工務店とハウスメーカーどちらを選ぶ?メリット・デメリットと違い・選び方のコツを紹介


この人に聞きました河野由美子

nook interiors代表。二級建築士。住宅設備メーカーや住宅コンサルタント会社、大手リノベーション設計企画会社での勤務を経て独立。日常の中に非日常を感じられる空間づくりをコンセプトとし、住宅やオフィス・医療施設・店舗などの設計およびインテリアコーディネートに携わっています。建築インテリア関連記事の企画執筆や監修業務、研修講師、インテリアコーディーネーター資格対策テキスト監修、工務店の施工事例集ディレクションなどの実績も多数。

「注文住宅を新築したいけれど、工務店とハウスメーカーのどちらを選んだらいいの?」と迷う人は少なくありません。どちらにもメリットとデメリットがあり、絞り込むのが大変なほど数も多いので、上手な選び方を知りたいというのが本音ですよね。

この記事では、工務店とハウスメーカーの主な違いや、それぞれのメリットとデメリットについて紹介します。ぜひ参考にしてください。

工務店とハウスメーカーの主な違い

家族が楽しく暮らすための家を建てるなら、信頼できる建築業者を選びたいもの。工務店かハウスメーカーで迷っているという方は多いでしょう。まずは、工務店とハウスメーカーの主な違いについて、6つのポイントで比較してみましょう。

会社の規模や営業エリア

ハウスメーカーは上場企業が多く、支店や営業所を全国展開し、住宅展示場に出店していることが多いです。一方、工務店は、ハウスメーカーよりは会社の規模が小さく、形態によって大きく3種類に分かれます。

工務店の中でもっとも多いのは、地元密着型の工務店です。営業拠点を置いている市町村における、新築・増改築の工事を請け負っています。家族経営か、社長に加え営業・施工の各担当者が数名いるパターンが多く、会社としては小規模です。営業と設計、設計と施工を1人が兼任する事も珍しくありません。

次に規模が大きいのが、フランチャイズ加盟型の工務店です。本部が開発した工法や規格の住宅の販売施工を請け負います。必要な建築資材を本部から一括で仕入れることで、低コストの注文住宅を建築するパターンが一般的です。また、営業エリアが他の加盟工務店と重ならないよう、担当エリアが厳密に決められているのも大きな特徴です。

工務店の中でもっとも規模が大きいのは、多拠点展開の工務店です。本社を置く市町村を起点に、周辺の都道府県や市町村にも複数の営業所を展開し、自社のモデルハウスを持っている場合もあります。営業・設計・施工が分担化され、組織的に活動するため、地元密着的な活動姿勢ながら建築棟数は多いです。オリジナルブランドを企画開発していることも多く、自社独自のテレビCMを制作するなど広告活動も活発です。

設計の自由度

間取りプランを規格化しているかどうかで、設計の自由度は異なります。

一般的に、工務店は企画された間取りプランがなく、土地の広さや条件、施主の要望、予算などをヒアリングした後自由に設計し、提案するパターンが多いです。建材や住宅設備は、メインで取り扱うメーカーを決めている工務店が多いものの、メーカーの縛りは基本的にありません。施主の希望に沿って工務店から提案する以外に、施主が自分で選んで組み合わせていくこともできます。

対して、ハウスメーカーは、複数の規格住宅があり、あらかじめ考えられた間取りプランの中から選択するパターンが多いため、設計の自由度があまりありません。規格で決まっているプランからアレンジすることはできるものの、オプション扱いとなり、追加料金が発生します。一部、自由設計の注文住宅の施工をセールスポイントにしているハウスメーカーもあるので、自由度の高い設計にしたい場合は個別に問い合わせてみると良いでしょう。

「どうしても実現したい間取りがある」「お気に入りの住宅設備メーカーの商品を採用したい」など、選択肢の自由度を重視するなら、工務店の方が適していると言えます。ただし、地元密着型の小規模な工務店だと、特殊なデザインの設計や施工に対応していない場合があります。業者選定の段階である程度具体的に要望を伝えて、「希望の内容に対応してもらえるのか」を先に確認しておきましょう。「選択肢がたくさんあって決めきれない」「標準仕様で十分満足できる」と考えているなら、決められた仕様やカラーバリエーションから選んでいく規格住宅を扱っているハウスメーカーがおすすめです。

住宅性能

断熱性や耐震性、耐久性といった住宅性能は、建築基準法で定められる水準をクリアすることが前提なので、工務店でもハウスメーカーでも最低限の性能は搭載されています。住宅性能に関しては、工務店かハウスメーカーかというよりも、むしろ建築業者によって違いがあるととらえた方が判断しやすいでしょう。

