一級建築士、一級建築施工管理技士他様々な建築系資格を取得。ゼネコンで様々な業務を経験しながら一級建築士試験で苦労した経験を活かし、一級建築士試験を攻略するブログを運営。建設を学ぶ専門サイトの立ち上げ経験もあり。サッカーとお笑いが好き。フットサルとギターを嗜む。著書「学び直しの一級建築士」
ベランダに屋根のない戸建て物件を買った後で不便を感じ、ベランダへの屋根の後付けを検討している人もいるでしょう。屋根を後付けすれば、洗濯物が雨に濡れるのを防ぐことができます。
しかし、多くの人は設計者や建築士ではないため、屋根を後付けすることでどのような影響問題が発生するかわからない現実もありますよね。この記事では、ベランダに屋根を後付けする場合のデメリットや注意点について解説します。後付けする屋根の種類も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ベランダとバルコニーとテラス
ベランダと似た言葉に、バルコニーやテラスがあります。まずはそれぞれの違いを知っておきましょう。
ベランダとバルコニーの違い
ベランダとバルコニーの違いは、屋根があるかどうかです。ベランダには屋根があり、バルコニーには屋根がありません。
ベランダの定義は屋根がついていることなので「ベランダに屋根を後付けしたい」と考えている場合は、厳密には「バルコニーに屋根を後付けしたい」ということになります。
なお、ベランダとバルコニーは混同しやすく、特に集合住宅では区別が難しいと言えるでしょう。上層に同じような間取りが並ぶ集合住宅の場合は、住戸から外に張り出した部分は「バルコニー」と呼ばれることが多いです。しかし、バルコニーの上には上階のバルコニーの床が重なって屋根のような役割をするだけなので、厳密に言えば屋根を持たない「ベランダ」と呼ぶのが正しいです。
ただし、ベランダとバルコニーを明確に区別すると分かりづらくなることから、この記事では、ベランダもバルコニーも同じ「ベランダ」で統一して説明していきます。
ベランダ・バルコニーとテラスの違い
ベランダ(バルコニー)とテラスの違いは、設置されている階数にあります。1階にあるのがテラスで、2階以上にあるのがベランダ(バルコニー)です。
テラスは1階の庭に設置されたスペースで、洗濯物を干す場としてだけでなく、バーベキューなどをするスペースとしてもよく使われます。
ベランダに屋根を後付けするメリット・デメリット
ベランダに屋根が無い場合、屋根を後付けしたいと思うことはあるでしょう。洗濯物を干すのに使うことが多いベランダですが、雨が降ると洗濯物を干すスペースが無くなり、室内干しにせざるをえません。1日や2日であれば耐えられても、雨の多い季節は室内干しが増えることにストレスを感じる人もいるでしょう。
屋根があれば、多少の雨なら気にせず洗濯物を干すことができて嬉しいですよね。しかし、思いつきで屋根を後付けしてしまうと、思わぬデメリットで苦しめられることもあります。
ここからは、ベランダに屋根を後付けすることのメリットとデメリットをご紹介します。
ベランダに屋根をつけるメリット
ベランダに屋根をつける最大のメリットは、なんといっても洗濯物が濡れないことです。突然雨が降ってきても外に干している洗濯物が濡れないので、安心して外出できます。
また、屋根があれば強すぎる日差しを緩和することもできるでしょう。夏の暑い日に日差しを遮ってくれるだけでも、ずいぶんと過ごしやすいベランダになります。
影が生まれるぶん紫外線がカットされるので、干している洋服も日焼けしにくくなり、寿命が伸びるでしょう。
さらに、屋根ができることでベランダの床や外壁に雨が当たりにくくなります。外壁や床は塗装などで下地となる素材を守っていますが、風雨にさらされれば必ず劣化します。その風雨が軽減されるので、ベランダの床、外壁、窓などの設備の寿命が伸びるメリットもあります。
ベランダに屋根をつけるデメリット
最大のデメリットは、雨音がうるさく感じる可能性があることです。
通常の屋根は屋根の下に断熱材や遮音材などを仕込むため、家の中に雨の音が伝わりにくくなっています。しかし、ベランダに屋根を後付けする場合、通常は屋根の中に遮音材や断熱材を仕込みません。そのため、雨の音が響いてうるさく感じることがあります。
また、日差しを遮るというメリットが、場合によってはデメリットにもなりえます。夏場は暑いので日差しを遮る後付けの屋根はとても便利でしょう。一方、冬場に日差しを遮ると、日当たりが悪くなり寒く感じてしまうかもしれません。
メリットとデメリットは表裏一体なので、何を優先するのかをしっかり考えておきましょう。
DIYで屋根をつける危険性【違法になり安全性が不安】
