アイロンがけは、日々必要となる家事の一つです。しかし正しい知識を持って行わないと、1回の失敗によって、お気に入りの洋服を傷めてしまうことにもなりかねません。アイロンがけを上手に仕上げるコツや、注意点を紹介していきます。
目次
アイロン温度の基本知識
アイロンがけの適切な温度は、アイテムによって異なります。温度設定にどれくらいの幅があるのか、またその適切な温度設定はどこで調べればよいのかを、まずは押さえておきましょう。
低温・中温・高温の温度
アイロンの温度設定は、一般的には『低温』『中温』『高温』の3段階に分けられており、それぞれ低温=約120℃、中温=約160℃、高温=約200℃が最高温度となるように設定されています。
温度設定が3段階に分かれているのは、熱に弱い素材が存在したり、逆に、シワが伸びにくいため高温でアイロンを当てることが適している素材があるためです。
適性温度は、洗濯表示に『低』『中』『高』と略されて記載されているので、アイロンがけをする際にチェックしてみましょう。
アイロン表示の読み方
2016年12月に、洗濯表示が国際規格に合わせて切り替わりました。その際、アイロンマークも旧表示から変更されているので、読み方をここで確認しておきましょう。
変更以前のものに記載されている旧表示は、アイロンマークの中に『低』『中』『高』と具体的に漢字で書かれているので分かりやすかったのですが、現在の洗濯表示では、アイロンマークの中の『・』の数で示されています。
具体的には、低温=『・』、中温=『・・』、高温=『・・・』です。アイロンがけができないものはアイロンマークに『×』の印が付けられています。
素材別の最適な温度
最適な温度は、素材ごとに異なる傾向がありますので、目安として押さえておくと便利です。とはいえ、綿100%などの単一素材ではなく、綿とポリエステルなど混紡の製品も多いはずです。
混紡の場合には、『推奨温度が低い』方の素材に合わせるのが正しいアイロンの当て方ですので、前提として覚えておきましょう。
アクリルやポリウレタンは低温
低温が推奨される素材は、具体的に以下のものが挙げられます。洗濯表記には『・』と記されているはずです。
- アクリル
- ポリウレタン
- ポリプロピレン
また、文字では記載されていませんが、『・』の低温マークには『スチーム禁止』の意味も含まれています。最高でも約120℃までしか上がらない低温設定では、そもそもスチームがうまく機能せず、水として吹き出してしまうケースが多いですが、知識として押さえておきましょう。
逆に言うと、スチームが機能するような高温でのアイロンがけを行ってしまうと、これらの素材でできた生地は熱に弱いため、傷んでしまうということです。
ウールやシルク、ポリエステルは中温
中温設定が推奨される素材は、具体的に以下のものです。洗濯表記には『・・』と記されています。
- ウール
- シルク
- ポリエステル
- ナイロン
- レーヨン
- キュプラ
これらのものは高温でアイロンを当ててしまうと、素材が変質してしまいますし、逆に低温すぎると時間がかかってしまいます。
また、『綿とポリエステルの混紡』など、衣類などにもよく使用されている素材ですので、日々のアイロンがけのなかで最も登場頻度が高い温度設定かもしれません。
綿や麻など天然繊維は高温
高温設定が推奨される素材としては、以下のものが挙げられます。洗濯表記は『・・・』です。
- 綿
- 麻
高温のアイロンは、シワが伸びづらい天然繊維の素材に適しています。綿や麻は、基本的に丈夫な素材なので、熱にも強いです。また、特に麻は、非常にシワになりやすい性質も持っているので、高温のアイロンがけが欠かせません。
ただし、『綿100%』や『麻100%』でない限りは混紡素材になるので、混ざっている素材の適性温度に合わせて『中温』か『低温』でアイロンがけをしましょう
アイロンがけのコツ
アイロンがけは、そもそも『シワ』を取るために行う作業です。このシワ取りを効率よく行うためのコツを2点紹介します。
