芙蓉宅建FPオフィス代表。金融業界歴10年目(2020年現在)。お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを行っています。一般消費者の金融に関する苦手意識を払拭すべく、ライフワークとして「超・初心者向けマネー勉強会」を毎月テーマを変えて開催しています。
環境性能の高い省エネ住宅として、近年ZEH住宅が注目されています。ZEH住宅は、新築住宅だけが該当するというイメージを持つ方が多いですが、既存住宅のリフォームによるZEH化も可能なのです。そこで今回は、ZEH住宅の特徴や対象となる補助金を含めて解説します。
目次
ZEH住宅とは?ZEH住宅の概要について解説
ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスのことです。ZEHは、住宅の高断熱化と省エネルギー設備機器により消費エネルギーを削減しながら、太陽光発電などでエネルギーを作り出し、結果的に1年間で消費するエネルギー量の収支をゼロにする住宅のことです。
エネルギー収支のゼロを目指すZEH住宅
ZEHは、家庭での消費エネルギー収支のゼロを目指す住宅のことです。エネルギー収支をおおむねゼロにする方法はいくつかあります。
たとえば、住宅で使用するエネルギーを減らすと同時にエネルギーを生み出すことで、収支をおおむねゼロにできます。また、ZEHで生み出すエネルギーが、消費するエネルギーよりもプラスになることもありますよ。
なお、エネルギー消費量の収支のゼロを目指すことがZEHであり、家計収支のうち水道光熱費がかからなくなるというわけではないので注意しましょう。ZEHはあくまでも環境に配慮し、省エネ性能を保有した住宅の消費エネルギーを削減することが目的です。
そのため、結果として光熱費の削減や売電収入で家計の助けになる場合もありますが、ZEHは金銭的な削減ではなく消費エネルギーの観点での制度ということを覚えておきましょう。
再生可能エネルギーとは
ZEHの説明をする際に、キーワードになるのが「再生可能エネルギー」です。経済産業省の資源エネルギー庁によると、再生可能エネルギーとは太陽光・風熱・地熱・中小水力・バイオマスなどを指します。
これらの再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せずに国内で生産できます。さらに、重要な低炭素の国産エネルギーであると位置づけられています。
この再生可能エネルギーのうち、ZEH住宅に関係するのは主に太陽光・風熱・地熱です。つまり、住宅で消費されているエネルギーに対し、これら再生可能エネルギーの生産でカバーしていくことで、恒常的にエネルギー消費量をゼロにする仕組みがZEHによって実現できます。
ZEH住宅の特徴
ZEHには、主に次のような特徴があります。
ZEH住宅の特徴
- 高断熱性により室内の温度差が少なく健康に良い(ヒートショック予防や寒暖差の予防)
- 高断熱や高効率化と同時に太陽光発電などで自らエネルギーを生むため環境に良い
- 停電時など非常時にも安心(自立運転コンセントの活用など)
- 高断熱や高効率設備により電力使用量の節約になる
- 太陽光発電の売電収入でさらに節約へとつながる
ZEHで光熱費の削減
ZEH住宅にすると電気使用量を削減できます。また、太陽光発電の売電収入により節約にもつながるのが嬉しいポイントです。
大阪府のWebサイトによると一般的な年間光熱費が196,044円、ZEHにした場合の年間光熱費が136,504円で約6万円の削減になります。加えて太陽光発電による売電額が182,925円となり年間約24万円もお得になります。
年間24万円もお得!?
196,044円(一般的な年間光熱費)-136,504円(ZEHにした場合の年間光熱費)+182,925円(太陽光発電による売電額)=242,465円
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ZEH住宅にはどのような設備が必要?
