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古民家リノベーションの魅力とは?プロが教える工事の費用相場や事例を解説!

この人に聞きました夏目あや子

一級建築士 おうちを楽しく育てる暮らし「おうち育」を提案しています。 収納・100均リメイク・DIYなどおうちに関する楽しいアイディアをSNSで発信中していますのでぜひご覧ください!著書「なつめさんちの新しいのになつかしいアンティークな部屋つくり」や 雑誌掲載・TV出演・コラム執筆・空間プロデュースなど幅広く活躍中です。

今の建築には出せないレトロなたたずまいを魅力とする古民家。実際住むとなれば、設備や内装をリノベーションして雰囲気を残しながらも快適に過ごしたいですね。どのくらいの費用が掛かるのでしょうか?費用相場や事例についてご紹介します。

そもそも古民家とは何か

古民家とは、伝統構法で作られた建物

レトロなたたずまいが魅力の古民家。リノベーションして活用することが普及しつつあります。しかしそもそも古民家とはなんでしょうか。実は明確な定義はありませんが、全国古民家再生協会ではこんな定義を前提としています。

引用

一般的に古民家とは建築後50年経過した建物とされるが、 一般社団法人全国古民家再生協会での「古民家」の定義は、昭和25年の建築基準法の制定時に既に建てられていた「伝統的建造物の住宅」すなわち伝統構法とする。

引用元 : 一般社団法人 全国古民家再生協会

伝統構法とは

伝統構法とは、西洋建築の考えが入ってくる前の日本古来の建築方法で、古来からある寺社仏閣などはこの建築方法です。金物などを使わず木だけで組み立てる「木組み」を基本とし、太い柱や梁を巧みに加工して作られています。

今、この伝統構法は現在の木造建築ではとても珍しく、古民家の魅力です。そんな古民家を再生し活用するリノベーションに興味を持ち、一般住宅として改修する事例が増えています。

古民家リノベーションの魅力

ではなぜ古民家のリノベーションが注目されているのでしょうか。それは手間をかけても古民家を残す魅力があるからだと考えます。

レトロな雰囲気やたたずまいを感じることができる

古民家をリノベーションして住んでみたい、と考える一番の魅力は何といっても現代の建築には出せない雰囲気です。もちろん新しい建物にもたくさんの魅力がありますが、古民家には経年で培ってきた独特の雰囲気や趣があります。

職人が一つずつ作り上げた大きな柱や梁は今現在作ることが難しく、古民家でなければ味わえないものです。

強靭な柱や梁の魅力

古民家は柱や梁だけで建物を支える構造です。そのため既存で使われている木材はけやきやひのきなど強靭なものが多く、うまく活用しリノベーションをすることによって耐久性の高い住宅にできます。

資源保護になる

住む人がいなくなり壊されてしまう古民家もたくさんあります。改修工事をすることで残していく方法をぜひ選択したいものです。まだ使える資源として古民家を残すことができれば、資源の保護にもなります。

実際、手間はかかるけれど丁寧な暮らしに魅力を感じる人が古民家を改修して住む事例が増えています。庭付き、畑付きの事例も多いので、家族でスローライフを楽しめることが人気となっています。

固定資産税がお得な場合も

固定資産税は築年数で変わります。木造建築の場合は建築後の経過年数が25年を超えると金額が下限になります。リノベーションの場合築年数はそのままになるので、古民家などの古い家の固定資産税は新築の住宅より安く済みます。

古民家をリノベーションする際の注意点

予想しない費用が掛かる可能性

古民家は築年数の古い住宅です。解体してみたら、基礎や柱などに大きな痛みがあった、地盤が弱かった(昔は地盤調査をしていない場合も)など、構造に大きな影響を及ぼす不具合が見つかる場合があります。

古民家はもともとの建物自体頑丈に作られてはいますが、劣化があっては頑丈な性能を発揮できません。

想定外の劣化があるとその分費用がかさみます。また、古民家は今とは違う法律の下建てられており構法も特殊なため通常の耐震補強ができない場合があります。特殊な方法は費用が高いこともあります。

改修工事期間が通常より長い

古民家は伝統構法のため補修などの工事方法が特殊な場合があります。また基礎も打ち増しや打ち直しをすることが多いため、通常のリノベーションよりも改修期間が長い場合が多いです。

 

 

古民家リノベーションの工事内容のポイント

通常のリノベーションより気を付けることも多いのが古民家リノベーション。費用相場を確認する前に、どんな改修をするべきなのか、見てみましょう。古民家をリノベーションする工事内容のポイントはいくつかあります。

