焼いたり煮たりするだけでなく、すりおろせば薬味として使えるなど、冬の料理に欠かせない大根。水分が多く淡白な味なので「栄養がない」と思われがちですが、本当なのでしょうか。
今回は、大根の栄養について解説します。栄養を効率よく摂取できる食べ方やレシピなども紹介するので、大根の栄養について知りたい人は、この記事をぜひチェックしてくださいね。
目次
大根に栄養がないといわれている理由とは?
大根に栄養がないといわれるのは、味・色・水分量が関係しています。
まず大根の特徴として、クセがなく淡白な味という点が挙げられます。これらの特徴はどんな食材にも合わせやすいという大根の利点ですが、一方で栄養がないといわれる理由としても考えられます。
色が白いのも、栄養がないといわれる理由の1つです。パプリカやブロッコリーなど、色の濃い野菜は栄養価が高いといわれているがゆえに、色の薄い野菜は栄養価が低いと思っている人が多いようです。
また、大根は重量の約94%が水分でできています。水分が多く栄養含有量が約6%なのも、栄養がないといわれる理由だといえるでしょう。
しかし、大根以外にも水分量が多い野菜はたくさんあります。たとえば、トマトの水分量は約94%、なすの水分量は約93%で、これらの野菜には健康を促進する栄養素がたくさん含まれています。
各野菜に含まれる栄養素の種類や量は異なりますが、「水分量が多い野菜は栄養がない」とは言い切れないでしょう。
大根に含まれる栄養!各栄養素にはどんな効果効能があるの?
大根は栄養がないといわれていますが、決してそんなことはありません。大根にもたくさんの栄養素が含まれており、これらの栄養素は体の健康維持に欠かせないものばかりです。
大根に含まれる栄養素と、その働きについて紹介します。
- 根・茎などの白い部分に含まれる栄養素
- 葉に含まれる栄養素
栄養素の効果は、摂取する栄養素の組み合わせや、栄養素を摂取するときの体の状態によって異なります。これから紹介する内容は、あくまでも各栄養素の働きであって、摂取したからといって必ずしも得られる効果とはいえないので注意してください。
根・茎などの白い部分に含まれる栄養素
根や茎などの白い部分に含まれる栄養素を6種紹介します。
- ビタミンC
- カリウム
- カルシウム
- ビタミンB群
- 食物繊維
- 葉酸
順にみていきましょう。
ビタミンC
ビタミンCには身体が錆びるのを防ぐ抗酸化作用や解毒、ホルモン代謝などの働きがあります。さらに、鉄分の吸収を促進する働きは、貧血防止にも役立つと考えられています。
ビタミンCは体内合成が可能ですが、ストレスや加齢、肝機能の低下によって合成が追い付かないことも。食べ物から継続的に摂取すると良いでしょう。
カリウム
カリウムは摂り過ぎた塩分を尿と一緒に排出する働きを持つことから、血圧の安定や維持に効果的な栄養素だといわれています。その他、筋肉の機能維持や神経刺激の伝達なども期待できる栄養素です。
血中カリウム濃度が上昇すると高カリウム血症になる危険性があるので、過剰摂取に注意しなければなりません。
カルシウム
カルシウムは骨や歯を丈夫にする重要な栄養素で、実際に体内のカルシウムの約99%は骨や歯に存在します。人間の体を構成するミネラルの中で最も多く体内に存在し、体重の1〜2%を占めているといわれています。
体内合成できず食べ物から補う必要がありますが、カルシウムの吸収を阻害するリンや食物繊維と一緒に摂取するのはなるべく控えましょう。
ビタミンB群
ビタミンB群は、ビタミンB1・B2・B6・B12・ナイアシン・パントテン酸・葉酸・ビオチンの8種類で構成されているビタミン類です。栄養素からエネルギーを生成する酵素の働きをサポートします。
