宅地建物取引士、FP2級保有 不動産・建設会社の土地有効活用のコンサルティング営業を6年担当。現在は不動産や建設業界の知見を活かした不動産や金融ジャンルのライターとして活動しています。
「住宅ローンの選び方がわからない」「そもそも何を知っておけばいいの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、住宅ローンの選び方について
- 住宅ローンの種類
- 住宅ローンの選び方
- 住宅ローンの借り方
- 住宅ローンの返済シミュレーション
を紹介します。住宅ローンについてしっかりと理解するためにも、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
住宅ローンの種類
住宅ローンを選ぶ際、初心者の方は数多くある選択肢からどのように見極めれば良いのか気になっている方も多いのではないでしょうか。重要なのは、各ローンの特徴を理解し、ご自身のライフスタイルや購入する住宅の種類、返済計画のような条件に最適なローンを選ぶことです。
ここでは、住宅ローンの種類を一つひとつ詳しく解説します。それぞれの特徴を理解することで、最適な住宅ローン選びができるようになるでしょう。
公的ローン
公的ローンは、審査基準が比較的柔軟であることが特徴です。
しかし、貸出可能な上限額は他の金融商品に比べて控えめに設定されていることが多く、大規模な借入がしにくい側面もあります。
財形住宅融資
財形住宅融資は、職場での「財形貯蓄」を1年以上継続し、その貯蓄残高が50万円以上あることを条件に利用できる制度です。財形住宅融資は、返済期間を通じて、5年ごとに金利が見直される5年固定金利制が採用されています。
これにより、経済状況の変動にある程度対応しながらも、利用者はある程度の金利の安定性を享受できるようになっています。このような条件下では、計画的に住宅購入を目指す方々にとって、安心して融資を利用できる環境が整えられていると言えるでしょう。
自治体融資
自治体融資は、都道府県や特別区、市町村などの公共機関が、住民や勤労者の支援を目的として提供する融資のことです。特徴としては、一部の自治体が民間の金融機関と提携し、融資を受けた際の利子負担を補填するケースが挙げられます。
これにより、低金利での融資が可能になるため、受益者はより手頃な条件で必要な資金を得られるようになるでしょう。
公的+民間ローン
公的なローンと民間のローンを組み合わせた融資商品は、全期間固定金利により、利用者にとって大きな安心感となるでしょう。審査基準も比較的柔軟であるため、幅広い層の方々がローンを利用することが可能になります。
フラット35
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が協力して提供する住宅ローン商品であり、最大の特徴として最長35年間の金利固定期間を設けています。
全期間固定金利型のローンは、市場金利の変動に左右されることなく、長期間にわたって同一の金利で返済を続けられます。フラット35は、将来の金利上昇リスクを避けつつ住宅ローンを組みたいと考える方々にとって、魅力的な選択肢となっています。
民間ローン
民間ローンは、その多様な商品ラインナップと金利タイプの選択肢から、利用者が自分の希望に最も近い条件を見つけ出すことができます。
ただし、これらのローンを利用するには、他の融資商品と比較すると審査が厳しくなる傾向にあるため、良好な信用状況が求められます。
民間融資
民間融資は、メガバンクや地方銀行、信用金庫を始め、住宅ローン専門会社、保険会社、そしてネット銀行など、多岐にわたる民間企業によって提供されています。これらの金融機関は、それぞれが独自の融資商品や金利の設定をしており、顧客の多様な要望に応えるための幅広いオプションを提供しています。
民間融資の利点は、利用者の状況に合わせて最適な融資条件を選択できることです。また、競争が激しいため、顧客にとってより有利な条件での融資が実現しやすい環境が整っています。
提携融資
提携融資は、不動産会社やハウスメーカーが金融機関と協力し、顧客に対して特別な融資プランを提供する仕組みです。住宅を購入する過程で、これらの企業から提携している金融機関のローン商品が勧められるケースがあります。
提携融資を選択することで、住宅購入者が購入の手続きを簡略化できるだけではなく、金利の優遇を受けられる可能性もあります。
社内融資
社内融資は、企業が利厚生の一部として社員に対し提供する融資商品です。この制度は、金融機関からの借入れに比べて手続きが簡単で、条件が有利であることが特徴です。
多くの場合、社内融資には退職時にローンを一括返済するなど、特定の返済条件が設けられています。このような制度を設けることにより、企業は社員の家計の負担を軽減し、社員の満足度を向上させることができます。