ZEHには3種類
そもそもZEHには3種類があり、それぞれ消費エネルギー量に応じて段階わけされています。消費エネルギーに対する必要エネルギーが異なれば必要な設備も異なるため、まずはそれぞれの内容について簡単に確認していきましょう。
ZEH
ZEHは、経済産業省の定義では「外皮の高断熱化および高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギー等により年間の1次エネルギー消費量が正味ゼロまたはマイナスの住宅」とされている消費エネルギーをすべて再生可能エネルギーでまかなう仕組みのことです。
家自体に断熱および省エネが実現できる設備を施した上で、消費エネルギーは太陽光発電などの再生可能エネルギーで生み出されたものを使用します。
消費エネルギーと再生可能エネルギーで生み出したエネルギーの差し引きがゼロ以上になる状態をZEHと呼びます。
Nearly ZEH
Nearly ZEHは、経済産業省の定義では「ZEHを見据えた先進住宅として、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、再生可能エネルギー等により年間の消費エネルギーをゼロに近づけた住宅」とされている主に寒冷地などで適用される仕組みのことです。
消費エネルギーの75%を再生可能エネルギーを用いてカバーする必要があります。これは寒冷や降雪の影響で再生可能エネルギーをうまく活用できない場合を考慮して、基準が低く設定されているためです。
ZEH Oriented
ZEH Orientedは、経済産業省の定義では「ZEHを指向した先進的な住宅として、外皮の高断熱化および高効率な省エネルギー設備を備えた住宅(都市部狭小地に建築された住宅に限る)」とされている、ZEHの基準を住まいが満たしている場合に適用される仕組みです。
太陽光パネルが設置できず再生可能エネルギーを用いてエネルギーを生み出すことができない場合でもZEH基準の断熱性、省エネを満たしている住宅にZEH Orientedが適用されます。
それぞれのZEHの要件
ここからは、それぞれのZEHの要件についてそれぞれ紹介していきます。
ZEHの要件
- ZEH強化外皮基準(それぞれの地域で設定された断熱性能基準)を満たすこと
- 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減
- 再生可能エネルギーを導入
- 再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減
ZEHは先ほど解説したとおり、消費するエネルギー以上を再生可能エネルギーを用いて生み出す必要があります。加えてエネルギーを無駄にしないよう、断熱・省エネを住宅自体にも施す必要があります。
Nearly ZEHの要件
- ZEH強化外皮基準(それぞれの地域で設定された断熱性能基準)を満たすこと
- 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減
- 再生可能エネルギーを導入
- 再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から75%以上100%未満の一次エネルギー消費量削減
Nearly ZEHはZEHに比べて再生可能エネルギーを用いて生み出す必要があるエネルギーが少ないのが特徴ですが、それ以外の要件は同じ内容となっています。
ZEH Orientedの要件
- ZEH強化外皮基準(それぞれの地域で設定された断熱性能基準)を満たすこと
- 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減
ZEH Orientedは住宅に施す断熱・省エネ設備の要件は同様ですが、再生可能エネルギーを用いたエネルギー生産の要件が除かれています。
ZEH基準をさらに厳しくしたZEH+(ゼッチプラス)
上記ZEHは主に3種類に分けられていると解説してきましたが、実はZEHにはさらに要件を追加した「ZEH+」「次世代ZEH+」と呼ばれるものも存在します。
簡単にまとめるとZEH基準よりも、さらに再生可能エネルギーに関して要件を追加したものがZEH+です。
ZEH+(プラス)の要件
- 更なる省エネルギーの実現(省エネ基準から25%以上の一次エネルギー消費量削減)
- 以下にある3つの自家消費拡大装置のうち、2つ以上を導入すること
- ①外皮性能の更なる強化
- ②高度エネルギーマネジメント
- ③電気自動車を活用した自家消費拡大措置のための充電設備または充放電設備
自家消費拡大装置とは、太陽熱温水システム・電気自動車への充電設備・蓄電設備・エネルギー制御などの設備です。このように、ZEHで作ったエネルギーを自宅で効率よく活用するための設備を追加で導入する必要があるのがZEH+となっています。
Nearly ZEHについても上記の条件を満たすことによって、より高度な省エネルギー住宅として「Neraly ZEH+」として認められます。
ZEH+をさらに強化した次世代ZEH+
ZEH+をさらに強化したものが次世代ZEH+です。次世代ZEH+では、ZEH基準およびZEH+基準を満たしたうえで、次の設備のうちいずれか1つ以上を備えることが要件となっています。
次世代ZEH+で1つ以上設置が必要な設備
- 蓄電システム
- V2H充電設備(充放電設備)
- 燃料電池
- 太陽熱利用温水システム
- 太陽光発電システム10kw以上
ZEH住宅はリフォームでも可能?
