住宅ローンの分割実行(分割融資)とは?メリット・デメリットと選び方を解説

「理想の注文住宅を建てたいけど、土地の購入代金や着工金ってどうすればいいんだろう?」
家づくりを進める中で、建物が完成する前の大きな出費に頭を悩ませている方は多いと思います。そんな時に知っておきたいのが住宅ローンの分割実行という方法です。つなぎ融資よりもお得になる可能性があるこの仕組みですが、実はメリットばかりではありません。
この記事では、分割実行の基本的な仕組みからメリット・デメリット、金融機関の選び方までを専門家がわかりやすく解説します。最適な選択肢を見つけるため、まずはこの記事で正しい知識を身につけましょう。
目次
住宅ローンの分割実行について
注文住宅を建てる際、多くの方が直面するのが土地の購入費用や建物の着工金といった、建物が完成する前に必要となる資金の準備です。基本的に住宅ローンの融資は建物が完成した時に行われます。そのためこれらの支払いのために、資金をどのように用意すれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。そこで選択肢となるのが住宅ローンの分割実行です。ここでは、分割実行の基本的な仕組みから、よく比較されるつなぎ融資との違いまで、わかりやすく解説していきます。
分割実行とは
住宅ローンの分割実行とは、ひとつの住宅ローン契約に基づき、融資を複数回に分けて受け取る方法です。住宅ローンが実行されるまでのつなぎとして別のローンを組むのではなく、契約した住宅ローンそのものを前倒しで受け取る仕組みを指します。
具体的には、注文住宅を建てる際の土地の取得費用や、工事の途中で支払う着工金・中間金などのタイミングに合わせて融資が実行されます。このため、土地探しから家づくりを始める方にとって、金利負担や手続きの手間を抑えられる可能性がある、有力な選択肢のひとつです。
融資実行のタイミング
分割実行における融資は、家づくりの進捗に合わせて、資金が必要になるタイミングで実行されるのが一般的です。多くの場合、融資は2回から3回に分けて行われます。
まず1回目は、土地を購入するための売買代金を支払うときです。次に2回目は、建物の工事が始まり、基礎工事の完了時や骨組みが完成した上棟時などに、住宅メーカーへ中間金を支払うタイミングで実行されます。そして最後に、建物が無事完成して引き渡しを受ける際に、残りの代金を支払うための融資が行われる、という流れになります。
つなぎ融資との違い
分割実行とつなぎ融資の最も大きな違いは、ローンの性質と適用される金利にあります。つなぎ融資は、住宅ローンが実行されるまでの一時的な間だけ利用する、別の短期ローンです。そのため金利が高めに設定されているのが一般的です。
それに対して、分割実行は住宅ローン契約そのものを分割して利用するため、当初から低金利の恩恵を受けられます。結果として、建物が完成するまでの利息負担を大きく軽減できるでしょう。また手続き面でも、つなぎ融資は別途契約が必要ですが、分割実行ならひとつの契約で済むため、シンプルになる場合があります。
住宅ローン分割実行の4つのメリット
住宅ローンの分割実行を選ぶことで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。注文住宅の資金計画において、この選択がもたらす恩恵は決して小さくありません。特に、つなぎ融資と比較した場合、金利の負担や手続きの手間、さらには税金の控除といった面で有利に働く場面が多くあります。ここでは、分割実行が持つ4つのメリットについて、ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。
つなぎ融資より低い金利で借入できる
分割実行のメリットは、つなぎ融資よりも低い金利で借り入れできる点です。分割実行は住宅ローン本体の契約であるため、当初から住宅ローンの金利が適用されます。変動金利であれば年1%前後から利用できるケースもあります。
一方、つなぎ融資は住宅ローンとは別の短期ローンであり、金利も年2%から4%台と高めに設定されています。土地の購入から建物が完成するまでの期間が長くなるほど、この金利差による利息負担の軽減効果は大きくなるでしょう。総支払額を抑えたいと考える方にとって、これは魅力的なメリットです。
借入総額に対する手数料を抑えられる場合がある
手数料を抑えられる可能性があることも、分割実行のメリットのひとつです。つなぎ融資を利用する際には、住宅ローンの手数料とは別に、つなぎ融資のための事務手数料や保証料、印紙代などの諸費用が発生します。
分割実行であれば、これらの費用が不要になるため、諸費用の総額を削減できるケースがあります。ただし、金融機関によっては分割融資を実行するたびに所定の手数料がかかる場合もあるため注意が必要です。契約前に総額でどちらが有利になるのかを、きちんと比較検討することが重要になります。
