芙蓉宅建FPオフィス代表。金融業界歴10年目(2020年現在)。お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを行っています。一般消費者の金融に関する苦手意識を払拭すべく、ライフワークとして「超・初心者向けマネー勉強会」を毎月テーマを変えて開催しています。
固定資産税とは、個人が土地家屋を所有している際にかかる税金です。通常、固定資産税が変動することは少ないのですが、リフォームの際は注意が必要です。本記事ではケースごとにリフォームと固定資産税の関係を解説し、事前に考えておきたいポイントについても紹介していきます。
固定資産税とは?
固定資産税とは、地方税のひとつで納税先は市町村です。税率は固定資産の評価額の1.4%とされていますが、自治体によって差があることもあります。固定資産税は毎年1月1日時点の土地や建物の所有者が納税義務者となり、1年分の固定資産税はおおむね4期ほどに分けて納税することになっています。
固定資産税の評価額とは
固定資産税の計算基準となるのは、固定資産税評価額です。固定資産税評価額は、毎年郵送される固定資産税の納付書(納付通知書)に記載があります。この固定資産税評価額の算定基準は、土地や建物のある市町村が個別に調査して決めています。土地の場合は、購入した価格の7割程度が固定資産税評価額でおおよその目安とされる場合が多いようです。建物の場合は、新築から年数が経つにつれて評価額は下がります。なお、固定資産税評価額は3年に1度見直される仕組みとなっています。
固定資産税の納税方法
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して課されます。固定資産税は普通徴収という方法で納税します。普通徴収とは、後日郵送される納付書に基づいて支払う方法を指します。納付書の送付時期は、固定資産を保有している地域によります。4月から始まる1年度分の納付書がまとめて届きます。そのうち第一期分(一回目)の納税期限の前である5月前後に届く場合がほとんどです。
家を買う前に固定資産税はわかるのか
新築の建物を購入する際、購入後にだいたいどの程度の固定資産税が発生するのか少しでもわかれば安心ですよね。しかし、残念ながらはっきりとした固定資産税の額は購入前ではわかりません。住宅メーカーや不動産会社の担当者に尋ねれば、地域の特性や、付近の類似物件の参考例などを基に概算を教えてくれる場合があるかもしれません。これはあくまで概算であり、はっきりとした税額は購入後でないとわからないでしょう。一方中古建物であれば、すでに固定資産税は確定しているため、購入先の不動産会社で税額がわかります。
中古物件購入時の固定資産税
冒頭の解説でも触れましたが、固定資産税は毎年1月1日時点の土地や建物の所有者に対して納税義務が発生します。中古物件購入時は、1年の途中で所有者が変わることになりますが、その際は前所有者と新所有者で日割り計算などで平等に負担することがほとんどです。たとえば、7月1日に引き渡しの場合では6月30日までの固定資産税を前所有者が負担し、7月1日以降の分は新所有者が負担するという形です。ほかにも、期ごとに分けて負担する場合など売買の場面で双方が取り決めたルールにのっとって行うことがほとんどになっています。中古物件購入の際は、固定資産税の清算についてあらかじめ不動産会社に尋ねておくと安心です。
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固定資産税が変わらないリフォーム
一度購入したマイホームは、基本的にその後何十年も住み続けるものです。長く住み続ける中で、トイレやキッチンなどの水回りが劣化することもあるでしょう。また、内装を変える程度のリフォームや、住人の高齢化などで手すりを付ける場合もあるかもしれません。このような「今の建物に住み続けるための修繕や改善のリフォーム」であれば、固定資産税は変わりません。
目安は建築確認の有無
固定資産税が変わらないリフォームの目安として、建築確認が必要か必要でないかという点が挙げられます。建築確認とは建築基準法上決められたルールで、大規模修繕や建物の用途変更などがその一例です。前述したような「水回りの劣化に伴う修繕」や「手すりの増設」などは、もちろん建築確認の対象ではなく固定資産税には影響しません。
リフォームによる床面積の変動がない
一般的に、リフォームとは基本的な間取りは変えずに居室内部を改築することを指すことが多くなっています。このような床面積の変動がないリフォームの場合は固定資産税が変わりません。これも建築基準法上の話になりますが、床面積が増えるリフォームの場合は、前述した建築確認が必要となるため固定資産税が上がるリフォームに該当します。
