鉄フライパンは熱伝導性に優れ、美味しく調理できるアイテムです。しかし、お手入れを誤ると、焦げ付いたりさびやすくなったりし、鉄フライパンならではの魅力が失われてしまいます。正しいお手入れ方法を知り、一生モノの鉄フライパンにしましょう。
目次
鉄フライパンの魅力をチェック
ここでは、鉄フライパンの魅力を紹介します。『鉄分不足を補える』『料理の味がワンランク上に』『適切な手入れで一生使える』など、メリットを聞くだけでも使ってみたくなるのではないでしょうか。以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。
鉄分不足を補える
鉄フライパンを使って料理をするだけで、鉄分を摂取できます。調理中に、フライパンの鉄分が食材に混ざるためです。
実際、鉄フライパンと鉄を使っていないフライパンで調理した場合とを比較し、でき上がった料理に含有される鉄分量が実際にアップしたという研究結果も発表されています。
微量ずつではありますが、鉄分が不足しがちだと感じている人にはおすすめです。
料理の味がワンランク上に
『外はカリっと、中はフワッと』という、美味しい料理を表す代名詞のような表現があります。鉄フライパンは、まさにこの仕上がりを叶えてくれるのです。
鉄フライパンの表面には小さな穴が空いているので、油を流し込むと表面全体に薄い油の膜ができます。そのため、食材に均等に火が通り、焼きムラなくカリッと仕上げることが可能です。
また、鉄フライパンは、熱伝導性に優れているので、食材に強い熱を一気に届けられます。チャーハンや野菜の炒めもの、シンプルな肉料理などは、鉄フライパンならではの仕上がりを実感しやすいでしょう。
適切な手入れで一生使える
鉄フライパンは、一生モノと言われています。お手入れにコツは必要ですが、適切なメンテナンスを続けていれば、100年でも使えるのです。
また、毎日使うことで鉄に油が染み込むことでさびにくくもなり、料理がフライパンにくっついてしまうこともなくなります。
このように、鉄フライパンは使えば使うほど『育てられる』道具です。適切なお手入れ方法を知って活用しましょう。
初めて使う前にすべきお手入れ
鉄フライパンを使いこなすためには、事前の準備が必要です。『焼き入れ』と『油ならし』はいずれも、鉄フライパンで美味しく調理をし、さびつかせずに使用し続けるために欠かせない作業となります。
具体的な手順を紹介していくので、実践してみましょう。
コーティングを除去する『焼き入れ』
新品の鉄フライパンには、さび止めの塗料が塗られています。使う前にこの塗料を焼き切る作業が『焼き入れ』です。
高温でフライパンの内側と外側をまんべんなく、色が変わるまでガスコンロの火で熱していきます。以下、具体的な手順を紹介します。
- フライパンの表面についたホコリなどを取り除くため、さっとスポンジや洗剤で洗い、水気を拭き取ります。
- 空のフライパンを火にかけます。最初は中火から始めて、温まってきたら強火にしましょう。
- 黒色から青みがかった色に変わってくるので、焼き続けましょう。内側が一通り変わってきたら、外側もしっかり火に当てます。作業中は煙が出ますので、換気扇を回しながら行いましょう。
- 終わったら、そのまま放置して冷まします。この際、水をかけて冷却するのはNGです。フライパンが変形したり、熱湯になって飛び散って火傷することもあるので注意しましょう。冷めたら、洗剤とスポンジで洗い、水気を拭き取りましょう。
焦げ付きを防ぐ『油ならし』
使い始める前に『油ならし』と言われる作業をしておくと、焦げ付きを防げます。このプロセスによって、フライパンの表面に薄い油の層ができるのです。
油ならしをせずに使い始めると、食材がフライパンにくっつきやすくなります。そのため、この工程はしっかりと行いましょう。
作業が終わった後、鉄のにおいが気になる場合には、くず野菜などを炒めると解消されます。
- フライパンを洗剤などで洗い、水気を拭き取りましょう。
- 洗ったフライパンを火にかけ、中火で温めながら、食用の油を全体の1/3程度入れます。油は食用であれば何でもOKです。
- フライパンを動かしながら全体に油を馴染ませて、弱火で2〜3分程度加熱し続けます。
- 油煙が出てきたら火を止めて、余分な油をオイルポットなどに戻しましょう。フライパンに残った油を、キッチンペーパーなどでフライパンの内部に染み込ませます。
- 仕上げに、キッチンペーパーで縁を中心に外側も拭いておきましょう。外側に食材がこびりつくのを防ぐことができます。
鉄フライパンの焦げ付く原因
注意しながら使っているはずの鉄フライパンが、焦げ付いてしまうこともあります。よくある原因を3点紹介しているので、当てはまるケースがないかチェックしてみましょう。
フッ素樹脂加工のフライパンを使っていた場合は、使用時の火力などの感覚が異なるので要注意です。
油ならし、調理中の油が足りない
原因の1点目はまず、『油返し』をしていないケースです。『油ならし』をして最初にコーティングをしても、使っているうちに剥がれてきてしまいます。
油の層がフライパンに定着するまでは、毎回使い始める前に『油返し』と呼ばれる作業をしましょう。油返しは、油ならしと同様の手順で行います。
- フライパンを弱火にかけて、2〜3分温めます。
- フライパンの3分の1ほどの油を入れ、内側に油を馴染ませます。
- 油が熱くなり、油煙が少し出てきたら火を止めます。余分な油をポットに戻して完了です。
