宅地建物取引士、FP2級保有 不動産・建設会社の土地有効活用のコンサルティング営業を6年担当。現在は不動産や建設業界の知見を活かした不動産や金融ジャンルのライターとして活動しています。
「経年劣化による外壁塗装で火災保険は適用されるの?」「火災保険を利用する際の注意点は?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、経年劣化による外壁塗装の火災保険について
- 火災保険の概要
- 外壁塗装で火災保険が適用される要件
- 外壁塗装に火災保険を利用する際の注意点
- 外壁塗装に火災保険を利用する際のポイント
- 外壁塗装にかかる費用の目安
を紹介します。
目次
火災保険とはどんな保険?
火災保険とは、損害保険の一種で火災や風災などの災害による損害を補償する保険のことです。
火災保険にはさまざまな種類や対象となる災害がありますが、今回は外壁塗装に関わる保険について、1つずつ解説していきます。
火災保険の種類
火災保険の種類は、以下の6つです。
- 住宅火災保険
- 住宅総合保険
- オールリスクタイプ
- 店舗総合保険
- 団地保険
- 特約火災保険
ご自身にとってどのような補償が必要かを判断して、どの火災保険に加入するか選ぶようにしましょう。
住宅火災保険
1つ目は、住宅火災保険です。
住宅火災保険は、一般的な自然災害が補償対象となっている火災保険です。
外壁塗装工事の際には、火災や水災、落雷、風災、雹災などの自然災害に対する補償として利用されることがあります。
住宅総合保険
2つ目は、住宅総合保険です。
住宅総合保険は、住宅火災保険に自然災害以外も補償される火災保険です。
具体的には、盗難やいたずら、漏水、不注意による破損などが挙げられます。
オールリスクタイプ
3つ目は、オールリスクタイプです。
オールリスクタイプは、住宅総合保険よりもさらに補償範囲を広げた火災保険です。
具体的には、暴行や騒じょうによる破壊や損壊などが挙げられます。
オールリスクタイプの火災保険では、工事規模に関わらず保険金が支払われるタイプなど、加入者のニーズに合わせて補償範囲を設定できるのが特徴です。
店舗総合保険
4つ目は、店舗総合保険です。
店舗総合保険は、住宅総合保険と同様に自然災害に加えて盗難やいたずら、漏水、不注意による破損などが補償される火災保険です。
住宅総合保険と異なるのは、デモなどで店を開けられなかった場合や、店舗設備の損害が生じた場合も補償対象となります。
団地保険
5つ目は、団地保険です。
団地保険は、賃借人も含めたマンションの入居者向けに開発された火災保険です。
住宅総合保険と同様の補償範囲に、多くの場合一戸建てにはない借家人賠償責任保険や個人賠償責任保険が加えられます。
借家人賠償責任保険とは、事故などによって入居している部屋に損害を出してしまった時に大家さんに対する損害を補償する保険です。
また、個人賠償責任保険とは、本人または家族が誤って他人にけがをさせたり、他人の家具・家財を壊した時に補償される保険です。
特約火災保険
6つ目は、特約火災保険です。
特約火災保険とは、住宅金融支援機構や勤労者退職金共済機構などで融資を受ける人が利用できる火災保険です。
原則、上記の融資を受ける際には加入が義務付けられており、火災や落雷、風災などの自然災害に加え、盗難や騒じょうなどの被害にも対応しています。
ただし、特約火災保険は、家財が補償の対象外となるため、注意が必要です。
火災保険の対象となる災害
火災保険は、主に火災による被害を補償する損害保険ですが、火災以外の災害も対象となっていることがほとんどです。
具体的には、落雷や風災、水災、雪災、水漏れ、雹災などが挙げられます。
- 落雷:建物に直撃したことによって引き起こされる損傷や、落雷によって発生した火災など
- 風災:強風や竜巻、台風によって建物に損傷が生じた場合や、窓ガラスの破損など
- 水災:洪水や地下水の浸入、土砂崩れによる被害など
- 雪災:雪や氷によって引き起こされた損傷や倒壊、屋根の雪崩による被害など
- 水漏れ:パイプ管の破裂や水道設備のトラブルによる水漏れなど
- 雹災(ひょうさい):雹による屋根や外壁の破損、窓ガラスの破損など
これらの災害によって生じた建物や家財の損害は、火災保険によって補償されます。
ただし、具体的な補償内容や条件は保険契約によって異なる場合がありますので、各保険会社の契約内容をしっかりと確認しましょう。
火災保険の申請手順
外壁塗装で火災保険を利用する際には、以下の申請手順を行う必要があります。
- 外壁塗装業者に修理の見積りを依頼
- 保険会社に必要書類を提出
- 鑑定人による現地調査
- 保険金の受け取り
それぞれ詳しく解説します。
外壁塗装業者に修理の見積りを依頼
