、住宅ローンの借り換えを検討するのも一つの選択肢です。

ただし、借り換えをする場合にも手数料が発生するため、金利の比較だけではなくトータルでメリットが出るのかを判断する必要があります。

最適な時期に繰り上げ返済をする

後悔しないための4つ目の方法は、最適な時期に繰り上げ返済をすることです。

早い時期に繰り上げ返済をすることで元金を減らし、本来支払う予定だった利息を大きく減らすことができます。

しかし、子どもの出産や教育費などが必要になるタイミングで繰り上げ返済をしてしまうと、総返済額は減っても目先の生活が苦しくなる可能性もあります。

ライフプランなどを考慮したうえで家庭にとって最適な時期に繰り上げ返済をすることが大切です。

住宅ローンの繰り上げ返済はいくらたまったらするべき?お得に完済するためのワザを4つ紹介!

住宅ローンの繰り上げ返済は、明確に「いくら貯まったら行うべきか」のような基準は設けられていません。

そこで今回は、お得に完済をするための以下のポイントを解説していきます。

  • 住宅ローンの控除の期間が終了したら繰り上げ返済をする
  • 住宅ローンより高い金利の借入がないときに繰り上げ返済をする
  • これ以上資産運用する気がないときに繰り上げ返済をする
  • 【番外編】住宅ローンのストレスから解放されたいときは繰り上げ返済をする

1つでも当てはまれば、前向きに住宅ローンの繰り上げ返済を検討しましょう。

住宅ローン控除の期間が終了したら繰り上げ返済をする

1つ目のワザは、住宅ローン控除の期間が終了したら繰り上げ返済をすることです。

住宅ローン控除を受けられる間は、所得税や住民税の節税効果が得られるため最大限控除を受けることをおすすめします。

新築物件は13年、中古物件は10年控除を受けられるため、この期間を過ぎたら繰り上げ返済を検討しましょう。

ただし、控除期間中でも節税効果以上に効果を得られるケースもあるため、しっかりとシミュレーションをすることが大切です。

どちらを選択したほうがメリットが得られるのかを検討したうえで判断しましょう。

住宅ローンより高い金利の借入がないときに繰り上げ返済をする

2つ目のワザは、住宅ローンより高い金利の借入がないときに繰り上げ返済をすることです。

住宅ローンよりも金利が高い可能性があるローンとしては、カードローンや自動車ローンなどが挙げられます。これらのローンは住宅ローンよりも少額になることが多いですが、金利が高くなるため住宅ローンよりも多くの利息を払うことになります。

住宅ローンよりも金利が低いローンの一例は奨学金です。高い利息を払い続けないためにも、まずは高い金利の借入から返済するようにしましょう。

これ以上資産運用する気がないときに繰り上げ返済をする

3つ目のワザは、これ以上資産運用する気がないときに繰り上げ返済をすることです。

余剰資金があれば資産運用に資金を回して将来の貯蓄をするのがおすすめですが、すでに資産の大半を資産運用に回している人は住宅ローンの繰り上げ返済を検討しましょう。

また、資産運用に強いストレスを感じる人などは無理に資産運用をするのではなく、ある程度資金がまとまったら住宅ローンの繰り上げ返済をするのがおすすめです。

資産運用はリスクを伴うものなので、これ以上資産運用をする気がない人は確実に利息を減らすことができる住宅ローンの繰り上げ返済をしましょう。

【番外編】住宅ローンのストレスから解放されたいときは繰り上げ返済をする

繰り上げ返済をすることで得られる効果にはさまざまなものが挙げられますが、住宅ローンはあくまで負債です。負債を抱えることや、支払を続けることにストレスを感じてしまう人は繰り上げ返済をしましょう。

「お得に繰り上げ返済するため」ではなく、精神的に楽になるために繰り上げ返済をするのも立派な選択です。

住宅ローンの繰り上げ返済をする前に知っておきたい注意点とは?

住宅ローンの繰り上げ返済をする際の注意点についても把握しておく必要があります。多くの注意点がある中で、今回は以下の3つの注意点について解説していきます。

  • 急な出費があることも想定しておく
  • ライフプランシミュレーションをしておく
  • 金利と借入額のバランスを考える
  • 大きく効果が得られないこともある

注意点を把握しておくことで、失敗しない住宅ローンの繰り上げ返済を実現することができます。

急な出費があることも想定しておく

1つ目の注意点は、急な出費があることも想定しておくことです。

人生は何が起こるかわかりません。急に病気になり入院する可能性や、子どもが海外留学をしたいと言う可能性もあります。急に多額の出費があってもある程度は対応できるように、住宅ローンの繰り上げ返済をするタイミングを考える必要があります。

総返済額を減らすことができるのは大きなメリットですが、手元の資金に余裕を持っておくことも大切です。

ライフプランシミュレーションをしておく

2つ目の注意点は、ライフプランシミュレーションをしておくことです。

住宅ローンの繰り上げ返済をするタイミングは、ライフプランシミュレーションをしたうえで適切なタイミングで行うことが大切です。

住宅ローンの繰り上げ返済をすることで得られるメリットはさまざまなものが挙げられますが、家庭の状況によって変わるのも事実です。

そのため、住宅ローンの繰り上げ返済をするべきかどうか、返済額や利息など数字だけではない観点からも検討するためにライフプランシミュレーションをしておきましょう。

金利と借入額のバランスを考える

3つ目の注意点は、金利と借入額のバランスを考えることです。

全期間固定型の住宅ローン以外の金利は変動します。

金利が高いうちは繰り上げ返済をすることで大きなメリットを得られます。しかし、金利が低いと利息の負担も少ないため焦って繰り上げ返済をする必要がないケースもあります。

「金利と借入額のバランスを考えることでより大きなメリットを得られるタイミング」で、住宅ローンの繰り上げ返済をすることが大切です。

大きく効果が得られないこともある

4つ目の注意点は、大きく効果が得られないこともあることです。

住宅ローンを組んでいる金融機関や商品、返済期間などの条件によって異なりますが、近年は低金利が続いています。そのため、住宅ローンの繰り上げ返済をしても大きな効果が得られないこともあります。

繰り上げ返済をすることでどれほどのメリットが得られるのか、しっかりとシミュレーションしておくことが大切です。

まとめ|住宅ローンの繰り上げ返済するなら正しい知識を身に付けよう

今回の記事では、住宅ローンの繰り上げ返済について紹介しました。

住宅ローンの繰り上げ返済には多くのメリットやデメリットがありますが、損をしないための注意点もあります。

お得に住宅ローンの繰り上げ返済をするためにも、正しい知識を身に付けておきましょう!

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※掲載情報は記事制作時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

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