芙蓉宅建FPオフィス代表。金融業界歴10年目(2020年現在)。お金と不動産の専門家。生命保険、損害保険、各種金融商品の販売を一切行わない「完全独立系FP」として、プロの立場から公平かつ根拠のしっかりしたコンサルティングを行っています。一般消費者の金融に関する苦手意識を払拭すべく、ライフワークとして「超・初心者向けマネー勉強会」を毎月テーマを変えて開催しています。
新築住宅の購入だけでなく、中古住宅を購入するときに利用できる補助金などお得な制度があるのをご存知ですか。本記事では中古住宅を購入する時に利用できるさまざまな補助金制度についてや、減税制度の概要と申請方法について解説します。
目次
中古住宅購入を取り巻く環境
「国土交通省・土地建設産業局、住宅局」がまとめたデータによると、既存住宅(中古住宅)流通量は全住宅流通量の約14,7%程度に留まっているということです。この調査結果によると、既存住宅の流通シェアは近年大きくなりつつあるものの、依然低い水準であるということです。この背景には、中古住宅と居住ニーズのミスマッチがあるとされていて、中古住宅を購入してそのまま住むというよりは、新たに改修(リフォーム)をしてから住み始めるながれが多いようです。
また、中古住宅のなかでも一戸建てよりマンションの方が販売戸数が伸びているというデータもあります。このようなデータもふまえ、中古住宅を購入し環境性能の高いリフォームをすることで補助金がもらえたり、長期的に税制面のメリットが受けられるなどさまざまな対策が設置されるようになりました。
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中古住宅購入で使える補助金制度
補助金とは、要件を満たせば返還する必要のない「もらえるお金」のことを指します。住居購入は新築でも中古でも大きなお金がかかるタイミングですので、制度を理解してお得に活用したいものです。ここからは、中古住宅購入で使える補助金制度について解説します。
国からの補助金
中古住宅購入で受けられる補助金は、「国からの補助金」と「地方自治体からの補助金」の二つに分けられます。まずは国からの補助金について以下の3つがあります。
国からもらえる補助金
- すまい給付金
- 地域型住宅グリーン化事業補助金
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
すまい給付金
すまい給付金は所得によって受けられる金額が変わります。収入450万円以下の人では最大50万円のすまい給付金がもらえます。すまい給付金は収入が上がるともらえる給付金額が少なくなる仕組みで、収入675万円超から775万円以下の人は10万円となっています。このように、すまい給付金は所得が低い方がもらえる金額は大きくなる仕組みです。すまい給付金は、消費増税対策の経済措置として当初は令和3年(2021年)12月31日までの期限付きでした。しかし、給付の対象となる物件の引き渡し、入居期限は令和4年(2022年)12月31日までと1年延長されました。すまい給付金の請求手続きは「すまい給付金事務局」へ入居後に申請します。申請期限は引き渡しから1年3ヶ月以内です。また、中古住宅購入の際に住宅ローンを利用するかしないかによって適用要件が以下のように変わります。
住宅ローンを利用する場合の適用条件
- 売主が宅建業者
- 自ら居住する50㎡以上の建物(40㎡に緩和)
- 現場検査を受け現行の耐震制度を満たしている等、以下の1~3の要件のいずれかに該当する住宅
- (1)既存住宅売買瑕疵保険に加入済
- (2)既存住宅性能表示制度を利用した住宅(耐震投球1以上)
- (3)建築後10年以内であって住宅瑕疵担保責任保険に加入している住宅または建築住宅性能表示を利用している住宅
住宅ローンを利用しない場合の適用条件
上記の「住宅ローンを利用する場合の適用条件」に加えて以下2つも満たすこと
- (1)契約者(取得者)が50歳以上であること
- (2)収入額の目安が650万円以下であること
地域型住宅グリーン化事業補助金
地域型住宅グリーン化事業補助金は、地域に根差した工務店などで住宅を購入または改修することで利用できます。この補助金を使うためには、一定の基準を満たし国から採択されたグループに所属した工務店であることが条件です。この際中古住宅でも対象となりますが、「戸建て住宅を省エネ改修する」という条件があります。
この補助金は直接依頼者に支払われるのではなく、まず工務店等へ支払われ、その後工務店等を通じて依頼者へ支払われる仕組みです。中古住宅を省エネ改修する場合に受けられる地域型住宅グリーン化事業補助金は、最大50万円です。