このコツを知っておくと、日々のアイロンがけがグッとスムーズになり、時短にもつながります。また、一度温度が上がったアイロンはなかなか冷めないので、低温・中温・高温の順にアイロンをかけていくのがおすすめです。
シワをのばしながらかける
アイロンがけしたい衣類のシワをピンと伸ばしながらかけるのが基本です。アイロンを持っていない方の手で、衣類をピッと引っ張ります。その引っ張った部分にアイロンを滑らせていきましょう。
このとき、プレスするように意識するときれいに仕上がります。また、アイロンを滑らせる方向は、一つに決めましょう。いろいろな方向にアイロンがけをしてしまうと、逆に新しいシワを作ってしまう原因になります。
スチームを上手に活用しよう
家にあるアイロンにスチーム機能が搭載されている場合、まず使う前に、スチーム機能を使ってもよい『中温』もしくは『高温』が推奨されている素材であることを確認しましょう。
『・・』もしくは『・・・』の表記があれば、そのままスチーム機能をオンにして、アイロンをかけて大丈夫です。スチームは、麻素材の衣服の頑固なシワなどにも有効です。
手順としては、まず、アイロンがけしたいアイテムから少し浮かせた状態で、スチームを当てていきます。
その後、普通にアイロンをかけていきましょう。あらかじめ蒸気を含ませることでシワが伸びやすくなるので、アイロンがけがスムーズになります。
熱に弱い素材のアイロンがけは注意
熱に弱い素材の場合、生地を傷めないために『当て布』を使うアイロンがけをおすすめします。当て布を推奨しているアイテムであるか否かは、洗濯表示を確認しましょう。
旧表記ではアイロンマークの下に『〜』という波線で表現されていたのですが、現表記では、その旨が文字で記載されるようになっています。
生地が溶けてテカリや伸びが起こる
熱に弱い素材にアイロンをかける場合、表示の温度設定を守っていたとしても、そもそもアイロンを直に当てることで生地に『テカリ』が生じてしまうことがあります。
また、直接アイロンを当てることで、先端が繊維に引っかかってしまい、生地を傷めたり伸ばしてしまったりすることもあります。
この場合は、『当て布』が有効です。生地に直接当たる熱を緩和させることで、ダメージを防ぐことができます。
当て布を使ったアイロンのかけ方
当て布は、専用のものも販売されていますが、家にあるハンカチなどでも十分です。ただし、カラフルなものは熱によって色が移るリスクもあるので、できるだけ白い無地の物を選びましょう。
また、当て布が分厚いとアイロンの熱が遮断されてしまうので、薄いものが適切です。
布を用意したら、アイロンをかけたいアイテムの上に被せ、その上から適温にセットしたアイロンをかけていきましょう。
アイロンを少しずつ滑らせていくと、上手くかけることができます。勢いよく滑らせてしまうと、当て布がずれてしまい、新たなシワが増えてしまう原因にもなりかねません。
当て布が必要な素材
以下の素材は、熱に弱い繊維を含む生地のため、当て布を準備しましょう。
- ウール
- シルク
- カシミヤ
- レーヨン
- ポリエステル
- アクリル
また、素材としてはこれらに該当しませんが、熱に強い『綿100%』のTシャツなどの場合でも、プリント柄があるもの、黒・紺など色が濃いアイテムのものは、当て布をしましょう。
プリント柄の場合、熱を直接当ててしまうと溶けてしまうことがあり、色が濃いアイテムの場合は、テカリが出てしまうためです。ただし、いずれの場合にも、適切な当て布がない場合は、低温で粘り強くアイロンがけをするという方法もあります。
素材に合った温度でアイロンがけしよう
どのアイテムも、一律に低温でアイロンがけをすれば失敗はないかもしれませんが、綿や麻などの高温が推奨されている素材の場合、とても時間がかかってしまいます。
素材ごとに特徴をあらかじめ把握し、適切な温度設定を心がけるとスムーズに行えます。また、『低温』『中温』『高温』とグループ分けした上で、低い方から順にアイロンがけをするのもおすすめです。
アイロンがけは、お手入れの一環でもあります。正しい方法でお手入れをして、お気に入りのアイテムを長く大切に使いましょう。