宅地建物取引士、FP2級保有 不動産・建設会社の土地有効活用のコンサルティング営業を6年担当。現在は不動産や建設業界の知見を活かした不動産や金融ジャンルのライターとして活動しています。
「固定資産税が高くなる設備とは?」「固定資産税を安く抑える方法はあるの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、固定資産税が高くなる設備について
- 固定資産税とは
- 固定資産税が高くなる設備
- 固定資産税を安く抑えるための方法
- 固定資産税の家屋調査におけるチェックポイント
- 固定資産税の支払い方法
を紹介します。
目次
固定資産税とは
固定資産税とは、毎年1月1日時点の固定資産の所有者に対し、固定資産が所在する市区町村から課税される税金のことです。
固定資産税の額は、所有している固定資産の種類や評価額によって異なります。
税率は1.4%と定められている地域がほとんどですが、地域や土地の種別などによって異なるため、注意が必要です。
また、固定資産税の納付は一括か4期に分けて納付することができますが、定められた期日内に支払いをしないとペナルティを受ける可能性もあるため、注意しましょう。
固定資産税の課税対象は?
固定資産税の課税対象には大きく分けて「土地や建物」と「償却資産」がありますので、1つずつ確認していきましょう。
土地や建物
まずは土地や建物です。
土地や建物の固定資産税は、毎年1月1日時点で固定資産税課税台帳に登録されている土地や建物の所有者に対し、土地や建物が所在する市区町村から課税されます。
4月~6月頃を目安に市区町村から納付書が送付されるため、納税額や納付期限を確認しましょう。
固定資産税とは別に、市街化区域内に所在する土地や建物については「都市計画税」と呼ばれる税金が課税されます。
市街化区域とは、都市計画法で指定されている都市計画区域の一つのことで、すでに街の整備がされている区域や、おおむね10年以内に優先的に整備するべき地域のことです。
都市計画税とは、都市計画の実施に必要な費用を調達するために、都市計画法に基づいて課税される地方税のことで、税率の上限は0.3%と定められています。
そのため、土地や建物を所有している人の固定資産税や都市計画税は合計すると1.7%課税される人がほとんどでしょう。
土地や建物を取得した際に所有権の登記をするため、課税対象となる土地や建物については自ら申告する必要はありません。
償却資産
次に償却資産です。
償却資産とは、土地や建物以外にも事業の用に供することができる資産のことです。
例えば、事業所のパソコンやコピー機、工場の機械などが挙げられますが、償却資産については、土地や建物とは異なり、課税対象となるものについて申告する必要があります。
固定資産税はどのように決定する?
固定資産税の額は、それぞれの固定資産に対して評価額を決め、それをもとに固定資産税が計算されます。
固定資産が所在する市区町村から提示された固定資産税の課税評価額に納得ができない場合には、納税通知書の交付から3か月以内であれば再審査を申し出ることができます。
固定資産税の計算方法については後述しますが、固定資産税を軽減させるための特例や減額措置があるため、当てはまる人は必ずチェックしておきましょう。
固定資産税はいつ支払うのか?
