家の購入では年収の何倍借りていい?失敗しない住宅ローンの組み方を解説
家の購入を考えたとき「年収の〇倍の金額を借りることができるか」という話を聞いたことはないでしょうか。以前から「年収の5倍」が住宅ローンで借りる金額の目安のひとつといわれてきましたが、低金利や働き方の多様化が進んだ現代にも、その基準は本当に当てはまるのでしょうか。
この記事では「年収倍率」という目安が今の時代にも合っているのかについて確認しながら、金融機関が提示する「借りられる額」ではなく、ご自身のライフプランに合った「本当に返せる額」を基準に失敗しない住宅ローンの組み方を解説します。ご自身の家庭に合った資金計画の立て方を知ることは、安心してマイホームの夢へ一歩踏み出すために役立つでしょう。
目次
年収倍率について

家の購入を考え始めると、よく「年収の〇倍まで」という言葉を耳にします。よく使われるのが「年収倍率」という考え方で、過去の慣習や統計をもとに、目安のように扱われることもあります。ここでは「年収倍率」とその考え方について紹介していきます。
年収倍率とは
年収倍率とは、住宅の借入金額がご自身の年収の何倍にあたるかを示す指標です。 たとえば、年収500万円の方が3,000万円の家を購入する場合、年収倍率は6倍になります。ただし、この数字だけで「自分にとって適切な価格かどうか」を判断することはできません。年収倍率から算出された金額はあくまで実際の購入例をもとに算出された参考値にすぎないため、家庭ごとの支出や将来のライフイベントを見据えたうえで現実的な予算を見極めていく必要があります。あくまで金額の一例として捉え、それぞれの家計の状況や将来の計画に合わせた借入金額と返済プランをきちんと考えることが、失敗しない家づくりの第一歩といえます。
年収倍率が購入の目安とされていた理由
住宅購入における「年収倍率」は、一般的には「年収の5倍」といった数字が目安として提示されることが多いです。一般的にいわれ始めたのは1980〜90年代のいわゆるバブル期で、「5倍」である理由はその時代の就労期間や金利が背景にあるとされています。
1980〜90年代当時、住宅ローン金利は5〜8%が一般的で、返済期間は25〜30年が主流でした。また、世帯主の定年退職年齢は55〜60歳が多く、定年に合わせて住宅ローンの完済ができるように期間や金額を設定していました。
そのような背景から当時の家計では、返済額を年収の30%前後に抑えるのが現実的とされており、その返済負担率を基準に逆算した結果が「年収の5倍」だったとされています。
全国平均や理想の年収倍率はある?
住宅金融支援機構の調査などでは、実際に住宅を購入した人の「借入額」や「返済負担率」の平均値が公開されており、それらをもとに「結果的に年収の◯倍程度の住宅ローンを借りている」という傾向が語られることがあります。
ただし、これらの数字はあくまで購入後の統計的な実態を示したものであり、家計の状況や将来の支出、金利の選択、返済期間などによって適正な予算は大きく変わるため「他の人が何倍だから自分もそうしよう」と考えるのではなく、自分たちの資金計画を軸に判断することが大切です。
家の購入で「年収5倍」が古いといわれる理由

住宅ローンの目安として長らくいわれてきた「年収の5倍」という基準は、1980〜90年代のいわゆるバブル期に一般的とされ始めた考え方になります。その背景には、私たちの暮らしを取り巻く社会の変化があるため、現代においても、金利の状況や働き方、さらには家族のあり方まで、親の世代とは大きく変わっています。ここではその変化と現代における住宅ローン計画のポイントについて解説していきます。
金利水準の劇的な低下
「年収の5倍」が目安といわれたバブル期と今とでは金利の水準が劇的に違います。昔は金利が5%から8%になることも珍しくありませんでしたが、現在は1%前後という低い水準が続いています。
たとえば、同じ3,000万円を35年ローンで借りる場合、金利6%なら月々の返済額は約17万円ですが、金利1%なら約8.5万円と、負担が半分ほどになります。このように、金利が違うだけで返済額は大きく変わるため、低金利の現代において昔の基準だけで借入額を判断すると、購入できる家の選択肢を不必要に狭めてしまう可能性があります。
