神棚を配置するとき、気を付けたいのが場所の選定です。神棚に宿る神様が不快な思いをしないよう、注意して場所を決めねばなりません。神棚を設置する際に注意したいポイントや、お神札(おふだ)、お供え物の正しい置き方などについて紹介します。
目次
神棚の基本をおさらい
神棚は、日本古来の『神道(しんとう)』という宗教にまつわるものです。手を合わせて拝む点は仏壇と同じであるため、混同している人もいるかもしれません。まずは仏壇と神棚の違いや、神棚の基本的な意味について確認しましょう。
仏壇と神棚の役割の違い
仏壇は、『家庭内のお寺』ともいえる場所です。中心には各宗派の本尊(ほんぞん)となる掛け軸や仏像を配置して祀り、香炉・灯籠・ろうそく・鈴などが置かれます。
なお、本尊は宗派によって異なるのが一般的です。必ずしも仏像に限定されず、掛け軸や曼荼羅(まんだら)を飾ることもあります。また、家族が亡くなったとき、位牌(いはい)を納めるのも仏壇です。
一方神棚は、神道の神々を祀るところで『家庭内の神社』とも言い換えられます。神棚には、お神札を祀ります。その際、『宮形(みやがた)』と呼ばれるお神札を納める神社を模したものを置くこともありますが、これは必須ではありません。
また、『あの世とこの世の境目』を表す『しめ縄』を飾ります。
基本的に、神棚の祀り方については規定がないと考えてよいでしょう。地域や家庭に伝わる習わしに従うのがおすすめです。
自宅に神棚を祀る意味
そもそも、神棚の由来はなんでしょうか。神棚は、江戸時代にお伊勢参りが流行った頃に『自宅でも伊勢神宮のお神札を祀ることができるように』という目的で家庭に設置されました。つまり、自宅の神棚は『神社でいただいてきたお神札をお祀りする場所』という意味合いが強いのです。
また、古くから日本では、死んだ先祖の霊が神様となり、子孫を守ると信じられてきました。このことから、神棚で神様を祀ることは、先祖を祀ることにも繋がると考えられてきたのです。
神棚を祀る時期
神棚を祀る上でタイミングはありません。基本的にはいつ神棚を祀ってもよいですが、新しいスタートを切るときや厄払いなどのタイミングがおすすめです。
例えば、以下のようなタイミングで神棚の設置を考えてみましょう。
- 新年
- 新築・引っ越し・開店
- 結婚・出産
- 代替わり
- 厄年・厄が続いた後
- 年祝い
- 慶事の後など
なお、引っ越しや新築・開店のときは、家具や荷物を運び込む前に神棚を設置します。新しい場所には、まず神様に入ってもらうのが順当です。
また、神棚は仏壇と異なり、定期的に新しくするのが望ましいとされています。5年・10年・15年など、5年区切りで新調すると縁起が良いでしょう。伊勢神宮の遷宮が20年ごとというのはよく知られていますが、家庭の神棚も、最低でも20年以内には新しくすることをおすすめします。
神棚の配置場所のポイント
神棚は神様の住まいです。家庭内に置くときは、礼を欠いたり神様が不快に思ったりすることのない場所を選ばねばなりません。神棚を置くときは、周囲の環境はもちろん、方角にまでこだわりましょう。
神棚を家庭に置くとき、注意したいポイントを紹介します。
神棚は正しい方角に設置しよう
神棚を設置するのは、東向きまたは南向きが最適です。これが不可能な場合は、西向きでも問題ありません。
神棚の方角を考える上で重要なのは、日当たりです。神道の神様は明るく清潔な場所を好むといわれます。南または東の方角に神棚を置くと、太陽の光がたっぷりと当たるでしょう。
とはいえ、近年の住宅事情から「どうしても望ましい方向に神棚を向けられない」ということもあるでしょう。このような場合は無理に方角に固執せず、できるだけ条件のよい場所を選びます。適度に明るく、清潔な場所を選ぶのがおすすめです。
人の目線より高い場所に設置しよう
神棚は、見上げるくらいの位置に設置するのが望ましいとされます。
神棚に住まう神様は、人間よりも尊い存在です。上から見下げるのは、神様を軽んじていることにもつながります。神棚は高い位置に設置して、尊崇(そんそう)の気持ちを表わすほうがよいでしょう。
しかし中には、2階建てや集合住宅など住んでおり、神棚の上を人が通らざるを得ない環境の人もいるかもしれません。
この場合は、神棚の上に『雲』『天』という文字が書いてある紙を貼り付けたり、別途『雲板』という木製の装飾を取り付けたりすることで、神様への敬意を表すことができます。どちらも『神棚の上が天上であり、上はない』という意味となります。
人が集まるところに設置しよう
神様は、人が多く集まる場所を好みます。そのため、普段誰も使わない寂しい部屋よりも、人の中心となるリビングなどに神棚を置くのが望ましいでしょう。
ただし、神様は不潔な場所を嫌います。人が多く集まるといっても、人の往来が激しい玄関や、汚れやすいキッチンの近くに神棚を置くのはおすすめできません。