社内融資は、社員にとっては緊急時の支援となり、企業にとっては優秀な人材を引き留め、労働環境を改善する有効な手段です。
リフォームローンとの違い
リフォームローンと住宅ローンは、どちらも住宅関連の資金をサポートするためのローン商品である点で似ていますが、実際にはいくつかの重要な違いがあります。
リフォームローンは、既存の住宅を改修または改善するための資金を借りる際に利用され、金利が比較的高めに設定されていることが一般的です。また、住宅ローンの借入可能額が500万円~1億円程度までの広範囲であるのに対し、リフォームローンは多くの金融機関で500万円~1,000万円となっています。
金利タイプにも違いがあり、リフォームローンでは変動金利が主流であるのに対し、住宅ローンでは変動金利だけではなく、固定金利も選択できます。
住宅ローンの選び方
初心者にとって、住宅ローンを選ぶ過程は不安でいっぱいかもしれません。しかし、正しく理解していれば、あなたにぴったりの住宅ローン選びができるようになります。
ここでは、住宅ローンの選び方を項目ごとに紹介します。安心して将来に向けた計画を立てることができるようになりましょう。
金利タイプ
住宅ローンを選択する際には、金利タイプの理解が不可欠です。
金利タイプには、以下の3つが挙げられます。
- 固定金利型
- 変動金利型
- 固定期間選択型
それぞれの特徴を踏まえ、ご自身の返済能力や将来の金利動向を考慮して、最適な金利タイプを選択しましょう。
固定金利型
固定金利型では、借入から完済までの期間、契約時に定められた金利が一貫して適用されます。将来の市場金利の変動に左右されず、返済額が一定であるのがメリットです。
変動金利型と比較すると、固定金利型の方が金利が高めに設定される傾向にありますが、それは金利上昇のリスクを避けるための金融機関のリスク回避となります。金利が上昇しても返済額に影響がないため、長期的な家計の計画を立てやすくなります。
変動金利型
変動金利型は、契約期間中金利が市場の動向に応じて変動するため、返済額もそれに伴い変わります。変動金利は初期の金利が固定金利型に比べて低めに設定されることが多く、低金利の恩恵を受けられる可能性があります。
ただし、市場の金利が上昇すると返済額が増加するリスクが伴うため、低金利の状態が継続すると予測される場合に適していると言えるでしょう。また、積極的に繰り上げ返済を行い、ローン残高を速やかに減らす意向のある方にも変動金利型は魅力的な選択肢となります。
固定期間選択型
固定期間選択型は、初期の一定期間、固定金利が適用された後、期間終了とともに変動金利に移行する金利タイプです。
固定期間選択型は、固定金利型の安定性と変動金利型の柔軟性を兼ね備えており、初期の固定期間には3年、5年、10年などの固定期間を選択することになります。期間が長くなるほど、適用される金利も高めに設定される傾向があります。
固定期間選択型は、将来の金利上昇に対する不安を抱えつつも、初期の数年間は返済額を一定に保ちたいと考える方々に最適です。例えば、子どもの教育費など予定された大きな支出がある期間は金利の安定を求めつつ、それが終わった後は金利の市場変動に対応して返済計画を調整したい場合に適しています。
返済方法
住宅ローンの返済方法には、以下の2つがあります。
- 元利均等返済
- 元金均等返済
借入額と金利が同じ場合でも、月々の返済額や最終的な総返済額に大きな違いが生まれるため、ご自身の返済能力や資金計画に合わせて適切な返済方法を選択することが重要です。
元利均等返済
元利均等返済は、借りた金額(元金)とその利息を合わせた総返済額を、ローン期間全体で均等に分割して返済していく方法です。元利均等返済を選択する最大の利点は、返済額が毎月一定となるため、家計管理がしやすく、経済的な計画を立てやすい点にあります。
しかし、返済初期には、月々の返済額の中で利息が占める比率が高く、そのため元金が減少するペースはゆっくりとなります。元利均等返済は、返済計画の予測可能性を重視し、毎月の支出を一定に保ちたいと考える方に適した選択肢と言えるでしょう。
元金均等返済
元金均等返済では、ローンを組んだ総元金を返済期間に応じて均等に分割し、毎月一定の元金に対して利息が加算されて返済されます。元金均等返済の特徴は、返済開始時から元金の減少が早く、従って利息の負担が時間とともに減少していく点です。
初期の段階では、利息の負担も含めて月々の返済額が大きくなる傾向がありますが、元金が返済されるのが早いため、長期的に見ると総返済額を抑えることができます。
元金均等返済では返済額が時間とともに減少するため、将来の収入見込みが減少することが予想される場合などに、賢明な選択肢となるでしょう。
借入可能額