働き方と家族構成の多様化
働き方や家族の形が多様になったことも「年収5倍」という考えが古いとされる理由のひとつです。以前は定年が55〜60歳が一般的で、世帯主の収入のみで住宅ローンを組むのが一般的でした。しかし、現代では定年が65歳となり、再雇用を含めると70歳まで働く人も増えています。それに伴い、住宅ローンの返済期間も35年、場合によっては40年以上に設定できるようになりました。
また、共働き世帯が増え、夫婦で収入を合算して住宅ローンを組むスタイルが主流になりつつあります。家族全員の働き方や収入のバランスが大きく変わった現代では返済期間がバブル期と大きく異なるため、借り入れる金額の幅も変わっています。
ライフイベントの複雑化
現代では人生設計や暮らし方が多様化し、ライフイベントが複雑になったことも住宅ローン返済に対する考え方がバブル期と異なる大きな理由です。
多様な暮らし方がしやすくなった現代では、転職や独立、育児休暇など人生における選択肢も増えるために、思いもよらない支出の波が訪れやすくなりました。教育費のピークや親の介護などもバブル期とは異なる金額になっています。
「定年までに住宅ローンを完済する」というシンプルな計画だけでは対応が難しい現代においては、住宅ローンだけを切り離して考えるのではなく、人生全体を見渡した長期的な資金計画の一部として捉える視点が求められます。将来起こりうるさまざまな出来事を想定し、柔軟に対応できる計画を立てることが大切です。
年収倍率に頼らず家の購入の予算を立てる考え方とは

ここまでお伝えしてきたとおり「年収の◯倍だから安心」といった一律の基準では、今の時代の住宅購入には対応しきれない傾向にあります。では、現代では住宅購入の予算をどのように考えれば良いのでしょうか。
重要なのは、家を建てる・買うことだけを目的にせず、将来のライフプラン全体を見据えたうえで「無理なく返済できるかどうか」という視点で予算を立てることです。ここからは、その考え方をいくつかのポイントに分けて見ていきましょう。
家計の実情を反映・予測しながら決める
住宅ローンを組む場合、金融機関が世帯年収や建築予定の住宅の担保価値などから借入可能な金額を提示してくれます。しかし、金融機関が審査で算出する借入可能額は必ずしもそのご家庭にとって最適な金額とはいえません。
なぜなら、審査はあくまで借入者の現在の年収や勤務先といった情報に着目して算出しており、家族構成や将来の支出予定、ライフプランの変化までは反映されていないためです。もし上限額いっぱいで住宅ローンを組んでしまうと、たとえば子どもの教育費の増加や思いもよらない病気など、予期せぬライフイベントに対応できる費用の準備ができなくなるリスクがあります。
大切なのは「いくら借りられるか」ではなく「いくらなら無理なく返していけるか」という視点で予算を考えることです。
返済負担率の見かけより実質的な費用がかさむ
住宅ローンの審査においては、年収に占める年間返済額の割合を示す「返済負担率(返済比率)」が重視されます。これは「返済額が収入に対してどれくらいの負担になるか」を測るための指標で、借入可能額を決める判断材料の一つです。
一般的には「年収の20〜25%程度に抑えるのが望ましい」といった目安が語られることもありますが、これはあくまで参考値にすぎません。実際には金融機関や商品ごとに基準が異なり、個人の家計状況や返済期間によっても大きく変わるため「一律の正解」は存在しません。ご自身の手取り収入や実際の支出状況をもとにシミュレーションすることが大切です。
住宅ローン以外にも維持費が継続的にかかる
マイホームにかかる費用は、住宅ローンの返済だけではありません。家を所有すると、固定資産税や都市計画税、火災保険料、そして将来のための修繕費といった維持費が継続的に発生します。
