封筒のしめ方には、正しいマナーがあります。メールなどが主流になっていますが、ビジネスのシーンでも封書を出すことは意外と多いです。封筒をしめる時に記載する『封字』について知り、正しく使えるようになりましょう。
目次
封筒をしめた後に印を付ける理由
封筒をしめた後に印をつけるようになったのは、そもそもどのような理由からなのでしょうか。封筒をしめた後に記す『封字』の目的と歴史を紹介します。この風習が生まれた目的や歴史をすると、いつもの事務作業が少し楽しく思えるかもしれません。
封字の目的
封字とは、封筒の閉じ目に印を付ける際に使われる文字や記号のことを表します。封字を使うことによって、その文書が『未開封』であることを示せます。また、宛名以外の第三者は開けてはならないという意味を込めることもできるのです。
封筒を閉じることを、『封緘(ふうかん)』と言うため、封字のバリエーションの一つとして、『緘』という文字が使われることもあります。元々、『緘』という字には『とじ紐』という意味があります。
『封緘』という言葉は、『封がしっかりと紐で綴じられている』という様子をイメージするとわかりやすいかもしれません。日常生活の中では見慣れない文字ですが、ビジネスなどのシーンで公式な文書を封書でやり取りする際には、現在も常用されています。
中国の封泥に由来
日本で使われている封字は、『封泥』に由来します。封泥とは古代中国に由来し、重要な書簡などを封緘する際に用いられていた粘土のことです。
古代中国では、重要な器物や書簡などを箱などに入れて送る際、まずは紐で縛り、その紐の結び目に粘土を押し固め、その上に印象が刻印されていました。開封する際には、その封泥を破壊せねばなりません。
万が一、宛名以外の第三者がこっそり開封しても、封泥を元に戻すことができないため、誰かが開封したことがすぐに明らかになるような仕組みになっていたのです。また、西洋では『封泥』が転じて『封蝋(シーリングワックス)』として用いられるようになりました。
蝋を溶かして封をし、その上にイニシャルや家紋などを押すのです。日本でも、シーリングスタンプなどの品名にて文房具店などで販売されています。
しめに用いる封字のマナー
封字の使い方には、いくつかのマナーがあります。一般的に一番よく使われる『〆』をまずは押さえておけばOKですが、さまざまなバリエーションを知っておくと、工夫して遊び心を演出することもできます。
一般的に使われるものが『〆』
封字として、一般的にもよく使われているのが『〆』のマークです。取引先に封書を送ったり、就職活動で履歴書などを送ったりする際にもこの印をつけておくのがマナーです。
この『〆』マークは、漢字の『締』を簡略化したものです。封筒の閉じ目の真ん中に書きましょう。継ぎ目の上や下に書くのではなく、継ぎ目を挟んで上下に〆マークが重なる位置に記載します。色は、黒のペンで記載するのが無難です。
また、書くタイミングとしては、本来の『封をし終えてから』という由来にならって書きましょう。封をする前に書いてしまうと、いざ封をした際にのり付けの具合によってずれてしまうことがあります。
この『〆』マークは、縦書きの封書の時にのみ使われます。横書きの封筒での封字マナーは、以下の『洋封筒では使わない』を参照しましょう。
人と差がつくその他の封字
ベーシックな封字は『〆』や『締』であり、新書などを送付するよりフォーマルなケースでは『緘』の文字を使うことをおすすめしますが、その他、シーンに応じて封字を使い分けることで、封字にメッセージをこめることもできます。
例をいくつか紹介しましょう。
- 『寿』:結婚式の招待状を出す時に使えます。封字から伝わるおめでたさや喜ばしさに、受け取った方も嬉しい気持ちになるでしょう。
- 『賀』:年始に使われることが多いですが、結婚式以外のお祝い事などの慶事に使うことができます。
- 『蕾』『莟』:女性が使うことができる封字です。『つぼみ=まだ開いていない』ことを表します。エレガントで詩的な印象を与える封字です。
名字の印鑑を利用する場合も
