一級建築士 住まいや暮らしをもっと楽しく快適に!アイデアや情報をお届けする建築ライター。建築業界で意匠設計を担当し、アメリカではジュエリー制作やグラフィックデザインなどを学びました。独立後、住宅兼カフェの設計・家具・装飾品のデザインを手掛け、現在は執筆中心に活動しています。
家の中でも生活の中心となるのがキッチンです。しかしキッチンは使い勝手や動線など実際に使うまではイメージしづらい部分が多い箇所でもあります。せっかくであれば自分にあったキッチンで快適に料理をしたいですよね。事前に考えて自分にあったサイズや寸法を見極めることで、キッチンの使い勝手が大きく向上し、料理をするのも楽しくなります。
今回は新居の購入やリフォーム後にストレスフリーで料理ができるキッチンの作り方を寸法やサイズに焦点を当てて紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
キッチンパーツの寸法と選び方のポイント
システムキッチンを選ぶ際は、パーツごとの大きさや高さなどの寸法も確認しておくことが大切です。
これは、システムキッチン本体の寸法が同じでも、各パーツの寸法によって使い勝手が変わるためです。ここからは、キッチンパーツごとの寸法や選び方のポイントをご紹介します。
シンクの選び方と寸法
シンクの標準的な寸法は、横幅70〜80cm、奥行き40〜50cmです。奥行きが60cm以上のワイドタイプもあり、大きな鍋やフライパンを洗いたい場合や、ゆったりしたサイズの流し台が欲しい場合に適しています。
コンロの選び方と寸法
コンロの寸法は60cmと75cmの2種類があり、標準寸法は60cmです。75cmタイプは大きな鍋を並べて調理しやすい寸法ですが、ワークトップの幅が狭いキッチンに導入すると作業台が狭くなってしまいます。
そのため、コンロの寸法と作業台の寸法のバランスには注意して選ぶようにしましょう。
ウォールキャビネットの選び方と寸法
床からの位置
ウォールキャビネット(吊り戸棚)は、床から145cmほどの手が届きやすい高さが目安とされています。しかし、身長によって使い心地には差があり、あまり低いと頭がぶつかりやすくなったり、高すぎると手が奥まで十分に届かないことが考えられるため注意が必要です。
実際に手を伸ばしてみて、どのくらいの高さにあると無理なく物の出し入れができるのかシミュレーションしてみると、最適な高さを見つけやすくなりますよ。
棚のサイズ
また、扉の窓のサイズや収納量も考えて戸棚自体のサイズも選ぶ必要があります。
収納力を優先する場合は、高さのあるロングタイプ(高さ寸法90cm前後)がおすすめです。一方、扉の窓を大きくとりたい、スッキリとコンパクトに見せたい、費用を抑えたいという場合は、ショートタイプ(高さ寸法50cm前後)を選ぶとよいでしょう。
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おさえておきたい4つのキッチンタイプと種類ごとの特徴や標準寸法
システムキッチンのタイプは、主に4種類あります。はじめに、キッチンの種類別の特徴や標準寸法をご紹介するので、リフォームを検討している方はぜひ参考にしてみてください。
システムキッチンの標準的なサイズとは
システムキッチンは種類によって多少サイズが異なりますが、標準的な寸法は以下の通りです。
システムキッチンの標準的な寸法
- 間口(横幅)寸法:255cm
- 奥行き寸法:65cm
- 高さ寸法:85cm
一般的に、間口の規格は15cm単位でつくられています。メーカーによっては間口を1mm単位で調節できるシリーズもあり、15cm単位ではスペースに隙間が出来てしまう場合でも安心です。
調理台は60〜90cmが標準で、まな板を置いても余裕がある広さだと作業しやすくなります。キッチンをリフォームする際は、現在使用しているキッチンの寸法を参考にすると、自分に合うサイズを選びやすいでしょう。
I型キッチンの特徴と寸法
I型キッチンは、コンロや流し台が1列に並んでいるベーシックなタイプを指し、一般的に壁付けで配置します。形状がシンプルなため、どのようなスペースにも合わせやすく、広さが限られている場合でも導入しやすいのがメリットです。
ただし、作業台の横幅を長くし過ぎるとコンロと流し台の移動がしにくく、家事効率が下がるため注意しましょう。
I型キッチンの間口と奥行きの標準寸法は以下の通りです。
I型キッチンの標準寸法
- 間口(横幅)寸法:160〜300cm
- 奥行き寸法:60〜65cm
上記以外にも、間口寸法が90〜150cm程度のコンパクトな種類や、360cm幅の広いタイプもあります。広めの作業台が必要な場合は、コンロと流し台の幅を広くとるのではなく、あまった外側のスペースを広く使って設ける方が日常的な家事をしやすいでしょう。
アイランドキッチンの特徴と寸法
