ヘルシーなだけでなく、和食から洋食まで幅広いメニューに使用できる鶏肉は、使用頻度の高い肉のひとつでしょう。
しかし、鮮度の良い鶏肉でも、いくつかの食中毒の原因菌が付着しているのをご存知でしょうか。家庭で鶏肉を安全に調理するには、正しい方法で、一定の加熱時間を守る必要があります。
この記事では、鶏肉を安全に美味しく仕上げる茹で時間や、調理するときのコツ・注意点について解説します。鶏肉をおいしく安全に食べるために、ぜひチェックしてみてくださいね。
目次
鶏肉を安全に食べるには
鮮度の良い鶏肉でも、食中毒の原因菌が付着しているケースが多いです。鶏肉に付着する代表的な菌は、カンピロバクターです。カンピロバクターが体内に入ると、激しい腹痛や嘔吐、下痢、高熱などの症状が引き起こされます。菌の付着は見た目ではわかりません。鶏肉を安全に食べるためには、正しい調理方法と加熱時間を把握しておくことが大切です。さっそく詳しく見ていきましょう。
鶏肉の正しい茹で方と目安時間
鶏肉に付着した菌は、75度以上のお湯で1分以上加熱すると、そのほとんどが死滅します。この場合の1分間というのは、あくまでも菌を75度以上の湯にさらす時間です。そのため、肉の中心部までしっかりと火を通すためには、鶏肉を十分に茹でる必要があります。
鶏肉を安全に食べるには、以下の手順と茹で時間を目安にしましょう。
- 鶏肉を水から火にかけて、沸騰させます
- 沸騰したら、弱火にして3分以内に裏返しましょう
- 裏返したら、再び強火にして沸騰させ、さらに3分加熱します
- その後、ふたをしてそのまま冷ましましょう
ただし、上記の茹で時間はあくまでも目安です。茹でたあとは必ず、中心部までしっかり火が通っているか確認しましょう。中心部まで火が通っていないままの肉を食べてしまうと、食中毒を引き起こす可能性が高くなります。火の通りを確認するには、調理用の温度計を使用するか、肉汁の色や切り口の色で確認できます。鶏肉を調理する際は、必ず火の通りをチェックしてくださいね。
鶏肉を茹でる際の注意点
鶏肉を茹でる際は、茹で時間に注意しましょう。茹で時間の目安は、沸騰してから片面で3〜5分です。茹で時間が短くなると、中心部まで火が通りにくく、食中毒の原因になりかねません。反対に、茹で時間が長すぎると、肉が硬くなりすぎてしまうので、余熱も利用しながら加熱するのがポイントです。
また、加熱後に火の通りを確認することも大切です。目安の茹で時間を守っても、肉の状態や部位によっては、中心部まで火が通りにくいこともあります。肉の厚みや部位などにあわせて、臨機応変に加熱時間を調整してみてくださいね。
部位別の茹で時間については、このあとの項目で解説しますので、参考にしてみてください。
【部位別】鶏肉の安全な茹で時間
鶏肉の部位や状態によって、茹で時間の目安が異なります。ここからは、料理で使用することが多い部位や肉の状態別に、安全な茹で時間を紹介します。
- 鶏もも肉の場合
- 鶏胸肉の場合
- 冷凍鶏肉の場合
- 一口大にカットした鶏肉の場合
- 手羽元の場合
鶏もも肉の場合
ジューシーで旨みを感じやすい鶏もも肉は、揚げ物から煮物まで幅広い料理に使えるため、使用頻度が高い部位ではないでしょうか。鶏もも肉の中心部までしっかり火を通すには、最低でも6分前後の茹で時間が必要です。
ただし、1枚肉をそのまま茹でる際には少し注意しましょう。1枚肉の場合、厚みが均一ではないため、厚みのある箇所は火が通りにくくなります。1枚肉を茹でる前には、厚い部分に包丁を入れておくなどの処理をしておくことで、火の通りにムラがでるのを防ぐことができます。
鶏胸肉の場合
鶏胸肉の安全な茹で時間の目安は、鶏もも肉と同じく6分前後です。鶏胸肉にはタンパク質が多く含まれているため、ヘルシー志向の方に人気が高い部位です。さっぱりとした味わいが特徴なので、鶏ハムやバンバンジーなど、シンプルな料理に向いています。
しかし、鶏胸肉は茹ですぎるとぱさつきやすくなるデメリットがあります。最近では、鶏胸肉がしっとり仕上がる低温調理が人気で、レシピの数も増えてきました。しかし、鶏肉の低温調理は難しく、正しく安全な方法で行わないと、火の通りが甘くなり食中毒の可能性が高くなってしまいます。鶏胸肉を安全にしっとり仕上げたい場合には、正しい温度管理を徹底する必要があります。初心者の方は、低温調理器を使用してみるのも良いでしょう。
冷凍鶏肉の場合
使用頻度の高い鶏肉は、スーパーなどでまとめ買いして冷凍保存しているご家庭も多いのではないでしょうか。冷凍保存している鶏肉を茹でる場合、一度解凍してから茹でるのがおすすめです。