固定資産税は、固定資産が所在する市区町村に支払う必要がありますが、各自治体によって支払うタイミングが異なるためホームページや窓口で確認することが大切です。
毎年4月~6月頃を目安に納税通知書が郵送されるため、そこに記載されている固定資産税額と納税期日を確認し、支払う必要があります。
支払方法は一括と4期に分ける方法があるため、家計に支出のバランスを考慮しながら支払方法を検討しましょう。
固定資産税通知書には、税額や期日だけではなく固定資産税を算出するための基準である固定資産税評価額も記載されています。
固定資産税が高くなる設備とは
固定資産税が高くなる設備には、どのようなものが挙げられるのでしょうか。
一戸建てとマンションに分けて解説します。
一戸建ての場合
まずは、一戸建て特有の設備について見ていきましょう。
システムキッチン
一戸建てで固定資産税が高くなる設備の1つ目は、システムキッチンです。
システムキッチンはステンレス張りの流し台と比べると、幅が広く工事費が高額となるため、固定資産税も高くなります。
ステンレス張りの流し台は標準評点数が48,200点で、システムキッチンは297,800点です。
標準評点数とは、設備や素材によって区分が分けられている、固定資産税を計算する際の一つの指標のことです。
この点数に固定資産税率1.4%を乗じた金額が、年間に発生する固定資産税額となります。
つまり、年間の固定資産税額はステンレス張りの流し台が674円、システムキッチンが4,169円となるため、ステンレス張りの流し台の約6倍の固定資産税がかかることになります。
ホームエレベーター
一戸建てで固定資産税が高くなる設備の2つ目は、ホームエレベーターです。
ホームエレベーターの標準評点数は1,788,000点であるため、導入すれば年間25,032円の固定資産税がかかることになります。
一方、固定資産税は高くなるものの、ホームエレベーターを導入することで、高齢者との同居や生活動線の利便性向上などのメリットが挙げられます。
天窓
一戸建てで固定資産税が高くなる設備の3つ目は、天窓です。
開閉式の天窓標準評点数は標準的な大きさであれば102,900点であるため、導入すれば年間1,440円の固定資産税がかかることになります。
一方、固定資産税は高くなるものの、天窓を導入することで、通気性や採光の面でメリットが得られるでしょう。
マンションの場合
次に、マンション特有の設備について見ていきましょう。
なお、マンションの共用部の設備については、一人で負担するわけではなく、居住者で分担して負担することになる点は、覚えておきましょう。
高速特注型のエレベーター
マンションで固定資産税が高くなる設備の1つ目は、高速特注型のエレベーターです。
高速特注型のエレベーターとは、通常のエレベーターよりも高速で、カスタマイズされた要件に対応したエレベーターのことです。
高速特注型のエレベーターの標準評点数は29,945,960点であるため、導入すれば年間419,243円の固定資産税がかかることになります。
一方で通常のエレベーターは 5,646,950点であるため、高速特注型のエレベーターが導入されていると約5.3倍の固定資産税がかかることがわかります。
スライディングウォール
マンションで固定資産税が高くなる設備の2つ目は、スライディングウォールです。
スライディングウォールとは、室内の空間を柔軟に変更したり、異なる部屋を一時的に結合したりするために使用される可動間仕切壁のことです。
スライディングウォールの標準評点数は、建具の面積1㎡あたり59,360点であるため、10㎡のスライディングウォールが導入されていれば、年間83,104円の固定資産税がかかることになります。
一方でふすまは12,850点であるため、スライディングウォールが導入されていると約4.6倍の固定資産性がかかることがわかります。
免震装置
マンションで固定資産税が高くなる設備の3つ目は、免震装置です。
免震装置とは、建築物や構造物において地震などの揺れに対して保護するための装置のことで、地震発生時に被害を最小限に抑える役割を果たします。
免震装置の標準評点数は、一基あたり3,430,300点であるため、一基導入されていれば年間48,024円の固定資産税がかかることになります。
免震装置の設置台数は、建物の規模や地盤の強さによって異なるため実際にいくら固定資産税がかかるかは専門家に確認するのがおすすめです。
免震装置がついているマンションに居住することで、耐震性に優れた建物で安心して暮らすことができる点はメリットと言えるでしょう。
固定資産税を安く抑えるための3つの方法とは
固定資産税を安く抑えるための方法は以下の3つです。
- 固定資産税の軽減措置を受ける
- 固定資産税が正しいかを自分でも確認する
- 必要以上に豪華な設備にしない
