戸建て・マンションが長期優良住宅であるかを確認する方法とは


「長期優良住宅」という言葉を聞いたことはあるけど、見分ける基準や確認する方法、メリットやデメリットについて知らない方も多いと思います。

 

長期優良住宅に住むことで、住宅ローンの優遇や税控除など金銭面で優遇されるようになります。固定資産税の減税など、住宅を所持するうえで必要となる費用を抑えることができるというメリットがあります。

 

一方で、長期優良住宅に住むためには手続きが複雑であったり条件が厳しかったりと、時間と労力がかかるというデメリットがあります。住むための条件や申請の流れなどについての情報を正しく把握しておくことが大切です。

 

今回は、長期優良住宅の特徴や認定条件、手続きや申請の流れ、メリットやデメリットについて解説します。また、見分ける基準や確認する方法なども解説します。長期優良住宅に住もうとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

長期優良住宅とは

長期にわたって良質な状態で使用できると判断された住宅

長期優良住宅とは、住宅の維持管理をし続けることで長期にわたって良質な状態で使用できると判断された家のことです。国の法律に基づいて該当するかを判断する基準が設けられており、基準を満たした住宅が認定されます。

 

大きな地震や台風などの災害にも強く、床面積も一定以上の広さが確保されている住宅が該当します。また、修理や工事がおこないやすく設計されており、維持管理についても問題ない住宅は長期的に使用することができます。
国が定める基準を満たしている長期優良住宅は、人々の暮らしを豊かで快適なものにしてくれます。

 

 

戸建て・共同住宅(マンション・アパート等)が長期優良住宅であるかを確認する方法

認定通知書があれば証明できる

長期優良住宅であるかを確認する方法の1つとして認定通知書があります。認定通知書は、長期優良住宅であることを示す公的な証拠になります。優良な住宅であるかについては、所管行政庁が認定します。

 

優良な住宅であるという認定を受けるためには、複数ある項目について一定の基準を満たす必要があります。基準の具体的な内容は地震対策や老朽化対策など、安心して暮らすための事項を含んでいます。

 

基準を満たす、つまり長期的に良好な状態を維持し快適に暮らすことのできる優良な住宅であると判断された場合は認定通知書が発行されます。なお、認定通知書は再発行できないため、大切に保管しなければいけません。なくさないように管理しておきましょう。

 

長期優良住宅に認定される条件

認定基準

長期的に使用できる構造や設備であること

優良な住宅であるという認定を受けるためには、長期的に使用できる構造や設備を有していることが要求されます。長く使っても安全に暮らすことができるという証明ができないと、認定を受けることはできません。

 

長期的に使うことができる住宅は、強度や耐久性を確保し長い時間経つにつれて発生する劣化に対しても、修繕をおこないながら安心して使い続けられます。また、災害に対する耐性を持つ構造も備わっている必要があります。日本は地震が起きやすいので、地震に強い家を建設することは安全性を判断するうえで大切です。

 

他にも、エネルギー消費量を抑える設計や機能も必要になります。エネルギー消費量を抑えることで、長期間にわたり健やかな生活を送ることができるようになります。長期間使用するための構造や設備によって住まい手の安心や快適さを重視しつつ、健やかな生活を維持し続けることで地球環境にも優しい住まいになります。

 

居住環境が快適であること

長期優良住宅に認定されるためには、住む人の生活の質を向上させるための住環境が提供されているかも大切になります。

 

たとえば、周辺での騒音や振動が少なく適度な日当たりと通風が確保され、周囲との調和も考えられた設計であると判断された場合認定を受けやすくなります。また、生活の質を高める要素として安全性や利便性も重視されます。

 

なお、地すべり防止区域や急傾斜地崩壊危険区域などに建てられた住宅については認定対象外になりますので、注意しましょう。

 

住戸面積が一定基準以上の面積であること

一定面積以上の住戸面積があることも、認定基準の1つになっています。

 

住宅で家族が快適に暮らせると判断するためには、家全体の広さが一定以上なければならないという考え方から生まれた基準です。具体的には、住宅全体の床面積が75平方メートル以上あり、最低でも1階の床面積が階段部分を除いて40平方メートル以上あることが求められています。

 

維持保全の期間、方法について定めていること

長期優良住宅に認定されるための項目として定められている維持保全は、家が長期にわたって安全に使えるかを判断する要素となっています。家の状態を定期的に確認し、問題が見つかった場合には補修をしなければいけません。

 

認定を受けた住宅の所有者は、「長期優良住宅建築等計画」という計画を立て、長期間良質な状態で家を使えるように維持保全をおこなわなくてはなりません。維持保全には10年ごとに点検をおこなうというルールが設けられており、家が安全であるかを確認しなければいけません。

 

自然災害への対策をおこなっていること

優良な住宅であるという認定を受けるために必要なのが、自然災害への備えです。たとえば地震や津波、豪雨などの自然災害が発生した場合でも、揺れたり崩れたりしないような家である必要があります。

 

自然災害への備えについては法律でも改正がおこなわれており、自然災害から家や住人を守るための観点として、災害の危険がある地域で建築する住宅は認定の対象外となりました。

