英国認定(ARB)建築士 インテリア、建築、都市デザインを学びながら現地企業で10年修行し、培った主婦目線のきめ細やかな提案を心がけています。自身のYouTubeチャンネル 「London Harmony Life」では、古い佇まいのある建物やアンティークマーケット、英国のガーデンショー、手作りで楽しむ暮らしといったワクワクする情報を配信中。
昨今の燃料の高騰により、省エネ住宅に興味を持つ方が増えています。さらに、省エネ住宅に大きく貢献するのが断熱材。そこで当記事では、断熱材の種類別の素材や特徴、最適な選び方をご紹介します。住まいを快適に、省エネにしたい方はぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
住まいの快適に大きくかかわる断熱材
断熱材とは
断熱材とは、住まいの快適さをお届けする名脇役ともいえる建築材料です。断熱材は厚さのあるフォーム形状をし、屋根裏や天井裏、壁の中、床下に入れることによって建築物の室内側と室外側の熱移動を遮断します。
断熱材があることによって外気温が室内に伝わりにくく、室内の空気も外に逃げにくくなります。この気密性を保つことで「夏涼しく、冬暖かい」という最適なお部屋を実現できるのです。
当記事では、断熱材の役割や最適な断熱材の選び方、おすすめ・人気の種類を紹介していきます。断熱材には高価なものや性能のグレードもあるので、この記事を参考に選び方をしっかりとおさえましょう。
断熱材の役割
①快適な室内環境をつくる
築年数の古い住宅になるともともと入っていた断熱材が老朽化し、外気温と同じように夏は暑く冬は寒く感じます。そのため、断熱材が老朽化するとお部屋が最適な温度になりにくくなってしまいます。この場合、外気に影響されない最適な室内環境を保つためには断熱材を入れ替える必要があります。
さらに、断熱材は冷暖房で温めたり冷やしたりした空気も外に逃げづらくしてくれます。その結果、冷暖房の電源を切っても温度変化が緩やかで、最適な温度で過ごせます。
②家族の健康に貢献する
室内の温度変化が緩やかで最適な温度は、家族の健康を守ることにもつながります。特に冬は、ヒートショックによる事故に気をつけなければいけません。ヒートショックは、急激な温度変化による血圧の変動で血管や心臓に負担がかかることが原因で発生する症状です。
浴室や洗面所やトイレなど室内との温度変化が激しい水回りは、特にヒートショックが起こりやすいので注意が必要です。
③結露を防ぎ家を長持ちさせる
断熱材は、建物内外の温度差から生じる 「結露」 の発生も防止します。内外に温度差があると、住宅にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。これは、建物内外の温度差から生まれる「内部結露」が原因とされています。
内部結露壁は内部で結露が起こってカビを発生させ、次第に構造体を腐らせてしまいます。断熱材の施工と合わせて防湿施工を施して構造体の腐食を防ぎ、住宅を長持ちさせましょう。
④光熱費(冷暖房費)の節約になる
断熱材によって最適な住環境が整うため、冷暖房を強くする必要がなくなります。「冷暖房を頻繁に使用すると、光熱費が気になる…」という方も多いですよね。そこで、断熱材を取り入れることで高い冷暖房費を抑えられ、省エネにもつながるのです。
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住宅に使われる断熱材は大きく分けて3種類
住宅に使われる断熱材は、大きく分けて3種類あります。自分の家に最適な断熱材を選ぶことで、さらに住みやすい家になりますよ。一般的にどのような断熱材があるのか、以下の表を参考に詳しくみていきましょう。
断熱材の種類 |
素材 |
特徴 |
---|---|---|
①無機質系 |
グラスウール ロックウール |
ガラス繊維や天然岩石を綿状にしたもので、木造住宅に一般的によく使われる。 |
②発泡プラスチック系 |
硬質ウレタンフォーム フェノールフォーム ポリスチレンフォーム |
樹脂を発泡させてボード状に成形したものと、現場で吹き付け発泡させる充填施工式のタイプがある。 |
③木質繊維系 |
セルロースファイバー |
木質系の自然素材を使用し、細かく粉砕して接着剤と混ぜてボード状にしたもの。軽量で加工しやすく、施工性に優れる。 |
①無機質系は防火性能が優秀
グラスウールとロックウールの防火性能は、他と比べて非常に優れているといえます。値段も高価ではないので、価格と防火性能を重視する場合におすすめの断熱材です。