住宅購入を検討する際は、まずはご自身がローンでいくら借り入れできるのか、つまり「借入可能額」を知ることが大切です。
借入可能額を理解する上でキーとなるのが「返済負担率」です。「返済負担率」は、ご自身の年収に対する年間返済額の比率を指します。返済負担率は金融機関によって審査基準とされ、住宅金融支援機構の調査によると、返済負担率の設定値として最も多いのは「15%超~20%以内」です。
しかし、この数字はあくまで最大借入可能額の目安に過ぎず、実際には家計の具体的な状況や将来の資金計画なども考慮して、返済できる金額を検討する必要があります。
返済期間
住宅ローンを組む際、返済期間は重要な要素の一つです。
一般的に、返済期間は最長35年設定されることが多いですが、金融機関によっては、より長期間の最長50年を選択肢として提供している場合もあります。また、返済期間に加えて、ローンを借りる際の年齢上限は70歳、完済時の年齢上限は80歳までと定める金融機関が多いのも特徴です。
返済期間を長く設定することで、毎月の返済負担を軽減することが可能になりますが、長期間にわたる返済は、特に定年退職後のライフスタイルに大きな影響を与えます。
退職金を利用して繰り上げ返済を計画する方も多いですが、退職金の受取額は勤務先の経済状況に左右されるため、必ずしも安定した返済計画とは言えないリスクが伴います。
このように、住宅ローンの返済期間は、ご自身のライフステージを考慮し、無理のない現実的な計画を立てることが不可欠です。
契約者
詳細は後述しますが、住宅ローン契約を結ぶ際には、以下のような契約形態があります。
- 単独ローン
- ペアローン
- 収入合算
- 親子ペアローン
- 親子リレーローン
ペアローンや収入合算を選択する最大のメリットは、単独ローンに比べて借入可能額を増やすことができる点にあります。これにより、より高額な住宅の購入が可能になることがあります。
しかし、これらの方法では、返済に関する責任が複数の契約者に及ぶため、返済計画や契約条件に関して、より慎重に検討することが大切です。特に、将来の収入変動や、夫婦間の法的な関係の変化など、予期せぬ状況の発生時に備えた対策を考えておきましょう。
団信の保障内容
民間住宅ローンを利用する際には、一般的に団体信用生命保険(団信)への加入が必須条件とされています。団信は、ローン契約者が死亡したり高度障害を負ったりした場合に、残存する住宅ローンの残高を保険が清算する生命保険です。
このほかにも、がんや三大疾病(脳卒中、急性心筋梗塞、がん)をカバーする保障内容を持つもの、自然災害での損害を補償するオプションが付加された団信もあります。
これらの保障内容は金融機関によって異なるため、さまざまなリスクに備えたい場合は、団信の補償範囲を比較検討すると良いでしょう。
ただし、フラット35のように団信の加入が必須でないローン商品もあり、ご自身の要望や健康状態に応じて最適な保障内容を選ぶことが重要です。また、持病があるなどで通常の団信の加入条件を満たさない場合は、加入基準が緩和されたワイド団信という選択肢もあります。
住宅ローンの借り方
住宅ローンを借りる際に、どのような形態で借り入れを行えばいいのか気になっている方も多いのではないでしょうか。これらの選択は、借入可能額や返済計画、将来の資金計画に大きく影響します。
ここでは、それぞれの借り方の特徴や、どのような場合にどの借り方が最適かを紹介します。安心して最適な選択ができるように、正しい知識を身に付けておきましょう。
単独
単独で住宅ローンを借りるというのは、文字通り一人で契約を行うことを意味します。特に単身者や、家計の収入の大半を担っている世帯主が契約することが一般的です。
単独借入のメリットとしては、契約のシンプルさと、返済に関する責任が借りた本人にのみ限定される点が挙げられます。
しかし、借入可能額が契約者の収入のみに依存するため、比較的低くなりがちであるというデメリットもあります。
ペアローン
ペアローンは、一定の収入を有する同居親族、多くの場合は夫婦や親子など、それぞれが独立した主債務者として住宅ローンに申し込む方法です。互いが相手の連帯保証人となることで、互いの収入を基にしたローンの申し込みが可能となり、単独での申し込みに比べて、より高額の借入をできる可能性が高くなります。
ペアローンの適用条件としては、申し込む二人が単独の住宅ローン申し込み基準を満たしている必要があります。
単独での住宅ローン申し込みと異なり、ペアローンは双方の収入と信用を最大限活用し、共同での住宅購入を可能にする選択肢となるでしょう。
収入合算
収入合算は、家族など一定の収入を持つ親族の収入を主債務者の収入に加えることで、住宅ローンの審査における基準を満たす方法です。収入合算にすることでより高額の借入が可能となりますが、収入を合算する親族には、連帯保証人となる義務が伴います。
