二級建築士・整理収納アドバイザー1級資格保有。大学院まで建築学を専攻し、ハウスメーカーでの勤務を経てWebライターとして独立。建築、不動産、インテリアなど住まいに関する記事を執筆しています。ストレス解消法は家中の整理整頓と掃除をすること。おうち時間を快適に楽しく過ごすためのコンテンツをお届けします。
和室の床の間を持て余しており、空間を有効活用するためにリフォームしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。床の間は伝統的な和室によく設けられていますが、ライフスタイルに合わずうまく活用できないと悩む方も少なくありません。
そこで本記事では、床の間のリフォーム事例や具体的な活用方法をご紹介します。床の間をリフォームする際の注意点や費用の相場も詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
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目次
床の間をどのようにリフォームする?活用例を紹介
床の間をリフォームする場合、主に以下の3つの活用例があります。
- 和モダンインテリアにリフォーム
- 収納へリフォーム
- 床の間を撤去して洋室へリフォーム
それぞれ詳しく見ていきましょう。
床の間を和モダンインテリアにリフォーム
床の間の人気の活用例のひとつに、おしゃれな和モダンのインテリアスペースにリフォームする方法が挙げられます。和モダンとは、伝統的な和の要素と現代的でスタイリッシュな要素を組み合わせたデザインです。
築年数の古い家にある床の間の多くは、塗り壁や木の床板などの内装で仕上げられています。掛け軸や花瓶などの純和風な物が似合う空間になっており、気軽に飾れる物が見つからずデッドスペースになってしまう家も少なくありません。また、何も置かないと殺風景になりやすいです。
一方、クロスに貼り替えたり床をフローリングに変えて和モダンにすれば、洋風のアイテムも似合うため飾りつけのバリエーションが広がります。例えば、絵画などのアートや置き時計、観葉植物などをレイアウトしても違和感がありません。また、間接照明を設置すれば何も置かなくてもおしゃれな雰囲気を演出できます。
床の間のスペースをそのまま活かすため、壁を撤去したり床を広げたりする必要がなく安価にリフォームできる点も人気の理由です。
床の間を収納へリフォーム
床の間スペースのよくある活用例は、収納へリフォームするというものです。
一般的な床の間は約90cm×90cmの正方形もしくは約180cm×90cmの長方形に作られており、収納として利用するのにちょうど良い大きさです。シンプルな収納であれば壁紙や床を改装して扉をつけるだけで済み、コストを抑えつつ空間を有効活用できます。
おしゃれな和室にしたい方がよく設置するのは、吊り収納です。吊り収納とは、天井から吊り下げたように見える床から離れた収納を指します。
和室では座って過ごすことが多いため、低い位置の空間がひらけた吊り収納にすることで部屋が広く感じられる効果があります。吊り収納の下に地窓(床面に近い位置に設置する窓)を設ければ、日の光が差し込み明るくおしゃれな和室になるでしょう。
床の間を撤去して洋室へリフォーム
間取りの変更も含める大がかりなリフォームをする場合は、床の間を丸ごと撤去する選択肢もあります。床の間は畳0.5枚〜1枚分ほどのスペースがあり、撤去すればその分だけ洋室や廊下などを広げることも可能です。近年は、和室そのものを撤去して洋室へ変更し、代わりに部屋の一角に置き畳を設置する事例も増えています。
床の間はほこりがたまりやすく掃除の手間もかかるため、使わないまま残すより思い切ってなくしてしまうことも検討してみてください。
床の間のおしゃれなリフォーム事例5選
ここからは、床の間をおしゃれにリフォームした実際の事例をご紹介します。活用方法やインテリアデザインが大きく異なる事例を集めたので、ぜひ参考にしてください。
【事例1】間接照明で床の間をおしゃれにリフォーム
※いずれもリフォーム後の写真
築年数 | 20年 |
出典:ナサホーム
一般的な和室を丸ごとリフォームし、現代的でおしゃれな空間に変えた事例です。床の間風のインテリアスペースを設けており、間接照明で幻想的に照らしています。落ち着いた色の壁紙を選び、光沢のある素材でできた棚を取りつけたことで高級感を演出している点もポイントです。
近年は畳のバリエーションも豊富になっており、この家のようにカラー畳を活用すれば個性的なインテリアコーディネートができます。洗練されたおしゃれな和室にしたい方はぜひ参考にしてみてください。
【事例2】床の間をおしゃれな吊り収納へリフォーム
※いずれもリフォーム後の写真
築年数 | 32年 |
出典:ナサホーム
床の間の代わりに吊り収納を設置し、おしゃれな和室へリフォームした事例です。吊り収納の下には、窓から外を見るのが好きな猫のために専用スペースが設けられています。吊り収納と隣の押入れの扉をホワイトで統一し、清潔感がある明るい和室にまとめている点がポイントです。