ベランダに屋根を後付けしようと考える時に、業者に設置してもらうか、DIYで設置するかを迷う人もいるでしょう。費用面では、DIYが魅力的に感じるかもしれません。
しかし、DIYで屋根を設置するのは危険性が高く、おすすめできません。ベランダに屋根を後付けする場合は下記の3つの注意点がありますが、DIYではいずれもクリアできない可能性が高いです。
- 増設の方法によっては違法になる
- 雪の重さを考慮しないと家族が危険
- 風の強さを検討しないと風で飛んでいく
一つずつ解説していきます。
増設の方法によっては違法になる
ベランダに屋根を後付けすると、場合によっては違法になります。というのも、ベランダに屋根がない場合は、ベランダの面積が建物の床面積から除外されているからです。
ベランダに屋根や壁を設置してサンルームのようにしたり、風を遮るような屋根を増設したりすると、床面積が増えたと判断され、増築行為に該当する場合があります。
新築される建物は、役所や検査機関による検査を経て、法律に適合して作られます。その建物が増築されたと判断されれば、増築後でも法律に適合しているかを追加で検査する必要があります。
検査で敷地に対して建設可能な床面積を超えているとして違法だと判断されたり、DIYで設置した柱や屋根が建築基準法の基準を満たしていないとして違法だと判断されたりすれば、せっかく作った屋根を壊すことになります。
また、長期にわたり良好な状態で住み続けられる優良住宅として、節税などのメリットが得られる「長期優良住宅」に認定された家であれば、その認定が取り消される可能性もゼロではありません。長期優良住宅に認定されている家をローンで購入していれば、住宅ローン減税の対象外となってしまい、還付金が受け取れなくなる可能性があります。
合法な増築と判断されても、屋根を増設した部分が床面積に計算されると、固定資産税が上がることもあります。DIYだと、上記のような専門知識がない状態で屋根を設置することになります。ベランダに屋根を設置する場合は、専門業者のアドバイスを受け、予想外の損を被らないよう注意しましょう。
雪の重さを考慮しないと家族が危険
DIYで作られた屋根は、本来であれば必要とされる屋根の設置に関する様々な検討がされていません。
たとえば、雪の降る地域にもかかわらず、雪の重さがかかることを想定せずに耐久性の低い屋根を設置してしまう心配があります。
雪の重さを考慮していないので、雪が降ったら重さで屋根が潰れることもあります。そうなると、危ないのは安全だと思い込んでベランダを使用している家族です。屋根が倒壊して下敷きになってしまうと、最悪の場合、死に至る事故につながることもあります。
風の強さを検討しないと風で飛んでいく
雪があまり降らない地域であっても、屋根の耐久性は重要です。ベランダの屋根は風を強く受けます。そのため、風の強さに耐えうる設計をしていなければ、簡単に屋根が飛ばされます。飛ばされた屋根は通行人を怪我させてしまったり、近所の家に当たって壊してしまったりする可能性もあります。
飛んだ屋根で事故が起きると、業者に屋根を施工してもらう費用よりも、ずっと大きな損害賠償金を支払うことになります。
上記のことから、DIYで屋根を施工するのは避け、リフォーム会社に相談するようにしましょう。HDC神戸のような複数のリフォーム会社が入った施設なら、業者の比較検討がスムーズです。
ベランダに屋根を後付けするなら方角に注意
ベランダに屋根を後付けする場合は、ベランダがどの方角を向いているかによって適切な判断が必要です。特に、南・北のいずれかに向いたベランダの場合は、これから解説するポイントに留意しましょう。
南側だと日差しを遮り、遮熱できる
南側に面したベランダに屋根を設置すると、日差しを遮って遮熱することができます。
日差しを遮ることで、特に夏場の快適性が増します。ベランダが過ごしやすくなるのは当然ですが、ベランダに面した部屋も日差しが遮られるので、部屋が少し涼しくなります。冷房費を節約できるのでおすすめです。
一方、日差しが遮られてしまうため、日差しが部屋にたくさん降り込むことに慣れている人が南側のベランダに屋根を設置すると、日当たりに不満を感じてしまうかもしれません。屋根がなかった頃に比べて冬場の暖房費が高くなる可能性もあります。
とはいえ、南面のベランダへの屋根の設置は、夏が暑い地域であればデメリットよりメリットのほうが大きいでしょう。南面に限らず東面や西面でも、強い日差しが気になるなら屋根の設置を検討してみてください。朝日や夕日は自然を感じられていいものですが、強すぎる日差しは害になります。
北側だと日当たりが悪くなり冷えやすい
北側に面したベランダに屋根を設置するのは、よほどの強い希望がない限りは避けた方が良いでしょう。
