切り花には根がないので、茎の切り口からしか栄養を吸収できない状態にあります。そのため、長持ちさせたい場合には、お手入れのコツをいくつか押さえておくことが重要です。裏技として使える意外な対処法も紹介しているので、必要に応じて試してみましょう。
目次
切り花が弱ってしまう理由
切り花は、茎から吸い上げる水を介して栄養を摂取します。そのメカニズムを理解し、日々どのような観点に注意しながら水を扱えばよいのかを知りましょう。水が主な栄養源となるため、可能な限り常に清潔かつ新鮮な状態にしておく必要があります。
水分が不足している
花や葉がうつむいてしまっているような様子になってる場合は、水が不足しているケースが大半でしょう。茎の切り口から吸い上げられた水は、花や葉から蒸発してしまいます。
そのため、茎で吸い上げる水の量よりも蒸発する水の量が上回ってしまうと、水分が不足した状態になってしまいます。
特に、夏の暑い時期には、水の需給バランスが崩れやすくなりますので注意が必要です。気温が高い日は、頻繁に水を変えつつ、少し多めに与えておくとよいでしょう。
水の中でバクテリアが繁殖している
茎から分泌される有機物が、花瓶の中の水と混ざるとバクテリアが発生してしまいます。発生したバクテリアは、花の導管に入って繁殖し、導管を詰まらせるのです。
結果として、どんなに花が水を吸い上げても上の方にまで上がらなくなってしまい、花や葉に水分が届かないという状態になります。
バクテリアの発生を避けるためには、花瓶の水を毎日取り替え、花瓶をしっかりと洗いましょう。特に、気温の上がる夏はバクテリアが発生しやすいので、いつも以上に水を取り替えるとよいです。
栄養が足りていない
切り花の唯一の栄養源は、導管から吸い上げる水です。切り花という状態は、ただでさえ、土に植えられているときに比べると、栄養不足になりやすいといえます。
この状況下で水を変えずに放置してしまうと、バクテリアだらけの水を吸い上げ続けることになるのです。そして、バクテリアが多く含まれた水を吸い上げ続けると、茎の導管が詰まってしまいます。
導管が詰まってしまうと、水の通り道が細くなるため、新しい水に変えてもなかなか水を吸い上げられないという悪循環に陥ってしまうのです。
切り花の長持ちに重要な水揚げ
切り花を長持ちさせるためのテクニックをいくつか紹介します。切り花の栄養摂取の入り口となるのは、『茎の切り口』です。切り口が文字通り『口』の役割を果たすので、切り口を可能な限り大きく広げるにはどうするかという観点が重要になります。
水揚げは切り花に水を吸わせる工夫
切り花は、根から水を吸い上げることができないため、唯一の吸い上げ口が『茎の切り口』になってしまいます。
そのため、切り花を元気に長持ちさせるには、切り口をできるだけ効率よく水を吸い上げられる形に整える必要があるのです。
この切り口を広げて、水を吸い上げやすい状態にすることを『水揚げ』といいます。一度しおれてしまった花でも、『水揚げ』をすることで再び元気を取り戻すことがあります。
茎を斜めにカットする水切り
切り口は水の通り道になるので、可能な限り広く取って置くことが重要です。
まず、真っ直ぐよりも斜めにカットしましょう。この際、水の中でカットするのがポイントです。
斜めにカットすることで断面積が大きくなり、水を吸い上げる入り口も広く確保することができます。
切った後は、1分程度切り口の部分を水の中に浸けたままにします。すぐに水から出すと切り口に空気が入ってしまい、水を吸い上げる効率が悪くなってしまうためです。
プロもおこなう湯揚げ
『湯揚げ』とは、切り花の茎をお湯で煮ることです。お湯の中でバクテリアが死滅するので、切り口を消毒することができます。また、茎の中に入ってしまっている空気を抜くこともできます。
以下が湯揚げの手順です。
- 60〜100℃の熱湯を準備し、花と葉の部分を新聞紙で包んで保護します
- 切り花の根元から1cmくらいのところを切り、素早く切り口の部分を熱湯に入れます
- 40秒ほど経過したら、取り出してすぐに水に浸けます
- 熱湯に入れて色が変わった部分を、斜めにカットして水切りします
切り花を飾る前の一工夫
切り花を飾る前にはどのような工夫をしたらよいのでしょうか?切り花を飾る前に行う一工夫を紹介します。
この工夫を行うかどうかによって、花を楽しめる期間が変わってきてしまいます。日々のお手入れにも関わることなので、念頭に置いておきましょう。
不要な葉を落とす
切り花が吸い上げた水分は、葉から蒸発してしまいます。つまり、葉が多ければ多いほど、水分の吸収率が悪くなることになります。そのため、切り花を飾る前にはできる限り葉を取り除いてしまいましょう。
特に、水に浸かってしまう部分の葉は、全て落とすことがポイントです。葉が水に浸いた状態が続くと、水が腐りやすくなってしまうためです。