ZEHは新築に限られるものではありません。前述した要件を満たすと、リフォームでもZEH住宅にできます。詳しくは後述しますが、ZEHリフォームで受けられる補助金もあるため積極的に検討しましょう。
ZEHリフォームの費用例
ZEHリフォームは、改修する場所によって費用はさまざまです。国土交通省の省エネ住宅パンフレットを参照すると、一戸建ての躯体の断熱改修は約125万円、窓の断熱改修は約88万円とされています。
また、太陽光発電設備の初期費用は、規模にもよりますが一般的に200万円前後かかります。費用の例はあくまでひとつの目安とし、実際に工務店等の見積のうえで検討しましょう。
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ZEHリフォームのメリット・デメリットとは
ここからは、既存住宅をZEHリフォームするメリットとデメリットについて紹介します。ZEHリフォームを考えている方は、メリットとデメリットの両方を理解して今後の参考にしてみてください。
ZEHリフォームのメリット
環境配慮
ZEH住宅の特徴でも挙げたように、高い省エネ性能で環境に配慮した上で節約にもつながる点がZEHリフォームの最大のメリットです。初期費用がかかりますが、住まいは長く使用していくものです。つまり、初期費用がかかっても長く住み続けることで十分に費用の回収が見込めます。
節約
また適用した新築住宅を建てるより既存の住宅を生かしてZEHに適用したリフォームを行うことができれば工期や費用の縮小にもつながるかもしれません。
住宅価格の向上
万が一住宅を手放す際でも、環境性能が最新化されている既存住宅のため住宅価格のアップが見込めます。ZEHの基準をクリアしているリフォームであれば暮らしていく上で不自由しないと同時に、これからの世の中に必要とされる住宅として価値を高めることに繋がります。
ZEHリフォームのデメリット
通常のリフォームより費用がかかる場合が多い
ZEHリフォームは各種補助金制度の対象になります。しかし、これらの補助金を利用しても、リフォームの内容によっては費用が大きくなる点がデメリットです。
そのため、工務店など実際にリフォームを実施するプロと相談のうえリフォーム計画を進めると、負担軽減につながります。しっかりと打ち合わせを行い、納得のいくリフォームプランで進めましょう。
依頼できるリフォーム施工会社が限定される
ZEHリフォームはどの工務店でも可能ではありません。ZEHは、事前に専門機関(SII)に登録された業者のみ対応可能です。リフォーム施工業者が限定されるという点には十分に注意しましょう。
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ZEHリフォームを対象にした補助金制度
ここからは、ZEHリフォームを対象とした補助金制度について解説します。まずは、前述のZEH基準を満たしているリフォームかどうかを確認し、補助金制度の概要を確認しましょう。
ZEH支援事業(ZEH)
ZEH支援事業の補助額は1戸あたり定額で55万円となっており、対象はZEH、NearlyZEH、ZEHOrientedいずれかを満たす必要があります。公募については先着方式です。
2022年度の公募については11/21〜1/6(2023年)の四次公募が開始されています。(2022年11/20現在)
公募期間中に申請金額が予算に達した場合は終了となってしまいますので、ZEHリフォームを検討している場合は早めに確認してみましょう。
ZEH支援事業の概要
- 補助額 1戸あたり55万円
- 補助住宅に蓄電システムを導入する場合は最大20万円が補助額に上乗せされる
- 対象住宅はZEH、NearlyZEH、ZEHOrientedの条件を満たすもの
ZEH支援事業(ZEH+)
ZEH+向けの支援事業の補助額は1戸あたり定額で100万円となっており、対象はZEH+、NearlyZEH+いずれかを満たす必要があります。公募については先着方式です。
2022年度の公募については終了していますので2023年度以降に確認してみましょう。
ZEH+対象の補助金概要
- 対象となる住宅は、ZEH+、NearlyZEH+
- 補助額 1戸あたり100万円※2022年度(ただし以下の要件を満たす場合はそれぞれ追加の補助金があります。)
- 定置型蓄電システム(2万円/kWh、補助対象経費の1/3又は20万円のいずれか低い額を加算)
- 直交集成板(90万円)
- 地中熱ヒートポンプ・システム(90万円)
- PVTシステム(液体式:65万円/戸または80万円/戸、空気式:90万円/戸)
- 液体集熱式太陽熱利用温水システム(12万円/戸または15万円/戸)
ZEH補助金の注意点
ZEHリフォームで補助金を利用する場合、注意したい点がいくつかあります。まず、ZEHを対象とした補助金は先着順の公募のため、上限に達したら受けられないことです。
公募スケジュールに関しては、リフォームを依頼する業者へ事前に確認しておくと安心です。その際に、確実に改修が間に合うかついても確認しておきましょう。
また、ZEHリフォームにかかる補助金の申請は、依頼者が行うのではなく工務店などの施行業者が代行して行います。このとき、申請代行の費用として手数料が必要になる場合もあるので、業者に手数料が必要か事前に確認しておくと安心ですよ。
ZEHリフォームを検討してみよう
ZEH住宅に住むためには、新築購入だけが対象ではありません。対象となるZEHリフォームを実施することで、環境に配慮した省エネ性能の高いZEH住宅に住み続けられます。
ZEHリフォームは初期費用がある程度必要ですが、長期間住み続けることで十分な費用対効果が期待できますよ。また、一定の要件を満たしたZEHリフォームは補助金制度の利用が可能です。
そこで、これまで住んできた家を大事に住み続けるために、ZEHリフォームを検討してみませんか。まず、現在の住まいをZEH住宅とするためには、どの部分のリフォームが必要であるか専門業者に依頼し、試算してもらうことをおすすめします。
この際の注意点として、ZEHリフォームは実施できる業者が限られています。そのため、ZEH対応可能な業者へ相談し、どのようなリフォームなら補助金の対象となるのかもふまえて見積を依頼してみましょう。
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