①無機質系 |
防火性 |
吸音性 |
遮音性 |
湿気 |
シロアリ |
特記事項 |
---|---|---|---|---|---|---|
グラスウール |
〇 (耐火400℃程度) 有毒ガスは発生しない |
〇 |
X |
X |
〇 |
床、壁、天井に よく使われている |
ロックウール |
◎ (耐火~700℃程度) 有毒ガスが発生しない |
〇 |
X |
X |
〇 |
床、壁、天井に よく使われている |
②発泡プラスチック系は遮音性と湿気に強みのある断熱材
発泡プラスチック系は遮音性能が優れているので、大通りに面した住宅におすすめです。また、湿気にも強いため、湿気の影響を受けやすい床下や屋根の断熱にもおすすめといえます。なお、建物をすっぽり覆う外断熱にも最適で人気な素材です。
②発泡 プラスチック系 |
防火性 |
吸音性 |
遮音性 |
湿気 |
シロアリ |
特記事項 |
---|---|---|---|---|---|---|
硬質ウレタンフォーム |
△ 難燃性 (燃えた場合は 有毒ガスが発生) |
△ |
〇 |
〇 |
△ |
湿気が上がってくる 床下の断熱に効果的 |
ポリスチレンフォーム |
△ 難燃性 (燃えた場合でも 有毒ガスを発生しない) |
△ |
〇 |
〇 |
△ |
床や屋根の断熱や 建物をすっぽり覆う 外断熱工法に よく使われる |
フェノールフォーム |
△ 難燃性 (燃えた場合でも 有毒ガスを発生しない) |
〇 |
〇 |
〇 |
△ |
経年変化がしにくく 安定した素材 |
③木質繊維系
日本の建築ではシェアの低い木質繊維系ですが、セルロースファイバーはアメリカでシェア1位を誇る人気の断熱材です。今後の参考として、特徴や性能を知っておいて損はない素材でしょう。
③木質繊維系 |
防火性 |
吸音性 |
遮音性 |
湿気 |
シロアリ |
特記事項 |
---|---|---|---|---|---|---|
セルロースファイバー |
△難燃性 (表面が炭化するのみで燃えず 有毒ガスを発生しない)
|
〇 |
〇 |
〇 |
〇 |
音楽室に向く 断熱材 |
これまでに、断熱材の大まかな性能を種類ごとに解説しましたが、ここからは種類別に住宅建築に使われている断熱材を解説していきます。最適な断熱材をみつけるために、それぞれの特徴を押さえましょう。
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① 無機繊維系断熱材
グラスウール
素材の特徴
日本の戸建て住宅で一番使われている、人気の断熱材でガラス繊維を綿状に加工したぶ厚いシート状の素材です。
繊維の間に空気を含むことで熱を伝わりにくくし、繊維が細くて密度が高いほど断熱性能が高くなるといった特徴があります。こちらの断熱材は住宅の床や壁、天井、屋根に使われている種類です。
グラスウールのメリット
グラスウールは一般的に価格が安いのがメリットで、多くのハウスメーカーが採用しています。「断熱材は高価なものが多いのでは…」と思っている方や、低価格のものを探している方は、グラスウールがおすすめですよ。
防火性能に優れ、有毒ガスが発生しない 国土交通省が認定する不燃材でガラスが原料のため、火災になった場合安心です。
また、吸音性能に優れる グラスウール繊維の中の空気層が、吸音に効果的です。
さらにシロアリはガラスを食べないので被害もなく、シロアリが不安な方はグラスウールはおすすめです。
グラスウールのデメリット
断熱材の空気層に水蒸気が入ったり結露したりすると、断熱性能が大きく劣化するという特徴があります。また、水分で重くなるため壁などは断熱材がずり落ちる可能性もあります。湿気対策として袋詰めで施工するケースも多い素材です。
ロックウール
素材の特徴
一般的に日本の住宅でグラスウールの次に、人気のある断熱材がロックウールです。ロックウールは「天然岩石」などを高温で溶かし、強い遠心力をかけて繊維状に加工した素材となっています。
こちらの断熱材も床や壁、天井、屋根に使われることが多いので、幅広く使用したい方におすすめの種類となります。
ロックウールのメリット
ロックウールは国土交通省が認定する不燃材で、グラスウールより耐火性能が高いのが特徴です。グラスウールは400℃くらいの熱に耐えますが、ロックウールは650~700℃の高温に耐える性能があります。そのため、防耐火性能で見るとロックウールは優秀な素材といえます。
