宅地建物取引士、FP2級保有 不動産・建設会社の土地有効活用のコンサルティング営業を6年担当。現在は不動産や建設業界の知見を活かした不動産や金融ジャンルのライターとして活動しています。
「リフォーム瑕疵保険って何?」「どんなメリットがあるの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、
- リフォーム瑕疵保険の概要
- リフォーム瑕疵保険のメリット
- リフォーム瑕疵保険のデメリット
- リフォーム瑕疵保険の保険料と保険金の内容
- リフォーム瑕疵保険の対象となるリフォーム工事と保証期間
を紹介します。
要件を満たすことで、工事後に不具合が見つかっても1,000万円以上の保険金を受け取ることができるケースがあります。
リフォーム瑕疵保険の仕組みを把握しておくことで、安心してリフォーム工事を進められるようになるでしょう。
目次
リフォーム瑕疵保険とは
リフォーム工事の際に「万が一、工事に不具合があった場合はどうなるのだろう」と不安を感じる方もいるのではないでしょうか。そのような不安を解消する制度として、リフォーム瑕疵保険が用意されています。
ここでは、リフォーム瑕疵保険の概要について解説します。
瑕疵とは
瑕疵(かし)とは、リフォーム工事をする際に約束された性能や品質が確保されていない状態を指します。例えば、耐震化のリフォームを行った場合には、工事完了後に一定の耐震性能を満たしているかが重要です。
もし工事後の検査で、定められた耐震性能を確保できていないことが判明した場合、それが瑕疵に該当します。
また、防水工事を実施したにもかかわらず雨漏りが発生したり、断熱リフォームを行ったのに室温が一定に保てなかったりするケースも瑕疵となります。つまり、リフォーム保険における瑕疵とは工事の欠陥のことです。
住宅の瑕疵保険とは
住宅の瑕疵保険は、リフォームや新築工事などで瑕疵(欠陥)が発生した際に、補修費用などを補償する制度です。保険期間内に瑕疵が見つかった場合、施主は保険法人に直接保険金を請求できます。また、リフォーム会社が倒産や廃業した場合でも、保険による保証を受けられます。
一般的な保険と同様に、保険金を受け取るためには一定の条件を満たすことが必要です。しかし、条件を満たしていれば万が一、工事に不具合があっても、無償で直してもらえるため、安心してリフォーム工事を進められるでしょう。
住宅瑕疵担保責任保険法人とは
住宅瑕疵担保責任保険法人は、国土交通大臣から指定を受けた住宅専門の保険会社です。現在、以下の5つの法人が指定されています。
- 株式会社住宅あんしん保証
- 住宅保証機構株式会社
- 株式会社日本住宅保証検査機構
- 株式会社ハウスジーメン
- ハウスプラス住宅保証株式会社
これらの法人は全国を対象に業務を展開しており、リフォーム会社はいずれかの法人と保険契約を結ぶことができます。リフォーム工事に瑕疵が見つかった場合や、リフォーム会社が倒産した場合には、これらの法人から保険金が支払われる仕組みです。
指定を受けた保険法人は、保険の提供だけではなく住宅の品質確保に関する重要な役割も担っています。例えば、保険加入時の現場検査を通じて工事の品質をチェックしたり、リフォーム会社への技術的なアドバイスを行ったりしています。
リフォーム瑕疵保険の対象住宅
リフォーム瑕疵保険の対象となるのは、建物の一部に対して増築や改修、補修の工事を行う住宅です。店舗や事務所との併用住宅も対象となり、建物の構造や工法、築年数による制限はありません。新築時の住宅瑕疵保険とは異なり、リフォーム瑕疵保険は既存の住宅を対象とした保険制度となっているため、古い建物でも加入することができます。
リフォーム瑕疵保険のメリット
リフォーム工事中に、万が一のトラブルが発生したらどうすれば良いのでしょうか。工事の規模や内容によっては、予期せぬ瑕疵や問題が発生し、後々の負担やトラブルにつながることがあります。
ここでは、リフォーム瑕疵保険に加入するメリットを6つ紹介します。メリットを理解することで、リフォーム工事をより安心して進められるようになるでしょう。
第三者の検査が行われる
リフォーム瑕疵保険に加入すると、専門の建築士による第三者の検査が実施されます。検査は工事完了後に必ず行われ、リフォームの内容によっては施工中にも実施されるでしょう。特に構造に関わる大規模なリフォームでは、複数回の検査が行われることもあります。
検査は各工事内容における設計施工基準に基づいて行われるため、施工品質が客観的に評価されることになります。リフォーム会社だけではなく、専門家の目を通すことで、品質確保が期待できるでしょう。