屋根や外壁の工事

古民家リノベーションでは屋根や外壁はほとんどの場合において補修が必要です。もししばらく使われていない古民家のリノベーションであればなおさら傷んでいる可能性が高いため、雨漏りなどの心配がないか確認する必要があります。

改修方法は通常のリノベーションであれば塗装や葺き替えで対応可能ですが、外壁材が土壁の補修や瓦を交換するとなれば専用の改修工事ができる職人が必要です。  

耐震性能を付加する工事

今現在の建築基準法では、柱や梁を金物で接合し、コンクリートの基礎をつくることが基準となっています。古民家は木組みの構法のため金物が使われておらず現在の耐震基準は満たしていません。

古民家リノベーションの場合、現状の耐震基準に合わせた改修は義務ではありません。劣化などがなければ伝統構法の耐久性を発揮できます。が、古民家が建てられたころには想定できなかったことも起きる可能性があります。

耐震性能が心配な場合は耐震診断を受けるのもひとつの手段です。古民家の状態や改修方法によっては補助金を取得できる場合もあるので施工業者へぜひ相談してみましょう。  

断熱性能の付加工事

古民家はエアコンのない時代に建てられた住宅のため、風通しが良く作られています。逆に言えば、風が良く通るので気密性は低く、夏は涼しいですが冬はとても寒いのが特徴です。四季を感じることができるのでそれも魅力の一つですが、寒さはある程度対策する必要があります。

古民家で快適に過ごすためには、断熱改修は欠かせないリノベーション内容だと考えます。外壁や床、天井へ断熱材を施工する方法のほか、隙間風などが気になる場合はサッシの交換なども検討する必要があります。

古民家は涼しく過ごすために天井高も高く作られていることが多く、天井をつくれば断熱性能も上がります。ただ、あえて梁を見せる「あらわしの梁」は古民家の魅力のひとつなので、一部のみ梁を残すなど改修計画で工夫する方法を相談してみてくださいね。

設備機器を交換する工事

水回りなどの設備機器はリフォームをしていない限り古いのですべて交換する改修方法が主です。洗面、浴室、トイレ、キッチンなどを交換し住みやすくする必要があるといえます。

間取り変更のリノベーション工事

古民家のほとんどは田の字づくりというふすまで仕切られたつながった空間が居室となっていて、現代の暮らし方には合わない部分もあります。広く使えることは魅力でもありますが、プライバシーの確保などを考えると間取り変更の工事は必要ですね。

古民家リノベーションの費用相場

これまでの情報を聞くと通常のリノベーションより古民家リノベーションは費用がかかりそうなリノベーションに思えます。おおよその費用相場はどれくらいなのでしょうか。

全体的なリノベーションの費用相場

古民家のリノベーション費用は、住宅の状態によってもかなり差があり一概にいくらとは言いにくいものですが、事例で見ると1000万円~2000万円の相場で行われている工事が多いです。

屋根や外壁のリノベーション費用相場

屋根は下地の劣化がなくセメントでできた安価なスレートや鋼板への交換であれば100~200万円程度の費用相場です。瓦を交換する場合はもう少しかかり、300万円程度が相場になっています。

外壁は上からカバーする方法・塗装・貼り替えがありますが古民家の場合は塗り壁や板壁の場合が多いです。塗り壁であれば補修と塗装、板壁は貼り替えなども検討します。費用相場としては100~300万円程度です。

水回りリノベーションの費用相場

キッチン、沿面やお風呂、トイレなどの水回りは配管工事なども含めてまとめてリノベーションを行うのがおすすめです。配管工事などを含むので通常のリノベーションよりは相場が高い傾向があります。

デザインにこだわりがない場合200~300万円程度の費用相場から可能です。特殊な造作工事やユニットバスではないお風呂を選ぶなどこだわりが多くなれば費用も上がります。

 

 

断熱改修のリノベーション費用相場

断熱改修は費用相場の幅が広いリノベーションです。全面的に断熱材を施工して断熱サッシにするなどフルリノベーションであれば、広さにもよりますが1000万円かかってもおかしくありません。

事例から見ると300~500万円程度が相場です。改修方法でかなり左右される内容なので、施工業者との細かい相談が必要です。

古民家リノベーションの補助金

古民家のリノベーションする場合には断熱工事や耐震工事、将来を見据えてバリアフリー工事などを行うことが多いです。そうした改修工事は補助金が使える場合があるのでぜひ活用しましょう。