火には非常に強いですが、万が一の火災のときでも有毒ガスが発生しない素材です。火にも強く有害なものも出ないので、優秀な耐火性能を持つ素材といえるでしょう。
また繊維の中の空気層が吸音に効果的なことやシロアリ被害に合わないこともメリットです。
ロックウールのデメリット
ロックウールはグラスウールと比べて少し高価です。しかし、防耐火性能と断熱性能がグラスウールより優れたグレードであるためその点ではおすすめといえます。
撥水性はあるものの、一度吸水してしまうと著しく断熱性能が低下します。また、水分で重くなるとずれ落ちる可能性もあるので湿気対策は万全にしましょう。
② 発泡プラスチック系断熱材
硬質ウレタンフォーム
素材の特徴
硬質ウレタンフォームは、ソファーのクッション材などに使われているプラスチックの発泡体を改良したものです。こちらは、ウレタン樹脂に発泡剤や難燃剤などを混ぜた断熱材になります。
硬質ウレタンフォームにはボード状や吹付タイプの種類があり、イメージ写真は木造住宅の間柱の間に硬質ウレタンフォームを吹付け充填しています。
硬質ウレタンフォームのメリット
グラスウールやロックウールのように音を吸収するのではなく、反射させる特性があります。そのため、硬質ウレタンフォームの断熱材を使用すると、外の音は聞こえにくいが中の音は反響しやすい素材です。騒音が気になるお宅にはおすすめな断熱材です。
また硬質ウレタンは水や湿気の浸入に対する抵抗が強く、カビや結露が起きにくい素材のため人気があります。さらに吹付タイプでは隙間なく充填できるので、気密性を確保しやすい特徴があります。
硬質ウレタンフォームのデメリット
価格はその他の素材より比較的高く、一般的に高価な断熱材といえるでしょう。
そして万が一燃えた場合、有毒ガスが発生してしまうことがあります。硬質ウレタンフォームは、グラスウールやロックウールほど熱や火に強いわけではないことを覚えておきましょう。
またプラスチック系素材はシロアリに齧られてしまう可能性のある素材のため、シロアリ駆除処理は必須です。
ポリスチレンフォーム
素材の特徴
ポリスチレンフォームは、発泡プラスチック系の住宅用断熱材の中では最も一般的に使われる人気の断熱材でおすすめです。こちらは、ポリスチレンを主成分として難燃剤を混ぜて発泡成形した素材となっています。
この断熱材は、成型法により「押出法ポリスチレンフォーム」と「ビーズ法ポリスチレンフォーム」の2種類があります。「ビーズ法ポリスチレンフォーム」は、いわゆる発泡スチロールです。上記の画像のように建築物をすっぽり覆ってしまう外断熱工法におすすめです。
ポリスチレンフォームのメリット
グラスウールやロックウールのように音を吸収するのではなく、反射させる特徴があります。ポリスチレンフォームの断熱材を使用すると、外の音は聞こえにくく中の音は反響しやすいのです。
またプラスチックを原料としているため、水や湿気を吸わないことと軽量で施工がしやすい点がメリットです。湿気が上がってくる床や屋根からの湿気が入りやすい天井にもよく使われています。
ポリスチレンフォームのデメリット
グラスウールやロックウールと比べると高価な素材となっています。
難燃剤を添加しているので燃えにくい素材ですが、まったく燃えないわけではありません。火災が起きると、熱で収縮して断熱性能が失われますが、有毒ガスは発生しないといった特徴があります。
またプラスチック系素材はシロアリに齧られてしまう可能性のある素材のため、シロアリ駆除処理は必須です。
フェノールフォーム
素材の特徴
フェノール樹脂を発泡させ、ボード状に成形したものです。身近では、鍋やフライパンの把手の黒い部分がフェノール樹脂でできています。
フェノールフォームのメリット
熱に強く、万が一の火災で火が近づいても燃え広がりません。また、煙や有毒ガスがほとんど発生しないといった特徴もあります。火をよく使うお店やキッチンなどの断熱材におすすめです。
そして吸音性と遮音性を併せ持っている新しい素材として人気です。
それ以外にもフェノールフォームは経年変化しにくく、安定した断熱材です。水を吸わないのでカビや結露が発生しにくく、断熱効果が長持ちすることも大きなメリットといえます。
フェノールフォームのデメリット
発泡プラスチック系断熱材の中では一番高価な点がデメリットでしょう。
それ以外にもプラスチック系素材でシロアリに齧られてしまう可能性のあるため、シロアリ駆除処理は必須な点にも注意が必要です。
③ 木質繊維系断熱材
セルロースファイバー
素材の特徴