また、第三者検査は施主と施工会社の双方にとってメリットがあります。施主にとっては工事の品質が保証され、施工会社にとっては自社の技術力を客観的に証明できる機会となるからです。このように、第三者検査は工事の透明性と信頼性を高める重要な役割を果たしています。
リフォームをした範囲すべてが対象となる
工事内容に関係なく、リフォームを実施した箇所すべてが瑕疵保険の対象となります。契約時に合意したリフォームの範囲内であれば「この部分は保証の対象外です」といった除外事項はありません。工事の種類によって保証範囲が制限されることもないため、幅広い保証を受けられます。
例えば、キッチンのリフォームと外壁の塗り替えを同時に行った場合、その両方が保証の対象です。また、バスルームの改装時に床や壁、天井、設備などを一体的に工事した場合も、それら全ての部分が保証されます。
このように、リフォームした範囲を包括的に保証してくれる点は、施主にとって大きな安心材料となるでしょう。対象となるリフォーム工事の詳細は、後ほど詳しく紹介します。
品質の良いリフォームができる
保険加入時には設計施工基準に沿って工事が必要です。そのため、手抜き工事や雑な仕上がりになるリスクを抑えられます。また、工事後の検査でも保険対象部分をしっかりと確認してもらえるため、一定水準以上の品質が確保されます。
設計施工基準は、長年の実績と研究に基づいて策定されており、住宅の安全性と快適性を確保するための重要な指針です。この基準に従うことで、技術的に信頼できる工事が実現できます。
さらに、保険に加入するリフォーム会社は、基準を満たすための技術力と経験を持っていることが求められます。そのため、保険加入済みの会社を選ぶことで、より確実な品質を期待できるでしょう。
欠陥があっても安心できる
万が一、リフォーム工事で欠陥が見つかった場合でも、施主は保険法人に直接保険金を請求することができます。施工したリフォーム会社ではなく、第三者である検査機関が欠陥を証明してくれるため、客観的な判断が期待できます。
また、保険金の請求手続きも保険法人が窓口となるため、リフォーム会社との直接のやり取りに比べてスムーズに進めやすいというのもメリットです。施主自身で欠陥の原因を証明する必要もなく、専門家による調査結果に基づいて保険金が支払われます。
保険金は補修工事の費用をカバーするだけではなく、調査費用や仮住まい費用なども補償の対象となることがあります。このように、欠陥が見つかった際の家計の負担を軽減できる点も大きなメリットといえるでしょう。
リフォーム会社が倒産しても保証される
リフォーム瑕疵保険のもう1つの大きなメリットは、リフォーム会社が倒産した場合でも保証が継続される点です。工事完了後に欠陥が発見され、施工会社が既に倒産していた場合でも、必要な補修費用を受け取ることができます。
通常の瑕疵担保責任では、会社が倒産すると保証を受けられなくなってしまいますが、保険に加入していれば、会社の存続に関係なく保証を受けられます。
特に高額なリフォーム工事や、長期のリフォームローンを組む場合には、会社の倒産リスクも考慮に入れる必要があります。その意味でも、瑕疵保険への加入は積極的に検討する必要があるでしょう。
加入事業者が公開されている
一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会のホームページでは、瑕疵保険に加入している事業者の一覧が公開されています。リフォーム会社を選ぶ際に、事前に加入状況を確認できるため、信頼できる会社を見つけやすくなります。
瑕疵保険への加入には協会の審査が必要となるため、加入している会社は一定の信頼性が確保されているといえるでしょう。審査では、会社の財務状況や技術力、過去の施工実績なども確認されます。
また、加入事業者は定期的に講習会や研修を受講することが求められ、最新の技術や制度について学ぶ機会が設けられています。このような継続的な学習体制も、加入事業者の信頼性を高める要因です。
リフォーム瑕疵保険のデメリット
リフォーム瑕疵保険は多くのメリットがありますが「本当に必要なのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。リフォーム瑕疵保険にはメリットだけではなく、コストや条件の面で注意が必要なデメリットも存在します。
ここでは、リフォーム瑕疵保険の3つのデメリットを解説し、賢明な保険選びのサポートをします。これらのデメリットを正しく理解することで、自分に合った判断がしやすくなるでしょう。