マンションの場合は、これに加えて管理費や修繕積立金も毎月必要になります。これらの維持費は、月々に換算すると数万円になることも少なくありません。住宅ローンの返済計画を立てる際は、これらの維持費もすべて含めた暮らし全体の支出として捉えることが大切です。想定外の出費にも備えつつ、日々の生活に無理がない範囲で返済額を設定することが、安心して住み続けるためのポイントといえます。
無理なく返せる額を見極める5つのチェックポイント

自分たちにとって「無理のない住宅購入予算」は、一体どのように見つければ良いのでしょうか。住宅にいくらまで使えるかは、将来の収入や支出とのバランスで変わります。だからこそ、ライフプラン全体を見通しておくことが大切です。ここでは、無理のない返済額を見極めるために役立つ5つのチェックポイントを紹介します。これらをひとつひとつ確認し、自分たちの家庭に合った資金計画を立てていきましょう。
子どもの進学タイミングと教育費のピークを見積もる
子どものいるご家庭では、進学のタイミングで家計の支出が大きく増えることを考えておく必要があります。特に大学進学時には、入学金や授業料で数百万円単位の費用がかかることも少なくありません。この教育費の積立期間と住宅ローンの返済期間が重なる時期は、家計にとって大きな負担となることがあります。
そのため、将来必要になる教育費を大まかにでも見積もり、その上で住宅ローンにいくらまでなら回せるか、上限額を設定しておくことが失敗しないためのカギになります。
収入が減るタイミングをリストアップしておく
長い人生には、収入が一時的に減る、あるいは変化するタイミングが訪れます。たとえば出産にともなう育児休暇、キャリアアップのための転職、そして定年退職などがそのタイミングに当たります。これらの収入が減る時期をあらかじめリストアップし、その期間でも無理なく返済を続けられるように、資金計画に余裕を持たせておくことが欠かせません。
借入金額を考えるにあたってはご夫婦それぞれのキャリアプランを共有し、将来の世帯収入がどのように変わっていくかをシミュレーションしてみることは不可欠といえるでしょう。
住宅ローン完済の年齢と老後の生活資金を照らし合わせる
住宅ローンをいつ完済するかも、重要な計画の一部です。特に、定年退職後も返済が続くプランを立てる場合は注意が必要になります。 退職すると、収入は現役時代に比べて大きく減ることが一般的です。その中で住宅ローン返済が続くと、老後の生活資金が圧迫されてしまうことがあります。
定年後も返済が残る場合は、退職金からいくら返済に充てるのかを具体的に想定し、安心して暮らせるだけの老後資金を確保できるか、きちんと確認しておきましょう。
人生の支出ピークを時系列でシミュレーションする
人生には、住宅ローンの返済、子どもの教育費、そして老後資金の準備という「三大支出」が重なる時期があります。この支出のピークがいつ来るのかを事前に把握しておくことが、安定した家計を維持する上で欠かせません。
おすすめなのは、キャッシュフロー表を作成し、家族の年齢とともにお金の出入りを時系列で可視化してみることです。そうすることで、支出が集中するタイミングがわかり、対策を立てやすくなります。また、家電の買い替えや車の購入といった大きな出費も予備費として見積もっておくと、より安心でしょう。
理想の暮らしにかけたいお金と住宅予算をすり合わせる
家は、幸せな暮らしを実現するための居場所であり、手段です。そのため、充実させるには「どんな暮らしがしたいか」をまず考えて、そこから住宅にかけられる予算を逆算するアプローチも大切になります。
たとえば、年に一度は家族旅行に行きたい、子どもの習い事にはお金をかけてあげたい、趣味や自己投資も楽しみたいなど、住宅以外で大切にしたい費用を書き出してみましょう。家を買うことが目的になってしまい、日常の豊かさが犠牲になるようでは元も子もありません。「やりたいこと」を守るために、住宅にかけられる金額を現実的に見直すことも、無理のない資金計画の一部です。
家を購入する際の無理のない計画の立て方