建物の構造や基礎に影響しないリフォーム
建物の構造や基礎部分(柱や壁など)に影響しないリフォームのほとんどは、固定資産税が変わりません。ここでの注意点として、耐震補強のためのリフォームは建物の構造や基礎部分に対しても工事が必要となります。大規模な工事ではなく、建築確認がいらない範囲の補強工事であれば固定資産税の変動はありませんが、工事の程度は一般の人ではなかなかわからない部分もあります。耐震補強工事に際する固定資産税については、リフォーム会社に事前に確認しておくと安心です。
固定資産税が上がるリフォーム
ここからは、固定資産税が上がるリフォームについてケースごとに解説していきます。併せて注意点も紹介しますので参考にしてみましょう。
不動産登記が別途必要なリフォーム
リフォームによる増築や改築で、別途不動産登記が必要となるような大規模なものは固定資産税が上がります。インターネット上や雑誌などで不動産情報を見ていると「増築部分未登記」という別記がある売り物件を見かけます。増築した部分を登記していないのは、本来はルール違反です。しかし、中にはそのままの所有者もいるのが現実となっています。これは固定資産税が上がることが予想されるためです。
増築し床面積が増えるリフォーム
これまでの建物を大幅にリフォームし、2階建てを3階建てにして延べ床面積が増える場合などは固定資産税が上がります。この他にも、1階の庭部分に部屋を一つ増やす場合なども該当します。そもそも部屋や階数の増築は建築確認が必要な事象であるため、固定資産税が上がる対象になっているのです。。
建物の用途変更を伴うリフォーム
建物の用途変更を伴うリフォームでは、固定資産税が上がります。例えば、自宅1階部分の一部を改築して事務所にする場合などです。つまり、住むためだけの建物ではなく、他の用途に変わる場合や一部だけでも住居用以外へ変更する場合は固定資産税が上がる場合に該当します。
建物の骨組みのみ残したスケルトンリフォーム
建物の柱や壁など主要な基礎部に手を加える大規模なリフォームを「スケルトンリフォーム」と呼ぶことがあります。このスケルトンリフォームはマンションなどでも多く用いられるリフォームの手法で、主要な骨組みは残したまま全面的に専有部分を変えるリフォームです。この場合、床面積の増減はありませんが、全面的にリフォームすることで建物(マンションでは専有部分)の価値が上がるとみなされるため、固定資産税が上がります。なお、建物の主要な部分とは、壁・柱・床・梁・屋根・階段などを指します。
固定資産税が下がるリフォーム
ここからは、固定資産税が下がる(減額される)リフォームについて解説します。簡単に言うと、国が設置している減税制度を利用することで、条件を満たせば固定資産税が減額されるという仕組みです。タイプごとに分かれていますのでそれぞれ確認していきましょう。
耐震のためのリフォーム
これまで住んでいた住居またはあらたに入手する中古物件に対して、現在の耐震基準を満たす建物にするためのリフォームを施す場合、以下の条件を満たせば固定資産税が減額されます。
耐震リフォーム・減税の要件
- 耐震リフォームにかかる費用が50万円を超えていること(上限250万円)
- 昭和56年5月31日以前から存在する建物であること
- 現行の耐震基準に適合させるための耐震改修であること
耐震リフォーム・ポイント
上記の条件を満たした場合、翌年の固定資産税が半分に減額されます。自治体によっては、別途条件を指定したうえでさらに期間が延長される場合もあります。一時的な減額とはいえ非常にありがたい制度です。また、これらは戸建てに限られておらず、アパートやマンションでも対象です。
バリアフリーのためのリフォーム
建物をバリアフリー化するためのリフォームは「バリアフリーリフォーム減税」と呼ばれ、。バリアフリーリフォーム減税を適用させるには、以下の要件を満たす必要があります。
バリアフリーリフォーム減税の要件
- 築年数が10年以上経過した建物であること
- 満50歳以上の人や要介護・要支援の認定を受けている人、障害のある人が居住していること
- リフォーム後の床面積が50㎡以上であること
- バリアフリーリフォームの費用が50万円以上であること
バリアフリーリフォーム減税・ポイント