 

【新築の戸建て・共同住宅(マンション・アパート等)】長期優良住宅の性能項目は10個

新築の一戸建てやマンション、アパート等の共同住宅についての長期優良住宅の性能項目は、計10個存在します。

 

住まいが長く持つような劣化対策や地震発生のときに崩れることのないような耐震性、そしてエネルギーの使用を抑える省エネルギー性の基準といったものがあります。さらに、修繕や更新がしやすい構造を持つことも重視されます。

 

他にも生活環境が良好であるかや、十分な住宅面積が確保されていることも認定基準に含まれています。さらに、定期的に修繕をおこなう維持保全計画や自然災害への対策を踏まえた設計であるかもポイントになります。

 

そして、共同住宅においては生活の変化に合わせて間取りのレイアウトを変えられる可変性と、高齢者や身体障がい者でも生活しやすいバリアフリー性が認定基準に加わり、合計10個の項目から総合的に判断し、長期優良住宅として認定されます。すべての項目において基準を満たすことで、快適で安全な住まいと認定されます。

 

【中古の戸建て・共同住宅(マンション・アパート等)】長期優良住宅の性能項目は10個

中古の一戸建てやマンション・アパートといった共同住宅を長期優良住宅に認定してもらう場合にも、10個の性能項目をクリアする必要があります。

 

性能項目の内容は、住宅の劣化に対する対策、地震に耐えうる構造、エネルギーを無駄にしない設計、修理やリニューアルのしやすさ、住み心地の良さを保つ環境、住居面積の広さ、持続的な保全の計画、そして自然災害発生時の対策の基準を満たすことが必要になります。

 

加えて共同住宅については、生活の変化に応じて間取りを変えることができる可変性、そして高齢者や障がい者でも生活しやすいバリアフリー性の2つの項目が追加されます。新築の戸建て・共同住宅と性能項目の内容は同じなので、中古物件で優良な住宅であるという認定を受けるには新築に近い物件であったり高度な修理や改築が必要があります。

 

性能項目の内容を踏まえたうえで修繕や改築をおこなうことで中古物件も長期優良住宅としての認定を受けることができます。

 

長期優良住宅のメリット・デメリット

長期優良住宅のメリット(2023年8月現在)

住宅ローンの優遇措置を受けられる

長期優良住宅に認定されることのメリットの一つとして、住宅ローンの優遇措置を受けることができるというものがあります。

 

住宅ローンの優遇措置は、「フラット35S」などのような特定の住宅ローンを利用するときに金利が下がるという優遇を受けられるものです。具体的には、住宅を新築または購入する場合に住宅ローンの金利が一定期間引き下げられます。

 

住宅ローン減税の控除額が増える

長期優良住宅に認定されると住宅ローン減税の控除額が増えます。13年間にわたって控除される上限額が一般住宅は273万円なのに対し、認定を受けた住宅の場合455万円の控除額が上限として設定され、年間で15万円ほど多くの控除を受けられます。

 

地震保険料の割引が受けられる

長期優良住宅に認定された建物の耐震等級のレベルによって、地震保険料の割り引きを受けることができます。

 

具体的には、耐震等級1は地震保険料の10%、耐震等級2の場合地震保険料の30%、耐震等級3の場合50%を割り引きしてもらうことができます。さらに、免震構造で作られた免震住宅の場合は50%の割引が受けられます。

 

ただし、地震保険料割引を受けるためには確認資料の提出が必要になります。耐震等級のレベルを証明する書類がないと地震保険料の割り引きは受けられないので、書類については十分に管理して紛失しないようにしましょう。

 

また、地震保険の割引は多くの保険会社で受けることができますが、火災保険に加入していることが条件となることを把握しておきましょう。火災保険は長期的に暮らす家であれば必要な保険なので、地震保険と一緒に加入するようにしましょう。

 

地域型住宅グリーン化事業の補助金を受けられる

長期優良住宅に認定される住宅を建設する場合、地域型住宅グリーン化事業の補助金を受けられます。

 

ただし、すべての長期優良住宅が補助金の対象になるわけではなく、条件を満たしている必要があります。たとえば事業が採択されたグループである工務店で木造住宅を建てる、建物が建つ地域の木材を使用しているといった条件があります。該当する工務店で長寿命な家を建てた場合、補助金を受け取ることができます。

 

長期優良住宅のデメリット

購入費用が高い傾向にある

長期優良住宅のデメリットの一つとして挙げられるのは、一般住宅とくらべて購入費用が高くなることです。

 

長期優良住宅に認定されるような住宅にするためには、防震性や断熱性などにおいて性能基準を満たさなければいけないので、必要な材料や構造に高い費用がかかる傾向にあります。たとえば耐震性を確保するためには強固な構造材が必要になりますが、強固な構造材を揃えるのにかかる費用は通常の材料とくらべて高くなります。

 

また、断熱材においても高性能な断熱材を使用した窓ガラスなどの設備を設置する場合、費用が高くなるため、初期購入費用は高くなる可能性があります。

 

