海外の雑貨や絵画を中心としたインテリアが大好きな、ライフスタイル系Webライター。定期的に模様替えするのが趣味で、落ち着きを求めるリビングや寝室、使いやすさを重視するキッチンや洗面台など、用途に合わせてインテリアを変えることを意識しています。主婦の立場から、快適な空間を演出できるインテリアを紹介します。
ライフスタイルの洋風化に伴い、近年畳のないお家が増えています。そんな中「古めかしさを感じさせず、どんな雰囲気にも合う」と注目を浴びているのが、琉球畳です。
今回は、「家に琉球畳を敷きたいけれどどんなメリット・デメリットがあるのか知りたい」「琉球畳が張り替えできないのはなぜなのか」といった疑問点を解消していきます。
和室を作るか悩んでいる人や、今住んでいる家の和室のリフォームを検討している人は、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
琉球畳とは?歴史や由来も紹介
琉球畳とは、カヤツリグサ科の七島イ(しちとうい)を使った畳のことです。
当初は沖縄でしか七島イの栽培はおこなわれていませんでしたが、江戸時代初期に鹿児島を経由して大分に伝わり、現在はほぼ多くが大分県国東半島で栽培されています。
七島イは昭和30年代に生産量のピークを迎えますが、後継者問題や全機械化が難しいといった問題が重なり、現在残っている生産者は大分県国東半島で10軒弱といわれています。
こういった背景を持つ琉球畳の特徴を、もう少し詳しく解説していきます。
- 角を補強する畳縁がない
- 琉球畳のサイズは半畳
- 材料は希少価値の高い七島イ
1つずつみていきましょう。
角を補強する畳縁がない
琉球畳には角を補強する畳縁がありません。一般的な畳で用いられる「い草」よりも、太くて耐久性に優れています。七島イで編みこんで作られた畳表よりも畳縁が先に傷んでしまうため、畳縁のない琉球畳ができたといわれています。
琉球畳に畳縁がない理由は、もう一つあります。
琉球畳が誕生した頃、麻や絹を畳縁の材料として使う畳も存在しましたが、簡単に手を出せるような金額ではありませんでした。最近の畳縁で使われている比較的安価なポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維が普及し始めたのは20世紀に入ってからです。
そういった背景もあり、琉球畳は畳縁がない仕様が一般化しました。
琉球畳のサイズは半畳
琉球畳は正方形で、一般的な畳のおおよそ半分のサイズです。一般的に使われている畳は長方形なので、正方形の畳の使い方をイメージできない人も多いでしょう。
後ほど、琉球畳のデメリットとメリットを紹介するので、ぜひ記事の後半も参考にしてくださいね。
材料は希少価値の高い七島イ
七島イは限られた地域や農家でしか栽培されていないため、希少価値の高い畳の材料です。
従来の生産方法を変えることなく、代々受け継がれている昔ながらの手作業で七島イを植え付けします。七島イは密集して生えているため、機械を使って刈り取ることができず、刈り取りも手作業です。
また、琉球畳はできあがるまでの全ての工程を、1つの農家が一貫しておこないます。強度の高い七島イを、手作業で丁寧に畳に仕上げている琉球畳は、独特な風合いを楽しむことができます。
ただし、現在では七島イに限らず様々な材料からできた縁なし・半畳の畳が「琉球畳」として販売されています。広義では、七島イ以外からつくられた琉球畳もあると考えたほうが良いでしょう。
琉球畳と一般的な畳との違いとは
私たちにとって馴染みのある長方形の畳。しかし、その特徴や材料、サイズまで詳しく答えられる人は少ないのではないでしょうか。
これまでお伝えしてきた琉球畳の特徴と一般的な畳の特徴を比較しながら、違いについてもう少し詳しく紹介します。違いは、大きく分けて2つです。
- 一般的な畳はい草で作られる
- 一般的に畳のサイズは1.62㎡
琉球畳と一般的な畳の材料にも着目しつつ、それぞれの違いをみていきましょう。
一般的な畳はい草で作られる
一般的な畳には、単子葉植物イグサ科の多年生草本であるい草が使われています。
七島イと見た目はほぼ同じ早緑色です。い草は高さ1m以上成長しますが、実際に畳として使用するのは根と先端を除いた太い部分です。い草の断面は丸い形をしており、中がスポンジ状になっています。