住宅ローン控除を初年度から最大限活用できる
税制面の優遇措置である住宅ローン控除を、初年度から有効にいかせる点も大きなメリットです。分割実行を利用して土地を先行して購入した場合、その土地の取得代金も住宅ローンで支払っているので、控除の対象となります。
たとえ建物の完成が翌年になったとしても、土地を購入したその年からローン残高に応じた税金の還付を受け始めることが可能です。これにより、本来であれば翌年以降になるはずだった控除を1年早く受けられるため、家計の負担を早期に軽減する効果が期待できます。
返済計画が立てやすい
長期的な返済計画が立てやすいことも、分割実行の利点です。住宅ローンの契約がひとつにまとまっているため、適用される金利や返済期間、毎月の返済額といった条件が一貫しています。
つなぎ融資のように、住宅ローン返済が始まるまでの短期間だけ別の利息を支払うといった複雑なステップがありません。最初から住宅ローン全体の返済スケジュールを把握できるため、家計管理がシンプルになり、将来の資金計画も具体的に見通しやすくなるでしょう。
住宅ローン分割実行の4つのデメリット
多くのメリットがある住宅ローンの分割実行ですが、もちろん良い面ばかりではありません。利用を検討する際には、その裏側にあるデメリットや注意点もしっかりと理解しておくことが大切です。知らずに話を進めてしまうとこんなはずではなかったと後から困ってしまう可能性もあります。ここでは、分割実行を選ぶ前に知っておきたい4つのデメリットについて解説していきます。
対応している金融機関が限られている
分割実行を利用する上での最初のハードルは、取り扱っている金融機関が限られているという点です。全ての金融機関でこの分割融資のサービスが提供されているわけではなく、特にネット銀行や一部のメガバンクが中心となっています。
そのため、普段から取引のある地方銀行や信用金庫では対応していないケースも少なくありません。金利やサービス内容で魅力的な金融機関を見つけても、分割実行に対応していなければ利用できない可能性があります。計画の早い段階で、利用候補の金融機関に分割実行の取り扱いがあるかを確認することが必須となるでしょう。
申し込みから契約までの手続きが複雑になる
金銭的なメリットがある一方で、申し込みから契約までの手続きが複雑になりがちな点もデメリットのひとつです。融資が複数回に分かれるため、その実行のたびに契約手続きや必要書類の提出が求められることがあります。
土地の売買契約、建物の工事請負契約、そして金融機関とのローン契約といった複数の手続きが同時進行するため、全体のスケジュール管理が複雑になりがちです。計画どおりに融資を受けるためには、住宅メーカーや司法書士、金融機関の担当者と密に連携を取りながら、計画的に物事を進めていく必要があります。
団体信用生命保険の保障開始のタイミングが違う
団体信用生命保険(団信)の保障がいつから始まるのかという点も、必ず確認すべき重要なポイントです。金融機関によって団信の保障が開始されるタイミングは違い、最初の融資実行時から保障がスタートする場合と、建物が完成してからでないと保障が開始されない場合があります。
もし保障開始が建物完成後の契約で、土地の融資を受けた後に万が一の事態が発生すると、保険が適用されずにローンだけが残ってしまうリスクがあります。契約前に保障開始日を明確に確認し、そのリスクを十分に理解しておくことが大切です。
登記費用などの諸費用が割高になる場合がある
融資に関する手数料を抑えられる可能性がある一方で、登記費用などの諸費用が高くなるケースがあることも知っておくべきです。分割実行では融資を受けるたびに、その対象となる土地や建物に対して金融機関が抵当権を設定するための登記が必要になります。
この登記手続きのたびに、登録免許税や司法書士への報酬が発生するため、最終的な登記費用がつなぎ融資の場合よりも高くなる可能性があります。つなぎ融資の場合は登記が一度で済むことが多いため、手数料のメリットと登記費用のデメリットを天秤にかけ、総合的なコストで判断することが重要です。
デメリットを理解した上で、それでも分割実行を利用したい場合、どのように金融機関を選べば良いのでしょうか。次章では、金融機関選びの具体的なポイントを解説します。
住宅ローンの分割実行に対応している金融機関の選び方
住宅ローンの分割実行を利用したいと思っても、どの金融機関を選べば良いのか迷ってしまうかもしれません。取り扱いのある金融機関の中から、最適な一社を見つけ出すには、いくつかの重要な比較ポイントがあります。金利の低さだけで選んでしまうと、後から手数料の高さや手続きの煩雑さに気づくこともあります。ここでは、後悔しない金融機関選びのために、比較すべきポイントを3つのポイントを解説します。
ネット銀行と対面銀行の特徴を比較する
