程よい暖かさを保つ寝具である布団は、人間だけでなくダニにとっても心地よい環境です。そのため布団の手入れを疎かにすると、ダニが大量発生することがあります。今回は布団にダニが発生する理由やダニの被害、対策方法を紹介します。
目次
布団にダニが発生する理由
布団にダニが発生する理由はいくつかあります。対策方法を知る前に理由を確認しましょう。
布団はダニにとって最適な環境
ダニは湿度60%以上・温度が20〜30度前後の環境を好みます。布団は高温多湿になりやすいため、ダニにとって最適な環境です。
最近は保温効果が長く続く布団が増えているため、布団の温度が一定に保たれがちです。特に起きた後に布団を開けないと、ダニにとって最適な温度が一日中保たれる可能性があります。
また、布団は寝ている間の寝汗などを吸収するため、湿度がたまりがちです。梅雨時など湿度が高い時期は布団の湿度が下がりにくくなるため、ダニにとって最適な環境になりやすくなっています。
繁殖に必要なエサが豊富
布団はダニに最適な湿度・温度が保たれやすいことに加え、エサとなる人のフケや髪の毛が豊富にあります。特に布団は毎日使うものでありながら、洗濯や掃除頻度が低いアイテムです。そのため、ダニのエサがたまりやすく繁殖しやすい環境になりやすいといえます。
また、ダニによっては髪の毛やフケではなく食べかすや、他のダニをエサにするダニもいます。
布団の上で飲食をしている場合、食べかすを食べるダニが繁殖しやすくなり、他のダニが増えればダニを捕食するダニにとっても最適な環境となりがちです。
布団にダニが繁殖しやすい理由は、こうした繁殖に必要な環境が整いやすいことも理由の一つといえます。
布団にダニが増えるとどうなる?
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布団にダニが増えるとさまざまな害が発生します。ダニが直接的な原因となる害を紹介します。
アレルギーの原因に
ダニが大量に繁殖すると、ダニの糞や死骸も増加します。こうしたダニの糞や死骸が呼吸とともに体に侵入することで、ダニアレルギーになる可能性が高くなります。特に小さな子どもはアレルギーになりやすいため注意が必要です。
ダニアレルギーになると、喘息やくしゃみなど花粉症に似た症状や、皮膚のかゆみやアトピーが発生します。布団に入ることでこれらの症状が出る場合は、アレルギーの可能性が高いといえるでしょう。
アレルギーの対策は原因となるアレルギー物質を除去する必要がありますが、ダニはどこの家にも生息しています。家から完全に退治するのは不可能なので、アレルギーを発症する前にダニ対策を行いましょう。
ダニが繁殖しすぎると噛まれることも
ダニに噛まれると赤く腫れてかゆみが起こり1週間ほど続く場合があります。こうした症状が出たときは、布団に相当数のダニがいると考えてよいでしょう。
なぜなら、人を刺すことがある『ツメダニ』は、食べかすなどをエサにする『チリダニ』や『コナダニ』を捕食するダニだからです。つまり、布団でダニに噛まれた場合、食物連鎖が生まれるほど大量にダニがいることになります。
ちなみに人を噛むことで有名なダニといえば『マダニ』ですが、マダニは野外におり布団には繁殖しないダニです。もしマダニに噛まれたとしたら、外に散歩に出る犬や猫などのペットに付着したダニが室内に侵入した可能性があります。
布団でダニに噛まれたとしたら、ダニを捕食するツメダニの場合がほとんどです。
布団にいるダニの種類
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以前はさまざまなダニがいましたが、住居の気密性が高くなったため布団に発生するダニは大きく3種類に分けられます。それぞれどのような被害をもたらすのか確認しましょう。
ヒョウダニ
住宅に住み着くダニの中でも1年中見られるのがヒョウダニです。コナダニと呼ばれることもあります。体長は0.3〜0.4mm程度と非常に小型です。
主に絨毯や家具に生息しており、フケや髪の毛をエサにしているため人を刺すことはありませんが、ヒョウダニの死骸や糞はダニアレルギーを引き起こす可能性があります。
1gのエサで約300匹のダニが生息できるといわれているほど生息力が強いため、ヒョウダニを増やさないためにはエサとなるフケや髪の毛を掃除することが大切です。