省エネ・断熱に関わるリノベーション

省エネになる断熱工事をした場合には、断熱リフォーム補助金が申請できます。断熱サッシや断熱材の施工、エコキュートや省エネ型蓄熱設備なども対象になります。

バリアフリーに関わるリノベーション

古民家は涼しく過ごすために床が高く作られていることが多いのが特徴です。それも魅力の一つですが、そうした段差を解消するべくバリアフリーリノベーションを行う事例も多くあります。

古民家リノベーションに関わる補助金については、国が用意しているものから自治体独自のものまで、さまざまな種類があります。補助金を使えるよう施工業者とよく相談してリノベーション方法を工夫してみましょう。

古民家の中古住宅を探すなら

古民家物件を探してリノベーションするなら、できるだけ状態が良いものを選択できたほうがリノベーション費用がかからないといえます。そんな時に注意しておきたい、いくつかのポイントを紹介していきます。

地盤がしっかりした場所

現代の住宅と違って古民家の場合は建てる際の地盤調査をしていません。基礎もコンクリートでないことがほとんどのため、地盤が弱い場所では今後地震での傾きや倒壊の心配が出てきます。

物件の購入の際には地盤調調査がきちんとされているか、確認する必要があります。

家が傾いてないこと

築年数が古ければ古いほど、古民家自体が傾いているという事例を見かけます。傾きももちろんリノベーションで直す方法もありますが、費用がかなりかかってくるのでおすすめはできません。

古民家のリノベーション事例

古民家のリノベーションはどのような改修事例があるのか、いくつかご紹介します。

リノベーション事例1

和モダンデザインの古民家再生

施工会社:住友不動産の新築そっくりさん 

URL:https://www.sokkuri3.com/

こちらは築150年、約63坪、費用2000万円以上のリノベーション事例です。

100年超えの古民家特有の粘土でできた土瓦を軽量な鋼板に交換したり、傷んでしまっていた足元はそっくり交換し耐震補強をしています。

土間にあった浴室や台所もすべて交換し使い勝手の良い現代の設備を導入しつつ、梁や建具は使える部分を残しインテリアとして生かしています。

古民家の雰囲気の良さもありながら現代の暮らしに沿うお住まいに生まれ変わった素敵なリノベーション事例です。

リノベーション事例2

和洋・新旧のミックス感を楽しむ家

施工会社:アートリフォーム

URL:https://www.artreform.com/

築80年、坪約42坪、費用約2300万円のリノベーション事例です。

防音室やシアタールームなどライフスタイルに合わせた個性的なお部屋を古民家で実現しているこちらのおうち。

特筆したいのは、丸太梁をふんだんに魅せた2階部分です。2間続きだった和室の天井を取り払い、古民家ならではの大空間を生かしています。

1階部分なども補強をしながら既存の建具や素材などをうまく使い、西洋のアンティーク家具を日本古来の古民家と合わせ個性的な空間になっています。

リノベーション事例3

和モダンに生まれ変わった古民家

施工会社:ナサホーム

URL:https://nasahome.co.jp/

こちらは築60年、費用約3000万円のリノベーション事例です。

家全体をバリアフリーにするための全面改装です。

古民家のため段差も多かったそうですが玄関部分は2段にしたりと様々な工夫で解消しバリアフリー化に成功。

床や天井は木材をふんだんに使用し、和風な佇まいを残しつつアートのような曲線が特徴的な玄関回りなど、現代的な要素も取り入れられています。

とても明るくなったLDKはくつろげる空間になって素敵ですね。

リノベーション事例4

和洋風の新しい古民家リフォーム

施工会社:株式会社 河原工房

URL:http://www.omoiokatachini.jp/

こちらは築80年、坪38坪、費用1900万円のリノベーション事例です。

7年間使われていなかった離れの古民家を娘様の居住用のため改修。

水栓とシンク以外はすべて造作家具にしたり、手作りのランプを設置したり、手作り感あふれる温かい空間作りを実現しています。

もともとお店として使われていた部分もうまく残し、ナチュラルテイストも取り入れた新しい古民家の形です。

古民家リノベーションで希望の暮らしを実現

古民家には現代では造り出すことのできない日本古来の趣や雰囲気があり、それが一番の魅力です。まだまだ使える部分があるのに壊してしまうのはもったいないとも思いますよね。古民家の良さを残しつつ改装を行えば快適な暮らしを実現できるはずです。

もちろん古い建物なので注意すべき点はたくさんありますが、リノベーションの方法を業者とよく検討して古き良き時代の趣とともに暮らしていくのも素敵ですね。

 

 

※掲載情報は記事制作時点のもので、現在の情報と異なる場合があります。

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