一方、琉球畳に使われる七島イはカヤツリグサ科で、い草とは異なる植物です。い草の断面は丸い形をしているのに対し、七島イの断面は三角形です。中には繊維が詰まっており、外側の皮の部分が固いのが特徴です。
い草を使って作られた畳と七島イを使って作られた琉球畳を比較すると、琉球畳のほうが約2倍の不燃性と3〜4倍の耐久性があります。い草と七島イの断面とつくりの違いが、畳の丈夫さに表れていると考えられています。
一般的に畳のサイズは1.62㎡
畳は、使われているエリアや場所によって大きさと名称が異なります。一般的な畳には、以下のものがあります。
名称 | 大きさ | 使用されているエリアや場所 |
琉球畳 | 約0.77㎡ | 全国 |
京間 | 約1.82㎡ | 西日本エリア |
中京間 | 約1.65㎡ | 東海エリア |
江戸間 | 約1.55㎡ | 関東エリア |
団地間 | 約1.44㎡ | 共同住宅や高層住宅で使用 |
琉球畳はこれら一般的な畳のおおよそ半分のサイズで、形は正方形です。一般的な畳より畳数が多く必要ですが、正方形だからこそ得られるメリットも多くあります。
一般的に、畳を敷きこむ際に入りきらない畳があると、残りのスペースに合わせて畳を小さめにカットする必要があります。長方形の畳の中に一部分だけ小さい畳があるのはアンバランスで、見た目が悪いと感じる人もいるでしょう。
しかし、琉球畳はそもそも半畳サイズで縁もないため、小さめに調整された畳を敷き詰めても目立ちません。デザインやバランスをあまり気にせずにサイズを調整できるのは、隠れた利点といえます。
琉球畳のメリット5つ
一般的な畳と異なる特徴を持つ琉球畳には、魅力がたくさんあります。琉球畳を選ぶことで得られるメリットを5つ紹介します。
- 耐久性がある
- 和モダンを演出できる
- カラーが豊富でおしゃれ
- 畳縁がないから部屋が広く見える
- アレルギー反応が出にくい
琉球畳を選ぶ際の参考にしてください。
耐久性がある
琉球畳は、摩擦に強く耐久性に優れており、通常のい草より3〜4倍も長持ちするといわれています。その耐久性は、1964年に行われた東京オリンピックの柔道会場にも琉球畳が採用されたほど。
畳の交換回数を出来る限り少なくしたい人には、うってつけの畳です。
琉球畳の耐久性は、その作り方に関係しています。
七島イの断面は三角形で、中には繊維がびっしり詰まり、外側の皮は固く丈夫です。七島イを刈り取りした後、なるべく素早く乾燥させるために七島イを一本一本縦に裂いていきます。その際、畳表にふさわしい湾曲の少ないものを1本ずつ丁寧に選別していきます。
琉球畳の特殊な作り方と、機械に頼らない上記の手作業が、耐久性の高い琉球畳を生み出しているのです。
和モダンを演出できる
琉球畳は畳縁がない分、スタイリッシュな雰囲気を作ることができます。畳が醸し出す日本らしさを残しつつ、洋室との相性もバツグンなので、和モダンを演出することが可能です。
海外の風景画や洋風の置物などを置いても違和感なく、和と洋の調和がとれますよ。
たとえば、お部屋の中で強調したい家具やインテリアグッズがある場合は、畳の色を控えめにすると全体が引き締まった印象になります。
リビングと和室の境界線をハッキリさせたいのであれば、2色使いで交互に並べてみましょう。畳のコントラストが強いと、北向きで暗くなりがちな和室も明るくなり、存在感のある和室に仕上がります。
その他、リビングの小上がりにも琉球畳はピッタリです。一般的な畳だと、和の雰囲気が強くなりすぎてしまいますが、琉球畳なら違和感なくリビングの雰囲気に溶け込みます。
あえてシンプルにしたいなら、畳の目の向きをそろえて並べましょう。流行りや気分に囚われず、何年経っても飽きのこないデザインが出来上がります。
カラーが豊富でおしゃれ
琉球畳はカラーバリエーションが豊富なので、自分好みの部屋を作ることができます。人気色は灰桜色・白茶色・若草色・銀白色で、どれも落ち着いた雰囲気の色です。
畳の色は、和室の扉を全開にしたとき、隣接するリビングルームとの相性を考慮して色を選ぶ人も多いようです。
注意しておきたいのが、近年流通している琉球畳の素材です。そもそも琉球畳とは七島イで作られたものを指します。しかし、今ではポリエステルといった化学繊維や和紙、い草で作られたものも琉球畳として販売されています。
