『領収書』は、社会人であれば誰もが毎日のように扱う機会がありますが、宛名や金額の書き方など、意外と正しく理解していない場合が多いものです。今回は、社会人なら知っておきたい領収書の役割や正しい書き方について解説します。
目次
領収書とは?
ビジネスの場面だけではなく、私たちの日常生活の中でも常に身近に存在する領収書には、いったいどのような役割があるのでしょうか。
領収書を提出する意味
領収書は、物やサービスに対する対価として金銭を支払った事実を証明する書類です。
例えば魚屋で刺身を買ったときに、お金を渡してレシートや領収書を受領せずに店を出たとします。しかしその直後に魚屋さんから「お客さん、代金もらっていませんよ!」と言いがかりをつけられても、領収書やレシートがなければ、支払ったことを証明できません。
このとき領収書があれば、支払った側は支払いの、そして受け取った側にとっても受け取った証明ができるため、支払った・もらってないといった水かけ論になったり、二重払いを求められるトラブルを防ぐことができます。
レシートとの違いは?
買い物や飲食をしたときに、領収書ではなくレシートだけを受け取る人も多いかもしれません。
以前はレシートには宛名がなく、支払いがあったことは証明できても、誰が支払ったのかが不明なため、レシートと領収書は違うものとされていました。
しかし近年では、データ集積機能も付いたPOS式のレジから発行されるレシートなどもあり、代金だけではなく店名・購入日時・購入商品の明細まで印字されています。そのため現在税法上、領収書とレシートは同様のものとして扱われているようです。
ただし旧式のレジで値段の印字しかない場合や、社内ルールでレシートを代用しての経費精算は認めないとしている企業もあります。会社に提出する必要がある場合などは、レシートとは別に領収書を取得しておくのが安心です。
領収書の正しい書き方
領収書は金銭の授受を証明する書類なので、まずは金銭授受の事実を証明できること、そして改ざんされないように書き方を工夫することが大切です。そうした視点を踏まえた上で、領収書の正しい書き方について学んでいきましょう。
宛名を書く
領収書には、必ず『宛名』を書く欄があります。このとき記入するのは個人名なのか、企業名なのかなど、何を記入するの受領者に確認しますが、いずれにしても正式名称で記載するのが基本で、(株)などと省略して書かないように注意しましょう。
また人名や企業の名前は耳だけで正確に聞き取るのは難しいので、紙に書いてもらったり、名刺を拝見させていただいたりすると、宛名違いによる書き損じの手間を防げます。
そして宛名を尋ねたときに、「上様で」と言われる場合もあるでしょう。小売業や飲食店などの場合、税法上支払い者の宛名は省略可能なので「上様」と書いても問題ないとする意見があります。
しかし領収書の場合、税務署などの第3者が見たときに信頼できるものかを問われる書類であるため、近年ではできるだけ宛名には正式名称を記入することが求められます。誤認リスクの回避のためにも、「上様」表記は避けるようにしましょう。
発行者情報・日付・金額を書く
領収書には『発行者(詳細な情報付き)』『日付』『金額』の記載が必須です。
『日付』は、領収書を発行した年月日を記入します。
『年』の表記は和暦でも西暦でも問題ありませんが、どちらの場合も『令和3年』『2021年』のように、省略形ではなく正式な形で表記しましょう。このとき注意したいのが『元号+1年』の場合で、この場合は『元年』と記載します。
また『発行者情報』には発行者、つまり自分の店や会社の名前と住所、そして連絡先を記入します。
そして『金額』は商品の代金ではなく実際に受領した金額を記載し、内訳欄には税抜き価格と消費税額を分けて記載するのが正しい書き方です。
金額の記載で気を付けたいのが、後に金額を改ざんされないための工夫です。数字の頭には、『¥』のように受け取った通貨の単位を示す記号を記載します。そして金額の末尾には『-』や『也』と書き、さらに金額の3桁ごとに『,』を打つことで数字の書き足しを防ぎます。
収入印紙は金額に応じて貼付が必要
領収書には収入印紙が貼られているものと、いないものがあります。この違いはどこからくるのでしょうか?