冷凍のまま茹でると、中心部まで火が通りにくい上、鶏肉の水分が多く出ることで肉が硬くなりやすいです。安全に美味しく食べるなら、冷凍庫から冷蔵庫に移してゆっくり解凍するのがおすすめです。また、時短のために常温で解凍するのはおすすめできません。常温で置いておく時間が長くなるほど、食中毒の原因菌が増殖しやすくなるためです。
解凍後の茹で時間は、もも肉や胸肉の場合は6分前後、手羽元の場合には10分前後を目安にしましょう。
一口大にカットした鶏肉の場合
一口大にカットした場合の茹で時間は、使用する部位にあった茹で時間を目安にしましょう。一口大にカットした部位が、もも肉や胸肉であれば、茹で時間の目安は6分前後です。
煮汁や汁物に使用するとき、一口大よりさらに小さめにカットすることもあるでしょう。その場合は、通常より少し短めの茹で時間でも問題ありません。ただし、茹でたあとは切り口などを見て、火の通りのチェックを忘れないようにしてくださいね。
手羽元の場合
手羽元は、骨付近までしっかりと火を通す必要があります。そのため、茹で時間は10分以上を目安にしましょう。煮込み料理などに入れて使う場合は、他の具材により煮汁の温度が下がりやすくなるため、最低でも20分以上加熱すると安心です。
手羽元の火の通りを確認するとき、調理用の温度計を使用するのが便利です。加熱後に中心部分が54度以上になっていれば、殺菌状態が保たれていると言えるでしょう。調理用の温度計がない場合は、切り口や肉汁の色で判断しましょう。
手羽元を加熱した後、骨付近の肉に赤い血の塊のようなものがまれに付着していることがあります。この塊は骨の髄液が溶けだして固まったもので、原因菌とは無関係です。しっかり加熱していれば、塊が残っていても問題ありません。
鶏肉をしっとり茹でる3つの方法
鶏肉は、タンパク質をはじめとする多くの栄養素が豊富に含まれた、健康や美容に良い肉です。ただし、タンパク質が多く含まれる分、加熱しすぎると固くなってしまう特徴があります。しかし、鶏肉には食中毒の原因菌が付着しています。美味しさを追求するあまり、安易に茹で時間を短くすることは危険です。ここでは、安全に配慮しながら、しっとりと美味しい鶏肉に仕上げる3つの方法について紹介します。
- 低温調理する
- 沸騰してから茹でる
- 水から茹でる
さっそく詳しくみていきましょう。
低温調理する
近年、健康ブームもあり、スーパーやコンビニエンスストアなどで手軽に買えるサラダチキンが人気です。サラダチキンのようなしっとり美味しい鶏肉を自宅で楽しむには、低温で茹でるのがおすすめです。ただし、誤った方法で低温調理をしてしまうと、加熱不足になり食中毒の危険性が高まります。自宅で低温調理する際には、温度管理に気をつけましょう。
自宅で鶏肉を低温調理する場合には、以下の方法がおすすめです。
- 鶏胸肉を2cmほどの厚みに切ります
- 切った鶏肉に塩と砂糖で下味をつけ、30分ほど冷蔵庫に置きましょう
- 取り出した鶏肉をラップでしっかりと包み、沸騰したお湯に入れます
- しばらくそのまま加熱し、再沸騰したら裏返しましょう
- 再び沸騰したら火を止めます
- 火を止めたらすぐにふたをし、余熱で30分以上火を通しましょう
- 加熱が終わったら、肉の中心温度が54度以上に保たれていれば完成です
低温調理のポイントは、加熱後に肉の中心温度をこまめにチェックすることです。食中毒の原因菌は75度以上で死滅します。さらに、その後54度以上で保温することによって殺菌効果をキープできます。
家庭で鶏肉を低温調理する場合、低温調理器を使用するのもおすすめです。低温調理器が温度を管理してくれるので、頻繁な温度チェックが不要になります。やわらかくて美味しいお肉を簡単に仕上げることができますよ。気軽に使える低温調理器は、料理以外のことで忙しい方や、食事の支度をなるべく効率よく進めたい方におすすめです。家にひとつ持っておくと、ちょっとしたときに役立ちますよ。
低温調理器BONIQ2.0
沸騰してから茹でる
沸騰してから茹でることで、効率よく中心部まで加熱できます。低温調理などに比べると短時間で仕上がるので、調理時間を短縮したい方はぜひチェックしてみてくださいね。
沸騰してから茹でる方法は、以下のとおりです。
- 沸騰したお湯に、小さじ2の塩を加え、鶏もも肉を入れます
- お湯がぐつぐつしてきたら、肉を裏返して、再び沸騰させましょう
- しっかり沸騰したことを確認したら、ふたをして火を止め、30分ほど余熱で加熱します
- 30分経ったら、肉の厚い部分の中心温度を計り、54度以上になっていたら完成です
沸騰してから茹でるポイントは、たっぷりのお湯で茹でることです。お湯の目安は、鶏肉300gに対して水1.5Lです。また、沸騰が足りないと中までしっかり火が通らないため、十分に沸騰させてから茹でましょう。自宅に調理用温度計がない方は、肉汁の色や肉の切り口の色を見て、赤みがないかチェックするのを忘れないでくださいね。
