遺産はすべて長女へ! そんな遺言書はあり?なし? 相続争いの種となる「遺留分」を知ろう

提供:株式会社朝日新聞社/©赤ネコ
この人に漫画を書いてもらいました赤ネコ(弁護士・漫画家)

マルチクリエーター。イラストやキャラクターデザイン、漫画・シナリオ制作。著書に『Constitution girls 日本国憲法』(PHP)『司法修習QUEST~弁護士になるまでに』(新書館)『法律擬人化! 赤ネコ式六法全書』(マイナビ出版)など。第二東京弁護士会所属。赤ネコ法律事務所所長(この名前の法律事務所は実在します)。第二東京弁護士会仲裁センターあっせん人。

弁護士兼マンガ家の赤ネコさんの漫画を通し、「相続のイロハ」を学ぶ『教えて!ソーゾク博士』。今回のテーマは、遺言書を作成する上で必ず知っておきたい「遺留分」についてです。

遺言書の内容がすべて?

©赤ネコ

近所に暮らすソーゾク博士と友だちになり、相続の話に興味津々の桃さん(20代)。父親の青治(せいじ)さん(50代)が将来的に亡くなったら、その遺産は母親と兄、そして自分の計3人に相続されることになりますが、自分の取り分が気になっています。

「遺産を多めにもらえないかなぁ」

そんな桃さんに、ソーゾク博士は「桃ちゃんの相続分を増やしてもらえるよう、遺言書に書いてもらえばいいんですよ」と耳打ちします。

よいことを聞いたと、桃さん。「相続財産を、すべて桃に!」と遺言書に書いてもらえば、遺産を独り占めできるのでは?ともくろみます。

遺言書でも奪えない権利「遺留分」

©赤ネコ

桃さんの動きを察知した兄の葉介(ようすけ)さん(30代)は「父は桃に甘いから、いかにもありえる話だ…」と不安になります。

そんな兄妹の様子を見ていたソーゾク博士。「お二人とも冷静に! 誤解が多いのですが、遺言書にそう書いてあっても、葉介さんも遺産をもらえる権利はありますよ」と諭します。

どういうことでしょうか?

そもそも遺産の分け方は、遺言書がない場合は、相続人同士の話し合いで決めます。一方、遺言書があれば、基本的にはその通りに分けていくことになります。

ただし、相続人には主張すれば最低限はもらえる「遺留分」があります。

仮に、父親の青治さんが「桃にすべての財産を相続させる」と記した遺言書を残して亡くなったとしても、葉介さんの遺留分まで奪うことはできません。ですので、遺言書が遺留分を侵害する内容になっていれば、争いが生じる恐れがあります。

なお、遺留分はあくまで「権利」であることは、知っておきましょう。「遺産のすべてを桃に」との遺言書に対し、葉介さんが「お好きにどうぞ」と異議を唱えなければ、問題は生じません。しかし、「それはおかしい! 遺留分の侵害だ」と最低限もらえる金額を請求することもできます。その権利を行使するかどうかは、その人次第なのです。

遺留分の最低限もらえる金額とは?

権利を主張すれば最低限もらえる遺留分とは、いくらなのでしょうか?

これは、原則として「法定相続分」の半分となります。

法定相続分とは、遺産の分け方を相続人同士で話し合ってもまとまらなかったときに、目安となる遺産の分け方です。配偶者と子どもが相続人の場合、法定相続分は「配偶者2分の1、子ども2分の1」で、子どもが複数いる場合は、2分の1を人数分で割ります。

従って、2人兄妹の葉介さんの法定相続分は「4分の1」で、遺留分はその半分の「8分の1」です。仮に遺産が4000万円だった場合、500万円が葉介さんの遺留分です。

また、亡くなった人のきょうだいには遺留分はありません。桃さんや葉介さんから見て、叔父や叔母にあたる方々です。子どもがおらず、親も亡くなっている夫婦の場合、そのきょうだいが相続権を持ちます。しかし、「すべての財産は妻(もしくは夫)に」という遺言書があれば、そのきょうだいに遺産が相続されることはありません。

遺留分を考慮しない遺言書は、争いの種になります。一方で、どうしても相続させたくない相手がいることもあるでしょう。遺留分を減らす方法もありますので、遺留分について心配なことがあれば、ソーゾク博士のような専門家に相談することを検討して下さい。

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