たとえば、最近は省エネやエコへの意識が高まっていることもあって、エネルギー消費量を抑えられる住宅設備や建材を使った「省エネ住宅」が人気です。しかし、断熱性や気密性の性能レベルは、選定する住宅設備や建材の種類だけでなく、施工の方法や技術レベルによって変わります。特に、気密性能においては、国が定めた基準がありません。建築業者によって、高気密住宅と設定する数値が違うので、注意が必要です。

建築期間

同じ延床面積の家を建てると仮定した場合、一般的にハウスメーカーの方が建築期間が短いです。工務店は、1軒1軒設計内容に合わせて建材や住宅設備を手配し、施工していきますが、ハウスメーカーは、仕様が規格化されており、建材や住宅設備の発注から配送までが効率化されているので、着工前の準備がスムーズに進むのです。施工においても、現場で手早く組み立てられるよう、建材は工場でプレカットされていることも多く、スピーディーに施工できるのはハウスメーカーの特徴と言えます。

ただし、注文住宅は間取りプランや仕様のオリジナリティが高いので、ハウスメーカーであっても工期が長くなりがちです。住宅の構造や土地の形状などによっても建築期間は変わるので、一概に「工務店よりハウスメーカーが建築期間が短い」とは言い切れない点は頭に入れておくといいでしょう。

建築費用

一般的に、土地の条件や建てる住宅の広さが同じなら、工務店の方がハウスメーカーよりも建築費用を安く抑えられます。

とはいえ、工務店であっても、間取りプランや仕様、住宅設備などによってはハウスメーカーよりも費用が高くなる可能性もあります。建築期間と同じく、条件によることを覚えておきましょう。

アフターサービス

ハウスメーカーは、安定した経営基盤と社員の多さを生かして、長期保証制度や定期的な点検制度などの長期的なアフターサービスが充実しているところが多いです。

工務店には長期保証制度がないことが多いものの、施工した家の近くに営業所があり、社長や社員が施主情報を把握していることが多いので、急なトラブルが起きた時にすぐ駆けつけて、必要な部材を素早く調達して対応してくれることもあります。

なお、建材や住宅設備については、各メーカーが一定の商品保証期間を設けているので、工務店とハウスメーカーの違いはありません。

工務店を選ぶメリットとデメリット

工務店とハウスメーカーの主な違いが把握できたとはいえ、どちらにしようか迷いますよね。もう少し詳しく知りたいという方のために、まずは工務店のメリットとデメリットについて紹介します。

【メリット1】設計の自由度が高い

フランチャイズ型や多拠点展開型の工務店は、規格住宅を扱っていることがありますが、地域密着型の工務店は基本的に規格商品を持っていません。施主の要望を踏まえて一から間取りプランを設計するため、設計の自由度が高いのがメリットです。建材や住宅設備についても、メーカーを限定していないので、施主の要望をそのまま取り入れやすいと言えます。

自由に決められるということは、細かい部分まですべて施主が決めなければいけないので、打ち合わせする項目が増えて、時間も労力もかかります。その分、法律の制限や予算とのバランスを見ながら、より理想に近い家をつくることができるので、満足度は高いでしょう。

【メリット2】地域密着で対応が細やか

工務店の多くは、営業拠点を置いている市町村を中心にサービスを行っているため、地域密着でフットワークが軽いです。気候や居住エリアの土地価格や学区など、その地域特有の情報をたくさん持っていて、提案に反映してくれることもあります。少数精鋭で営業していることが多く、施主の要望に柔軟に対応する姿勢が強いです。

建築中だけでなく、家が完成し引き渡しが終わった後も、細やかな対応をしてくれるのが工務店の大きなメリットです。「トイレから水漏れしている」「レンジフードの様子がおかしい」といったトラブルが起きた時に、すぐ駆けつけてくれるのは頼もしいですよね。アフターサービスが徹底している工務店なら、定期的に訪問してくれるため、築年数が経った頃のリフォーム相談もしやすいでしょう。

【メリット3】建築費用を抑えやすい

基本的に、大手のハウスメーカーは広告費や人件費をしっかりかけていますが、工務店はハウスメーカーほど広告費や人件費がかからない分、安い価格で住宅建築を請け負うことができます。同じ延床面積で、同じグレードの仕様であれば、ハウスメーカーより工務店で建てる方が安くなる場合が多いでしょう。

【デメリット1】工期が長くなりやすい

設計の自由度が高いだけに、特徴ある間取りプランになったり、既製品ではなく造作で仕上げる箇所が増えたりします。細かいところまで個別対応になるため、全体の工期が長くなりやすいのがデメリットです。同等の延床面積の家でも、工務店で建てると、ハウスメーカーで建てるより1~2ヶ月長い工期になる可能性があります。

