海外の雑貨や絵画を中心としたインテリアが大好きな、ライフスタイル系Webライター。定期的に模様替えするのが趣味で、落ち着きを求めるリビングや寝室、使いやすさを重視するキッチンや洗面台など、用途に合わせてインテリアを変えることを意識しています。主婦の立場から、快適な空間を演出できるインテリアを紹介します。
和室の一角にある床の間は、掛け軸や生け花を置くことでゆとりのある空間を演出できるスペースです。
しかし、ライフスタイルの洋風化に伴い「床の間があることで部屋に古風な雰囲気が出てしまう」「使い方が分からずスペースを持て余してしまう」といった悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。
今回は、床の間をデッドスペースとして持て余している人や使い方が分からない人のために、簡単にできる床の間のアレンジ方法を紹介します。「床の間には宗教的な意味合いはあるのか」といった疑問も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
床の間とは?意味や使い方について
床の間とは、昔ながらの家には必ずといっていいほどある、和室の一角につくられたスペースのことです。日本らしいゆったりとした雰囲気を演出する効果がありますが、そもそも何のために設けられているのでしょうか。
- 床の間はなんのためにあるの?
- 床の間の構造や大きさについて
床の間のアレンジ方法を紹介する前に、床の間の役割や構造について紹介します。
床の間はなんのためにあるの?
床の間には、そのデザインや構造によって生まれる視覚的効果だけでなく、身分を明らかにしたり来客をもてなしたりする意味があります。
床の間の起源には諸説ありますが、室町時代、身分を表す手段として家の中に床の間を取り入れたといわれています。最も身分の高い人が一段高い床の間の近くに座ることで、身分の関係をはっきりさせました。
時代とともに、身分を表すよりもお客様をもてなす意味合いが強くなりました。近代以降は、来客があった際は、床の間に一番近い上座に座ってもらうのがマナーとされています。
床の間の構造や大きさについて
床の間は、複数の部位で構成されており、部位の組み合わせによって床の間の種類が分かれます。
床の間の基本的な部位
- 床板:床の間に張る板材
- 床框:床の間を一段高くする際に設ける化粧の横木
- 地板:和室の畳面と同じ高さで敷かれた化粧板
- 床柱:床の間の脇に立つ化粧柱
- 小壁:床の間上部手前の壁
- 落し掛け:小壁の下端に取り付ける横木
床の間の種類
- 本床(ほんどこ):基本的な部位が揃っており、最も格式が高いタイプ
- 踏込み床(ふみこみどこ):床框が省略されているタイプ
- 蹴込床(けこみどこ):段差がないタイプ
- 置き床(おきどこ):移動可能な床板を用いたタイプ
- 壁床(かべとこ):奥行きや段差がないタイプ
床の間の大きさは、一般的に下記の2つがあります。
床の間のサイズ
- 半間(はんげん)幅90×奥行90cm
- 一間(いっけん)幅180×奥行90cm
床の間のサイズは特に決まりがあるわけではないので、部屋の間取りやスペースによっては奥行90㎝以下のものもあります。ただ、奥行60㎝あれば押し入れとしてアレンジするには十分な広さなので、活用の幅も広がるでしょう。
床の間をアレンジするのはタブー?神様は関係あるの?
床の間は身分を明らかにしたり、来客をおもてなししたりするために用いられる様式なので、神聖なイメージがつきやすいです。実際に、地域や宗教によっては「家の中心」といった深い意味合いを持つこともあります。
しかし、現代においては「床の間と神様」の関係性よりも、居住空間としての役割を優先させる傾向のほうが強くなってきています。一般的には、収納スペースとして活用したり、好きなものを飾ったりして自由にアレンジしても問題ないと考えてよいでしょう。
また、和室には仏壇を置く「仏間」が床の間の横に設置してあるケースが多いですが、仏間がない場合は、床の間に仏壇を置いても問題ありません。
宗派によって仏壇の正しい向きは異なりますが、北向きに置いたり下座に置いたりするのは、どの宗派でも失礼に当たる行為といわれています。
仏壇の向き
南向き:曹洞宗・臨済宗
東向き:浄土真宗・浄土宗・天台宗
決まりなし:真言宗・日蓮宗
リフォームを検討している場合は、床の間に仏壇を置く可能性も考慮して床の間の位置や向きを決めましょう。
床の間はアレンジやリフォームしてOK!