これらのことを意識することで、固定資産税を安く抑えられるようになるため、1つずつ確認していきましょう。
固定資産税の軽減措置を受ける
1つ目の方法は、固定資産税の軽減措置を受けることです。
軽減措置が適用されれば、固定資産税が大幅に軽減されることになるでしょう。
ご自身が所有している土地が適用条件を満たすかどうか、1つずつ確認していきましょう。
住宅が建っている土地の場合
まずは住宅が建っている土地の場合です。
住宅が建っている土地に適用される特例は、毎年1月1日時点において住宅やアパートなどの「人が住むための建物」が所在している場合に適用される制度です。
この特例は土地の面積によって軽減される割合が以下のように異なります。
- 200㎡以下の土地:課税標準額の6分の1(都市計画税は3分の1)
- 200㎡を超える土地:課税標準額の3分の1(都市計画税は3分の2)
例えば固定資産税評価額が4,000万円の400㎡の土地に一戸建てが建てられている場合の固定資産税は、200㎡までが6分の1、残りの200㎡が3分の1となり、以下のような計算式で算出します。
- 固定資産税:4,000万円×200/400×1/6×1.4%=約46,600円
- 都市計画税:4,000万円×200/400×1/3×1.4%=約93,300円
- 固定資産税+都市計画税:約46,600円+約93,300円=約139,900円
つまり、年間約14万円の固定資産税を支払うことになります。
また、アパートやマンションなどの場合は「戸数×200㎡以下」の面積が小規模住宅用地として扱われるため、広い土地で固定資産税を軽減したい場合にはアパートなどを建築しても良いでしょう。
新築住宅の場合
次に新築住宅の場合です。
新築住宅の特例は、良質な住宅の建設を促すため、一戸建て住宅にかかる固定資産税を3年間2分の1に軽減する制度です。
ただし、都市計画税には適用されないため注意が必要です。
例えば、神戸市における新築住宅の特例は全国共通で以下の要件を満たす必要があります。
- 令和6年(2024年)3月31日までに新築された住宅であること。
- 居住部分の床面積が当該家屋の床面積の2分の1以上であること。
- 居住部分の床面積が50㎡(一戸建以外の貸家住宅の場合は40㎡)以上280㎡以下であること。
また、新築住宅の特例で2分の1となるのは建物の固定資産税である点にも注意が必要です。
認定長期優良住宅の場合
最後に認定長期優良住宅の場合です。
認定長期優良住宅の特例は、新築した住宅が認定長期優良住宅の場合に新築戸建ての特例が3年から5年に延長される制度です。
認定長期優良住宅とは、国が定めた以下の要件を満たした新築住宅のことを指します。
- 住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
- 住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
- 地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
- 維持保全計画が適切なものであること。
- 自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。
つまり、耐震性や耐久性、可変性等に優れた住宅である必要があります。
認定長期優良住宅の特例は新築住宅の特例と同様に、固定資産税が軽減されるのは土地ではなく建物である点には注意が必要です。
固定資産税が正しいかを自分でも確認する
2つ目の方法は、固定資産税が正しいかを自分でも確認することです。
固定資産税は、先述したように決められた計算式に則って計算されますが、家屋調査に来て評価をするのは「人間」です。
場合によっては誤った評価によって固定資産税額が算出されることがあるため、冒頭に解説した計算方法で、間違いがないか確認するようにしましょう。
自分で判断が難しい場合には、税金のプロである税理士に相談するのもおすすめです。
必要以上に豪華な設備にしない
3つ目の方法は、必要以上に豪華な設備にしないことです。
土地や建物の規模が大きくなれば固定資産税額も大きくなりますが、先述したように建物内外の設備によっても変動します。
暮らしをより快適にする豪華な設備であればあるほど、標準評点数が高くなり、多額の固定資産税がかかるようになります。
固定資産税が多くかからないように、全ての設備を豪華にするのではなく、必要に応じてグレードの高い設備を導入するのがおすすめです。
固定資産税の家屋調査におけるチェックポイント
家屋調査とは、不動産や建物の状態や価値を評価するための調査のことで、一般的には不動産の売買や購入を検討する人が依頼することになります。
家屋調査は内装と外装それぞれで行なわれますが、どのようなポイントで調査されるのか気になる人もいるのではないでしょうか。