まず、自身の考え方や希望する手続きの進め方に合わせて、ネット銀行と対面銀行のどちらが合っているかを考えましょう。ネット銀行は実店舗を持たない分、金利が低めに設定されている傾向があり、手続きの多くをオンラインで完結できる手軽さが魅力です。
一方、対面銀行は担当者と直接顔を合わせて相談しながら進められる安心感が最大のメリットといえます。分割実行のような複雑な手続きに不安がある場合に心強い存在となるでしょう。
金利タイプと手数料体系で比較する
利用したい銀行のタイプが決まったら、次に具体的なコストを比較検討します。まず金利タイプですが、将来金利が変動するリスクはあっても当初の返済額を抑えたいなら変動金利で、将来の金利上昇リスクを避けたいなら固定金利を選ぶと良いでしょう。
さらに、融資手数料の体系も重要になります。借入額にかかわらず一定額の定額型と、借入額に料率をかけて算出する定率型があり、借入額の大小によってどちらが有利になるか変わります。保証料のあるかどうかや、団信の内容まで含めた実質的な総コストと安心感で比較することが、賢い選択につながります。
分割実行の条件と制限を確認する
最後に、分割実行そのものに関する細かい条件を必ず確認しましょう。金融機関によって、分割できる回数や融資を実行できるタイミングに制約が設けられている場合があります。自分の建築スケジュールと合致するかは重要です。
また、デメリットでも触れた団体信用生命保険の保障がいつから開始されるのかという点は、万が一のリスクに備えるために見逃せないポイントです。審査基準や申し込みに必要な書類、手続きの具体的な流れも事前に把握し、スムーズに家づくりを進められるか、自分の計画に本当にあった選択なのかしっかりと見極めましょう。
住宅ローンの分割実行の申し込みから融資実行までの流れ
住宅ローンの分割実行を利用すると決めたものの、実際にどのような手順で手続きが進んでいくのか、不安に感じる方もいるかもしれません。土地の契約から建物の完成まで、複数のステップが絡み合うため、全体の流れをあらかじめ把握しておくことがとても大切です。ここでは、申し込みから最終的な融資実行までの具体的な流れを、2つの段階に分けて解説します。スムーズに進めるための準備ポイントも併せて紹介するので活用してください。
事前審査から土地融資実行までの流れ
家づくりの第一歩は、金融機関による事前審査から始まります。購入したい土地が見つかった段階で、金融機関に事前審査を申し込み、源泉徴収票や本人確認書類といった必要書類を提出します。この審査で融資額の目安が立てば、安心して土地の売買契約に進むことが可能です。
土地の売買契約を締結したら、その契約書などを添えて金融機関へ本審査を申し込みます。無事に本審査の承認が下りれば、土地の代金を支払うための融資が実行され、同時に土地に抵当権を設定する登記手続きが行われます。
建物工事契約から完成融資までの流れ
土地の手続きが完了したら、次は建物に関する手続きに進みます。まず、建築を依頼する住宅メーカーと建物の工事請負契約を結びます。その後、役所に建築確認申請を行い、建築の許可を得るのが一般的な流れです。
工事が始まり、契約内容に応じて中間金の支払いが必要な場合は、そのタイミングで2回目の融資が実行されます。そして、建物が無事完成して引き渡しを受ける際に、残りの建築代金を支払うための最終的な融資が実行され、建物に対しても登記手続きを行って、全ての流れが完了します。
スムーズに進めるための準備ポイント
分割実行の一連の手続きをスムーズに進めるためには、事前の準備が鍵を握ります。特に、事前審査で必要になる収入証明書や身分証明書などは、慌てないように早めに手元にそろえておくと安心です。
また、土地の売買契約と建物の工事請負契約を結ぶタイミングは、融資のスケジュールに大きく影響するため、不動産会社や建築を依頼する住宅メーカーとよく相談して調整することが重要になります。各段階で融資を受けるために必要な条件を金融機関に事前に確認し、計画的に行動することが、円滑な家づくりにつながります。
まとめ|住宅ローンの分割実行を正しく理解して最適な選択をしよう
分割実行は、金利や住宅ローン控除の観点から非常に魅力的な制度ですが、その一方で対応する金融機関が少ない、手続きが複雑になるなど、事前に把握しておきたい注意点も少なくありません。土地の契約から着工、引き渡しまで、タイミングごとにどう資金を準備するかの全体像を早い段階で整理しておくことが、後悔のない家づくりにつながります。
こういった住宅ローンをはじめとした資金計画を考える時はプロのアドバイザーに相談するのも方法のひとつです。ウチつくの「オンライン相談サービス」では、注文住宅に精通した専属ファイナンシャルプランナーが、お客様の家づくりの進行スケジュールに沿いながら住宅ローンの分割実行が本当に有効な選択肢なのかを一緒に考えるFP相談を受け付けています。
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