床の間は伝統的なイメージが強いがゆえに、決まった形式でしか活用できないと思われがち。その結果、床の間を上手く使いこなせずデッドスペースになっている人もいるでしょう。
床の間は、ライフスタイルに合わせてアレンジやリフォームが可能です。従来の使い方にとらわれない床の間の活用法を3つ紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
- 伝統的な床の間がいらないならリメイクしよう
- 床の間の活用法3つ
それぞれみていきましょう。
伝統的な床の間がいらないならリメイクしよう
和室に床の間があることでデザインや使い勝手に悪い影響が出るようであれば、リメイクしてみませんか。下記のような悩みがある場合は、リメイクすることで課題を解決できます。
床の間の悩み
- 床の間のスペースを持て余している
- 床の間があることで家具の配置が限られる
- 床の間があることで収納スペースが少ない
- 隣接するリビングルームとの相性が悪く床の間が浮いて見える
- 床の間に飾るものが何もない
最近では、お客様をおもてなしするといった格式張った意味合いは薄れてきています。伝統にこだわらず、あなたのライフスタイルに合わせて床の間をアレンジしてみましょう。
床の間の活用法3つ
床の間の使い方に悩んでいる人にぜひ取り入れてほしいのが、以下の3つの活用法です。床の間の奥行きを最大限に活かすことで、デッドスペースだった床の間がお気に入りのスペースに大変身しますよ。
- 飾り
- 収納
- 作業スペース
あなたが抱える床の間の悩みも、きっと解決できるはずです。
飾り
昔ながらの床の間の使い方と同様、飾るスペースにしてみてはいかがでしょうか。ポイントは、代々受け継がれている美術品や骨董品を飾るのではなく、とにかく好きなものを飾り、趣味を楽しむスペースとして活用することです。
後ほど、簡単にできるアレンジ方法とリフォーム業者に依頼するアレンジ方法の2つを紹介します。
収納
床の間があることで、本来あるはずの収納スペースが少なくなっていませんか。また、使い方が分からない床の間は、デッドスペースになりがちです。
思い切って、床の間を収納スペースにアレンジしてみましょう。奥行きが90㎝以下であっても、高さを上手く活用すれば収納スペースを確保できます。
後ほど、収納スペースの作り方を紹介します。
作業スペース
テレワークや在宅ワークが普及している一方で、集中できる作業スペースをつくるのに苦戦している人は多いのではないでしょうか。
半間サイズの床の間でも90×90cmのスペースを確保できるので、パソコンが置けるサイズの机を配置することが可能です。作業机の下にボックスを置いたりラック一体型デスクを置いたりすれば、机周りの余白を余すことなく収納スペースとして活用できます。
あなただけの作業スペースを確保できれば、仕事もはかどるでしょう。
床の間の飾り方!和モダンを演出するアレンジの仕方とは
自分の趣味を楽しむスペースとして床の間を活用する方法を紹介します。飾り方や飾るものを工夫することで、和モダンを演出することも可能です。
- 何を飾るかがポイント!おしゃれな床の間作り方
- リフォームすればおしゃれな和モダンが実現する
具体的なアレンジ方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
何を飾るかがポイント!おしゃれな床の間の作り方
何を飾るかによって、床の間だけでなく和室全体の雰囲気に大きな影響を与えます。
床の間のつくりや雰囲気に合わせて飾りを決めることは、もちろん大切です。しかし、洋の雰囲気が強いリビングと隣接しているのであれば、かっちりとした伝統的な飾りよりも和モダンを演出できる飾りを置くほうがしっくりくるでしょう。
自分の好みや床の間の周りのデザインを加味しながら、飾りを決めてくださいね。
- 掛け軸やタペストリー
- 生け花や造花
- ランプ
和モダンを演出できるおすすめの飾りを3つ紹介します。
掛け軸やタペストリー
床の間と言えば、日本画が描かれた掛け軸が飾られているイメージがありますが、伝統的なスタイルにこだわる必要はありません。古めかしさを排除して和モダンな雰囲気を出したいのであれば、モダンアートや北欧スタイルなどの掛け軸やタペストリーがおすすめです。
飾り方のポイントは、掛け軸やタペストリー以外に壁に何も飾らないことです。壁に2つも3つも飾ると、かえって部屋が狭く感じてしまいます。床の間の奥行きを活かして部屋を広く見せるなら、壁に飾る装飾は一つがベストです。
床の間にお花やランプなどを飾る場合は、掛け軸に被らない高さのものを飾ってくださいね。
また、床の間は常に開放されているので、自然と目に入ります。季節を感じられるようなデザインや色合いのものを選んで飾りましょう。季節ごとに飾りを変えることで新鮮味が生まれ、暮らしの居心地の良さもアップしますよ。