北側は元々日当たりが悪い方角ですが、屋根を後付けすることにより日差しが遮られるので、さらに冷えやすい環境になります。北側のベランダに面した居室も冷えやすく、特に冬場は冷えが気になるでしょう。暖房を使わない地域なら問題ありませんが、冬場に暖房を使用する場合は暖房費が高額になるでしょう。
また、北側のベランダは湿気が残りやすく、苔が生えやすい環境です。そこに屋根が後付けされると、苔がさらに生えやすくなってしまうでしょう。
苔は見た目が良くないだけでなく、カタツムリやナメクジが発生しやすい環境を作ります。そのカタツムリやナメクジを餌とする害虫も寄ってきやすくなり、悪循環が発生します。
また、外壁やベランダに付着した苔は、建物の劣化を早めます。苔は湿気があるところに生えますが、苔があることでさらに多くの湿気を含みます。湿気は劣化を早める原因の一つで、長く湿気にさらされると、建物の変色や腐食の原因となります。
日当たりが悪いと、苔以外にもサッシなどにカビが生えやすくなります。カビが生えると漂白剤などによる定期的な清掃が必要になり、手間が増えてしまいます。
ベランダに屋根を後付けする際は、方角に十分注意し、北側のベランダには屋根を増設しないことをおすすめします。
その他の注意点
ベランダに屋根を後付けする場合は、先に上げた法律上の問題、強度の問題、方角の問題をクリアする必要があります。これらに加えて、下記にも注意しておきましょう。
- 設置するのに十分なスペースがあるか
- 外壁の素材に問題がないか
- 持ち家か賃貸か
- 戸建てかマンションか
順番に説明していきます。
設置するのに十分なスペースがあるか
屋根を後付けするには、設置するだけの十分なスペースが必要です。当たり前に思うかもしれませんが、意外にも設置するスペースがほとんど無いケースもあります。
洗濯物を雨に濡らさずに干すためには、屋根の軒先から40cm程度内側に干す必要があります。屋根を設置できるスペースが50cmしかない場合、窓から10cmの位置に物干し竿の設置が必要になります。10cmしかない場所に洗濯物を干すことはできないので、この場合は洗濯物の雨濡れ防止を想定した屋根の設置が叶わないことになります。
また、屋根を後付けするための高さが足りないパターンもあります。軒と窓の間が少なくとも10cm以上離れていないと、屋根を設置できません。建物自体の軒がせり出して窓に近い場合などは屋根を設置できない可能性が高いので、事前に施工会社に相談することをおすすめします。
外壁の素材に問題がないか
外壁の素材によっては、屋根の後付けが難しいこともあります。
タイルや石、レンガの外壁は屋根を付けるためにドリルで穴を開けると欠けてしまいます。壁が欠けてしまうので、屋根をきれいに取り付けるのは難しいでしょう。
また、下地の材料によって屋根を後付けするのが難しい場合もあります。具体的には、ALCという軽量気泡コンクリートを使っている場合は、下地が欠けやすくビス止めが難しいため、屋根の設置が難しいです。
専用のビスを使うと施工できる場合もあるので、施工会社に相談してみてください。
持ち家か【賃貸だと後付けは難しい】
持ち家か賃貸かによって、ベランダに屋根を後付けできる難易度は大きく変わります。
持ち家であれば、自身の判断で好きなときに工事ができるでしょう。家族との話し合いをして、近隣の方にも迷惑がかからないようであれば問題はありません。
一方、賃貸となると話は別です。賃貸で屋根を後付けしたい場合は、大家や管理人の許可が必要です。
戸建てか【マンションだと難しい】
戸建てであれば、これまで紹介した条件をクリアしている場合は屋根の設置は可能です。
しかし、マンションだと基本的にベランダに屋根を設置することはできません。分譲で購入した自身のマンションであっても、ベランダは共用部です。屋根は外壁に固定して設置しますが、その外壁が自身のものではないため、マンションの理事会の承認などを得ないといけません。理事会の承認を得るにはかなりハードルが高いため、マンションのベランダへの屋根の設置は難しいでしょう。
外壁に固定しない屋根なら設置可能なのではと考える方もいますが、固定しない屋根でも難しいのが現実です。
ベランダやバルコニーは共用部分で、避難通路に指定されています。そのため、緊急時にスムーズに避難できるように、避難の邪魔になるものをベランダに設置するのは禁止されています。
屋根の柱は避難の際に邪魔となるため、設置はNGと考えられます。オーニングのような外壁を傷つけない屋根でも、基本的に取り付けられないと考えておいたほうがいいでしょう。
また、外観が大きく変わるようなものを設置することも原則禁止されています。勝手に外壁を塗装してはいけないように、外観が変わる屋根の設置も原則禁止と考えるのが妥当です。
詳しくは理事会の規則を確認してみてください。
ベランダに設置する屋根の種類と特徴