吊り収納の下端(したば:一番下のラインのこと)の高さは、この家のように比較的自由に決められます。何を収納したいかや、吊り収納の下をどのように活用したいかを考えて決めましょう。なお、高さのイメージは図面や数字だけではわかりにくいため、メジャーで測ったりショールームで実物を見たりして確認することをおすすめします。
【事例3】床の間を押入れへリフォーム
出典:アートリフォーム
床の間を押入れにリフォームした事例です。間取りは大きく変更していませんが、デッドスペースになりつつあった床の間に収納スペースをスライドして設置したことで、スッキリ使いやすい和室になっています。不要になった元の押入れスペースは縮小し、壁のラインをそろえて通路を通りやすくしている点も注目したいポイントです。
押入れの扉は天井まで届く縦長タイプを選んでいるため、数字上の天井高さよりも空間が広く感じられるでしょう。また、リフォーム前の床の間は奥まっていてやや暗いイメージでしたが、明るい色目の内装にコーディネートしたことでおしゃれな和モダンスタイルに生まれ変わっています。
【事例4】床の間を仏壇スペースへリフォーム
築年数 | 70年 |
出典:住友不動産のリフォーム
戦時中に建てられた築70年の歴史ある家のリフォーム事例です。趣のある良質な柱や梁は残しつつ、現代のライフスタイルに合ったおしゃれな家に作り変えています。
和室には、床の間の代わりに仏壇を置く専用のスペースが設けられました。立派な仏壇を中心に置いたことで、格式の高い印象を与えています。また、リフォーム前の和室の壁は緑がかった土壁になっていましたが、木目とのコントラストが強調される真っ白な壁に変えており、モダンでおしゃれな雰囲気がプラスされた点もポイントです。
仏壇は大きなスペースを占めるため、置き場所に困る方も少なくありません。床の間を持て余している場合は、この家のように仏壇用のスペースに転用することを検討してみてください。
【事例5】床の間を撤去しLDKを広げたリフォーム
築年数 | 40年以上 |
出典:アートリフォーム
床の間を撤去したうえで、和室から畳コーナーに作り変えたリフォーム事例です。床の間スペースの分だけLDKを広げたため、大きな壁面収納付きのテレビボードが設置できるようになりました。
独立した和室は不要なものの、畳が持つ独特の魅力ある空間を作りたいという方は、ぜひこの家のように畳コーナーを取り入れてみてください。リラックスタイムに寝転んだり、洗濯物をたたむためのスペースとして使ったりと、さまざまな用途に活用できます。畳コーナーに使用する畳は、LDKのインテリアと違和感なく調和しやすい琉球畳(半畳サイズで縁がない畳)がおすすめです。
床の間はリフォームして問題ない?床の間の意味と注意点
床の間は気軽に触れてはいけない特別な場所として扱われることも多いため、そもそもリフォームで撤去したり収納などの別の用途に変えても問題ないかどうかが気になる方もいるのではないでしょうか。
そこで、本章では床の間の意味やリフォームするうえで注意すべき点について解説します。
床の間は本来品位を示す場所
床の間の正確な起源は明らかになっていませんが、古くは室町時代までさかのぼるという説があります。初めは仏具や仏画などを置く場所として設けられ、人々はそれを眺めながら仏教を学んでいたといわれています。
現在に近い形になったのは、桃山時代から江戸時代ごろにかけてのことです。立派に飾りつけられた空間を作れるという事実が財力や教養の証明になるとして、品位を示すために大名たちからよく見える将軍の背後に設けられたものが床の間です。
のちに庶民の家の和室にも床の間を設けることが当たり前になり、床間のある和室が多く作られるようになりました。目上の人が床の間を背にして座ったり、床の間をきれいに飾りつけたりすることがマナーとされているのは、こういった背景があるためです。
宗教上の問題で取り壊してはいけないという明確な決まりはなく、多くの住宅で改修したり撤去されたりしています。ただし、仏画などを置いていたことから神様や仏様が降り立つ神聖な場所と考える方が多いのも事実です。
床の間のタブー(やってはいけないこと)
基本的に、床の間を傷つけたり汚したりする行為はタブーとされています。例えば、以下のようなことはやってはいけません。
- 床の間に足を踏み入れたり座ったりする
- 床が傷つくような重いものを置いたり引きずったりする
- 物置代わりにして汚してしまう
上記の行為は神聖な場所に対して失礼にあたるというマナーの問題だけではなく、物理的な問題もあります。床の間は床板を設置して一段高くなるように作られていますが、人が乗ったり重い物を置いたりすることを想定していません。そのため、床板が耐えきれずに割れる恐れがあります。特に昔は床の間に高級な材料を使うことも多かったため、タブーとされるようになりました。
なお、床板の耐久性に気をつければ、床の間に仏壇を置くことは問題ありません。上座にあたる床の間に置くことで、先祖に敬意を示すことになるためです。反対に、床の間の正面にあたる位置は下座になってしまうため、仏壇を置くのはタブーとされます。
床の間をリフォームする際の注意点