バリアフリーリフォーム減税では、翌年の固定資産税が1/3に減額されます。ただし面積は100㎡までが対象です。注意したいのは、居住用の建物であっても賃貸物件は含まれないという点です。家屋の要件として「自ら所有し居住している建物(賃貸住宅は除く)とされています。また、バリアフリー化に関する各種補助金は除いたうえで、リフォーム費用が50万円以上ではないと適用されないという点も注意しておきましょう。
省エネ住宅にするためのリフォーム
既存の戸建て住宅を、省エネ化するためのリフォームも減税の対象となります。省エネ住宅のリフォームの要件は以下の通りです。
省エネリフォーム減税・要件
- 居住用の住宅であること
- 平成20年1月1日以前からある建物であること
- 工事費用が50万円であること(上限250万円)
- 窓や床、壁などの断熱工事を含む省エネ改修工事の要件を満たした工事であること
- 改修後の建物の床面積が50~280㎡であること
省エネ住宅リフォーム・ポイント
上記の要件を満たした場合、翌年の固定資産税が1/3に減額されます。ただし床面積は120㎡までが対象です。バリアフリーに関する減税の要件と同じく、他の補助金や助成金などを除いた工事費用が上限250万円まででなければ対象になりません。また、減税制度の対象となる省エネ改修工事にあたるかどうかは、リフォームの施工を依頼した工務店や不動産会社に事前に確認しておきましょう。
リフォーム減税制度の照会先
ここまでに解説した3つの減税制度に関して、質問や各種書類の提出先は市町村の固定資産税を担当する課(地方税課など)です。また、自治体によって提出すべき必要書類や、減税となる期間に差があることがありますので、必ず事前に確認しておくことをおすすめします。
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リフォームと固定資産税に関する注意点
それぞれのパターンでも、個別に注意点について触れてきましたが、ここではリフォームと固定資産税の全体的な注意点について解説していきます。
固定資産税を下げるための手続き
固定資産税を下げるための手続きは、リフォーム工事完了後3ヶ月以内に市町村へ申告します。リフォームごとに提出書類は違いますが、申告先は同じです。また、自治体によって追加で必要となる書類がある場合もあります。手続きの必要書類などについては、申告前に窓口へ確認しておきましょう。また、建築確認が必要な大規模リフォームを行なった場合で、固定資産税が上がることが予想される場合でも同様の手続きが必要です。市町村の固定資産税担当窓口へ申し出たうえで必要書類や流れを確認しましょう。この際、建築基準法上で決められた建築確認申請を怠るなど不正を行なった場合は、施主と施工会社(リフォーム業者)双方がペナルティを受けることになります。
前回の固定資産税見直しがいつだったか確認
建築確認が必要なリフォームを行いこの先固定資産税の増額を免れない場合には、現在の固定資産税評価額はいつ見直しされたか確認してみましょう。ここまでに繰り返し解説していますが、固定資産税の評価額は3年に一度のタイミングで見直されます。つまり、いずれ固定資産税の増額が発生するとしても、来年からなのか、3年後からなのかでは大きな違いがあるのです。このため、明らかに固定資産税が上がるタイミングでのリフォームを予定している場合は、3年おきの固定資産税の見直し期間に合わせて実施するという方法もあります。
リフォーム後の中古建物購入時の注意点
中古物件を購入する際には、前の所有者がこれまで支払っていた固定資産税と同等の金額を支払っていきます。その後住み続けることで建物が経年劣化していけば、3年ごとの評価額見直しで固定資産税額が下がることもあります。ここで注意したいのは、中古物件を購入する際にリフォームして入居する場合です。前述したような建築確認の必要なリフォームに該当する場合、もちろん前の所有者の固定資産税より上がります。また、中古物件購入時には、その後の住居維持費も加味して購入を検討する場合がほとんどです。入居前のリフォームの程度によっては固定資産税が上がる場合もあるということも念頭に置いておきましょう。
まとめ
住宅を購入すると継続的に固定資産税が発生することはわかっていても、リフォームで税額が変わるということは知らない人が多いようです。固定資産税が変わらない場合は良いとしても、下がる場合は知らないと損をすることもあります。また、知らなかったからと固定資産税の増額をそのままにしておくとペナルティがある場合もあります。本記事を参考に、リフォームと固定資産税の関係についてあらかじめ備えておきましょう。
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