ビタミンB群は体内で生成することができず、水に溶けやすい性質を持ちます。尿と一緒に排出されてしまうことが多いので、継続的に摂取するのが理想です。
食物繊維
食物繊維は水に溶けやすい水溶性食物繊維と、水に溶けにくい不溶性食物繊維に分けることができます。大根には食物繊維が1.4g含まれており、そのうち不溶性食物繊維が0.9g、水溶性食物繊維が0.5gです。
食物繊維は小腸で消化・吸収されずに大腸まで達する栄養素です。腸内環境を整えたり、蠕動運動を活発化して排便を促進したりする働きがあるといわれています。
葉酸
葉酸は、ビタミンB群に分類される栄養素です。ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンで、葉酸が欠乏すると貧血になるおそれがあります。
また、細胞の生産や再生をサポートして体の発育に役立つことから、妊娠前・妊娠中・出産後の授乳期間は積極的に摂取したほうがいいといわれています。
葉に含まれる栄養素
大根の白い部分だけを食べて、残りの葉を捨てている人はいませんか?大根の葉には、健康に役立つ栄養素がふんだんに含まれています。葉がついた状態の大根を買ったら、積極的に摂取することをおすすめします。
葉に含まれる栄養素のうち、食物繊維・カルシウム・ビタミンC以外の3つの栄養素を紹介します。
- たんぱく質
- βカロテン
- ビタミンE
後ほど、大根の葉の食べ方やレシピを紹介するので、記事の後半もぜひ参考にしてくださいね。
たんぱく質
たんぱく質は体の筋肉や皮、臓器を作るうえで欠かせない栄養素です。たんぱく質の摂取不足は、免疫機能や抵抗力の低下を引き起こすおそれがあります。毎食摂取することを心がけましょう。
βカロテン
β-カロテンは、植物中に含まれる色素の一種です。活性酸素の発生を抑えたり免疫を強くしたりするなど、アンチエイジング効果が期待されています。
また、必要量のみ体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康維持と視力維持をサポートする働きがあるといわれています。
ビタミンE
脂溶性ビタミンであるビタミンEは、体内の脂質の酸化を抑制する抗酸化作用として働きます。細胞の老化を防ぐ効果も期待できることから、動脈硬化予防や免疫力の向上につながるといわれています。
大根には体に良い効果をもたらす消化酵素や辛味成分も含まれている!
大根に含まれている成分は、ビタミンやミネラルだけではありません。消化酵素や辛味成分も含まれており、摂取することで体に良い効果をもたらすことが期待できますよ。
- 消化酵素
- イソチオシアネート
上記2つの成分をみていきましょう。
消化酵素
消化酵素は、でんぷん・たんぱく質・脂質などを、血中に取り込める大きさまで分解する働きを持ちます。消化が十分におこなわれないと吸収不良が起こるおそれがあり、生きていくうえで欠かせない成分といえます。
消化酵素自体も、栄養素の消化をおこなっていく過程で分解されていきます。基本的に体内で十分な量が分泌されますが、食べ物から補うことも大切です。
イソチオシアネート
大根の上部より下部の方が辛いと感じたことのある人は多いでしょう。大根の下部には、イソチオシアネートと呼ばれる辛味成分が多く含まれています。
イソチオシアネートの詳しい効果効能は明らかになっていません。しかし、体内の抗酸化酵素などを活性化する働きが確認されていることから、がんや動脈硬化の予防効果があるのではないかといわれています。
大根の栄養を逃さない!効果的な食べ方や調理法を紹介!
