マルチクリエーター。イラストやキャラクターデザイン、漫画・シナリオ制作。著書に『Constitution girls 日本国憲法』(PHP)『司法修習QUEST~弁護士になるまでに』(新書館)『法律擬人化! 赤ネコ式六法全書』(マイナビ出版)など。第二東京弁護士会所属。赤ネコ法律事務所所長(この名前の法律事務所は実在します)。第二東京弁護士会仲裁センターあっせん人。
弁護士兼マンガ家の赤ネコさんの漫画を通し、「相続のイロハ」を学ぶ『教えて!ソーゾク博士』。今回のテーマは「相続の専門家」です。
「相続で悩んだとき、誰に相談すればいいの…?」弁護士兼マンガ家の赤ネコさんが描きます。主人公のソーゾク博士の正体も漫画の中で明らかになります。
目次
いやいや、専門家に相談しましょうね
©赤ネコ
遺産相続争い、多額の相続税、借金という負の遺産…。朝日桃さん(20代)は相続について知るにつれ、多くの人に悩みがあることがわかってきました。
「自分もひょっとしたら、親の遺産を巡って、お兄ちゃんと骨肉の争いするかもしれないわ」
気弱で口べたな兄の葉介さん(30代)との争いに負ける気はしませんが、有利にことを運ぶためには強い味方(相談に乗ってくれる人)が必要と、桃さんは考えます。
桃さんがの頭に浮かんだのは、次の面々です。
- 「相続のことなら経験豊富なワシに任せろ」と語る自称専門家のおじさん
- 法学部卒業の友だち(会社員)
- 近所のまとめ役のおじさん
- 桃さんと同じく口達者な母親・朱美さん(50代)
「すげえ、頼もしい! 謝礼も安く済ませたいし、いいかも!」
なんて桃さんが考えていると、「いやいやいや、桃ちゃん。そこは専門家に相談しましょう」「自称専門家には注意です。それでトラブルになる人は多いんですよ…」と桃さんをたしなめる一人の女性が現れます。
桃さんが最近知り合った「ソーゾク博士」です。相続に詳しいから、ソーゾク博士と呼んでいるけど、桃さんも彼女の素性を知りません。
相続の専門家に相談しろと言われても、それは誰なんでしょうか? どう選べばいいんでしょうか? 桃さんにはわからないことがいっぱいです。
相続を専門家に頼らないリスクとは
©赤ネコ
そもそも、相続の困りごとを専門家に相談しないと、どんなリスクがあるのでしょうか。
もちろん、相続する人が自分で相続手続きを済ますことも可能です。相続人同士の争いがなく、ほとんど遺産や借金がないようなときは問題は生じないかもしれません。しかし、相続に関わる法律や手続きは非常に複雑ですので、あとで「しまった!」となることがあります。
相続税の課税や負債の相続によって、予定外の費用が発生してしまう
たとえば、相続税を減らす制度について知らなかったばかりに多額の相続税がかかってしまい、その支払いのために住んでいる家を売らざるえなくなったケースはよくあります。また、相続放棄の手続き期限を知らなかったばかりに、故人の多額の借金を引き継ぐことになってしまったなんてことも起こりえます。
遺言書に不備があり、親族の間で相続争いが起きてしまう
遺産を残す側にとっても、自己流の相続対策は失敗につながります。自分の死後の相続トラブルを防ぐために遺言書を作成したのに、厳格なルールが守られていなかったばかりに遺言の効力が認められなかったなんてことも起こりがちです。
また、相続する人たちの間で、遺産の分け方についてもめたとき、自分たちだけで解決しようとすると、感情的な対立が深まり、争いが泥沼化する恐れもあります。
なお、桃さんは「お母さんを相談役に」とも考えましたが、父の青治さんが亡くなった時、母親の朱美さんも相続人となります。朱美さんの利益と、桃さんの利益がぶつかる恐れがある関係(これを利益相反となので、相談役として適していません。)
自分の悩みに応じて、専門家それぞれの得意分野を使い分けよう
相続の専門家と一口に言っても、弁護士、税理士、司法書士などたくさんあります。それぞれに得意分野やできること、できないことがあります。
弁護士:ほとんどの相続相談に応じられる
法律の専門家である弁護士は、相続人や相続財産の調査から遺言書作成、遺産の分け方を記した遺産分割協議書作成まで、ほとんどの相続相談に対応できます。また、もめ事がある場合、本人に代わって交渉できるのは、弁護士だけです。
なお、ソーゾク博士は「まずはオールマイティーに対応できる弁護士に相談に行くのが、お勧め」との考えです。
税理士:相続税申告は税金のプロに
税理士は税務の専門家です。相続人同士で争いがなく、相続税の申告が必要な場合は、税理士に相談に行くとよいでしょう。生前の節税対策についても相談に応じてくれます。
司法書士:手続き代行のプロ/不動産の登記に対応
司法書士は法律関連の書類作成や手続き代行のスペシャリストです。不動産の相続登記をはじめとする各種名義変更を得意としており、争いのない相続手続きについて幅広く対応します。成年後見や家族信託にも力を入れています。
行政書士:車の名義変更に対応する専門家
不動産の名義変更が司法書士なら、自動車の名義変更は行政書士の役割となります。相続にかかわる仕事では、遺言書の作成や、各種の名義変更手続きの代行などをしています。
その他の専門家
このほか、土地や建物を相続する際に必要となる不動産鑑定評価なら「不動産鑑定士」が担います。また、士業ではありませんが、相続した遺産の運用については、信託銀行が相談に応じてくれるでしょう。相続の行政手続きの相談であれば、担当の行政庁が受け付けています。
複数の専門家の連携が必要になるパターンも
相続の困りごとの内容に応じて、適切な相談先に頼ることが解決の第一歩です。また、相続には法律、税務、保険、不動産など幅広い専門知識が必要となりますので、他の専門家との連携が充実した事務所に相談すれば安心でしょう。
また、弁護士や税理士といっても、相続案件の経験や知識が豊富な士業は限られていることも知っておきましょう。その意味では、どんな資格をもっているかだけでなく、経験の有無も大事になってきます。
専門家の探し方
最後に信頼できる相談先の探し方のポイントを紹介します。事務所のホームページを見て実績などをチェックすることも大切ですが、正式な依頼の前に実際に専門家と会ってみるとよいでしょう。
最近では、無料相談に応じている事務所も数多くあります。無料相談を活用して、複数の事務所に足を運び、その対応を比較しながら、信頼できる専門家を探してみて下さい。
相続のお悩みは『相続会議』で解決!
遺産相続対策や手続きをサポートするポータルサイト『相続会議』では、相続に役立つ記事をお届けするほか、相続に詳しい弁護士や税理士、司法書士を検索するサービスをご提供しています。相続についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてくださいね。(※外部サイトへリンクします)