将来のライフイベントや収支バランスを踏まえて、購入に使える金額が見えてきたら、次は「その予算内でどのように家を買うか」を具体化していく段階です。ここでは、無理のない住宅ローン計画を実現するための3つの重要なステップ「頭金の準備」「金利タイプの選択」「国の制度活用」について解説します。ひとつひとつのポイントをきちんと押さえることで、より賢く、より安心してマイホームの夢をかなえることができるでしょう。
頭金を準備して住宅ローンの総返済額を減らす
頭金は一般的には物件価格の10%から20%程度を準備できるのが理想といわれています。しかし、準備できないからといって貯蓄を優先するあまり購入のタイミングを逃してしまうのは本末転倒です。
頭金を準備することのメリットとしては、借入額を減らせるだけでなく金利を抑える可能性がある点にあります。購入予算の一部を頭金でまかなえれば、借入額が減ることで月々の返済負担や総支払額を抑えられるため、長期的にみれば家計の安定にもつながるといえます。
ちなみに、頭金ゼロで住宅ローンを組む場合は借入額が大きくなるリスクもあります。ご自身の貯蓄状況と住宅ローン返済までのライフプランを考え、頭金と借入金の最適なバランスを見つけることが大切です。
金利タイプの特徴を理解して選ぶ
住宅ローンには、大きく分けて「変動金利」と「固定金利」の2つのタイプがあり、それぞれに魅力とデメリットがあります。 変動金利は当初の金利が低い傾向にありますが、将来金利が上昇するリスクがあります。 一方、固定金利は返済額が変わらない安心感があるものの、変動金利より高めに設定されているのが一般的です。
将来の金利上昇リスクをどれくらい許容できるか、ご自身の家計の状況に合わせて慎重に選択しましょう。 また、金利の数字だけではなく、団体信用生命保険の内容や保証料の支払い方なども含めて、総合的に判断することが後悔しない選択につながります。
住宅ローン控除など国の制度を活用する
家を購入する際には、国が用意しているさまざまな優遇制度を活用すると、経済的な負担を軽くすることができます。代表的なものが、年末のローン残高に応じて税金が控除される「住宅ローン控除」で、要件を満たした住宅の新築・取得・増改築を行った場合、年末時点でのローン残高を参照して所得税や住民税から控除される制度です。
また、省エネ性能の高い住宅への補助金制度なども用意されています。さらに最近では、新築住宅だけではなく、中古住宅の流通を後押しする仕組みや、リフォームに対する補助制度の拡充も進んでいます。
ただし、いずれの制度も対象となる住宅に一定の要件があったり、内容が前年から変更したりする場合があります。
たとえば2024年・2025年に新築住宅を建築する場合の住宅ローン控除は「省エネ基準適合住宅」などの性能基準を満たしていないと控除の対象外となることもあり、借入限度額や所得制限なども定められています。
住宅性能による補助金は、年度ごとに変更がある場合が多いです。そのため、ご自身が建築または取得する年度に合わせて情報を確認する必要があります。いずれの制度も活用の際は利用したい年度でどのような要件や内容が適用されるかをきちんと確認して、積極的に利用するようにしましょう。
まとめ|返せる額を基準に無理のない住宅購入を実現しよう

家の購入で大切なのは、年収倍率に惑わされず「本当に返せる額」を基準に考えることです。そのためには、将来の教育費や収入の変化、老後の生活まで見据えた長期的な資金計画が欠かせません。この記事で紹介したチェックポイントを参考に、まずご家族で理想の暮らしやライフプランについて話し合ってみてください。それが、無理のない住宅購入を実現するための確かな第一歩になります。
「将来の教育費や老後のことを考えると、我が家の『本当に返せる額』でどんな家が買えるんだろう」と感じているかもしれません。ウチつくの「オンライン相談サービス」では、専属のファイナンシャルプランナーが無理のない予算と住宅ローン試算のお手伝いをしてくれます。また、相談の中ではお客様のご要望に沿った住宅メーカーの紹介・モデルハウス見学予約まで受け付けています。自分たちに合った資金計画の立て方がわかれば、安心してマイホームの夢へ一歩踏み出せますので、まずはプロに一度相談してみるのもひとつの方法です。
RANKING
ランキング
PICK UP
おすすめ記事