自分の名字の印鑑を押して、封字として使われるケースもあります。例えば、出さねばならない封書が多い時には、一通ずつ手書きで『〆』マークを書くのは大変ですから、印鑑を押せると便利ですし、作業も早く終わるでしょう。
また、『封』という字のスタンプやシールなどを活用することもできます。このようなシールは、オフィシャルな場だけでなく、個人的にも使えそうなデザイン性のある商品も文房具店などで販売されてるので、個人的に手紙を書く時にも活用できます。
一方で、改竄や情報漏洩の防止を念頭に置いて開発された『封緘シール』も事務用品として販売されているので、必要に応じて検討してみましょう。シールを剥がすと『VOID OPEN』などの文字が出るようになっており、開封済みかどうかを一目で判断できる仕様のシールもあります。
うっかりしがちな封字のNG
封字を間違えて書いてしまうと、逆にマナー違反となってしまいます。せっかく丁寧に封字を書いて送るわけですから、仕上げの部分で失礼にならないように気をつけましょう。知らずにNGパターンを使用していると、意外なところで誤解を生んでしまうこともあります。
バツを書く
封字の『〆』マークを略して『×』や『メ』のような書き方をしている封書を見かけることもありますが、これは誤用なので、ビジネスシーンでもプライベートでも使わないようにしましょう。あくまでも『締める』という意味を記号に転じさせての『〆』マークです。バツを書いてしまうとそもそも『締』の意味にならないため注意しましょう。
洋封筒では使わない
横書きの洋風等の場合には、『〆』『封』などの封字を書かないのが正式マナーです。どうしても何か貼りたい時には、『封』シールやシーリングスタンプを使いましょう。また、洋封筒に限らずですが、欧米出身の人に宛てる文書で『〆』と記載すると、キスを表す『×』マークを想起させてしまう可能性があるので、使用を避けるのが無難です。
特別なお知らせにはシーリングを
中世ヨーロッパの貴族を中心に使われていた封蝋(シーリングワックス)は、今でもパッケージデザインとして使われることが多く、おしゃれで特別感のあるモチーフです。
日本でも人気が高く、街の文房具店や雑貨店などでシーリングスタンプセットなどを見かけたこともあるのではないでしょうか。
一見難しそうなシーリングスタンプですが、自分でも作ることができます。必要な道具や作り方をまとめたので、興味がある人はぜひ挑戦してみましょう、
特別感が魅力
中世ヨーロッパで貴族が中心に使い始めたシーリングスタンプは、デザイン性のおしゃれさや高級感、特別感ゆえに人気が高く、現代の日本でも結婚式の招待状などで使われるシーンが増えています。
本格的に蝋を垂らして使うシーリングスタンプセットはもちろんのこと、封蝋を模したシールも文具店や雑貨店などで見かけます。自分のイニシャルが入ったシールを選んだり、オリジナルの文様を入れたスタンプを発注してみたりしても楽しいでしょう。
シーリングスタンプ作りに必要な道具
おしゃれで特別感もあり、ぜひ自分の『印』としてシーリングスタンプを使ってみたくなります。とはいえ、蝋を使って封をすると聞くと、使い慣れない道具ばかりなので、せっかく買っても使いこなせるかどうか気になるのではないでしょうか。
実は、初心者でも失敗しないコツをおさえれば、意外と簡単に使えます。まずは、必要な道具リストを紹介します。
- シーリングスタンプ用のスタンプ…ハンドルがついている長い印鑑のようなアイテムです。先に印字部分があり、ここにイニシャルなど、印字したい文字やシンボルが彫られています。
- ワックス(蝋)
- 離型パットや保冷剤…溶けた蝋の上にスタンプを押す前に、専用のパットや保冷剤に当てておくと、蝋からスタンプをきれいに剥がすことができます。
- キャンドル…蝋を溶かすために使います。
- クッキングシートと両面テープ…失敗しないためにも、直接封筒に蝋を垂らすのではなく、クッキングペーパーの上などで作るのがおすすめです。完成した封蝋の裏に、両面テープを貼ってシールにしましょう。
火を使うのを避けたい場合には、キャンドルと蝋のワックスの代わりに、シーリングスタンプ専用の『グルーガン』と『グルーワックス』を購入して使うと便利です。蝋で作るシーリングスタンプは、郵送途中で割れることもありますが、グルーワックスは樹脂でできておりその心配がありません。