また、婚約者を収入合算者とする場合は、ローン契約時までに入籍が確認できる公的書類を提出する必要がある金融機関があります。
ペアローンとの違いは、収入を合算する親族が住宅ローン控除の適用外になることや、団信の補償を受けられないことです。
親子ペアローン
親子ペアローンは、親子間の協力によって、二世帯住宅を購入する際に適した住宅ローンの形態です。親子ペアローンでは、親と子それぞれが主債務者として住宅ローンを申し込み、双方の返済能力を合算して大きな金額で借入ができるようになります。
そのため、各々が単独でローンを組む場合に比べて、より条件の良い物件や、家族全員の要望に合った理想的なマイホームを実現できる可能性が高くなるでしょう。親子ペアローンは、親から子への資金面での支援が可能な家庭にとって、単独では難しい高額の借入を成功させることができるメリットがあります。
親子リレーローン
親子リレーローンは、二世代にわたる家族の住宅購入をサポートするために考案された住宅ローンの形態です。親子やその他の親族が共同で住宅ローンを組み、当初は親が返済を担当し、将来的には子が返済を引き継ぐというシステムとなっています。
特に、親が中高年で既に年金生活に入っている場合や、収入が減少している状況でも、このローンを利用することで、住宅ローンの審査に通過しにくい問題を解決できるでしょう。
親子リレーローンのメリットは、現役世代で安定収入のある子が将来的に返済を継続することで、家族全体の信用力を高められる点にあります。
住宅ローンの返済シミュレーション
住宅ローンを選ぶ際、多くの初心者が直面する不安の一つが、将来的な返済計画に関するものです。
月々の返済額はいくらになるのか、金利が変わった場合にどう影響するのか、返済期間はどれくらいが適切なのかといった疑問は、住宅ローンを検討する上で重要なポイントです。これらの疑問を解消するためには、返済シミュレーションが非常に有効です。
ここでは、金利タイプや返済方法ごとのシミュレーションを紹介します。返済シミュレーションを行うことで、住宅ローンの返済計画がより明確になり、将来の不安を減らすことができます。
金利タイプ別のシミュレーション
先述した3つの金利タイプを基に月々の返済額と総返済額を見てみましょう。
【前提条件】
- 借入金額:4,000万円
- 返済期間:35年
- 金利:2024年4月時点の三菱UFJ銀行を参照
- 返済方法:元利均等返済
- 7大疾病付保しない
金利タイプ別のシミュレーションは、以下のとおりです。
固定金利型 (1.81%) | 変動金利型 (0.425%) | 固定期間選択型 (1.06%) | |
---|---|---|---|
月々の返済額 |
128,638円 |
102,513円 |
|
総返済額 |
54,027,731円 |
43,055,601円 |
※固定期間終了後の金利は社会情勢によって異なるため、35年間同一の金利にてシミュレーションをしています。
変動金利型が最も金利が低くなるため、月々の返済額と総返済額が他のタイプと比べると安くはなりますが、金利上昇のリスクがある点には注意が必要です。
返済方法別のシミュレーション
先述した2つの返済方法を基に月々の返済額と総返済額を見てみましょう。
【前提条件】
- 借入金額:4,000万円
- 返済期間:35年
- 金利:1.81%(2024年4月時点の三菱UFJの35年固定金利を想定)
- 返済方法:元利均等返済
- 7大疾病付保しない
返済方法別のシミュレーションは、以下のとおりです。
元利均等返済 | 元金均等返済 | |
---|---|---|
月々の返済額 |
128,638円 |
155,427円 |
総返済額 |
54,027,731円 |
52,699,934円 |
元利均等返済を選択すると、総返済額は元金均等返済よりも高くなりますが、月々の負担が軽くなります。
どちらにもメリット・デメリットがあるため、ご自身のライフプランに合わせて慎重に検討しましょう。
まとめ|住宅ローンの選び方で困ったらプロに相談しよう!
住宅ローン選びには様々なステップがあり、公的ローン、公的+民間ローン、民間ローンの選択から始まります。
金利タイプには固定、変動、固定期間選択型があり、返済方法も元利均等返済や元金均等返済など多様です。その他、借り方にも複数の選択肢があり、一人ひとりの状況に最適なプランを見つけることが大切です。
また、返済シミュレーションを利用して将来の返済計画を慎重に検討することが大切です。
HDC神戸では、お家のお金(住宅ローンや補助金など)についてプロに相談できるコンシェルジュというサービスがあります。ご自身だけでは不安があるという方は、コンシェルジュに行って相談してみましょう!
こちらの記事もお役立てください