アイランドキッチンは、島(アイランド)のように独立して配置するキッチンです。壁に接していないため周囲を回遊でき、大人数で使いやすい広いワークトップが魅力です。
ただし、キッチンの周囲に通路幅を確保する必要があるため、狭い空間に無理をして設置するとリビング・ダイニングを圧迫する場合があります。また、ワークトップが丸見えになるため、汚れたり散らかったりすると目立ちやすく、臭いがリビング・ダイニングへ広がってしまうデメリットもあります。
アイランドキッチンの間口と奥行きの標準寸法は以下の通りです。
アイランドキッチンの標準寸法
- 間口(横幅)寸法:240〜270cm
- 奥行き寸法:75〜100cm
アイランドキッチンのような対面キッチンは前面に遮るものがないため、リビングダイニング側へ油や水が跳ねてしまう可能性があります。そういった事態を避けるためにもワークトップの奥行き寸法は80cm以上を確保しておくと安心です。
ペニンシュラキッチンの特徴と寸法
ペニンシュラは半島という意味で、ペニンシュラキッチンは本体の左右どちらかが壁に接しているデザインが特徴です。対面型で開放感があり、広々とした雰囲気づくりができます。
キッチンの片側が壁に接しているため比較的狭いスペースでも配置しやすいのが特徴ですが、上部に吊り戸棚がない場合は収納力が低くなってしまいます。
ペニンシュラキッチンの間口と奥行きの標準寸法は以下の通りです。
ペニンシュラキッチンの標準寸法
- 間口(横幅)寸法:180〜300cm
- 奥行き寸法:65〜100cm
I型やペニンシュラ型は寸法の種類が豊富にあり、メーカーによっては奥行き寸法60cmも選べます。ペニンシュラキッチンもアイランドキッチンと同様、全面に遮るものがないキッチンです。全面に水滴や油が飛び散ったりしないよう、広めの80cm以上の奥行きを確保しましょう。
L型キッチンの特徴と寸法
L型キッチンは、形状がLの字型にデザインされているキッチンです。体の向きを90度変えるだけでシンクとコンロを使えるため、作業しやすいのがメリットです。ただし、ワークトップのL字部分の収納はデッドスペースになりやすいため、活用方法を検討する必要があるでしょう。
L型キッチンの間口と奥行きの標準寸法は以下の通りです。
L型キッチンの標準寸法
- 流し台側間口(横幅)寸法:180〜27cm
- コンロ側間口(横幅)寸法:165〜180cm
- 奥行き寸法:75〜100cm
L型キッチンのデメリットとなるコーナー部分の形を扇型にし、使い勝手を向上させたA型キッチンという種類もあります。販売されている種類は多くありませんが、L型キッチンを検討している場合は、あわせて確認してみるのもよいでしょう。
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自分に合うキッチンのタイプやサイズを決めるには?
せっかくシステムキッチンを選ぶのであれば、自分に合う使いやすい幅や奥行きを選びたいものですよね。ここでは、自分にピッタリのサイズや種類を選ぶコツをご紹介します。
ライフスタイルから考えてみる
キッチンは、家族の人数などのライフスタイルによって適切なサイズやタイプが異なります。
そのためキッチンを選ぶ際は、料理するときに複数人で行うことが多いか、広いスペースで作業をするような大掛かりな料理をすることが多いかなど具体的な使用イメージを考えておきましょう。これからどのようにシステムキッチンを使っていきたいのかイメージすることが大切です。
また、キッチンを使っている中での不満や改善したいポイント、手持ちの調理器具や調味料・食器などの量を把握しておくと、コンロやシンクのサイズを選ぶ際の参考になります。
作業動線の目安となるワークトライアングルを意識する
毎日使うキッチンは、作業動線を考慮して選ぶことが大切です。作業の中心となるシンク、コンロ、冷蔵庫をつないだ三角形をワークトライアングルと呼び、合計した距離が360cm〜660cmに収まるのが理想とされています。
それぞれの距離の具体的な長さは、以下を参考にしましょう。
キッチンのワークトライアングル
- コンロとシンクの距離:120〜180cm
- コンロと冷蔵庫の距離:120〜270cm
- シンクと冷蔵庫の距離:120〜210cm
ワークトライアングルを目安にそれぞれの場所へ2〜3歩で移動できるよう考慮し、キッチンの種類やサイズ、作業台の幅などを決めると使いやすいキッチン空間が完成します。
対面型か非対面型かを決める
キッチンには大きく分けて対面型と非対面型(壁付きキッチン)の2種類があります。
対面型キッチンは、リビング・ダイニングに面して配置され、キッチン上部に吊り戸棚や壁を設けたセミオープンタイプとリビングダイニングに向かって完全に開けた空間のオープンタイプがあります。
ペニンシュラキッチンやアイランドキッチンが代表的な例で、マンションや住宅で人気のある種類です。