また、次に紹介するコナダニと並び温度20~30℃・湿度60~80%の高温多湿を好みます。掃除とともに布団の除湿を行いましょう。
コナダニ
ヒョウダニより繁殖力が高いダニがコナダニです。高温多湿を好み、梅雨時や秋雨が降る秋口に繁殖します。
体長0.3〜0.4mm程度でヒョウダニと同じく人を刺すことはありませんが、人を刺すツメダニのエサとなるため、布団に繁殖するとツメダニを呼び込む可能性があります。
繁殖力が強いダニですがヒョウダニと異なり、エサは食品や畳などが中心で布団は主な生息場所ではありません。そのためエサとなる食べかすが布団になければ、布団での繁殖を防ぐことが可能です。次に紹介するツメダニを対策するためにも、布団の上での飲食は避けましょう。
ツメダニ
ツメダニは梅雨時や秋雨が降る秋口に繁殖しやすいダニです。体長0.3〜1mm程度と他のダニに比べ大きく、肉眼でも確認できるのが特徴です。ツメダニやコナダニと異なり、人のフケや髪の毛、食べかすなどをエサにしないものの、他のダニをエサとする性質を持っています。
つまり繁殖力が非常に高いコナダニが増えると、それを捕食するツメダニが増えるという関係性にあるといえるでしょう。
ちなみに基本的に人を刺さず吸血はしませんが、まれに間違えて人を刺すケースがあります。刺されると赤く腫れてかゆみが起こり1週間ほど続きます。
コナダニやヒョウダニを増やさないことが対策となるので、定期的な掃除や布団の上で飲食をしないようにしましょう。
布団のダニの退治方法
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布団の中に潜むダニはいくつかの方法で退治することができます。お手軽な方法から、徹底的な退治方法まで詳しく解説します。
布団乾燥機を使おう
ダニは高温多湿を好みますが、50度以上の高温では20〜30分で死滅、60度では即死するといわれています。
そのため50度以上の温風で布団を乾燥させたり、ダニ退治の高温モードが搭載されている布団乾燥機を使ったりすれば、自宅で簡単にダニの退治が可能です。
布団乾燥機は布団に機械をセットするだけで非常に手軽にダニ退治ができます。ダニは高温になると温度の低い場所に逃げていく習性があるため、場所や向きを変え複数回行うことがしっかりと退治するポイントです。
コインランドリーで乾燥させる
コインランドリーまで持ち込む手間がかかりますが、コインランドリーを使えば効果的な退治が可能です。
コインランドリーは乾燥処理は機体や処理温度によって異なるものの、高温設定では80度以上になります。布団の奥底までしっかりと熱が入るため、表面だけでなく奥に潜むダニまで一掃できます。
また、コインランドリーは回転させながら乾燥処理を行うため、ダニの死骸を振り落とすことも可能です。
ただし、布団の中にはコインランドリーの乾燥機に対応していない素材もあります。コインランドリーを使用する際は布団の衣類タグを確認しましょう。
クリーニングは効果が絶大
徹底的にダニを退治するのであれば、クリーニングに出すことがおすすめです。洗剤を使用した水洗いと高温乾燥を行うため、ダニを徹底的に退治できます。
加えて業務用の洗剤を使用することで、ダニのエサとなる染み込んだ汗やフケなども洗い流せるため、発生を抑制できます。
費用はかかりますが、コインランドリーでは難しい羊毛や羽毛なども、クリーニングでは丸洗いと乾燥が可能なのもポイントです。
また、店舗によっては防ダニ加工などのオプションを設定しているところもあります。こうした加工を施すことでダニの繁殖防止につながります。
ダニの増殖を予防するには
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布団にいるダニの被害を防ぐためには日頃の対策が重要です。ダニの増殖を防ぐための方法を紹介します。
天日干しなどで布団を乾燥させる
天日干しは『退治』には向いていませんが、ダニの発生を『予防』する目的であれば効果的です。天日干しをすることで布団の湿度を大幅に下げることができ、高温多湿を好むダニが住みにくい環境を作れます。
退治に向いていない理由は、天日があたった表層はダニが死滅する高温状態になるものの、あたっていない部分は温度が低く、退治できる箇所にムラが発生するためです。