この制度を利用する際は、住宅メーカーや工務店などに利用の流れについて相談してみましょう。なお、工事の着手は補助金採択後になりますので注意が必要です。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業とは、中古住宅を購入した後1年以内に適用条件を満たしたリフォームをすることで補助金が受けられる制度です。中古住宅を長く安全に使うためのリフォームに対し、改修工事の内容によって100万円~最大300万円の間で助成が受けられます。長期優良住宅化リフォーム推進事業は「標準基準型」「認定長期有料住宅型」「高度省エネルギー型」の3つの型に分けられます。補助限度額は、評価基準型は100万円、認定長期優良住宅型は200万円、高度省エネルギー型は250万円です。住戸規模の要件として「評価基準型」では55㎡以上であること、他2つの型では原則75㎡以上であることが挙げられます。
補助限度額に加算されるための条件
- 三世代同居対応改修工事を実施する→最大50万円の加算
- 若者または子育て世帯が工事を実施する→最大50万円の加算
- 既存住宅の購入者が購入後1年以内に工事を実施する→最大50万円の加算
長期優良住宅化リフォーム推進事業の主な適用条件は以下の通りです。
長期優良住宅化リフォーム推進事業・主な適用条件
- リフォーム後に耐震・省エネ・劣化など長期優良住宅に準ずる基準を満たす
- インスペクション(有資格者による建物状況調査)を実施すること
- リフォーム履歴・維持保全計画を実施
共通の要件としてリフォーム工事前にインスペクション(建物状況調査)を行い、リフォームの履歴と維持保全計画の策定があります。またリフォームに関するすべての費用が対象となるわけではなく、以下の費用が対象となります。
補助金の対象となる費用
- 性能向上リフォームに要する費用
- 三世代同居対応改修に要する費用
- 子育て世帯向け改修工事に要する費用
- 防災性・レジリエンス性の向上改修費用
- インスペクション等に要する費用
自治体からの補助金
国からもらえる補助金以外にも、県や市町村など住んでいる地域からもらえるお金もあります。県や市町村などの補助金や助成制度は、国からの補助金等と重ねてもらえる場合もあります。どのような内容の補助金等を導入しているかは地域によって差があるため、比較的取り入れている地域の多い「同居に関する補助金」「子育てに関する補助金」「地元建材を利用した場合の補助金」の3つのテーマについて具体的な自治体の例を挙げて解説します。
自治体からもらえる補助金(例)
- 同居するための補助金
- 子育て補助金
- 地元の建材を利用した場合の補助金
同居のための補助金(大阪府高槻市の例)
大阪府高槻市では「住宅取得補助金(3世代ファミリー定住支援事業)」を実施しています。市外から転入した子育て世帯と、高槻市内に既に住んでいる親世代との同居・近居(近くに住む)を前提とした住宅購入費用やリフォーム費用を20万円まで補助します。この他にも、千葉県千葉市や愛知県刈谷市に類似の同居のための補助金制度があります。
子育て補助金(大阪市の例)
大阪市では「大阪市新婚・子育て世帯向け分譲住宅購入融資利子補給制度」という独自の支援制度を実施しています。中古物件も含めて初めて家を購入する新婚世帯、子育て世帯に対して年間最大10万円を5年間助成するという内容です。前年の所得が1,200万円以下であることや、この制度の融資取扱金融機関の住宅ローンを利用しているなどの条件があります。このほか、神奈川県藤枝市や東京都福生市で類似の補助金制度があります。
地元の建材を利用した場合の補助金(兵庫県の例)
兵庫県では「県産木材を利用した木造住宅(兵庫県産木材利用木造住宅特別融資制度)」を実施しています。補助金として金額をもらえるわけではありませんが、兵庫県産の木材を利用した長期優良住宅化リフォームなどを対象とした金利優遇制度です。兵庫県産木材を全体の30%以上使うなどの条件を満たすと、当初25年間は固定金利0.8%となります。このほか、埼玉県や京都府で類似の助成があります。
国と自治体の補助金併用の注意点
中古住宅購入で国と自治体でもらえる補助金は、併用できるものとできないものがあります。各補助金制度の問い合わせ窓口に事前に照会しておくと安心です。
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中古住宅購入で使える減税制度と申請方法
ここからは、中古住宅購入で使える減税制度と申請方法について解説します。
中古住宅購入で使える減税制度
- 住宅ローン控除(減税)
- 住宅取得等資金贈与の非課税特例
住宅ローン減税