しかし、長期的に見れば高品質な材料を使用することで快適な生活を送れるようになり、光熱費や税金が低く抑えられることでランニングコストが減る期待できます。長期的な視点で考えれば、高額な材料で住宅を作ることは経済的にもメリットがあると言えます。

 

申請に時間・手数料がかかる

長期的かつ快適な生活空間を提供してくれるような優良な住宅としての認定を受けるためには、一般住宅の建設よりも手間と費用がかかります。

 

公的な認定を受けるためには行政の審査を受ける必要があり、家の性能を評価する専門機関による審査を通過することで優良な住宅だと判断されますが、一連の審査は数週間程度かかることが多く、必要な書類を作る時間も必要なのでさらに時間が掛かることになります。

 

認定後も維持保全計画にしたがって修理をおこなう義務がある

優良な住宅として認定された後にも、住宅をきれいに保つための作業が必要になります。住宅をきれいに保つ作業は維持保全計画と呼ばれ、計画にしたがって定期的に家のチェックをしたり修理をする必要があります。

 

維持保全計画に基づいたチェックや修理を怠ると、住宅は劣化していき長期優良住宅としての認定がなくなる可能性があります。

 

また、修理工事の内容や日付などを記録しておくことも大切です。行政から確認が入ったときに記録があれば、住宅の品質を証明することができるので優良な住宅として価値を保つことができます。修理工事をしたときに、内容や日付について毎回記録しておくようにしましょう。

 

認定後に増築・改築をおこなうには行政庁より計画変更が必要

認定を受けた後に住宅の増築や改築をしたいと考えた場合、行政庁から増築や改築による変更を受けなければいけません。

 

なぜ変更の認定が必要かというと、増築や改築によって基準に満たない部分が生まれる可能性があるからで、認定基準に満たない住宅については一般住宅として扱わなければいけないからです。新たに追加や変更する部分も基準に合致しているかを評価する必要があるため、行政庁の許可が必要になるのです。

 

増築や改築をおこなう計画がある場合、増築や改築を施した後の住宅計画を行政庁に申請し、認定が下りるまで待つことが必要になります。申請と評価が完了するまでには時間がかかることもあります。また、無断で増築や改築を進めてしまうと長期優良住宅としての認定が取り消される恐れもありますので、気を付けましょう。

 

戸建てを長期優良住宅に変更する場合の申請の流れ

審査を依頼する

長期優良住宅と認定されるためには、許可を得るために済ませなければならない過程があります。まず、審査の依頼を申請します。

 

審査を依頼するときには、所定の書類を提出します。認定に必要な書類は構造や設備が長期使用に耐え得るかを評価して証明するために使われます。また、書類を審査機関に提出するための手数料も必要になり、料金は地域や審査の内容によって異なります。

 

登録住宅性能評価機関が技術審査をおこなう

長期優良住宅に認定されるためには、住宅の構造や設備が長期間使えるようになっているか確認する必要があります。確認するには専門的な機関に依頼しなければならず、登録住宅性能評価機関が審査をしてくれます。

 

審査では、住宅が長期的に利用しても問題なく、かつ優良な状態で快適な生活環境を提供できるかという判断をします。認定基準に沿って項目を確認し、最終的な審査結果を伝えてくれます。

 

確認書が交付される

登録住宅性能評価機関での審査を通過すると、確認書が交付されます。

 

確認書は技術的審査を通過した場合のみ受け取れるものです。認定を受けるために必要な書類なので、紛失することがないように大切に保管しましょう。

 

行政庁に申請をする

確認書を取得したら、行政庁へ申請しましょう。

 

工事の着工前に確認申請書と確認書などの必要な書類を提出し行政庁へ認定の申請をおこないます。

 

行政庁への認定申請が通れば、長期優良住宅として認定されたと見なされます。事前の準備と申請手続きを間違いなくおこなえれば認定してもらうことができます。ただし、認定申請前に工事を開始すると認定されなくなってしまうので、申請が通ってから工事を始めるようにしましょう。

 

認定通知書が交付される

認定通知書とは、自分の家が長期優良住宅として認められたことを証明するための書類です。認定通知書があることで、家が特定の基準を満たしていることが保証されます。

 

建物が長く良好な状態で使えるようにするための対策が取られ、設計や設備が十分に備わっていることなどについて、認定通知書が証明になります。行政庁から交付され、工事を始めることもできます。

 

認定通知書を受け取ったら、なくさないよう大切に保管しましょう。将来的に自分の家を売却するときなどに住宅の価値を証明することができる大切な書類になります。また、建物の維持についての記録も一緒に保管しておくことが推奨されています。

 

認定されれば増築・改築工事に着工できる

長期優良住宅として認定されれば、増築や改築ができます。設置したい設備や実現したい間取りに向けた工事ができます。

 

ただし、認定住宅として維持したい場合は申請が必要になるので、忘れないようにしましょう。住宅の規模や立地、設計の概要、維持計画などを詳細に書いた書類を提出しなければいけません。また、住宅の性能を評価する機関による審査もおこなわれます。

 

増築や改築については、優良な住宅の維持・保全計画を遵守しなければならないので、計画に沿った工事をおこないましょう。

 

 

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