収入印紙は、そもそも印紙分の税金を納めることを意味します。そのため収入印紙貼り付けの有無は、支払った金額が課税対象額か否かにより異なります。
領収書の場合、記載金額が5万円以下の場合は非課税です。しかし5万円以上になると印紙税が課税される対象となる、契約書および受取書を意味する『課税文書』になり、金額に応じた収入印紙の貼り付けが必要になります。
課税文書であるにもかかわらず収入印紙を貼らないと、それは『脱税』です。もしそのことが発覚した場合には、本来の納税額のおよそ3倍相当額が『過怠税』として徴収されます。
しかし例外もあり、クレジットカードでの支払いに対して渡される領収書の場合は、金額にかかわらず収入印紙の貼り付けは不要です。
領収書の但し書きとは?
領収書を見ると色々な項目が設けられており、その中に『但し書き』という項目があります。この但し書きは、どんな役割がある項目なのでしょうか?
但し書きの役割と注意点
但し書きには、具体的にどんな商品やサービスに対して金銭を受領して発行したものなのかを明確にする役割があります。
社用で訪問先用の手土産を購入して領収書を請求したときに、「但し書きはお品代でよろしいですか?」と聞かれたことはないでしょうか?但し書きの役割を正しく理解していないと、思わず「はい」と答えてしまいますが、それは誤りです。
特にビジネスで手土産などを購入する場合、この但し書きに書かれた内容をもとに、必要経費に入るのか、入らないのかが判断されます。
このとき『お品代』だけでは何を購入したのかがわからず、本当に接待ひの対象になるものなのかわからないため、税務調査の際に経費として認められない可能性があります。
但し書きの具体的な記入例
但し書きには、『トイレットペーパー代として』など、具体的な商品名を記入します。もし同時に複数の商品を購入した場合には、『トイレットペーパー2束他』のように、『メインの品物+他』と記載します。
また品物ではなく、サービスの対価に対する領収書も同様です。『経理セミナー参加費』のように、どんなサービスに対して支払いをしたかを明確にします。
なおビジネスの場で経費として計上することが多い飲食代の場合には、単純に『飲食代として』と記載するだけで、メニューの明細まで記入する必要はありません。
領収書を扱うときの注意点
領収書は、経費や税金などに関係する重要書類です。ここでは、領収書を扱うときの注意点について解説します。
領収書には保存期間がある
領収書は法人税や確定申告の際に必要になるため、申告が完了したらその年の領収書は破棄してもよいと思う人も多いでしょう。しかし、その後税務調査の際に提出を求められる場合もあるため、一定の保存期間が設けられているのです。
法人の場合は、原則として7年間の保存が定められています。また個人事業主の場合は、青色申告をしている事業主の場合は法人と同様に7年間、白色申告の場合には5年間です。
例外として、法人の場合は赤字が発生した事業年度については、欠損が発生した年度より9〜10年間と、保存期間が延長されます。
さらに白色申告の個人事業主も、消費税の課税事業者の場合は保存期間が7年間に延長されます。
なお、領収書の保管期間の起点は、法人は『事業年度の法人税申告期限日の翌日』、個人事業主は『確定申告期限日の翌日』です。
再発行するときは要注意
領収書を一度発行した相手から、紛失などを理由に領収書の再発行を求められる場合があります。ただし、領収書の再発行は不正利用のリスクがあり、慎重に行う必要があります。再発行をする場合には、次のような点に注意しましょう。
- 『再発行』と明示:再発行した領収書には、必ず『再発行』という表示を入れます
- 発行日:領収書に書き入れる日付は、再発行した日付にすることで領収書の二重発行ではないことの証明にします
クレジットカード支払いの場合は明記しよう
クレジットカード払いだった場合も、領収書発行時に注意点があります。それは領収書中にクレジットカード払いであったことを明記する必要があることです。
クレジットカードの場合、金額にかかわらず収入印紙の貼り付けが不要です。領収書上でクレジットカード払いであることが明示されていないと、現金で払った場合との区別がつかず、収入印紙の貼り付けを求められることがあります。
そのため、必ず『クレジットカード利用』などのように明記するよう気を付けましょう。
領収書の正しい書き方を身に付けよう
領収書を正しく発行することは、顧客に対する信頼を得るためにも必要なことです。
また領収書の内容やクレジットカード払いだった場合はその旨を明記するなど、記入は正しく行いましょう。記入方法に誤りがある領収書では正式なものと認められず、脱税行為とみなされる危険性もあります。
その重要性を正しく理解し、保存期間中は必ず手元に残しておくなど、領収書はくれぐれも慎重に扱うようにしましょう。