また、そもそも調理中の油が足りないというケースも考えられます。フッ素樹脂加工のフライパンで慣れている人は、鉄フライパンを使う際に少し多めの量で調理するとちょうどいいでしょう。ただし、くれぐれも油の入れすぎによる引火には気をつけましょう。
火力を高くしすぎている
鉄フライパンは、フッ素樹脂加工のフライパンよりも熱伝導率がよいため、同じ感覚で使うと火加減が高くなりがちです。
また、フライパンそのものはもちろん、食材も焦げ付いてしまうため、心持ち火を弱めにして使うと改善できるかもしれません。
鉄フライパンを使い慣れてくると、食材に応じた適切な火力を徐々に把握できますので、使い続けながら感覚を身に付けていきましょう。
お手入れをしていなかった
調理後、鉄フライパンをそのまま放置してしまうと、フライパンの中に残った食材が熱で焼かれ続けて焦げ付きの原因となります。
フライパンの食材は全てお皿などに移し替え、すぐにお手入れをしましょう。鉄は、時間が経過するほど汚れが落ちづらくなります。
手で触れるくらいにフライパンが冷めてきたら、たわしとお湯で洗い流しましょう。急速に冷やすと鉄フライパンは変形してしまう可能性もありますので、水を使うのはNGです。
日々のお手入れと焦げ付きの対処法
鉄フライパンは熱伝導率が高いため、どうしても使うたびに焦げが発生してしまいます。焦げは、正しく速やかに対処すれば取れますので、以下の手順に従ってお手入れをしましょう。
たわしやスポンジで汚れを落とす
鉄フライパンは、たわしとお湯だけで洗うのが基本です。鉄はとても硬くて丈夫な素材なので、たわしでゴシゴシこすっても、傷がつく心配はありません。
洗うときは焦げ付きを残さないように、しっかりとこするのが大切です。特に、フライパンの裏は直接火が当たるので、焦げ付きやすい部分になります。念入りに洗いましょう。
鉄フライパンを洗うときに使う道具としては、たわしをおすすめします。スポンジでも大丈夫ですが、その場合は固めのものを用意しましょう。
空焼きと油の塗り付け
洗い終わったら、しっかりと水分を飛ばすために火にかけて空焼きをします。フライパンの表面に水分が残っているとさびの原因になるので、自然乾燥はNGです。空焼きが終わったら、全体に食用油を塗り付けます。
このとき、キッチンペーパーなどを使い、内側だけではなく外側や取手にもまんべんなく薄く塗り伸ばしていきます。塗り残しがあると、そこからさびが発生してしまうので注意しましょう。
焦げ付きの対処法
頑固な焦げが付いてしまった場合には、お湯で汚れを浮かせます。フライパンにお水を入れて火にかけ、ゆっくりと沸かしていきましょう。お湯の力で、汚れがふやけて浮いてくれば、落としやすくなります。
それでも難しい場合は、お湯に重曹を混ぜるとよいでしょう。重曹が焦げをふやかして、こすり落としやすくしてくれます。それでも落ちない場合は、金属製のフライ返しなどを使って、こすり落とすのが有効です。
また、ここまでの作業をすると油のコーティングが完全に剥がれてしまうので、仕上げに油返しを行いましょう。
鉄フライパンを楽しむコツ
せっかく購入した鉄フライパンを順調に育て続けるために、押さえておきたいポイントを紹介します。まず、洗剤は使ってはいけません。育てるプロセスが、振り出しに戻ってしまいます。
また、逆にさびてしまっても諦める必要はありません。振り出しからやり直せます。それぞれのケースを、具体的に押さえておきましょう。
洗剤を使わない
鉄フライパンを使う上で、最大の注意点は『洗剤を使わない』ことです。『洗剤』を使うのは絶対にNGです。油ならしや油返し、使用後の油コーティングなど、使いながら念入りに作ってきた油の層が台無しになってしまいます。
鉄フライパンは油と馴染ませてこそ、その魅力が活かされます。洗い流してしまったら、最初からやり直しです。
もちろん、購入したての使用前には、洗剤でしっかり洗ってから使うのをおすすめします。しかし、鉄フライパンを洗剤で洗うのは、購入直後のタイミングのみだと心得ておきましょう。
さびても捨てなくてOK
鉄フライパンは、使わずに置いておくとさびてしまいます。しかしその場合でも、諦めて捨てる必要はありません。クレンザーなどを使って、しっかりと研磨すればさびを落とすことができます。以下、さび落としの手順です。
- 金属製のヘラやフライ返しなどで、さびを落としていきましょう。目立つさびだけでOKです。
- 水を入れて沸騰させると、さびが浮いてきます。浮いてきたら、いったん水を捨てます。
- フライパンが手で触れるくらいに冷えたら、クレンザーなどの磨き粉を使って、たわしで徹底的にこすっていきます。
- 水洗いをして、火にかけて乾かします。
- 油のコーティングは完全に剥がれている状態なので、最初のお手入れ『油ならし』をしましょう。
使うほど手に馴染むフライパンに
鉄フライパンは、表面全体に油コーティングをしながら育てる道具です。最初のお手入れに少し時間はかかりますが、正しく育て上げれば、美味しい料理をずっと楽しむことができます。
また、鉄フライパンを油と馴染ませるのは、美味しく料理を仕上げるために必要なだけではなく、さび防止対策としても有効であるためです。お手入れが必要な理由を理解すれば、そのプロセスも楽しめるのではないでしょうか。
なお、洗剤を使ってしまっては、育て上げた油コーティングが台無しになってしまうので注意が必要です。加えて、使わないこともさびの原因になってしまうため、鉄フライパンは、日々使い続けることがお手入れになります。
万が一洗剤を使ってしまっても、さびがついてしまっても、振り出しに戻って育て直すことができます。これも、鉄フライパンの魅力の一つかもしれません。一生モノのフライパンをぜひ、育て上げましょう。