【デメリット2】モデルハウスがない場合が多く完成イメージが分かりにくい

工務店の多くは、ハウスメーカーのようにモデルハウスを持っていません。住宅展示場への出店もしていないので、完成後のイメージがつかみにくいのはデメリットと言えます。

営業活動が小規模で、年間の建築棟数もハウスメーカーと比べると少ないため、完成見学会の回数も多くはありません。打ち合わせ段階でタイミングよく完成見学会に参加できればいいのですが、たまたま開催予定がないタイミングに当たると、ホームページや施工事例集で施工事例を見て判断することになります。3Dパースなどを使っていれば、完成後のイメージを見せてもらえる場合もあるので、打ち合わせ時に確認してみましょう。

ハウスメーカーを選ぶメリットとデメリット

続いて、ハウスメーカーを選ぶメリットとデメリットについて紹介します。

【メリット1】工期が短い

ハウスメーカーが扱う住宅の多くは規格化されているので、建材や住宅設備の仕様が決まっています。特殊な間取りや、オプション扱いとなる建材や住宅設備を希望しない場合は、すでに決まっている資材を使うので発注がスムーズです。工場で加工済みの資材が現場に運ばれ、施工マニュアルに沿ってどんどん組み立てていくため、スピーディーに施工が進みます。季節によっては天候の影響を受けることもありますが、そうでなければ工程の遅れはほとんど出ません。

一から設計して資材も個別に準備していく工務店と比べると、工期が短くなりやすいのは大きなメリットと言えます。

【メリット2】経営基盤が安定しておりアフターサービス体制が充実

上場企業が多いハウスメーカーは、経営基盤が安定しており、豊富な資金を持っています。小規模な工務店が経営悪化で倒産してしまうと、建築後のアフターサービスが受けられなくなりますが、ハウスメーカーはほぼそういった心配はなく、長期でアフターサービスを受けられる点がメリットです。

ハウスメーカーには、アフターサービス専任のスタッフがいることが多く、アフターサービス体制が整備されています。社内マニュアルがきちんと確立されていることもあって、決まったスケジュールで定期点検を実施してくれるのは安心です。

【メリット3】標準仕様がありプランを選択しやすい

自由設計の注文住宅を扱っているハウスメーカーもありますが、多くのハウスメーカーで扱っているのは規格化住宅です。コンセプト別に複数の商品があり、間取りプラン集の中から希望に近い間取りプランを選んだ上で、詳細を設計していきます。建材や住宅設備だけでなく、内装のカラーバリエーションなども標準仕様として設定されているので、その中から選択していけば仕様がほぼ決まるようになっています。

限られたバリエーションから選ぶといっても、意外に選択肢は多いものです。なかなか決められないでいると、着工がどんどん遅れてしまいます。グレードを上げたい部分やこだわりの強い部分に時間をかけて検討できるよう、あまりこだわりのない箇所は標準仕様をベースに時間をかけず決めていくことが大切です。

【デメリット1】建築費用が高くなりやすい

ハウスメーカーは、安定した経営基盤を守るための広告費や人件費も欠かせません。

その分、同じ条件や仕様で家を建てると、工務店よりハウスメーカーの方が割高になりやすい点はデメリットと言えるでしょう。

【デメリット2】プランや設備に制約がある

ハウスメーカーで家を建てる場合、間取りはあらかじめ準備されたプランから選択します。建材や住宅設備についても、標準仕様の中から選択し組み合わせていくのが通常の流れです。選択肢が少ないので、仕様決めが比較的スムーズに進みますが、捉え方によっては一定の制約があるとも言えます。

豊富なバリエーションの中から選ぶことができますが、標準仕様にはない建材や住宅設備は、オプション扱いです。見積にオプションとして差額が別途追加されるので、「床は最上級の無垢フローリングにしたい」「浴室にいろいろな機器を追加したい」といったこだわりが多いと、オプション料金がどんどん増えていくことに。自由に選びたい箇所が多い場合は、ハウスメーカーではかなり高額になってしまう可能性があるため、工務店を選んだ方が予算と希望のバランスを取りやすくなるでしょう。

工務店かハウスメーカーか?建築業者選びを成功させるコツ

工務店とハウスメーカー、どちらにもメリットとデメリットがあることを踏まえて「自分にとってはどちらがいいのか」を考えていきましょう。建築業者選びを成功させるために、押さえておきたいコツを4つ紹介します。