生け花や造花
部屋に花を飾りたいけれど置き場所がなくて困っている人におすすめなのが、床の間に生け花や造花を飾るアレンジ方法です。床の間は全体的に淡い無地の色で統一されていることが多いため、和の花だけでなく洋の花でも相性ピッタリです。
和室を普段からあまり使用していない場合、水換えを忘れて花を枯らしてしまうこともあるでしょう。造花であれば季節ごとに花の種類を変えるだけで済むので、コスパも良いですよ。
ランプ
よりおしゃれに和モダンを演出したいのであれば、ランプを取り入れたアレンジをしてみませんか。特に柔らかい間接照明は、和の雰囲気とも相性抜群です。
照明や窓の位置によっては、奥まっている床の間に光が行き届かないことがあります。飾っている掛け軸や生花を照らせば床の間が明るくなって奥行きがはっきりとするため、部屋全体が広く見えるでしょう。
リフォームすればおしゃれな和モダンが実現する
リフォーム業者に依頼すれば、床の間だけをリメイクすることが可能です。飾り物だけで和モダンを演出するのが難しい場合は、ぜひリフォームを検討してみてください。
- アクセントで壁色を変える
- 飾り棚を設ける
- 窓をつける
- 床柱を設置しない
施工費用などについては後ほど紹介するので、記事の後半も参考にしてください。
アクセントで壁色を変える
和室の壁面とは異なる色に仕上げることでメリハリがつき、奥行きが強調されるメリットがあります。和室の家具や隣接するリビングのデザインに合わせれば、壁色が浮いてしまう心配もありません。
色のある壁掛けやさまざまな種類の花を飾りたい人は、合わせやすいアースカラーを取り入れるといいでしょう。
飾り棚を設ける
床の間の飾り棚には、壁に設置するタイプと据え置きタイプの2種類あります。どちらのタイプも、飾りたいものの定位置が決まることで、床の間がスッキリとまとまって見えるのがポイントです。
しかし、壁に設置するタイプの飾り棚だと、掛け軸やタペストリーが飾れなくなります。あなたがどういったものを床の間に飾りたいのかを基準に、飾り棚を設置するか否か判断してくださいね。
壁に設置するタイプは、ある程度の強度と耐久性が必要なので、リフォーム業者への設置の依頼をおすすめします。
窓をつける
少し高度なリフォームですが、床の間に窓を設置することで部屋全体が明るくなるメリットがあります。特に壁色が暗く窓のない和室にぴったりのリフォームです。
ただ、窓にカーテンを付けると、一気に生活感が出てしまいます。日の入り方を確認したり人の通りが多い道路沿いを避けたりするなどして、窓の向きを決めてくださいね。
床柱を設置しない
和モダンが演出できない原因の一つに、床の間の片方の脇に立つ「床柱」の存在が考えられます。
重圧感があり古風な雰囲気を醸し出している素材であれば、思い切って床柱をなくしてみてはいかがですか。部屋全体がすっきりとした印象に変わるはずです。
もしも床柱を除くことが難しいようであれば、代わりに違う質感の床柱を用意してもらいましょう。おすすめは、絞丸太(しぼりまるた)と磨丸太(みがきまるた)です。軽い印象を与え、飾り物を選ばないのが特徴です。
床の間が必要ない人は収納スペースとして活用しよう!
床の間を使っていない人や家の収納容量が足りない場合は、床の間を収納スペースとして活用しましょう。誰でも簡単にできる方法と、リフォーム業者に依頼する方法の2つを紹介します。
- デッドスペースを有効活用!収納スペースは簡単に作れる
- 収納スペースのアイデア3つ
- 床の間をクローゼットにリフォームしよう
床の間がデッドスペースになっている人は必見です。
デッドスペースを有効活用!収納スペースは簡単に作れる
床の間を収納場所として有効活用すれば、もともと少なかった収納スペースを増やすことができ、部屋もすっきりと片付けられます。
床の間は、一般的に半間90×90cmまたは一間180×90cmサイズが多いため、収納スペースとして活用するには十分な広さです。高さもあるため、さまざまな使い方ができるのも床の間の魅力です。
ただ、床の間が埋まってしまうことで、部屋が狭く感じてしまうデメリットが発生します。収納ボックスや目隠しカーテンの色を明るめにすることで、部屋の窮屈感を減少できるでしょう。
収納スペースのアイデア3つ
簡単につくれる収納スペースのアイデアを3つ紹介します。
- ボックスを設置し、汎用性の高い収納として活用する
- 洋服を収納するスペースとして活用する
- 本棚として活用する
和室のおしゃれを保ちつつ床の間のスペースを有効活用できるので、ぜひ参考にしてくださいね。
ボックスを設置し、汎用性の高い収納として活用する
床の間はある程度の広さがあるので、洋服やおもちゃなどを収納するボックスや棚を置くことが可能です。
和室がリビングと隣接している場合は、生活によく使うものを収納するといいでしょう。必要なときにすぐに取り出せるので便利です。