まずは、外壁塗装業者に修理の見積りを依頼しましょう。
火災保険を利用するには、修理の金額が免責金額を上回る必要があります。
免責金額を下回る場合は、自己負担で修理する必要がある点には、注意が必要です。
外壁塗装業者に損害状況の調査とともに見積もりを依頼すると、被害を受けた箇所の写真撮影や現地の調査に入ることになります。
修理の適正価格を知るためにも、複数社に見積りを依頼するのがおすすめです。
見積りを依頼する際には、火災保険を利用する旨伝えておくと、手続きがスムーズに進むでしょう。
保険会社に必要書類を提出
複数の外壁塗装業者に見積もりを依頼し、条件に納得できる業者を選んだ後は、保険会社に連絡して申請の手続きを行いましょう。
必要な書類は保険会社の指示に従って提出します。
ただし、各保険会社ごとに必要な書類は異なるため、提出する際に確認しましょう。
また、外壁塗装業者が必要な書類を作成してくれるケースもあります。
補修工事に関する書類は、外壁塗装業者に連絡すると追加で入手できることが多いですが、火災保険の請求は契約者本人が行なう必要があります。
外壁塗装業者は直接保険会社に書類を提出することはできないため、注意が必要です。
鑑定人による現地調査
必要書類を保険会社に提出した後は、鑑定人の調査によって保険金の受給可否が判断されます。
契約者が保険金請求を行うと、保険会社は鑑定人を派遣し、損害を受けた箇所の鑑定を行います。
鑑定人は、損害額の鑑定や事故の状況調査などを専門とする専門家のことです。
鑑定人は保険会社から派遣されますが、中立の立場で公正な鑑定を行うため、保険会社の社員ではないことがほとんどです。
保険金の受け取り
鑑定人の調査が終了すると、火災保険の利用可否や受け取れる保険金額などが決定します。
受給が承認された場合、保険金は通常30日以内に支払われることが多いです。
ただし、鑑定人の調査結果によっては申請が却下されることもあります。
申請が却下されると保険金は支払われません。
特に、悪質な業者に申請を依頼し、誤った書類や写真を提出してしまった場合は、却下される可能性が高いため注意しましょう。
保険会社に提出する書類や写真は、契約違反とならないためにも正確な内容である必要があります。
また、保険金が入金されてから工事を開始するケースが一般的ですが、工事の内容や依頼のタイミングによっては、工事完了後に振り込まれるケースもあります。
このような場合は、依頼者が一時的に工事費用を負担する必要があるため、事前に修繕費を用意しておくと安心です。
経年劣化による外壁塗装は火災保険が適用されない
外壁塗装や補修に関して、火災保険が適用されるのは、災害によって外壁が破壊されたり剥がれたりし、補修が必要と認められた場合であるため、経年劣化は対象外です。
前提として、火災保険を利用するためには、先述した災害に該当する必要があります。
水災は特約を付帯することで補償範囲となるため注意が必要ですが、他の災害は一般的な火災保険でカバーできることがほとんどです。
また、地震による外壁のひび割れや破損は、火災保険ではなく「地震保険」の対象となります。
予期せぬ災害に備えるため、自身が加入している火災保険の契約内容を確認してみることをおすすめします。
外壁の経年劣化を見極めるには
外壁の経年劣化では、特にわかりやすい兆候として、モルタル壁のひび割れがあります。
建物が新築された時には、一枚の美しい壁だったものが、時間の経過とともに複数のひび割れが生じます。
また、外壁の経年劣化の兆候は、サイディングボードでは見つけにくい場合もありますが、コーキング(シーリング材)が劣化して収縮したり剥がれたりすることも経年劣化の兆候です。
さらに、外壁の経年劣化には、塗装が色あせたり黒ずんだりすること、サイディングに割れや浮きが生じること、そして釘や金属部品がある場合には、サビが生じることもあります。
経年劣化は、建物が時間の経過とともに劣化し、その状態が悪化していく現象です。
外壁の経年劣化は、建物の美観や耐久性に影響を与えるため、定期的なメンテナンスや修繕をすることが大切です。
火災保険は、火災などの特定の災害に対する被害があった時に補償されるものであるため、経年劣化による建物の劣化は補償の対象外となります。
外壁塗装が火災保険の補償範囲となる事例
外壁塗装が火災保険の補償範囲となる事例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 火災が発生し、建物が焼けた場合
- 隣家の火災により外壁が損害を受けた場合
- 隣家のカセットコンロのガスボンベが爆発し、外壁が傷ついた場合
- 竜巻によって屋根や雨戸が吹き飛んだ場合
- 台風の強風で飛んできたものが外壁に当たり、傷がついた場合