カラフルな琉球畳は七島イで作られていない可能性も高いので、伝統的な七島イにこだわりたい人は、「どんな素材で作られているのか」を確認するようにしてください。
畳縁がないから部屋が広く見える
畳縁のない琉球畳は、畳1枚1枚の区切りが目立ちません。部屋全体に奥行きが出てスッキリ見えるメリットがあります。
リビングと和室が隣り合わせになっている間取りであれば、リビングの床の色と畳の色を合わせることで部屋の境界線が曖昧になり、さらに部屋が明るく広く見えますよ。
より部屋を広く見せたい場合は、畳の目の向きを揃えたり、全ての畳を淡い色に統一したりするのもおすすめです。
アレルギー反応が出にくい
琉球畳は、アレルギー反応が出にくい畳として人気があります。
一般的な畳は、い草を収穫してから織り上げる前に、泥染めという作業をおこないます。泥染めすることによって、い草を均一に乾燥させたり、日焼けによる変色を防いだりすることができるのです。
しかし、畳に少しでも泥が付いていると、泥に含まれる成分に反応してアレルギーを引き起こすことがあります。
琉球畳は七島イ本来の色や香りを楽しむために、この泥染めをせずに作られます。その結果、アレルギー反応が出にくいのが特徴です。一般的な畳でアレルギー反応が出る人は、ぜひ琉球畳を検討してみてくださいね。
琉球畳のデメリット5つ
メリットの多い琉球畳ですが、下記の5つのデメリットもきちんと理解しておきましょう。
- 値段が高い
- 裏返しできない
- 角が傷みやすい
- 広い部屋だとごちゃごちゃして見える
- ゴミやホコリが詰まりすい
上記を順番に紹介していきます。
値段が高い
琉球畳のデメリットの一つに、価格が高いことが挙げられます。同じ広さに畳を敷きこむ場合、琉球畳は一般的な畳の約2倍の価格になります。
値段が高い理由として、下記のようなことが考えられます。
- 農家さんの高齢化に伴い、生産者の数と生産量が減っている
- 七島イの田植えと刈り取りは手作業でおこなうため、時間と手間がかかる
- 機械を使わずに手作業で織っている
琉球畳の材料である七島イの生産地域は、ほぼその多くが大分県国東半島に限られます。昭和初期に迎えた生産量のピーク時には、年間約550万枚作られていたといわれています。しかし、現在は生産者の高齢化や減少によって2000〜4000枚にまで落ち込みました。
さらに、琉球畳の製造過程はほとんどが手作業です。田植えや稲刈りは若者でも体力のいる作業のため、生産者の高齢化が、琉球畳の生産量に大きな打撃を与えているといえるでしょう。
今後、琉球畳は希少価値の高いものとして、さらに価格が上昇していくと考えられます。
裏返しできない
琉球畳は、一般的な畳と違って裏返しができません。
「裏返し」とは、長期間使って擦れたり変色したりした畳のメンテナンスの一つで、ゴザ部分にあたる畳表をはがして裏返し、畳の芯である畳床に貼り直す作業のことです。
琉球畳が裏返しできない理由は、以下のとおりです。
- 琉球畳は素材が固いため、張り替えようとすると割れる可能性がある。
- 畳縁がないため角が擦れたり折れ曲がったりして畳の大きさが多少変化する。大きさが変化すると裏返しした際にきれいに貼りなおすことができない。
琉球畳は素材がしっかりしているので、一般的な畳より長持ちしますが、使い心地や見た目が気になり始めたら新調しなければなりません。
一気に新調するよりも定期的なメンテナンスで維持していきたい人には、琉球畳より一般的な畳のほうが合っているでしょう。
角が傷みやすい
琉球畳には角を補強する畳縁がないので、畳の上を歩くだけでも角が少しずつ擦れていき、傷んでいきます。そのため、家具の移動や配置による擦れは最小限に抑えなければなりません。
たとえば、重たいたんすやテーブルを移動する際は、力任せに家具を引きずらないようにする必要があります。
なるべく家具を持ち上げて移動させ、持ち上げるのが難しい場合は家具の下にタオルやスリッパを挟んで移動させましょう。家具と畳が直接当たらないので、角が擦れるのを防ぐことができます。
琉球畳の角の上に家具の角がぴったりくっついていれば、ちょっとした振動の積み重ねで擦れていきます。家具の配置を工夫したり座卓敷や防振マットなどを活用したりして、畳の角が擦れないよう対策するのがベストです。
広い部屋だとごちゃごちゃして見える
琉球畳は一般的な畳のおおよそ半分のサイズなので、6畳であれば12枚、8畳であれば16枚必要です。