リビングと和室が続き間でないのであれば、滅多に取り出さないけれど保管しておきたい思い出のアルバムや着物などを収納するスペースとして活用してもいいですね。
また、幅に余裕のない床の間であれば、上に重ねて収納スペースを増設できるタイプの棚やボックスを用意しましょう。高さを利用することで、場所を取らずに収納スペースを増やせます。
ボックスは、引き出しタイプでなおかつ中が透けないデザインがおすすめです。収納しているものが見えないので、部屋の景観を損なうことなく床の間を最大限に活用できます。
洋服を収納するスペースとして活用する
洋服の収納スペースが少ない家におすすめなのが、つっぱり棒を使ったり床の間をクローゼットに変身したりして、洋服の収納場所を増やすアレンジです。
床の間の上部につっぱり棒を設置すれば、服を数十枚かけられます。その下にボックスを置くことで、靴下やハンカチなどの小物も一緒にまとめることも可能です。もう一つつっぱり棒を設置してそこにカーテンをかければ、目隠しにもなります。部屋の雰囲気に合わせてカーテンの色やデザインを選べば、和室を和モダンに仕上げることもできますよ。
より大容量の洋服収納にしたいなら、専門業者に依頼して床の間をクローゼットや押入れに作り変えてしまうのもおすすめです。何を収納したいかによってリフォーム時の寸法が変わってくるので、ある程度収納するものを決めてから業者に依頼しましょう。
本棚として活用しよう
本が日に日に増えて収納場所に困っている人は、床の間に本棚を設置しましょう。床の間であれば、背の高い本棚を置いて見せる収納ができます。
リビングやキッチンから近い距離に和室があれば、料理本などといった頻繁に使用する本を置くのもいいですね。
置き床が床の間の代わりになる!インテリアとしての魅力あり
移動式の置き床は、床の間の代わりになります。花やお気に入りのものを飾るのはもちろん、お正月や桃の節句などの節目だけに取り出して雛人形や兜を飾るのもいいでしょう。
自分の気分によって和室をアレンジできるので、インテリアの一部として活用できるメリットがあります。
また、背景の壁を利用して掛け軸やタペストリーを飾れば、一般的な床の間と同じような使い方が可能です。床の間と同様、できるだけ上座に設置してくださいね。
床の間をアレンジするならDIY?業者に依頼?
床の間にボックスを置いたりつっぱり棒をセッティングしたりする場合は、自分たちで簡単にできるでしょう。DIYが得意であれば、小さな棚を設置してみてもいいですね。
ただ、アレンジ方法によってはリフォーム業者に依頼したほうが良い場合もあります。これからリフォームを検討している人は、ぜひ参考にしてください。
- 飾り棚やクローゼットを設置する場合は業者に依頼しよう
- リフォーム業者に頼んでリフォームする場合の費用
上記を順に紹介します。
飾り棚やクローゼットを設置する場合は業者に依頼しよう
床の間をアレンジする際、DIYだと壁や家の躯体を傷つけてしまうことがあります。飾り棚やクローゼットを設置したい場合は、リフォーム業者に依頼しましょう。
機能性だけでなく続き間のリビングとの統一感も重視したい人は、プロの業者に部屋全体を見てもらい、デザインを決めていくといいでしょう。色味や素材にこだわれば、おしゃれな和モダンを演出することもできます。
リフォーム業者に頼んでリフォームする場合の費用
床の間をリフォームする場合、相場は以下の通りです。
リフォーム費用
- 床の間だけをリフォーム:5万円~
- 床の間をワークススペースにリフォームする:10万円~
- 床の間をクローゼット収納にする:10〜50万円
- 床の間を和モダンにリフォーム:20万円〜
床の間をクローゼットや押し入れにリフォームする際、ただ扉を付けるだけなのか、中に棚やハンガーパイプを付けるのかといった違いで費用が変わります。
また、床の間を和モダンにリフォームする場合、和室にも手を加えたり壁色を変えたりすると少しずつ費用は高くなります。
まずは、管理規約上床の間のリフォームができるのかどうか確認し、できない場合は棚やつっぱり棒を活用して床の間をアレンジしてみましょう。
まとめ|床の間は自由にアレンジしてOK
床の間は身分をはっきりさせたり、お客様をおもてなししたりするために使われてきましたが、最近ではより柔軟な考え方が浸透してきています。
使い方が分からず床の間を持て余していた人は、和に囚われずに自分の好きなものを飾ってみるところから挑戦してみてください。収納スペースや作業スペースとして有効的に活用するのもおすすめです。
床の間は特に宗教的な意味合いはないので、配置と向きだけに気をつけてアレンジしてみてくださいね。
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