コミュニケーションがスムーズか

工務店は、営業と設計を一人で兼任しているパターンが多いので、打ち合わせで伝えた要望を図面などにすぐ反映してもらえるなど、迅速な対応を期待できます。また、住宅設備などのショールーム見学時に、希望するプランが実際に対応できるかどうかをその場で回答してもらえることもあります。自社施工であれば、施工中の現場で施主と打ち合わせを行い、不明点があればその都度確認するといった対応をしている工務店もあります。スピーディーなコミュニケーションを取りたい人には、工務店がおすすめと言えるでしょう。

ハウスメーカーは、営業・設計・施工でそれぞれ担当者が分かれているため、工務店よりは対応スピードが遅いものの、多くの担当者がそれぞれの立場から図面や現場をチェックするので、重大なミスを未然に防ぐ体制が整っていると言えます。その他、住宅ローンの申し込み実績も豊富で複数の金融機関の最新情報を持っており、住宅ローンに関するアドバイスをもらいやすいと言えるでしょう。対応の迅速さはそれほど求めないが、住宅ローンなども含めて幅広い相談をしたいなら、ハウスメーカーが向いています。

注文住宅を建てるには、建築業者と多くの打ち合わせが必要です。家や暮らし方に関する意見を伝えたり、資金計画を一緒に考えたりと、プライベートに深くかかわる内容を話し合うことになります。上記のポイントに加えて、「遠慮なく思いを伝えられるか」「家づくりに対する理想を理解してくれるか」を踏まえて、スムーズなコミュニケーションを取れる建築業者を選びたいですね。

施工事例を公開しているか

工務店にとっても、ハウスメーカーにとっても、施工事例の公開は重要な営業活動のひとつです。最近は、工務店もハウスメーカーも、ホームページや新聞の折込チラシ、住宅情報誌などに施工事例を掲載しているので、建築業者選びの際に比較しやすいです。

施工事例の完成画像だけを並べている建築業者もあれば、延床面積や、間取り、概算の建築費用などを公開できる範囲で掲載している建築業者もいますが、詳しい情報が掲載されているほうが安心感はあります。また、施工事例の間取りプランや外観デザインなどのバリエーションが豊富だと、自分の思いに合わせて設計してくれる可能性が高いです。施工技術の幅広さも分かるので、選択のヒントになるでしょう。施主のインタビューを掲載している建築業者も増えてきたので、併せて読んでおくと良いですよ。

ホームページを参考にする時は、施工事例に加えて、企業理念や強み、アフターサービス体制などのページもチェックしておきましょう。

要望に適した強みや施工技術を持っているか

住宅展示場や完成見学会に行ってみたり、直接話を聞いてみたりしても、工務店とハウスメーカーの違いや、会社ごとの違いがよく分からず、なかなか決めきれないという方もいるでしょう。どのポイントから決めていけばいいか迷っているなら、要望に適した建築業者を提案してくれるサービスを利用するのもおすすめです。

不動産や住宅の情報サイトや、施主と工務店・ハウスメーカーのマッチング事業を行っている会社には、無料の相談窓口があります。多くの建築業者の特徴や施工実績に関する情報の中から、要望に合った工務店やハウスメーカーを提案してくれるため、自分で建築業者を探すより効率的です。また、客観的な視点から、その建築業者を選ぶメリットを説明してくれるので、判断基準が明確になり、選びやすくなるでしょう。

住宅完成保証制度に加入しているか

注文住宅の建築中に、施工を請け負っている建築業者が倒産した場合、保証が適用されて完成まで工事が継続できる制度を「住宅完成保証制度」と言います。追加で発生する工事費用を保証するタイプと、追加の工事費用と着手金の損害を保証するタイプとがありますが、契約した建築業者が制度に加入していないと利用できません。

加入義務はないため、未加入の建築業者は多いです。逆に言えば、検討している建築業者が住宅完成保証制度に加入していると、「万が一の事態に備えている」「保証会社の審査をクリアしている」といった安心感があります。施主への不利益を少しでも抑えようという誠意を感じられるので、建築業者選びのヒントの一つになるのではないでしょうか。

こだわりの家づくりに伴走してくれる建築業者を見つけよう

法的な条件をクリアし、必要最低限の機能性や居住性を確保した家づくりをしてくれる点では、工務店もハウスメーカーも同じです。しかし、建築費用やコミュニケーションにおいて、今回紹介したような違いがあるため、求める内容に沿ってじっくりと選びましょう。

建築業者を選ぶ際は、「新しい家でどんな暮らし方をしたいのか」「譲れないこだわりは何か」など、自分なりの家づくりの理想をしっかり固めておくことも重要です。その理想を軸にして検討すると、納得できる建築業者選びができるでしょう。

この記事を参考に、理想の家づくりを二人三脚で進められる建築業者を見つけてくださいね。

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※掲載情報は記事制作時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

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