シーリングの方法
揃えた道具を使って、具体的にシーリングしていく方法を紹介します。上に紹介した道具は、キットとして一式まとめて販売しているものも多いので、手軽に揃えることができます。
グルーガンやグルーワックスは100円ショップにも売っているので、気になる人は近くのお店でチェックしてみましょう。ここでは、キャンドルと蝋を使ったオーソドックスな手法を紹介します。
- キャンドルに火をつけ、ワックスの先端から少しずつ溶かしていきましょう。最初はきれいな形を作るのが難しいので、クッキングシートの上などで試すのをおすすめします。一度スプーンで蝋を受けて、スプーンから少量ずつ垂らして作る方法もあります。
- 蝋が乾かないうちに、シーリングスタンプを蝋の上に押します。蝋からスタンプを剥がすときにきれいに剥がれず失敗することが多いので、押す前にスタンプの先端をキットなどに付属のパットや保冷剤に当てておきましょう。
- 乾いたら、裏に両面テープなどを貼って、封筒などに貼ってシールとして使えるようにしましょう。
シーリングワックスにラメが入っていたり、カラフルなワックスがセットになっていたりなど、幅広く楽しめるキットがたくさん販売されています。
スタンプ単体で売っているものもあるので、まずはキットで揃えつつ、お気に入りのスタンプ柄があれば、買い揃えるのも楽しいでしょう。
封筒のしめ方にも注意
ビジネスのシーンでは特に、重要な書類などを送るケースが多いのではないでしょうか。中身を紛失せず相手に届けるためには、何を使って封をするかも大切なポイントになります。
おすすめとNGな道具をそれぞれ知っておきましょう。
封筒を閉じる目的
封筒の封を閉じる目的は、中身を宛名の人に紛失せずに届けることや、宛名以外の人に読まれないようにすることです。確実に届けたい人に届けるためにも、しっかりと封をしてから送るのが望ましいでしょう。
郵送する封書の場合には、『のり』を使って封をするのが望ましいです。本人に直接手渡す場合には、逆に開封する手間を与えてしまう場合もあるので、封筒の入り口部分を軽く折るだけで良いケースもあります。中身の重要度や状況に応じて判断しましょう。
スティックのりがおすすめ
固形のスティックのりには、キレイに塗りやすいというメリットがあります。液体のりを使うと、塗った部分が波打ってしまい、美しく仕上がりません。封書を送る際には、相手の手元になるべく美しい状態で届けるのが理想です。
その点、スティックのりを使えば、封筒をシワにしたり汚したりすることもなく、きれいにのり付けできます。スティックのりは、メーカーによって粘着力に差があるので、いろいろ試しながら粘着力がしっかりしている商品を選んで使いましょう
セロハンテープはNG?
セロハンテープは貼りやすいので、きれいに封をすることができるでしょう。しかし、セロハンテープは、剥がれやすいので、封書で送る中身を確実に宛先に届けるには不安が残ります。
特に、重要な書類を送る際に使用するのは避けましょう。自然に剥がれることもあれば、人の手で簡単に剥がすこともできるので、宛名以外の人が簡単に中身を見ることもできてしまいます。
もともと両面テープが貼られているタイプの封筒もあるでしょう。両面テープは粘着力が高いので、そのまま使ってOKです。
送る前に封筒のしめ方を確認
ビジネスシーンにおける封書は縦型が多くなるでしょうから、基本的には封字として『〆』を記しましょう。より重要な書類の場合には『緘』の印を押すケースもあるかもしれません。書類の重要度を見極めながら、社内で確認して判断すると良いでしょう。
封書を作る際にには、封筒をしめるところまで気が抜けません。のり付けしてしっかりと止めた上で、封字を記載して完成です。また、封字はビジネスのシーンだけではなく、個人の手紙でも記載するのが望ましいです。
プライベートなやりとりでは、女性の場合は『蕾』などのバリエーションを使うなど工夫して楽しんでみましょう。素敵なデザインのシールを使うのもおすすめです。西洋の習慣であるシーリングスタンプも人気なので、こだわりたい人はぜひ試してみましょう。