内装と外装に分けて一部を紹介しますが、詳細が気になる人は総務省のページを確認してみましょう。
内装
内装の家屋調査は、主に以下のようなポイントでチェックされます。
- 床材
- 壁材
- 天井材
- 住宅設備
- 内装の状態
ご自身の家で該当するポイントがないか、確認してくださいね。
床材
床に使用されている材料や仕上げの種類によって評価が異なります。
例えば、高級な木材やタイル床は、評価額が高くなる可能性があります。
壁材
壁に使用されている材料や仕上げの種類も評価に影響します。
高品質の壁紙や木製パネルなどは、評価額を上げる要因となるでしょう。
天井材
天井の材料やデザインも考慮されます。
特に高い天井や独特なデザインの天井は、評価額が上がる可能性があります。
住宅設備
部屋にある住宅設備も評価の対象です。
例えば、エアコンや照明器具、キッチン設備、バスルームの設備などが挙げられます。
設備の種類や状態によって評価が変わる場合があります。
外装
外装の家屋調査は、主に以下のようなポイントでチェックされます。
- 建物の外壁
- 屋根
- 窓とドア
- 外部塗装
- 付属物
内装と合わせて、外装のチェックポイントも確認しておきましょう。
建物の外壁
外壁の材料や状態を調査します。
例えば、石やレンガ、木材、サイディングなどの材料が使用されているか、外壁にクラックや腐食が見られるかなどを確認します。
屋根
屋根の材料や状態を調査します。
例えば、瓦、スレート、金属板、アスファルトシングルなどの材料が使用されているか、屋根に破損や漏水があるかなどを確認します。
窓とドア
窓とドアの材料や状態を調査します。
例えば、アルミニウム、木製、ビニールなどの材料が使用されているか、窓やドアに隙間や破損があるかなどを確認します。
外部塗装
建物の外部の塗装の状態を調査します。
塗装が剥げていたり、ひび割れていたりする場合は、修復や再塗装が必要となる可能性があります。
付属物
家屋に付属する外装の項目も調査されます。
例えば、ベランダやバルコニー、庭のフェンス、屋外の階段や手すりなどの外構が挙げられます。
固定資産税の支払方法を6つ紹介
固定資産税の支払い方法には以下の6種類があるため、ご自身が支払いをしやすい方法を選択しましょう。
- 現金払い
- 口座振替
- ペイジー決済
- スマホ決済
- クレジットカード決済
- 電子マネー決済
それでは順番に解説していきます。
現金払い
1つ目は、現金払いです。
現金払いであれば、納税通知書を持ってお住まいから近いコンビニなどに足を運べば納税ができます。
しかし、コンビニで支払う場合には30万円が限度となるため注意が必要です。
口座振替
2つ目は、口座振替です。
口座振替は1度申し込むことで継続的に自動で引き落としをしてくれるため、納税漏れがないのがメリットと言えるでしょう。
しかし、口座振替の場合は領収書が発行されないため注意が必要です。
ペイジー決済
3つ目は、ペイジー決済です。
ペイジー決済とは、公共料金や税金などをATMやインターネットバンキングを利用して支払う方法のことで、ペイジーマークのある納付書でのみ利用できます。
スマホやパソコンがあれば自宅でも支払いができるのがメリットと言えるでしょう。
スマホ決済
4つ目は、スマホ決済です。
スマホ決済は市区町村によって対応しているかどうかが異なるため、お住いの地域で利用できるか事前に確認しておきましょう。
また、二重払いをしてしまうリスクもあるため、支払いが完了した納税通知書にはご自身で印をつけておくことをおすすめします。
クレジットカード決済
5つ目は、クレジットカード決済です。
クレジットカード決済の場合には、固定資産税の支払いでもポイントやマイルなどが貯まるのがメリットと言えます。
同じ20万円の支払いでも、還元率1%のカードで支払えば2,000円のポイントを獲得できます。
しかし、クレジットカード決済の場合には支払手数料が発生するため、獲得できるポイントが手数料を上回るかどうかを確認することが大切です。
電子マネー決済
6つ目は、電子マネー決済です。
Suicaなどの電子マネー決済を利用することでコンビニで納税ができます。
しかし、電子マネーにはチャージの上限額が設定されているため、その金額を超える場合には利用しづらくなるでしょう。
固定資産税を安くする工夫について知っておこう!
今回の記事では、固定資産税が高くなる設備について紹介しました。
必要以上に豪華な設備を導入すると、多額の固定資産税がかかることがあるので、必要に応じて豪華な設備にすることが大切です。
固定資産税の軽減措置や特例制度を活用することで大幅に軽減できる可能性があります。固定資産税を安くするための正しい知識を身に付けておきましょう!
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