6畳以下のお部屋であれば特に気にする必要はありませんが、7畳以上だと畳の枚数が多いせいで部屋全体がごちゃごちゃして見え、落ち着きのない雰囲気が出てしまう可能性があります。
畳の向きを変えたり2色使ったりして、市松模様のようなデザインにすることも可能ですが、チカチカして見えてしまうため、広い部屋にはおすすめできません。
好みにもよるので、一概に「何畳以上なら琉球畳よりも一般的な畳を使用したほうがいい」といった定義はありません。しかし、畳はお客様を招いたり仏壇を置いたり、ゆったりくつろげる空間を演出する場所でもあります。和室の広さとのバランスを考えて、どの種類の畳を使うかを決めてくださいね。
ゴミやホコリが詰まりやすい
畳と畳の間の溝は、ゴミやホコリが詰まりやすい箇所です。琉球畳は一般的な畳より枚数が多くなるため、そのぶん溝の数も多くなります。
ゴミやホコリが溝の奥に深く入り込むと、掃除機で取り除くのは困難です。ほうきやつまようじなどを使えばキレイになりますが、時間と手間がかかります。
琉球畳を敷く場合は、こまめな掃除で溝にほこりが溜まりにくい環境を作ることが大切です。少しでも掃除の手間を少なくしたい人は、一般的な畳の方が向いているといえるでしょう。
琉球畳を新調するタイミングと価格
琉球畳は、畳の状態が悪くなれば新調するしかありません。琉球畳を新調するタイミングや価格について、詳しく紹介していきます。
ポイントは下記のとおりです。
- 10~20年に一度新調しよう
- 素材で価格は変わる
和室の大きさをイメージしながら、実際に発生するおおよその費用を計算してみましょう。
10~20年に一度新調しよう
琉球畳は、10〜20年を目途に新調しましょう。琉球畳のささくれが目立ってきたり擦れたりして、使い心地が悪く感じるようであれば換え時です。特にへこみが出てきた場合は、白アリによる被害の可能性があります。なるべく早めの新調を検討してくださいね。
新調する場合は、業者が既存の畳のサイズを採寸し、新しい畳が完成してから入れ替えます。施工にかかる日数は2〜10日くらいなので、業者がすぐに対応してくれれば、1週間以内で新調できるでしょう。
素材で価格は変わる
先述の通り、近年流通している琉球畳はさまざまな材料から作られています。七島イではない材料で作られた琉球畳のほうが、七島イの琉球畳の生産量を大きく上回っています。
メーカーや販売時期によって価格は異なりますが、七島イで作られた琉球畳1枚の金額は3〜5万円、和紙・化学繊維・い草は1〜2万円です。下記の表には、施工費用や古畳処分代金などは含まれていないため、さらに数万円加算されると予想できます。
畳の種類 | 畳1枚の価格 | 6畳(12枚)の価格 |
七島イ | 3~5万円 | 36~60万円 |
和紙 | およそ1万円 | およそ12万円 |
化学繊維 | およそ1万円 | およそ12万円 |
い草 | 1~2万円 | 12~15万円 |
※価格はメーカーや時期によって変動する場合がございます。
七島イで作られた琉球畳とその他の素材の琉球畳では、1枚あたり約3万円の差があります。初期費用は高くなりますが、七島イで作られた琉球畳は耐久性があるため、新調する回数が一般的な畳よりも少なくて済みます。
長い目で見れば、新調するタイミングによって和紙や化学繊維、い草で作られた琉球畳と同等の金額に抑えられる可能性もあります。
なお、最近では海外中国産の七島イで作られた琉球畳も比較的安く販売されています。ただ、国内産と比べて長持ちしない恐れがあるなどのデメリットもあるので、慎重に選んでくださいね。
まとめ:琉球畳はデメリットだけでなくメリットも多い
沖縄で生まれた琉球畳は、希少価値の高い七島イで作られた畳縁のない正方形の畳です。一般的な畳とは見た目も形も異なるため、畳でありながら和モダンを演出できるとして人気を集めています。
「畳縁がないため角が痛みやすい」「張り替えや表替えができない」といったデメリットはありますが、一般的な畳より3〜4倍長持ちするため、新調する回数が少なく済みます。
最近では、七島イ以外にも和紙や化学繊維、い草で作られた琉球畳がたくさん作られています。それぞれのメリット・デメリットを考慮したうえで、新しい和室にぜひ琉球畳を取り入れてみてください。
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