金のなる木は縁起がよい木として、人気の多肉植物です。自宅で育てる場合には、どのような点に気を付ければ、元気に成長するのでしょうか?金のなる木の基本情報と併せて、適した栽培環境や育て方のポイントについて初心者にも分かりやすく解説します。
目次
金のなる木とは?基本情報や花の特徴
金のなる木を見かけたことはあっても、原産地や特徴などについてはよく知らない人も多いのではないでしょうか?上手に育てるためにも、性質や特徴をよく知っておきましょう。
ここでは金のなる木の原産地など基本情報や花の特徴、花言葉について解説します。
南アフリカ原産の多肉植物
金のなる木の学名は『ベンケイソウ科クラッスラ属』で、南アフリカが原産地の多肉植物です。英語名では『Crassula ovata』、和名は『フチベニベンケイ』と呼ばれています。
ぷっくりとした厚みのある葉が、コインのような形をしていることから、日本だけでなく海外でも『Dollar plant』として親しまれています。
日本へ入ってきたのは、昭和初期です。戦後、まだ小さい新芽に5円玉を通して成長させて、まるで5円玉が実っているかのようにして『金のなる木』として売ったところ、大流行したことが名前の由来という説があります。
常緑性の多年草で、草丈が1m以下のものから、1~3mにまでに成長する種類までバリエーションが豊富です。
白やピンクの花を咲かせる
金のなる木の花は、小さな星形が特徴です。花色は白やピンクで、小さな花が集まりまとまって咲きます。一般的に大きく株が成長しないと花が咲きにくいと言われています。
また種類によっても、花つきがよいものや悪いものがあるため、花を楽しみたい人は花が咲きやすい種類を購入して育てるとよいでしょう。
花を咲かせるためには、育て方が重要です。育て方次第で、花芽がつかないこともあります。
金のなる木の開花時期は、11~2月の寒い時期です。1カ月以上も花を楽しめるものもあります。花を咲かせる植物が少ない寒い時期に、部屋に彩りを加えたい人にもぴったりです。
縁起のよい花言葉で知られる
小さな星形の花には、以下のような花言葉があります。
- 一攫千金
- 富
- 幸運を招く
- 不老長寿
いずれも縁起のよい言葉ばかりです。不老長寿以外の花言葉は、すべてコイン型の葉が由来の、金運をアップしてくれるようなイメージがあります。そのため開業祝いや新築祝いなど、祝い事のプレゼントとしても人気です。
また金運アップやリラックスなどの風水効果も期待できるようです。金運アップしたい方は南東の方角に、またリラックス効果を得たい場合はリビングに置くのがよいでしょう。
金のなる木の主な種類
金のなる木は種類が豊富にあります。それぞれ花や木型などの特徴が異なるため、複数の種類を育てるのも楽しいでしょう。
初心者のなかには、どの種類がどんな花を咲かせるのか分からずに、迷ってしまう人もいるかもしれません。
ここでは主な3種類と、それぞれの特徴について分かりやすく解説します。
葉が肉厚な花月
花月(カゲツ)は代表的な種類の一つです。学名は『クラッスラ・ポルツラケア』で、金のなる木の園芸名としてもよく使われています。
肉厚で深緑色をした葉の縁は赤く、太い幹を持ちます。丈夫で育てやすい点が特徴です。花色は淡いピンク色で、中心部が濃いピンク色をしています。小さな星形の花がまとまって咲く姿は、見ているだけで明るい気分になれるでしょう。
また花がつきにくいとされる金のなる木のなかでも、比較的花が咲きやすい種類として挙げられます。ただしある程度まで株を成長させないと、花は咲きません。適した栽培方法で育てて、咲かせてみましょう。
花がつきやすい桜花月
桜花月(サクラカゲツ)は株を大きく成長させなくても、花がつきやすい種類です。
一般的に金のなる木は、株を大きく育てないと花が咲きにくいと言われています。そのため長い時間がかかったり、めったに咲かなかったりと、花つきはあまりよくありません。
しかし桜花月は矮性品種なので株が小さくても、花つきのよい点が特徴です。矮性品種とは本来1m以上成長するところを、成長を止めて小さくなった品種のことです。
花色は薄いピンクの桜色で、秋の終わり頃から春にかけて、五弁のかわいらしい花を咲かせます。その花姿が桜に似ていることから、桜花月と名付けられました。
宇宙の木とも呼ばれるゴーラム
ぷっくりとした肉厚の葉の種類ではなく、めずらしく筒形の茎のような葉をしたものがゴーラムです。つやつやとした緑色の葉を持ち、葉の先端部分は少しへこんでいます。
葉の形状はまるで宇宙人の指先や、未知の生物が口を開いている姿にも見えるでしょう。由来は諸説ありますが、別名『宇宙の木』としても親しまれている種類です。