ベランダの屋根には一般的に以下の3種類があります。
- アール型
- フラット型
- ルーフ型
ここではそれぞれどんな特徴があるのかを見ていきましょう。
アール型は雨の吹き込みを防ぐ
アール型は、屋根の先が丸くなっており、ベランダに覆い被さるような形です。そのため、ベランダに日差しや雨風が吹き込みにくいです。
屋根に雪が積もっても、雪が滑り落ちやすい構造になっています。形が曲がっている分、製造の難易度が上がるので、次に紹介するフラット型に比べると費用は少し高めです。
フラット型は開放感がある
フラット型は、屋根の形がまっすぐなことが特徴です。屋根が覆い被さるアール型と比べて、開放的なベランダを作れます。見た目もスタイリッシュで人気のある形です。
一方で、アール型に比べると雨風を防ぐ性能は高くありません。屋根の先から40cm程度は離して洗濯物を干さないと、洗濯物が濡れる可能性が高まります。
フラット型は勾配をどの程度つけるかで金額やメンテンナンス性が変わります。
雨が沢山降る地域であれば、勾配は急な方がいいでしょう。ゴミも溜まりにくくなるので、メンテナンスも楽です。ただし、勾配を強くすると風の影響を受けやすくなるため、強度を高める必要がある点には注意しましょう。
風が強い地域であれば、勾配を緩くするのがいいでしょう。風から受ける力を抑えることができ、費用が安く済む点もメリットです。ゴミが比較的屋根の上に溜まりやすいため、定期的に清掃のメンテナンスが必要であることは覚えておきましょう。
ルーフ型は広々使える
ルーフ型は、柱で固定しない屋根の形です。庇(ひさし)を想像すればわかりやすいでしょう。庇は柱で支えるのではなく外壁に取り付けて固定しますが、ちょうどそれと同じ設置方法です。柱が無いので、空間を広く使えるのが特徴です。
屋根の形はアール型もフラット型も両方あります。用途や目的に合わせて選び分けてください。
なお、ルーフ型は外壁に直接固定するので、小さめのベランダへの設置に向いています。外壁の種類によっては後付けできないこともあるので、検討し始めたら、早めに施工会社に確認しておくと良いでしょう。
おしゃれなベランダ後付け屋根の事例と費用相場
最後にベランダに屋根を施工した事例を、ビフォーアフターの画像付きで紹介します。ベランダに屋根を実際に後付けするとどのように変化するのか、具体的な事例を知ることでイメージを膨らませてみてください。
事例①:ベランダ屋根アール型の後付け
リフォームで戸建てのベランダに屋根とウッドデッキを後付けした事例です。
屋根には紫外線をカットしてくれて遮熱効果の高いポリカーボネートを使用しています。日差しが直接当たっても、体感温度が高くなりすぎないのが魅力です。
ウッドデッキも同時に取り付けたことで、リビングからベランダへの行き来が楽になりました。使い勝手の良いベランダにリフォームできた好事例です。
工種 | 費用相場 |
---|---|
ベランダ屋根の後付け | 25万円程度 |
ウッドデッキ | 25万円程度 |
事例②:アルミ製屋根と日よけのオーニング
屋根のないウッドデッキから床材をタイルに変更し、日よけのオーニングをつけた事例です。
オーニングをつけたことで程よく日差しが遮られ、温かみのあるカフェのテラスのような空間が実現しました。
オーニングの支柱と屋根の構造材にはアルミを使用し、耐久性にも配慮しています。
お友達や家族と自然を感じながらお茶を楽しめる、素敵な空間です。
工種 | 費用相場 |
---|---|
オーニングの後付け | 60万円程度 |
床材の変更(重ね張り) | 15万円程度 |
事例③:バルコニーに屋根を新設して物干しスペースに
2階のバルコニー部分に屋根を取り付けた事例です。
3方向からバルコニーに出られる間取りのため、出入りの邪魔にならず開放感のあるフラット型の屋根を採用しています。屋根板もマットなホワイトを選択することで、明るい物干しスペースを実現しました。
工種 | 費用相場 |
---|---|
ベランダ屋根の後付け | 30万円程度 |
まとめ|ベランダ屋根の後付けは法律と安全性に配慮し、目的に合わせた屋根タイプを選ぼう
ベランダの屋根の後付けは、気軽にできるリフォームですが、法律や安全性への配慮が肝心です。
ベランダの屋根を後付けするなら、以下のポイントをおさえて計画をしましょう。
- DIYはせずに専門工事業者に設置を依頼にする
- 北側のベランダにはできるだけ屋根を後付けしない
- 雨の吹込みを防ぐならアール型、開放感を重視するならフラット型など、目的や欲しい機能に応じて屋根タイプを選ぶ
ぜひ本記事を参考にして、快適に過ごせるベランダを手に入れてください。
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