神棚のお神札、正しい置き方
神棚に配置するお神札が1枚ではない場合もあるでしょう。複数枚のお神札を置く場合、適切な順番を守らなければなりません。
お神札とは
お神札(おふだ)とは細長い形状をした和紙や木の板です。表書きには神社の名前(神号:しんごう)と神社の御印(神璽:しんじ)が記されており、神様の力が宿っているとされます。これを家庭の神棚に祀ることで、そこに住む人は神からの加護を受けられるとされているのです。
お神札には、次の3種類があります。
- 神宮大麻(じんぐうたいま)
- 氏神神社(うじがみじんじゃ)のお神札
- 崇敬神社(すうけいじんじゃ)のお神札
『神宮大麻』とは、皇室の祖先神を祀った『伊勢神宮』のお神札です。これは伊勢神宮に行かなくても、一般的な神社で授かることができます。伊勢神宮には『天照大御神(あまてらすおおみかみ)』が祀られており、八百万(やおよろず)の神様の中で最も位の高い神様とされています。そのため、伊勢神宮の神様は日本の守り神として考えられているのです。
一方、『氏神神社』のお神札は、地域の神様を祀るものです。住んでいる土地の神社でいただいたお神札のことを表します。自分の氏神神社がどこだか分からない場合は、各都道府県の神社庁のホームページで調べることができます。
そして、『崇敬神社』は伊勢神宮・地域の神社以外でよくお参りする神社です。こちらでもらったお神札があれば、ほかのお神札と同様に神棚に並べましょう。
なお、お神札には大小さまざまなサイズがあります。「大きい方がよいのだろうか」と悩みますが、大きさは関係ありません。家庭の神棚に合うサイズを選びましょう。
お神札の設置方法
お神札の設置方法は、神棚の造りによって異なります。神棚は、正面から見たときの扉の数によって次のように分類されます。
- 一社造り:扉が一つ
- 三社造り:扉が三つ
一社造りの神棚は、お神札を重ねて収納します。手前から『神宮大麻』『氏神神社のお神札』『崇敬神社のお神札』の順番に並べ、一番前に神宮大麻がくるようにしましょう。
また、三社造りの神棚は、3カ所それぞれにお神札を配置します。左から『崇敬神社』『神宮大麻』『氏神神社』と並べ、中央に神宮大麻がくるようにしましょう。
なお、神棚の扉は開けておいても閉めておいても構いません。おめでたいときやお正月などは大きく開き、お供え物をするとよいでしょう。
神棚にお供えするときの作法
神棚を設置したら、毎日手を合わせてお供えをします。お供えする物の種類や配置方法、順番について見ていきましょう。
お供えするもの
神棚にお供えする物として、以下の食べ物や飲み物などがあります。いずれも神様用の器に入れてお供えしましょう。
- 米
- 水
- 塩
- お酒
- 榊(サカキ)
米は、日本の食生活になくてはならないものです。神棚に捧げる最も重要な作物として、必ず用意します。一方、水や塩は、命をつなぐ上で不可欠なものです。ミネラルウォーターや天然塩を用意するとよいでしょう。
これらのお供え物は、基本的に毎日取り替えるのが理想です。忙しい場合でも、水だけは新しいものと替えましょう。また、下げた物は捨てず、料理に使うとよいでしょう。物に宿った神様の力を体内に取り込めるとされています。
このほか、日本酒、神事には定番の榊もお供えには欠かせません。毎日取り替える必要はなく、毎月1日、15日に取り替えるのが習わしです。
配置方法と順番もチェック
お供え物は、折敷(おしき)と呼ばれる木製のお盆や、月見のとき団子を乗せる三方(さんぼう)に供えるのが一般的です。
いずれの場合も注意したいのが、『重要度の高いお供え物を神様の近くに置く』という点です。お供え物では『米→酒→塩→水』の順に重要度が高いと覚えておきましょう。
正方形の折敷や三方を使う場合は次のように配置します。
- 中心に米
- 米の手前の左右に酒
- 向かって左前に水
- 向かって右前に塩
一方、奥行きのない長方形の折敷や三方を使う場合は、全て横一列に並べます。順番は、『向かって左から水・酒・米・酒・塩』です。このとき、必ず中心に米がくるようにしましょう。
また、榊は『榊立(さかきたて)』という神具に入れて、神棚の左右に配置します。
神棚の配置をよく理解しよう
神棚を設置するときは日当たりや清潔さ、上の階の有無などに注意しなければなりません。また、神棚を設置した後は毎日のお供えが必要です。こちらも順番や並びの決まりがあるため、神様に失礼のないよう理解しておきましょう。
神棚を設置して神の加護と家内安全や繁栄を願うのは、古くから日本に伝わる習わしの一つです。新築や引っ越し、厄年などが近い人は、神棚を設置するのに最適なタイミングといえます。ぜひ神棚を設置して手を合わせ、神様とのつながりを持ちましょう。