また、布団を天日干しした後は、叩かずに取り込むことがポイントです。布団を叩くことでダニの死骸や糞が細かくなり呼吸とともに体に入りやすくなるため注意しましょう。
定期的にシーツや布団カバーを洗濯
定期的なシーツや布団カバーの洗濯は非常に効果的な予防対策です。寝具を洗濯をすることで、ダニのエサとなる髪の毛やフケ、食べかすを洗い流せます。
ただし、ダニは水や洗剤に強く洗濯機で洗うだけでは死滅しません。シーツや枕カバーなど薄手の寝具であれば別ですが、厚手のシーツや布団カバーの場合、洗濯のみでダニを落とすことは難しいでしょう。
もし洗濯と同時にダニ退治をするのであれば、70度程度のお湯につけ置きして、ダニを死滅させてから洗うのが効果的です。
寝室の掃除も効果的
ダニは布団だけでなく、カーペットやソファー、カーテンなどにも潜んでいます。こうした布団以外の場所に潜んでいるダニは服に付着して移動することが少なくありません。
特に布団にはあまり生息しないコナダニやツメダニは、他の場所から移動してくるケースが多いです。そのため布団だけでなく部屋全体をきれいにすることも、布団のダニ対策につながります。
また、ダニの総数を減らすことでダニアレルギーの発症を抑えられます。ペットがいる家庭では部屋だけでなく、ペットにダニがつかないように手入れすることも重要です。
布団の買い替えも一つの手段
ダニが増えてしまった場合、布団の買い替えを行うことも対策の一つです。
丁寧に使えば布団は傷みにくいため長期間使用する人もいますが、羽毛布団は10〜15年・掛け布団は5〜10年・敷布団は3〜5年が寿命とされます。もし、ダニが発生した布団が買い替え時期に来ている場合、布団をダニごと破棄してしまうのもよいでしょう。
また、年数以外にも布団の中綿がへたっているのであれば交換がおすすめです。寝ていて寒い・床の感触が伝わって体が痛いといった場合は買い替えを検討しましょう。
買い替えの際、防ダニ加工や洗濯がしやすい化学繊維の布団に切り替えるのも効果的な対策です。
ダニを増やさない保管方法
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布団のダニは使用中だけでなく保管中に増殖するケースもあります。保管中にダニが増えないための対策方法を紹介します。
保管場所の湿気対策を
ダニは高温多湿を好みます。特にコナダニは湿度を好むため、布団の保管中は湿気がたまらないように気をつけましょう。布団をしまっている押入れやクローゼットを定期的に換気することで、湿度を下げられます。雨が多いシーズンなら除湿剤の併用も効果的です。
また、保管前のダニ対策も重要です。理想はクリーニング店やコインランドリーに持ち込み、高温でダニを死滅させてからしまうことが理想ですが、天日干しや乾燥機を使うだけでも効果があります。
保管中にダニを増やさないためにも、布団の湿度を下げてからしまうことを心がけましょう。
ダニ対策グッズを使う
保管の際は湿気対策だけでなく、ダニ対策グッズを使うのもおすすめです。ダニ対策グッズは主にスプレータイプ・シートタイプ・置くだけタイプの3種類に分けられます。目的に合わせて使うとよいでしょう。
『スプレータイプ』のダニよけは、ダニが嫌う成分が入った薬剤を含んでおり、吹きかけるだけで対策が可能です。保管だけでなく日常的にも使えるメリットがあります。
布団や枕に挟んで使用する『シートタイプ』のグッズは、挟んで保管することで持続的なダニ対策ができます。置くだけでダニよけをする『置くだけタイプ』と併用することでより効果を発揮するでしょう。
特に置くだけタイプは、湿気を吸うシリカゲルを含んだ製品もあります。使い方や環境に合わせて選ぶと効果的な対策が可能です。
ダニを退治して気持ちよく寝よう
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布団は高温多湿になりやすく、ダニにとって最適な環境といえます。ダニが繁殖するとアレルギー反応が起きたり、赤く腫れたりといったさまざまな悪影響が生じます。定期的な掃除や対策をして、繁殖を防ぎましょう。正しい方法で退治すれば、快適に寝ることが可能です。
今回は布団にダニが発生しやすい理由やダニの種類、被害や対策方法を詳しく解説しました。ダニの増殖を防ぎ快適な睡眠を取れるよう、対策や効率的な退治を行いましょう。