ここまでご紹介した床の間の意味やタブーを踏まえて、リフォームする際は以下の点に注意しましょう。
- 家族や親族に床の間をリフォームすることを伝える
- 仏壇がある場合は配置計画を考えておく
- リフォーム会社に事前に現場を見てもらう
宗教に対する考え方や感じ方は人それぞれのため、なかには床の間をなくしたり別の用途に転用したりすることに抵抗を感じる方もいます。同居している家族だけではなく、家を訪れる可能性がある親族などにも念のため伝えておくと、リフォーム後にトラブルになるリスクを避けられるでしょう。
また、仏壇を設置したり収納を設置したりする場合は、床の間スペースの耐久性を確認する必要があります。家の構造によっては床の間の柱や壁を撤去できない可能性もあるため、事前にリフォーム会社に依頼して現場を見てもらい、問題ないかどうかを確認しておきましょう。
床の間のリフォーム費用の相場
具体的な床の間のリフォーム計画を立てるには、費用の相場を把握しておくことが大切です。
- 床の間を和モダンインテリアへリフォームする費用
- 床の間を収納へリフォームする費用
- 床の間を撤去して洋室へリフォームする費用
ここでは、上記の3つの活用例に分けてリフォーム費用の相場をご紹介します。
床の間を和モダンインテリアへリフォームする費用
床の間スペースを活かしつつ和モダンインテリアへリフォームする場合、費用の相場は以下のとおりです。
内装を変更する費用 | 【床】
【壁(和室全体)】
【天井(和室全体)】
|
造作の棚や照明を設置する費用 |
(壁の下地補強などが必要な場合は+数万円) |
畳を張り替える費用 |
※6畳の和室の場合 |
建具を取り替える費用 |
|
合計 | 20万円〜95万円程度 |
リフォーム費用は、床の間に合わせて和室のどの範囲まで改修するかによって大きく変わります。
床の間スペースのみを改修して造作棚や照明を追加する程度であれば、20万円〜25万円程度でリフォームできます。なお、内装は部分的に変えると浮いてしまうため、壁紙や天井材は基本的に和室全面を貼り替えることを想定しておきましょう。
畳や建具も取り替える場合は、45万円〜95万円ほどが相場です。特に、塗り壁や伝統的な天井の張り方などの細部にこだわりたい方は、予算を多めに準備しておきましょう。
床の間を収納へリフォームする費用
床の間を押入れや吊り収納などへリフォームする場合の費用の相場は、以下のとおりです。
床の間を撤去する費用 |
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収納を設置する費用 |
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内装を変更する費用 | 【床】
【壁(和室全体)】
【天井(和室全体)】
|
畳を張り替える費用 |
※6畳の和室の場合 |
建具を取り替える費用 |
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合計 | 5万円〜110万円程度 |
床の間の代わりにどのような収納をつけるかによって、リフォーム費用が変わります。床の間のスペースをそのまま活かすのであれば、撤去費用はほとんどかかりません。内装の改修も不要で単純に収納を増やしたい場合は、10万円以内でおさめることも可能です。一般的には、20万円〜50万円ほどを想定しておくと良いでしょう。和室を丸ごとリフォームする場合は、45万円〜110万円ほどが相場です。
床の間を撤去して洋室へリフォームする費用
床の間を撤去し、間取りを一部変更する場合のリフォーム費用は以下を参考にしてください。
床の間を撤去する費用 |
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内装を変更する費用 | 【壁(和室スペース分)】
【天井(和室スペース分)】
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床材を変更する費用 |
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建具を取り替える費用 |
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壁を撤去・追加する費用 |
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合計 | 50万円〜130万円程度 |
和室から洋室へ丸ごと変える場合は、一般的に50万円〜60万円ほどになるケースが多いです。なお、床の張り替え範囲を少なくしても、費用が安くなるとは限りません。フローリングは細長い材料であり、施工範囲が狭すぎると加工に手間がかかり作業費が高くなることがあるためです。まとまった面積をリフォームした方が割安になるケースもあるため、正確な費用はリフォーム会社に見積もりを依頼して確認しましょう。
床の間のリフォームに関するよくある質問
最後に、床の間のリフォームに関するよくある質問をご紹介します。
- 床の間はDIYでリフォームできる?