ゴーラムの草丈は大きく成長しても50cmほどと、わりとコンパクトなサイズです。また成長するにつれて、下部の葉が落葉して茎が木質化して、ゴツゴツとしてきます。
金のなる木の栽培環境
金のなる木は丈夫なので、初心者でも比較的育てやすい植物です。しかしどんな植物も、適した栽培環境で育ててあげないと、元気に育ってくれません。原産地の気候などに合わせて栽培すると、失敗しないでしょう。
ここでは金のなる木に適した、栽培場所・用土・温度管理について、それぞれ解説します。
日当たりや風通しのよい場所で育てよう
金のなる木の原産地である南アフリカは、乾燥地帯です。そのため季節に関係なく日当たりと風通しのよい場所を好みます。
また日当たりの悪い場所で育てると、葉の緑が濃くなり間延びして、見た目が悪くなってしまいます。
ただし斑入りの種類は、日焼けを起こしやすいので遮光幕を使うなど、半日陰の環境下で育てましょう。斑入り以外の種類は、暑い季節は半日陰に置いて、乾燥気味を保てば問題ありません。春と秋は、屋外の日当たりのよい場所で育てましょう。
特に寒い時期は葉が凍ってしまうので、鉢植えの場合には屋内に入れて育てます。庭植えでは寒さ対策を行うと安心です。
水はけのよい用土で育てよう
金のなる木を元気に育てるためには、基本的に水はけのよい用土を選ぶようにしましょう。自分で用土を配合する際には、赤玉土:川砂:腐葉土を4:4:2の割合で混ぜて作ります。
また自分で配合するのが面倒な人は、サボテン用の土や多肉植物用の土を使用してもOKです。用土にカルシウムが多く含まれていれば、根の成長促進にも効果が期待できます。
リン酸成分の肥料が配合された用土を使用すれば、肥料やりも不要なので初心者におすすめです。
栽培に慣れてきたら、環境や水やりの頻度に合わせて自分で用土を配合しながら、成長させてもよいでしょう。
温度管理も大切
金のなる木は多肉植物のなかでも、耐寒性が高い植物です。しかし温かい気候の南アフリカが原産地なので、日本の冬の寒さで弱ってしまうこともあります。
基本的に温かい気候を好むため、気温が5度以下となる季節には、鉢植えならば屋内へ移動させましょう。霜に当たると、葉が凍傷を起こしてしまい、最悪の場合には枯れてしまいます。
庭植えの場合、可能ならば寒くなる前に鉢へ植え替えて屋内で管理するのも一つの方法です。屋内で管理する際にも、夜間でも室温が3度以下にならないように気を付けましょう。
金のなる木の基本の育て方
植物はせっかく育てても、育て方が合っていないと、病気になって枯れてしまうこともあります。金のなる木は基本の育て方さえ押さえておけば、病気や害虫は発生しにくいでしょう。
ここでは金のなる木の水やりと肥料の与え方と合わせて、日本の夏と冬の上手な過ごし方について解説します。
水やりの頻度に気を付けよう
水やりの基本は、乾燥気味に保つことです。水を与えすぎると、土中の水分を根が吸収しきれずに、常に鉢中が湿った状態になってしまいます。その状態が続くと、根腐れを起こしてしまうので注意しましょう。
また水やりは季節ごとに、頻度を変えることがポイントです。春の水やりは、土が乾いてからです。表面が白っぽく乾いてきたら、鉢底から水が溢れるまでたっぷりと与えましょう。
夏の水やりは、気温が下がってきた夕方以降にします。夏にあまり水を与えると、葉に養分が取られて花芽がつかなくなってしまったり、根腐れを起こしてしまったりするので、1回の水量はたっぷりと与えて、頻度を控え気味にしましょう。
なお水やりを控えると葉は萎れてきますが、心配は不要です。9~10月は土の表面が乾燥してから、さらに数日待って水やりします。11~2月は、水やりの間隔を段々と長くしながら、回数を減らしていきます。
休眠期である冬には1カ月に1~2回、温かい日の昼間に与えましょう。
肥料は与えすぎないように
金のなる木は多肥を嫌います。施肥の際には、与えすぎに注意しましょう。鉢植えならば4~10月、真夏を避けた時期に肥料を施します。冬は休眠期なので、与えないようにしましょう。
肥料の形状は、液体・固形のどちらでもOKです。タイプは緩効性化成肥料か、油かすがおすすめです。ただし緩効性化成肥料を使用する場合には、パッケージに記載された規定量の半分を目安にして与えましょう。
夏越しと冬越しのポイント
湿気が高い夏や厳しい寒さの冬は、株が弱りやすい時期です。夏越しと冬越し対策をして、株に余計なストレスを与えないようにしましょう。