セルロースファイバーは、日本の住宅建築での断熱材シェア率はわずか2%程度です。しかし、アメリカではグラスウールを超えて一番使われている人気の断熱材で原料が木質繊維系なので、地球に優しい素材です。
こちらは、パルプや新聞紙などを溶剤と混ぜて繊維状にした断熱材です。吹付して繊維質内部に無数の空気層を作り、これが断熱効果を発揮します。
セルロースファイバーのメリット
セルロースファイバーにはホウ酸が使用されているため燃えにくく、溶けずに有毒ガスも発生しないという特徴があります。
そしてセルロースファイバーは高密度で吹付施工されるため重量があり、 他の断熱材よりも防音効果が極めて高い素材です。音楽室のような吸音性と遮音性が必要な部屋のリフォームには最適な断熱材となっています。
またホウ酸の作用で防虫作用があり、ダニやシロアリを寄せ付けずカビが繁殖することもありません。
それ以外にもセルロースファイバーは自然素材からできており、湿気を吸収・放出する性質もあります。ジメジメしている夏には湿気を吸い、乾燥している冬には湿気を放出してくれます。そのため、結露しにくくカビのリスクが低い断熱材です。
セルロースファイバーのデメリット
さまざまなメリットがあり人気のセルロースファイバーですが、価格は高価です。しかし、メリットも多くあるため、高価でもメリットをふまえて最適な選び方をしましょう。
セルロースファイバーは断熱材の中でも国内シェアがまだ低い素材であるため、施工できる職人も機械も少ないことが現状です。
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最適な断熱材の選び方
選び方①:断熱材のおおまかな価格を把握する
以下の表は、安い順番で断熱材の費用が並べられています。住宅メーカーが良く使用しているのはグラスウールやロックウールですが、高価でないことから人気の秘密がわかりますね。
順位 |
断熱材 |
価格の目安(㎡) |
---|---|---|
1 |
グラスウール |
6000~7000円 |
2 |
ロックウール |
6000~8000円 |
3 |
ポリスチレンフォーム(ビーズ法&押出法) |
10000~12000円 |
4 |
セルロースファイバー |
15000~18000円 |
5 |
硬質ウレタンフォーム(ボード&現場発泡) |
15000~20000円 |
6 |
フェノールフォーム |
18000~22000円 |
選び方②:断熱材の熱伝導率を把握する
次は、断熱材の熱伝導率をみていきましょう。断熱材の熱伝導率の単位は「W/m・K」で表されますが、この値が小さいほど熱伝導性が低くなって断熱性能が高まります。
以下の表に熱伝導率からみた順位をまとめたので、参考にしてみてください。
順位 |
断熱材 |
熱伝導率[W/(m・K)] (数値が小さいほど高断熱) |
---|---|---|
1 |
フェノールフォーム |
0.019~0.036 |
2 |
硬質ウレタンフォーム(ボード&現場発泡) |
0.023~0.040 |
3 |
ポリスチレンフォーム(ビーズ法&押出法) |
0.024~0.043 |
4 |
ロックウール |
0.035~0.047 |
5 |
セルロースファイバー |
0.038~0.040 |
6 |
グラスウール |
0.038~0.050 |
断熱性をアップさせるためには、熱伝導率が低い材質を選ぶだけではなく厚みも重要なポイントです。例えば、断熱性が一番低いグラスウールでも厚くすれば断熱性能を向上させることが可能です。
どの断熱材をどれくらいの厚さで施工するかは、各住宅メーカーやリフォーム会社の基準があるので、プロと相談しながら決めましょう。
選び方③:各断熱材の特徴を知る
断熱材はさまざまな種類の素材で作られているため、素材によって機能が異なります。以下に各断熱材の特徴の違いが一目で分かるよう表にまとめたので、参考にしてみてください。選び方として、断熱材のどの特徴に重きを置くかを考えながら、専門家に相談してみると良いでしょう。
最適な断熱材を選んで快適なお家にしよう
今回は、お家を快適に維持して省エネにも貢献してくれる断熱材について紹介しました。断熱材はさまざまな種類があるため、当記事の解説を参考に自宅にあった最適な選び方を見つけましょう。
また、大掛かりなリフォームになるからこそ、素材選びは慎重に行うことをおすすめします。信頼できるプロの意見も参考にしながら、ご家族が快適に過ごせる空間にリフォームしましょう。
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