保険料を支払う必要がある
リフォーム瑕疵保険に加入する場合、保険料の支払いが必要です。保険料は工事の規模や内容によって異なりますが、工事費用の2~10%程度となります。
保険料の負担者は基本的にリフォーム会社となりますが、その分が工事費用に上乗せされることも少なくありません。そのため、実質的には施主が保険料を負担することになるケースが多いです。
施主の立場から見ると、工事費用に加えて保険料という追加の費用が発生することは、予算計画を立てる上で考慮すべき重要なポイントとなります。特に予算に余裕がない場合には、保険加入の判断に迷うかもしれません。
保険期間が短い
リフォーム瑕疵保険の保険期間は、工事内容によって1年または5年と定められています。新築住宅の瑕疵保険が10年間であることと比較すると、保険期間が短いことがわかります。このため、工事完了から時間が経過した後に不具合が見つかった場合、保険による保証を受けられません。
また、保険期間は工事完了日から起算されるため、実際に不具合に気付くまでの期間を考慮すると、さらに実質的な保証期間は短くなります。このような保険期間の短さは、長期的な安心感を求める施主にとってはデメリットとなるでしょう。
工事期間が長くなる傾向にある
瑕疵保険に加入する場合、設計施工基準に則った工事が求められ、また第三者による検査も実施されます。これらの要件を満たすために、工事期間が通常よりも長くなる傾向があります。
具体的には以下のような理由で、工事期間が延びる可能性があります。
- 設計施工基準に沿った詳細な施工計画の作成が必要
- 工事中の検査のために、作業を一時中断する場合がある
- 検査で指摘された事項の修正に時間がかかる
- 保険申請や検査の日程調整に時間を要する
工事期間が長くなることで、仮住まいの期間が延びたり、日常生活への影響が大きくなったりする可能性もあります。また、工期が延びることで追加の費用が発生するケースもあるため、注意が必要です。
施主の立場からすると、できるだけ短期間で工事を完了させたい場合もあるでしょう。特に居住しながらのリフォームや、仮住まいが必要な大規模リフォームの場合は、工期の長期化は大きな負担となる可能性があります。
リフォーム瑕疵保険の保険料と保険金
リフォーム瑕疵保険に興味はあるものの「保険料はどのくらいかかるのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。保険料や保険金の支払い対象などが不明確なままでは、加入をためらう原因になりがちです。
ここでは、リフォーム瑕疵保険の費用や保証内容について詳しく解説します。相場や支払い対象、計算方法を正確に理解すれば、自分に必要な保証を見極められるようになるでしょう。
保険料
リフォーム瑕疵保険の保険料は、工事の内容や規模によって異なりますが、一般的な相場は工事費用の2~10%程度です。ただし、たとえ工事費用が2倍になっても、保険料も2倍になるわけではありません。工事費用が高額になるほど保険料も上がりますが、工事費用に対する保険料の割合は減る傾向にあるからです。
また、保険契約には「支払限度額」が設定されている場合があります。例えば、支払限度額が1,000万円の場合、実際の工事費用が1,000万円を超えていても、保険金の支払いは1,000万円が上限となります。そのため、高額なリフォームを検討する場合は、支払限度額の確認も必要です。
保険料の負担者については、明確な基準は設けられていません。一般的には施主が負担することが多いものの、リフォーム会社が負担するケースもあります。契約前に保険料の負担者について確認し、必要に応じてリフォーム会社と相談することをおすすめします。
保険金の支払い対象
リフォーム瑕疵保険の保険金は、以下の3種類の費用が支払いの対象となります。
- 修補費用
瑕疵による不具合を直すための工事費用が対象です。具体的には、材料費や人件費、重機のレンタル費用なども含まれます。
- 調査費用
瑕疵の原因を特定するために必要な調査費用も保証の対象です。専門家による検査費用や、必要な測定機器の使用料なども含まれます。
- 転居・仮住まい費用等
補修工事のために一時的な転居が必要な場合、その費用も補償されます。ホテルや賃貸住宅の宿泊費用、引っ越し費用なども対象です。仮住まい費用を請求する場合は、必ず領収書を保管しておきましょう。
保険金の計算方法
保険金額は以下の計算式で算出されます。
- 支払われる保険金 =(補修費・調査費 - 10万円)× 80%