日本の夏は気温と湿気が高くなります。金のなる木は高温に対して耐性はありますが、湿気は苦手です。水やりを控え気味にして、雨天時は屋内へ移動させます。
また冬は氷点下にまで気温が下がる地域も多く、金のなる木が凍傷になりやすい時期です。耐寒性があるとはいえ、もともと温かい地域が原産の植物なので、屋外で冬を越すのは難しいと考えておきましょう。
3度以下になると凍傷を起こすので、外気温が5度を下回る時期には、屋内の日当たりのよい温かい場所へ移動させて育てます。
さらに急激な気温の変化は、花つきにも悪影響です。なるべく温度変化のない環境づくりを心掛けましょう。
金のなる木を元気に育てるポイント
金のなる木は育てる環境が適していれば、大きく育ちますが、日本の気候ではなかなか大きく育ちにくいです。
しかし育てる際に、いくつかのポイントに気を付ければ元気に成長します。ここでは金のなる木を元気に育てるポイントを2点紹介します。
植え替えをしよう
鉢植えで育てている人は、2~3年を目安に植え替えをしましょう。植物は地上部分が成長すると同時に、土中の根も成長しています。鉢が狭くなって根詰まりを起こすと、成長に必要な養分や水分を吸収できません。
また葉が落ちてきたり、元気がなくなってきたりしたら、根腐れを起こしている可能性があります。伸びすぎた根を整理し、黒く変色した根は清潔なハサミで切り落としましょう。
今使っている鉢よりも1サイズほど大きな鉢を用意して、新しい用土に植え替えれば、再び元気に成長してくれます。植え替え後の水やりは必要ありません。新しい芽が出てきたら、水やりを開始しましょう。
剪定しよう
金のなる木は成長とともに、どんどんと株が大きく育ちます。そのままにしていると、見た目が悪くなるので、全体の形を整えるように剪定をしましょう。
剪定には、見た目を整える役割だけでなく、株の風通しをよくする効果があります。枝や葉が茂っている部分も一緒に、切って風通しをよくしてあげましょう。
まだ若い株や、花が咲きにくい種類の場合には4~10月の間ならば、いつでも剪定可能です。ただし3年以上育てた株の場合、11~2月の開花時期に向けて花芽を付けているかもしれません。
9~10月に剪定をすると、花芽を切ってしまう可能性があるため、8月までに剪定を終えておけば安心です。また新しい芽や葉がある場合には、上の部分のみを切り取るようにしましょう。
金のなる木の増やし方
新しい鉢を購入しないでも、金のなる木は挿し木や葉挿しによって増やせます。ここでは挿し木と葉挿しのやり方について解説します。
挿し木をする
金のなる木の挿し木に適した時期は、春から秋です。剪定で切り取ったものを使用しても問題ありません。必要な道具は以下の5点です。
- 水はけのよい用土
- 苗鉢
- 挿し木用の枝
- 清潔なハサミ
- 割り箸
挿し木に使う枝は数日間、風通しのよい日陰で切り口を乾燥させます。乾燥しないまま土に挿すと、切り口から雑菌が入って発根しないので注意が必要です。作業は以下の手順で行いましょう。
- 切り口を乾燥させた枝の下に生えている葉をハサミで切り取る
- 苗鉢に用土を入れる
- 割り箸で用土に穴をあける
- 穴に挿し木を入れる
作業後は水やりをせずに発根するまで待ちましょう。発根したら水やりを開始します。根がしっかりと成長したら、鉢や庭へ植え替えましょう。
葉挿しをする
葉挿しとは植物の葉を土に挿し、発芽・発根させて増やす方法のことです。葉挿しで必要な道具は以下の3点です。
- 大きめの葉
- 浅めの容器
- 挿し木用土もしくは川砂
葉挿しに使用する葉も挿し木同様に、風通しのよい日陰で数日間乾燥させておきましょう。作業の手順は以下の通りです。
- 浅い容器に用土を入れる
- 葉を切り口が埋まる程度に埋める
- 発根して新芽が出てきたら、芽のすぐ下まで土をかぶせる
- 3〜4日ほど経過したら水やりする
水やりしないで1カ月ほど日陰に置いて管理していれば、発根して新芽が出てきます。このタイミングで新しい鉢に植え替えてあげましょう。
金のなる木を元気に育てよう
金のなる木はぷっくりとした肉厚の葉を持つ花月や、筒状のユニークな形状のゴーラムなど、種類が豊富です。常緑性の多肉植物なので、緑が少ない冬の時期もインテリアグリーンとして楽しめます。
また種類によっては花つきが悪いものもありますが、大きく成長すれば、ピンク色や白色の小さな星形のかわいらしい花を咲かせてくれます。
育て方のポイントは、水やりを控えめにして乾燥気味に保つこと、そして夏と冬の温度管理です。肥料は与えないでも、成長するので心配いりません。適した環境と育て方で、金のなる木を元気に育ててみましょう。