- 床上浸水により外壁が破損した場合
- 土砂崩れにより外壁が破損した(家屋が半壊した)場合
- 雹が降り、屋根や外壁、雨樋が破損した場合
- 大雪によって雨どいが破損した場合
- 大雪によって外壁が破損した場合
ただし、地震や火山の噴火などの被害に関しては、通常の火災保険では補償されません。
地震や火山の噴火による被害は、地震保険でカバーする必要があります。
地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットでのみ加入することができます。
もし地震や火山の噴火に備えたい場合は、地震保険にも加入するのがおすすめです。
外壁塗装に火災保険を利用する時の5つの注意点
外壁塗装に火災保険を利用する時の注意点は、以下の5つです。
- 免責金額を超える必要がある
- 被害から3年以内に申請する必要がある
- グレードアップはできない
- 保険金額を全額受け取れない可能性がある
- 悪質な業者に注意
注意点を把握しておくことで、火災保険を正しく利用できます。
免責金額を超える必要がある
外壁塗装に関する火災保険の免責には、保険金支払いの条件として「損害が20万円以上の場合にのみ補償される」という規定があります。
例えば、台風によって小さな物が飛ばされ、それが壁に傷をつけるというケースでは、傷や破損が小さければ、外壁全体ではなく一部の補修で済むこともあります。
補修費用が少額で免責額の範囲内である場合は、保険金は支払われず、自己負担で修理する必要があります。
免責金額は、契約時に任意で設定される金額ですが、一部では免責額がゼロの保険も存在するため、契約内容を必ず確認しましょう。
被害から3年以内に申請する必要がある
外壁塗装の被害に対して火災保険を適用させる条件は、被害が発生してから3年以内であることです。
ただし、火災保険を利用する場合は被害の内容を確認し、先述した手続きをする必要があります。
被害から3年以上経過すると原因を特定することが難しくなるため、保険金の請求権が消滅してしまいます。
もし火災保険を利用できることを知らずに外壁塗装を行ってしまった場合でも、被害発生後3年以内であれば必要な書類を準備することで保険を請求することができます。
また、大規模な災害などの場合は、3年以上経過していても火災保険の請求が可能な場合があるため、該当する人は保険会社に相談してみましょう。
グレードアップはできない
火災保険が適用された場合でも、可能なのは「現状復旧」です。
見積もり金額は、現在使用されている塗料を基準に計算されるため、現在よりも優れたグレードの塗料を使用したい場合は、差額は自己負担となります。
また、外壁塗装に火災保険を利用する際、足場を組むことで屋根修理も同時に行うことができますが、屋根修理費用は自己負担となります。
ただし、足場を組むと工事費用が上がるため、外壁と屋根の施工を同時に行うことで費用を節約することができる点は、覚えておきましょう。
保険金額を全額受け取れない可能性がある
外壁塗装に火災保険を活用する際は、契約した保険金額が必ずしも全額支払われるわけではない点には注意が必要です。
火災保険は、実際に発生した損害の補償を目的としており、保険金の支払い額は鑑定人の評価によって決まります。
大規模な被害を受けた場合は、契約した保険金額をすべて受け取れることもありますが、被害の程度によっては契約した保険金の全額が支払われないことがあります。
例えば、100万円の保険金を請求したとしても、鑑定結果によっては50万円分の損害補償しか認められないこともあるでしょう。
この場合、修繕費用が60万円かかれば、10万円分は自己負担となります。
そのため、外壁塗装の修繕費用を保険金に頼って先に工事を進めてしまうと、自己負担のリスクが発生するため、注意が必要です。
悪質な業者に注意
災害時には外壁の被害が多く発生し、業者の手が回らず、補修を引き受けてくれる業者を見つけるのが難しい場合があります。
また、見つかっても補修作業の開始まで何ヶ月も待たなければならないケースもあります。
火災保険を利用して補修工事を行う場合は、業者の見積りが必要ですので、早めに見積りを取るようにしましょう。
災害に備えて事前に外壁塗装に対応している業者を探す方法を知っておくと、焦らずに済みます。
中には、以下のような手口で利益を得ようとする悪質業者もいるため、注意が必要です。
- 嘘の理由で保険金を申請しようとする
- 申請を代行する代わりに高額な手数料を要求する
- 申請を代行する代わりに工事契約を締結させ、保険金を受け取ってから工事を行わない
- 保険金が支払われないため、工事契約を解約しようとすると高額な解約金を請求する