例えば、補修費と調査費の合計が200万円かかった場合の保険金は、以下のように計算されます。
- 支払われる保険金 =(200万円 - 10万円)× 80%=152万円
この場合、実際に支払われる保険金は152万円となります。自己負担額(免責金額)として10万円が設定されており、さらに補修費用等の80%が支払われる仕組みです。
ただし、リフォーム会社が倒産した場合は異なる計算式が適用されます。倒産による瑕疵の場合、補修費と調査費の100%が保険金の対象です。上記の例で言えば、200万円の全額が保険金として支払われることになります。
瑕疵保険の対象となるリフォーム工事と保証期間
リフォーム工事に瑕疵が生じた場合「どの工事が保証の対象になるのか」「保証はいつまで続くのか」といった疑問を抱く方も少なくありません。これらの情報が不明確だと、保険の有効性を判断するのが難しくなります。
ここでは、保険対象となる工事の種類と、それぞれの保証期間について詳しく解説します。保険対象の工事と保証期間を正確に把握しておけば、必要な保証を確実に受けられる安心感を得られるでしょう。
対象となるリフォーム工事
リフォーム瑕疵保険の対象となるのは、既存住宅と一体となった設備のリフォーム工事や設置工事です。具体的には以下のような工事が対象となります。
- 耐震リフォーム
- 屋根の葺き替え
- 排水管の交換
- 壁や床の断熱工事
- キッチンの改修
- 浴室のリフォーム
- トイレの改修
一方で、以下のような工事は保険の対象外となります。
- 解体工事
- 撤去作業
- 清掃作業
- 門や塀などの外構工事
また、以下のような原因による損害も保険の対象外です。
- 自然災害(台風、地震、津波など)
- 土砂崩れ
- 火山の噴火
- 害虫被害
- 居住者の過失による破損
対象外の工事では保険の適用がされないため、事前にしっかりと把握しておきましょう。
保証期間:5年
保険期間が5年となる工事には、以下の2つのケースがあります。
- 構造耐力上主要な部分の工事
構造耐力上主要な部分とは、建物の骨格となる以下のような箇所を指します。
- 壁
- 柱
- 床版
- 屋根版
- 筋かい
これらの部分は、新耐震基準に適合している必要があります。工事後に建築基準法レベルの構造耐力性能が満たされていないと判断された場合(例:柱の傾きなど)は、保険金の支払い対象となります。
- 防水性能に関わる工事
雨水の侵入を防ぐ部分の工事も5年間の保証対象です。具体的には以下の部分が該当します。
- 窓などの開口部
- 屋根
- 外壁
これらの工事後5年以内に雨漏りが発生した場合は、防水性能を満たしていないと判断され、保険金の支払い対象となります。
保険期間:1年
構造耐力や防水性能に関わる工事以外は、基本的に保険期間が1年間となります。具体的には、以下のような工事が挙げられます。
- コンクリート部分の補修
- 水まわりのリフォーム
- 和室から洋室への改修
- 建具の交換
これらの工事で、社会通念上必要とされる性能を満たさない場合に保険金が支払われます。
増築特約:10年
基礎部分を新設する増改築工事の場合は「増築特約」により10年間の保証が付きます。保険金の支払い対象は5年保証と同様で、以下の2つのケースです。
- 構造耐力上主要な部分が基本的な耐力性能を満たさない場合
- 雨水の浸入を防止する部分が防水性能を満たさない場合
保険期間は「工事完了確認日」から開始します。この「工事完了確認日」とは、リフォーム終了後の現場検査が完了し、なおかつ施主とリフォーム会社の双方で工事が完了したことを確認した日を指します。
まとめ|リフォーム瑕疵保険を利用するなら信頼できる会社に依頼しよう
リフォーム瑕疵保険には、第三者による検査や工事後の保証など、施主を守るためのさまざまなメリットがあります。一方で、保険料の負担や工期の長期化といったデメリットも存在します。
また、工事内容によって保証期間も異なり、構造耐力や防水性能に関わる部分は5年間、その他の工事は1年間です。基礎を新設する増改築の場合は10年間の保証が付くため、工事の規模や内容に応じて、適切な保険プランを選択することが重要です。
そのため、リフォーム瑕疵保険を利用する場合は、信頼できる会社に依頼することで、スムーズな保険手続きや充実したアフターサポートが期待できます。結果的に、安心して住まいを任せることができ、より快適な暮らしへとつながるでしょう。
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