- 床の間がないおしゃれな和室へリフォームするポイントは?
- 床の間をリフォームする際の風水上のポイントは?
床の間のリフォーム計画で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
Q1|床の間はDIYでリフォームできる?
壁紙や床を変更するだけの簡単なリフォームであればDIYでも可能ですが、床の間のリフォームは基本的に建築のプロに依頼することをおすすめします。床の間の周辺に構造上重要な柱や壁があった場合、誤って手を加えると大きなトラブルに発展する可能性があるためです。
また、床の間の垂れ壁(天井から垂れ下がった壁)を撤去する際に破片が落ちて当たったり、仏壇を移動する際に倒してしまったりする恐れもあり、DIYに慣れていない方はやめた方が良いでしょう。
さらに、伝統的な和室は良質な無垢材が使われていたり、細部が手作業で美しく仕上げられたりしていることも多いため、リフォームで手を加える際も高い職人技術が求められます。おしゃれで美しい和室にするためにも、プロの力を借りましょう。
Q2|床の間がないおしゃれな和室へリフォームするポイントは?
床の間を撤去しておしゃれな現代風の和室にリフォームしたい場合は、以下のポイントを意識しましょう。
- 畳の種類にこだわる
- 照明にこだわる(間接照明や和風ペンダントライトを採用するなど)
- 吊り収納を設置し、下の空間をおしゃれなディスプレイスペースにする
- 壁紙・収納・畳・窓枠の色をセットでコーディネートする(同系色ならやわらかく、コントラストをはっきりさせればメリハリのある雰囲気になる)
特に、和室の印象は畳によって大きく左右されます。以下の項目に注目して好みの畳を選んでみてください。
- 一畳サイズにするか、半畳サイズにするか
- 縁つきにするか、縁なしにするか
- 色はどうするか(濃いめ、薄め、カラー畳など)
- 畳の並べ方はどうするか
近年は和モダンによく似合う半畳サイズ・縁なしの畳が人気ですが、和の雰囲気を強めたい場合は一畳サイズや縁あり畳を検討してみるのも良いでしょう。
なお、インテリアの色の感じ方や照明の当たり方はカタログと現物でイメージにギャップが生じやすいため、ショールームで実物を確認してから選ぶことをおすすめします。
Q3|床の間をリフォームする際の風水上のポイントは?
風水上では、床の間を設置する場合に以下のポイントをおさえると良いとされています。
【床の間の方角】
- 東向き(西を背にする)もしくは南・東南向き(北・北西を背にする)にする
- 少なくとも鬼門の方角(北東または南西向き)を避ける
- 仏壇と向かい合わせにしない
【床の間に飾る物】
- 季節に合わせた小物を飾る
- 人形は避ける(気を吸い込んでしまうと考えられているため)
- 電化製品は避ける(気を乱すと考えられているため)
【床の間の維持管理】
- ほこりなどをためずに清潔に保つ
- 床柱は家の主人の象徴とされるため、傷などがあれば早めに補修する
なお、風水の考え方には諸説あり、すべての条件を満たしてリフォームを進めるのは難しいでしょう。迷った場合は、ご自身が気持ちよく過ごせる空間かどうかを考えて判断することをおすすめします。
床の間をおしゃれにリフォームしよう
床の間スペースの活用例としては、主に以下の3つが挙げられます。
- 和モダンにリフォームしてインテリアスペースにする
- 収納を設置する
- 床の間そのものを撤去して隣の部屋を広げるか、丸ごと洋室に変える
リフォーム費用は工事範囲や使用する材料などにより異なりますが、床の間のみの簡単な改修で20万円〜30万円、和室の丸ごとリフォームで40万円〜60万円ほどかかるのが相場です。
床の間は古くから品位を示す特別な場所として扱われてきましたが、ライフスタイルに合わず撤去したり別の用途へ転用したりする事例は増えています。ただし、人によっては神聖な場所に手を加えることに抵抗を感じることもあるため、ご家族やご親族とよく話し合っておくことをおすすめします。
ぜひ本記事を参考にして、床の間をおしゃれにリフォームしてくださいね。
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