水から茹でる
鶏肉を水から茹でる場合には、あらかじめ鶏肉に塩で下味をつけておきましょう。塩で下味をつけることで、肉の保水性が高まるため、よりしっとり柔らかい肉に仕上げることができます。水から茹でる場合の手順は、以下を参考にしてくださいね。
- 鶏肉に塩をすり込んで下味をつけ、酒と一緒に火にかけます
- 沸騰したら弱火にして3分茹で、裏返して再沸騰させましょう
- 再沸騰したら、再び弱火にして3分茹でます
- 3分茹でたらふたをして、そのまま冷ましましょう
水からゆっくり加熱することで、鶏肉が硬くなりにくく、しっとり柔らかく仕上がりやすくなります。ポイントは、最後にふたをしてからお湯が冷めるのを待つ間、ふたを開けないことです。余熱をしっかり通すことで、安全でおいしいお肉に仕上がりますよ。
鶏肉を安全に調理するコツ
鮮度の良い鶏肉でも、食中毒の原因とされるカンピロバクターやサルモネラ菌などが付着していることがあります。鶏肉を調理する際には、おいしさだけでなく、安全性にも配慮することが大切です。ここでは、鶏肉を安全に調理するために必要な、以下の4つのポイントについて解説します。
- 清潔な調理器具を使用する
- 茹でたあとの温度管理に注意
- 中心部まで火が通っているか確認する
- 茹でたあとは余熱を利用して仕上げる
清潔な調理器具を使用する
鮮度の良い鶏肉でも、食中毒の原因菌が付着していることがあります。鶏肉に関連する家庭内の食中毒は、加熱の甘さと調理器具による2次感染が原因になっていることがほとんどです。
鶏肉を切った包丁やまな板を洗剤で洗わずに、そのまま別の食材を切るのは危険です。鶏肉に付着していた菌が調理器具を介して別の食材に移ってしまうことで、食中毒を引き起こす可能性が高まります。
生の鶏肉を扱った調理器具は、できるだけ速やかに洗いましょう。特に、鶏肉に多く付着しているカンピロバクターは低温に強く、水洗いだけではあまり意味がありません。75度以上の熱湯を1分以上かけるか、塩素系の漂白剤に漬けて殺菌しましょう。
茹でたあとの温度管理に注意
余熱を利用して火を通すことで、鶏肉がしっとり柔らかく仕上がります。余熱で仕上げる場合は、温度管理がとても大切です。鶏肉は、肉の温度が50度以下になると菌が繁殖しやすくなるデメリットがあります。余熱を利用して火を通すときには、肉の中心部の温度をこまめにチェックし、茹でるお湯の温度が保たれているか確認しながら調理しましょう。
また、余熱で鶏肉を仕上げる場合には、なるべく保温性の高い鍋を使うのもポイントです。保温性のある鍋を使うことで、内部の温度が一気に下がるのを防げます。内部の温度を高く保てるため、おいしいだけでなく、安全に配慮した調理ができる点が鶏肉料理におすすめです。
中心部まで火が通っているか確認する
鶏肉を調理する上で大切なのが、中心部までしっかりと火を通すことです。鶏肉に付着していることが多い、食中毒の原因菌であるカンピロバクターは、75度以上のお湯に1分間以上つけることで死滅すると言われています。さらに、殺菌状態がキープされている目安は、肉の中心部が54度以上に保たれていることです。
肉の中心部の温度を確認するには、調理用温度計が便利です。切り口や肉汁の色などを見て確認することも可能ですが、目視では温度まではわかりません。肉を調理する際は、安全性を確実にチェックできる調理用温度計を使うと安心でしょう。
調理用温度計は、肉料理以外にもお菓子作りなどにも使えます。料理好きの人は持っておいて損はないでしょう。
タニタ調理用温度計
茹でたあとは余熱を利用して仕上げる
鶏肉を安全に食べるためには、肉の中心部までしっかりと火を通すことが大切です。しかし、殺菌を気にするあまり、高温で茹ですぎてしまうと、タンパク質の多い鶏肉は硬くなってしまいます。
安全に配慮しつつ、しっとり柔らかい鶏肉を食べるには、余熱を利用して火を通すのがポイントです。余熱で仕上げることで、肉が硬くなりすぎず、適度な柔らかさを保つことができます。余熱で使っておいしく仕上げるコツは、肉の中心部の温度管理です。中心部の温度が54度より低くなると、菌が繁殖してしまう恐れがあります。温度が下がりすぎないよう注意してくださいね。
まとめ|鶏肉は安全性を考慮して茹で時間を守ろう!
タンパク質やビタミンをはじめとする栄養成分が豊富で、ヘルシーな鶏肉。近年では、鶏肉をよりしっとり柔らかく仕上げられる低温調理が人気です。しかし、新鮮な鶏肉でも食中毒の原因菌が付着していることが多いため、正しい殺菌法を用いた安全な調理を心がけましょう。中心部分までしっかり火が通る茹で時間や調理方法を知り、おいしく安全な鶏肉料理を楽しんでくださいね。