吊り戸棚や腰壁で立ち上がりをつけたセミオープンタイプは、キッチン空間をほどよく隠したい場合に、オープンタイプは開放感を演出したい場合に適しています。どちらも家族とのコミュニケーションがとりやすく、子どもを見守りながら作業したい方におすすめです。
一方、非対面型は壁に向かって配置したI型やL字型のキッチンです。I型は省スペースでも設置しやすいため、部屋を無駄なく使いたい方やキッチンにスペースを取りたくない方におすすめです。
通路幅を確保する
システムキッチンの通路には「キッチンと背面の食器棚との間の通路」と「キッチンへ出入りする通路」の2種類あります。作業中に人がすれ違えるか、キッチンを何人で使用するのか、配膳しやすいかなどを考慮して通路幅を決めましょう。
システムキッチンへ出入りする通路は、おぼんを持って通れるように寸法は幅80cm前後が目安です。キッチンと背面の食器棚との幅は、システムキッチンをメインで使うのが一人の場合は80〜90cmほどあると、背面収納や引き出しから物を取り出す際にもスムーズです。
ただし、幅が80〜90cmほどであると、冷蔵庫の扉を開ける際は脇に立たなければ開けられないので注意しましょう。また、男性の場合は狭く感じることもあるため、ショールームで実際に広さを体感してみることをおすすめします。
複数人でキッチンを使用する場合は、通路幅100〜120cm程度が理想です。また、背面に大きなカップボードを設置する場合には、最低でも幅110cm程度は確保しましょう。
通路幅には余裕を持ちたいものですが、キッチンが広すぎるとリビング・ダイニングのスペースが圧迫されてしまうため注意することが大切です。
収納量をイメージする
キッチンや収納の幅、奥行きの寸法を考える際は、収納したい調理器具やキッチンアイテムがどれくらいあるか把握しておくことが大切です。システムキッチンのサイズが小さいとその分収納量が減るため、多く収納したい場合にはキッチンも大きなサイズを選ぶ必要があるでしょう。
ただし、収納スペースを多くしすぎると空間に圧迫感が出てしまい、少なすぎると物の置き場所に困ってしまいます。そのため、収納力を優先するのか、リビングとの一体感を優先して開放的な空間づくりをするのかを考え、キッチンスペースの広さとのバランスをみながら決めましょう。
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キッチンはワークトップの高さ選びも重要ポイント
キッチンは、間口や奥行きに加えて高さ選びも重要です。ここでは、システムキッチンのワークトップの高さを選ぶ際のポイントをご紹介します。
身長に合うワークトップの高さとは
自分に合う適切な高さのワークトップを選ぶことは、システムキッチンの使い勝手を向上させるうえで大事なポイントです。ワークトップは高すぎると肩や肘が上がってしまい、低すぎると前屈みになって腰痛の原因になります。
ワークトップの高さは「身長÷2+5cm」を目安にするとよいとされているので、キッチンを選ぶ際は参考にしましょう。また、身長に合うワークトップの高さを以下の表にまとめたので、目を通してみてください。
身長に合うワークトップの高さの目安
身長 |
作業しやすいワークトップの高さ |
---|---|
150cm |
80cm |
155cm |
82.5cm |
160cm |
85cm |
165cm |
87.5cm |
170cm |
90cm |
175cm |
92.5cm |
180cm |
95cm |
ワークトップの標準高さは、80cm・85cm・90cm・95cmです。一般的に5cm単位で刻んでつくられているため、表で示した目安の高さに近いものを選ぶとよいでしょう。
ただし、使い勝手には個人差があるので、ショールームで実物を確認するとより自分に合った高さを見つけられますよ。また、造作キッチンの場合にはmm単位で高さを選べる場合もあります。
2世帯の場合はキッチンの高さに要注意
2世帯でキッチンを共有する場合は、高さ選びが少し難しくなります。キッチンの高さを身長の高い人に合わせる場合、若干の高さ調整であれば背の低い人はスリッパを履いたり厚みのあるキッチンマットを敷いたりと、調整して使用することになるでしょう。
しかし、子世代にキッチンを引き継ぐことを考えて、子世代の身長に合わせたいという場合もあるかもしれません。どちらの世代がキッチンに立つ時間が長いのか、ということも選ぶ際の大事なポイントです。
将来のことも考慮しながら家族でよく話し合い、キッチンの高さを決めましょう。
事前に寸法をしっかりおさえて理想のキッチンに
毎日使うキッチンは、自分に合うベストな種類やサイズを選びたいものです。当記事を参考に、キッチンを選ぶ際は事前に必要な寸法をしっかりおさえて使い勝手を把握し、長く快適に使い続けられる理想のキッチン空間をつくりましょう。
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