大根を上から下まで余さず調理したとしても、大根に含まれる栄養素をすべて摂取できるわけではありません。栄養素によっては調理段階で失われてしまうものもあり、食べ方や調理法に注意する必要があります。
- 皮ごと食べる
- 葉は油で加熱して食べる
- 加熱せずに生のまま食べる
- 干して食べる
大根の栄養素を逃さず摂取するためにも、上記の調理法を用いて食べてくださいね。
皮ごと食べる
大根に含まれる栄養素の多くは、皮の部分に含まれています。皮をよく洗い、皮も一緒に炒めたり煮込んだりして食べることをおすすめします。ただ、皮は消化しにくい部分でもあるため、細かく刻んでから調理すると良いでしょう。
おでんの大根のように、大きめにカットして調理する場合、皮がついていると味がしみ込みにくくなります。料理に合わせて、皮ごと調理するかどうか判断してくださいね。
葉は油で加熱して食べる
大根の葉に多く含まれるβ-カロテンは、油で炒めることで吸収率がアップします。油を入れ過ぎると脂質の過剰摂取につながるおそれがあるため、炒め油の量には注意しましょう。
大根の葉の独特な苦みや青臭さが苦手な人は、じゃこやゴマなど風味のある食材と一緒に炒めるのがおすすめです。後ほどレシピを紹介するので、記事の後半もぜひチェックしてくださいね。
加熱せずに生のまま食べる
大根を加熱せずに生のまま食べることで、大根に含まれる栄養素の損失を抑えられるメリットがあります。ビタミンCとイソチオシアネートは水溶性なので、加熱するかしないかによって、摂取できる量が大きく変わります。
おすすめの調理法は、大根おろしです。大根をおろすことによって、壊れた細胞から消化酵素が流れ出て、吸収量のアップにつながります。おろしたときに出た水分にも栄養素が豊富に含まれているので、大根と一緒になるべく摂取してくださいね。
大根を細切りしたり薄切りにしたりして、食感の違いを楽しみながら生のまま食べるのもおすすめですよ。
干して食べる
とにかく栄養素をたっぷり摂取したい人におすすめなのが、干した大根を使った料理です。乾燥させることで水分量が少なくなり、その分栄養と旨みが凝縮されます。100g当たりの栄養価は、乾燥させていない大根よりも高くなります。
切り干し大根は水に浸し、戻してから使いますが、そのとき戻し汁に栄養が流れ出てしまいます。この戻し汁にはビタミンやミネラルが豊富に含まれているので、煮物やみそ汁などに使うなどして、大根の栄養素を無駄なく摂取してくださいね。
大根のおすすめの食べ方!レシピを4つ紹介
干す・生のまま・葉を油で炒める・皮ごとなど、大根の栄養素を効率よく摂取できる方法を用いた大根料理を、4つ紹介します。
- 切り干し大根
- 納豆の大根おろし添え
- 大根の葉のふりかけ
- 大根のナムル
大根を使った料理のレパートリーに悩んでいる人は、ぜひ参考にしてくださいね。
切り干し大根
切り干し大根・にんじん・油揚げを使う基本の切り干し大根に飽きてきた人は、具材をアレンジして作ってみましょう。
おすすめは、じゃがいもときぬさやを使った切り干し大根です。じゃがいもを入れることでボリュームがアップし、きぬさやのシャキシャキ感がアクセントになりますよ。
材料(3〜4人前)
- 切り干し大根:30g
- じゃがいも:2個
- にんじん:1/2本
- 油揚げ:1枚
- きぬさや:5~10本
- 水:300ml
- 本だし:小さじ2
- 砂糖:小さじ2
- みりん:小さじ2
- しょうゆ:大さじ2
作り方
- 切り干し大根を水で戻す
- にんじんと油揚げは細めの千切りにカットする
- じゃがいもはひと口サイズにカットする
- きぬさやの筋を取る
- 鍋にサラダ油を熱し、切り干し大根・にんじん・じゃがいもを入れてサッと炒める
- 切り干し大根の水分が飛んだら、油揚げを入れる
- 調味料を全て加える
- 竹串がじゃがいもにスッと通るくらいやわらかくなるまで煮詰める
- だし汁が1/3まで減ったらきぬさやを入れる
- 30秒火を通して完成