住宅ローン減税は、新築住宅の購入だけでなく中古住宅の購入でも利用できます。適用される中古物件の要件は「戸建てで築20年以内・マンションで築25年以内」です。購入した住宅に自身が居住することや、10年以上の住宅ローンを組んで購入した住宅が対象となります。住宅ローン減税は年末時点のローン残高の1%の金額を10年に渡って控除します。なお令和4年度(2022年度)からは、年末時点のローン残高の0.7%を13年間にわたって控除する内容に変わります。
住宅ローン減税の申請方法
住宅ローン減税は、基本的に確定申告で申請します。しかし、会社員などの給与所得者は確定申告の代わりに勤務先の年末調整で申請できる場合があります。ただし住宅ローン減税を適用する初年度のみ自身で確定申告をする必要があります。
住宅取得等資金贈与の非課税特例
住宅取得等資金贈与の非課税制度とは、住宅購入を目的として父母や祖父母など直系尊属から必要な資金の贈与を受けた場合、一定金額まで非課税となる制度です。これには中古住宅の購入費用も含まれます。非課税となる金額は購入する住宅が「一般住宅」か「質の高い住宅」によっても違います。質の高い住宅とは以下の3種類のいずれかを満たす住宅で、この条件を満たした場合は一般住宅の非課税金額に500万円が加算されます。。なお、一般住宅とは質の高い住宅に該当しない住宅のことを指します。
質の高い住宅
- 省エネルギー性の高い住宅(一次エネルギー消費量等級4または耐熱等性能等級4)
- 耐震性の高い住宅(耐震等級2以上または免震建築物)
- バリアフリー性の高い住宅(高齢者等配慮対策等級3以上)
住宅取得等資金贈与の非課税特例の申請方法
住宅取得等資金贈与の非課税特例を使う場合、贈与税の申告が必要です。前年分の贈与について、翌年2月15日〜3月15日までの間に申告します。なお、令和3年実施分は、新型コロナウイルス感染症の影響から、申告期間が1カ月延期されました。令和4年実施分に関しては国税庁ホームページで確認しましょう。
実際に中古住宅を購入する場合の流れ
ここからは、実際に中古住宅を購入したと仮定して、どのようなお得な制度が利用できるのか実践編として紹介していきます。あくまでも仮定の条件ですので、実際の適用に関しては利用時に関連先へお尋ねください。
中古住宅購入で何が対象になるのか調べる
まず、中古住宅を購入する場合には不動産会社を訪ねて物件を探します。中古住宅でも対象となる「住宅ローン減税」を適用するには、戸建て物件で築20年以内、マンションで築25年以内という条件があります。また、10年以上の住宅ローンを組むことも住宅ローン減税を使うための条件ですので、こちらも忘れないようにしましょう。これらの条件を満たす物件探しを、不動産会社の担当者と行いましょう。重ねてリフォームが必要な場合は、工務店とも補助金や助成金の有無についてあらかじめ確認しておくと安心です。
自治体の補助金制度も活用しよう
県や市町村など自治体独自の補助金や助成金の制度も必ず確認しましょう。たとえば中古住宅購入後、リフォームをする際に県産木材を利用するだけで金利優遇の対象になるなどメリットは大きいです。自治体の補助金に関しては、住んでいる地域の広報誌やホームページで情報を得ることができます。こまめにチェックするか、行政の住宅関連窓口へ相談してみましょう。
すまい給付金サイトでシミュレーション可能
前述した「国からの補助金」で紹介した「すまい給付金」に関して、国土交通省が「すまい給付金Webサイト」を運営しています。このサイトでは、すまい給付金と住宅ローン減税のシミュレーションが利用できます。簡単な内容を入力するだけで、すまい給付金をいくらもらえるかわかります。住宅ローン減税額シミュレーションは、借入金利や残高などを入力するだけで結果がわかります。中古住宅購入前にこれらのシミュレーションを上手に活用し、購入する際の目安にすることをおすすめします。
減税制度と補助金を組み合わせてお得に購入しよう
制度の違うさまざまな補助金や助成金、減税を組み合わせることでお得に中古住宅を購入できます。適用条件を把握しておくことで、受けられるメリットが大きく変わります。
お得な中古住宅購入の制度を利用して理想の住まいを手に入れよう
中古住宅を購入したり、さらにリフォームを行い安全性の高い家に住み続けるための補助金や助成金をお得に活用しましょう。特に税制面のメリットは大きく、住宅ローン減税は長期に渡る制度ですので是非利用したい制度です。購入やリフォームの細かい点でわからないことがあれば、不動産会社や工務店の担当者に尋ねて不安を解消しましょう。
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