ただし、葉は光合成をする場所でもあるため、全ての葉を取ってしまうと栄養を作ることができなくなってしまいます。そのため、適度な枚数は残しておきましょう。
水の量は少なめに
水不足になると枯れてしまうならば、たくさん水を入れておこうと思う人もいるかもしれません。
しかし、これは一見よさそうですが、実は逆効果です。水を入れすぎてしまうと、茎が腐ってしまうためです。
水の量は、花瓶の3〜5割程度を目安にするとちょうどよいでしょう。ただし、花によっては多くの水を好むものもありますし、逆に少なめがよいケースもあります。
そのため、花の種類によって対応を変えるのがベストです。花屋さんで購入する場合には、お店の人に聞いてみるのをおすすめします。
家庭にあるもので長持ちさせるには
ここで紹介するのは、花を長持ちさせるための裏技です。こまめなお手入れが難しいときでも、家庭にある意外なものを取り入れることで、花を元気な状態でキープすることができます。
いつものお手入れではすぐにしおれてしまうという場合に、試してみるとよいでしょう。
ハイターで除菌
キッチンハイターなどの『漂白剤』を使うと、水を変えなくても切り花を長持ちさせることができます。漂白剤には、殺菌効果があるためです。
ただし、分量を間違えて入れすぎないように注意しましょう。花瓶の大きさにもよりますが、1滴を目安にしておくことをおすすめします。
また、これは数日間家を空けてしまうような場合にのみ有効な方法だということを覚えておきましょう。
毎日のように漂白剤を入れてしまうと、花が傷んでしまいます。あくまでも、どうしても水を替える時間がない場合などの裏技として取っておきましょう。
なお、漂白剤の代わりに中性洗剤でも代用可能です。
10円玉を入れておく
花瓶に10円玉を入れておくと、水が腐りにくくなります。これは、10円玉の素材に使われている『銅』に殺菌効果があるためです。銅イオンによる殺菌効果が、バクテリアの発生を防いでくれるというわけです。
しかし、ガラスの花瓶の場合には見た目が気になるかもしれませんし、そもそもお金を花瓶に入れるのを躊躇する人もいるでしょう。その場合、『銅』であれば同じ効果が得られるので、10円玉にこだわる必要はありません。
また、この方法を取り入れる場合には、花瓶を洗うタイミングで、10円玉や銅製品も一緒に洗うことを忘れないようにしましょう。汚れが付着したまま使い回してしまうと、せっかくの効果が台無しになります。
長持ちするおすすめの花
切り花を長く楽しむためには、日々のお手入れを丁寧に行うことに加え、そもそも比較的長持ちする花を選ぶとよいでしょう。ここでは、長持ちするおすすめの花を紹介します。
切り花として自分の家で楽しむ場合はもちろんのこと、プレゼントなどで花を選ぶ際の参考にもしてみましょう。
ガーベラ
ガーベラは、花の形・色がバリエーション豊富な花です。淡めのパステルカラーから、鮮やかな色のものなど多岐にわたり、とても人気があります。形も可愛らしいので、インテリアにもぴったりでしょう。
また、花屋さんに行けば年中いつでも手に入る花の一つでもあります。比較的丈夫な花なので、基本的な世話をし続けていれば、長持ちするでしょう。季節にもよりますが、冬〜春先などは3週間程度持つともいわれています。
ガーベラを生ける際の注意点は、水切りです。一般的には斜めのカットがおすすめですが、ガーベラの場合は、水平にカットしましょう。
カーネーション
カーネーションといえば、母の日のプレゼントが思い浮かぶでしょう。枯れかけても花びらが落ちにくく、長く楽しめる切り花の一つですので、プレゼントに最適な性質を持っています。
ただし、カーネーションの葉は腐りやすいため、水に浸かる部分はもちろんのこと、余分な葉はできる限り落としてしまいましょう。
また、カーネーションは、水を多く吸い上げる傾向があります。飾る際には、花瓶の水を多めに入れておくとよいでしょう。
キク
キクは生命力がとても強い花です。そのため、毎日きちんと水を替えるなど、普通の世話をするだけでも比較的長く花を楽しむことができます。
キクをより長く楽しむためには、水揚げではなく『湯揚げ』をするのがおすすめです。花を日々扱う市場でも一般的に用いられている方法なので、ぜひ取り入れてみましょう。
また、キクは水を多く吸い上げます。気づかないうちに水が切れてしまうことがないように、花瓶の水の量をこまめにチェックしましょう。
ちょっとした工夫で切り花を長持ちさせよう
切り花は、どうしても元来の土に植えられている場合よりは枯れやすくなってしまいます。しかし、簡単な工夫を少し行うだけでも、花の持ちはずいぶんとよくなります。
また、切り花に効率よく栄養を摂取させるためには、水を摂取するメカニズムを理解しましょう。水を効率よく吸収させるためには、主に『茎の切り口』と『葉の扱い』を押さえておけば大丈夫です。
基本的な日々のお手入れに加え、ときには裏技的な手段も取り入れつつ、切り花が身近にある生活を楽しみましょう。