じゃがいもやきぬさや以外にも、れんこん・小松菜・ごぼうなどの野菜を入れてつくるのもおすすめです。
納豆の大根おろし添え
「納豆をさっぱり食べたい」「大根に含まれる栄誉素を余すことなく摂取したい」という人におすすめなのが、納豆の大根おろし添えです。大根を生のまま食べることで、熱に弱いビタミンCとイソチオシアネートをしっかり摂取することができますよ。
納豆と大根おろしだけで食べても良いですし、ご飯にのせて食べるのもおすすめです。
材料(2人前)
- 納豆(タレ付き):1パック
- 大根:100g
- きざみねぎ:適量
大根の葉のふりかけ
葉のついた大根が手に入ったら、ふりかけを作ってみましょう。辛いものが苦手な人は、唐辛子抜きで作ってみてください。ちりめんじゃこの代わりに桜エビを使うのもおすすめです。
冷蔵庫で約1ヶ月保存できます。
材料(2人前)
- 大根の葉:1本分
- 赤唐辛子の輪切り:適量
- ちりめんじゃこ:15g
- 砂糖:大さじ1
- しょうゆ:大さじ2
- 白炒りごま:小さじ2
- ごま油:大さじ2
作り方
- 大根の葉を洗う
- 大根の葉を細かく刻む
- フライパンにごま油を入れて熱する
- フライパンに大根の葉と赤唐辛子の輪切りを入れて中火で炒める
- 大根の葉がしんなりしてきたら、ちりめんじゃこ・砂糖・しょうゆを入れて炒める
- 汁気がなくなってきたら、白炒りごまを入れる
- サッと炒めて完成
大根のナムル
大根を生で食べる料理は、サラダだけではありません。
大根のナムルは、カットして調味料を和えるだけの簡単料理です。調味料を加える前に塩を加え水を切っておくことで、調味料を入れた後に水分が出て味が薄くなるのを防ぐことができます。
ごはんのお供として食べるのはもちろんのこと、酒のつまみにもぴったりです。
材料(2人前)
- 大根:1/4本
- 大根の葉:大根1本分
- 塩(大根の塩もみ用):小さじ1
- 塩(葉の塩もみ用):小さじ1/2
- 酢小さじ1…☆
- すり白ゴマ:大さじ1…☆
- 白ごま:小さじ1…☆
- きざみねぎ:適量…☆
- おろしにんにく:少々…☆
- ごま油:小さじ2…☆
作り方
- 大根と大根の葉をきれいに洗う
- 皮のついたまま、大根を1~1.5cm角に切る
- ボウルにカットした大根と塩を入れて10分ほど放置する
- 大根から水分が出てきたら、水気をきる
- 大根の葉を細かく刻み、ボウルに大根の葉と塩を入れて10分ほど放置する
- 大根の葉から水分が出てきたら、水気をきる
- 少し大きめのボウルを用意し、大根と☆の調味料を混ぜ合わせる
- 同じボウルに大根の葉を入れ、もう一度混ぜ合わせたら完成
1時間ほどおくと、さらに味が染みて美味しくなりますよ。
おいしい大根の見分け方
大根は、表面や葉の状態でおいしいかどうか見分けることができます。目で見て確認するだけでなく、実際に手で持って重量もチェックしましょう。ずっしりと重たい大根は、水分がたっぷり含まれていてみずみずしい証拠ですよ。
おいしい大根の特徴
- ヒビが入っていない
- どっしりしている
- 葉が鮮やかな緑色
- 表面にハリがある
- 表面が滑らでツヤがある
- ヒゲ根が少ない
- ヒゲ根の穴が小さく、一直線に並んでいる
- 根本の部分が黒ずんでいない
- 先端部分が丸い
購入してきた大根は新聞紙に包み、立てて保存するのが鮮度を保つコツです。保存する前に、葉と根を切り離しておくことで、葉から水分が蒸発するのを防ぐことができますよ。
まとめ|大根の栄養をしっかり摂取したいなら生のまま食べるのがおすすめ
大根は水分が多くクセのない味なので、「栄養がない」と思われがちです。しかし、ビタミンCやβカロテンなどの栄養素が、白い部分だけでなく葉にも豊富に含まれています。
調理法によって栄養素の摂取量に違いが出る点には、注意が必要です。大根の栄養素を無駄なく摂取したいなら、皮ごと調理する・生のまま食べる・葉は油で炒めるなどして調理しましょう。
大根を使ったレシピに悩んだら、今回紹介したレシピをぜひ参考にしてください。