これらは悪質な業者の手口であるため、面倒な申請を代行してくれて安く外壁塗装を行えるといった誘いに惑わされないように注意しましょう。
外壁塗装に火災保険を利用する際の4つのポイント
外壁塗装に火災保険を利用する際のポイントは、以下の4つです。
- 災害時の補償範囲を確認しておく
- 実績がある保険会社や施工業者を選定する
- 損害箇所の記録をしておく
- 外壁塗装に利用できる助成金についても確認しておく
ポイントを把握しておくことで、火災保険をスムーズに利用できるようになります。
災害時の補償範囲を確認しておく
火災保険の契約内容によって補償範囲が異なるため、どの災害が補償されるのかを確認しておくことが大切です。
落雪が多い地域や台風が接近して雨が多く降る地域など、地域の特性もあります。
ご自身の家がある地域に適した契約内容を選ぶことをおすすめします。
実績がある保険会社や施工業者を選定する
火災保険を利用して外壁塗装工事が完全に無料になるなどといった営業トークや、実際に劣化していないのに劣化しているように見せる写真を撮る施工業者には注意が必要です。
悪質な業者に騙されて結果的に高額な工事費用を請求されることがないように、火災保険を利用した外壁塗装の実績がある業者を選んで相談することが大切です。
損害箇所の記録をしておく
先述した通り、火災保険の適用条件として、自然災害が発生してから3年以内であるという制限があります。
そのため、どの自然災害によって損傷が発生したのかを明確にするために、被害箇所の写真や被害箇所を示す図面などを用意しておきましょう。
記録や書類が火災保険を利用する際の申請時に必要になるため、被害状況の写真は災害発生直後に保存しておくことをおすすめします。
外壁塗装に利用できる助成金についても確認しておく
一部の地域では、外壁塗装や屋根の塗装費用に助成金が提供されている場合があります。
すべての地域で必ず提供されるわけではありませんが、対象になる場合には、工事後に数十万円の助成金を受け取ることができる可能性があります。
具体例として、大阪府泉佐野市の外壁塗装助成金制度を見てみましょう。
大阪府泉佐野市の助成金制度
大阪府泉佐野市では、令和5年7月時点で外壁塗装や張り替え、屋根塗装工事などを対象に「住宅リフォーム助成事業」を実施しています。
「住宅リフォーム助成事業」の申請条件は以下の通りです。
- 10年以上住んでいる家であること
- 確認済が交付されている住宅の築年数が5年以上であること
- 住民税や固定資産税などの市税を滞納していないこと
- 泉佐野市のリフォーム業者でリフォームすること
- 「若年者世帯及び子育て世帯空き家活用定住支援事業」の補助を受けていないこと
上記の条件を満たすことで、上限を10万円として工事費用の10%を受け取ることができます。
ただし、助成金の交付が決まる前に行なったリフォーム工事については、助成の対象外となるため注意が必要です。
助成金の申請方法や条件は地域によって異なるため、お住いの地域の助成金があるかどうか、申請する前に確認しておきましょう。
外壁塗装にはどれだけの費用がかかるのか?
外壁塗装に火災保険を利用できる条件などを解説しましたが、そもそも外壁塗装にはどれだけの費用がかかるのでしょうか。
費用の目安と、火災保険を利用した際の費用負担について解説します。
費用の目安
外壁塗装の費用は、相場としては80~140万円程度とされています。
ただし、面積や屋根の塗装を含めるかどうか、外壁材の種類などで大きく変動します。
屋根の塗装を含めると、外壁塗装の金額に30~50万円程度上乗せされると考えておくと良いでしょう。
実際の費用は住宅や周辺環境によっても異なるケースがあるため、専門の外壁塗装業者に見積りを依頼するのがおすすめです。
火災保険を利用した際の費用負担
先述した通り、外壁塗装で火災保険を利用する場合、補修費用が20万円を超えないと自己負担となるケースがほとんどです。
しかし、20万円を超えれば補修費用の全額を負担してもらえるケースがあるため、加入している火災保険の補償内容をしっかりと確認しておきましょう。
補償内容がわからない場合は、保険会社に問い合わせをすることで詳細を教えてもらえます。
まとめ|火災保険を利用して外壁塗装の費用負担を軽減しよう!
今回の記事では、外壁塗装で火災保険を利用するための条件などについて紹介しました。
火災保険は、火災や風災などさまざまな災害によって被害を受けた際の被害を補償する保険ですが、経年劣化による外壁塗装は補償の対象外です。
また、免責金額や被害を受けてからの年数にも注意しないと、火災保険の保険金を受け取れない可能性があります。
まずはご自身が加入している火災保険の契約内容を確認し、被害時に費用負担を軽減できるようにしておきましょう!
こちらの記事もお役立てください