ウッドショックとは?原因や影響・対策を徹底解説!
最近「ウッドショック」という言葉を耳にする機会が増えていませんか。これは、世界的な木材の供給不足によって引き起こされた現象で、建築業界を中心に大きな影響を与えています。しかし、なぜウッドショックが発生したのか、私たちにどのような影響を与えるのか、知っている方は少ないかもしれません。本記事では、ウッドショックの原因や影響、そして具体的な対策について徹底解説します。
ウッドショックとは
2021年3月頃から、住宅建設に欠かせない柱や梁、土台などに使用される木材の需給がひっ迫し、木材不足が深刻化しました。この状況はかつてのオイルショックを思い起こさせるものであり「ウッドショック」と呼ばれるようになりました。輸入木材の減少などが要因であり、家作りの遅延やコスト増が避けられない事態となっています。
ウッドショックの原因
ウッドショックとは何かを理解するためには、その背後にある原因を知ることが不可欠です。ウッドショックの原因は複数あり、これらが複雑に絡み合うことで、木材供給に深刻な影響を及ぼしています。ここでの内容を理解することで、具体的にどのような要因がウッドショックを引き起こしているのか知ることができます。
新型コロナウイルス
「ウッドショック」という言葉が多く見聞きされるようになったのは、2021年春頃からです。2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の影響で、世界中でテレワークが普及しました。このため、家で快適に仕事をするために広い戸建住宅への需要が高まりました。
この傾向は特にアメリカや中国で顕著であり、その結果、戸建住宅の建材となる木材の需要が急増し、価格が一気に高騰したのです。
当時の日本では、コロナ禍の影響で不動産市場が委縮していたため、戸建住宅の需要は伸びませんでした。しかし、1年後の2021年には市場が回復し、他国同様に「広い戸建住宅に住みたい」という需要が高まりました。ところが、これまでの価格で木材を購入することは困難となったのです。
さらに、長引くコロナ禍により国際海上輸送が滞り、輸入木材不足が深刻化しました。輸送の滞りはコンテナ不足を引き起こし、輸送費の高騰にもつながりました。
米国の建築ラッシュ
米国での住宅需要が急増したことが木材価格の高騰に大きく影響しました。2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大により米国の経済活動は停滞したのです。
しかし、FRB(連邦準備制度理事会)がゼロ金利政策を導入して、住宅ローン金利が低下し、多くの方々が住宅を購入しました。特に、コロナ禍によって在宅ワーカーが増え、都市中心部から郊外への転居希望者が増加しました。
さらに、住居用の購入だけではなく、不動産投資を目的とした住宅購入も活発化したのです。このため、米国の住宅建築着工件数はリーマン・ショック前の2006年以来の高水準に達しました。
米国では2×4(ツーバイフォー)工法と呼ばれる木材の骨組みと合板パネルを使った建築が主流です。この住宅建築ラッシュにより住宅用木材の需要が急増しました。その結果、木材の値段は急激に上昇したのです。
米国・シカゴの木材先物価格によると、2020年4月上旬から2021年4月上旬にかけて木材の価格は約4倍に上昇しました。このような背景から、米国の住宅需要急増が木材価格高騰の主因となったのです。
中国の建築ラッシュ
住宅需要の急増は米国だけでなく中国でも顕著です。新型コロナウイルス感染症の収束が見えてから、中国では経済活動が再び活発化し、不動産販売が増加傾向にあります。2020年の上半期はコロナ禍の影響で不動産市場が一時的に停滞しました。ですが、下半期には回復し、最終的には前年比8.7%の増加を記録しました。
この中国での住宅建築ラッシュは、世界的な木材需要の高まりを引き起こし、木材価格の高騰に大きくつながります。都市部から郊外への移住需要の増加や政府の経済刺激策が背景にあり、多くの新築住宅が建設されました。その結果、中国国内での木材消費量が急増し、世界中の木材供給に圧力をかけています。
このように、中国の住宅建築ラッシュは、世界的な木材不足と価格高騰を引き起こし、グローバル市場に大きな影響を与えています。
コンテナ輸送の不足
コロナ禍により自宅で過ごす時間が増え、ネットショッピングの利用が急増しました。その結果、世界的な物流が圧迫され、コンテナ不足が深刻化しました。この影響で日本への木材輸送が困難になり、供給不足が生じています。
さらに、2021年3月にスエズ運河で発生した大型コンテナ船の座礁事故が事態を悪化させました。この事故により、輸送ルートが混乱し、日本へのコンテナ輸送の遅れがさらに深刻化しました。
これらの要因が重なり、木材の供給不足と価格高騰を引き起こし「ウッドショック」という事態が発生したのです。輸入木材の不足で国内の国産材需要が急増しましたが、国産材もすぐに供給が追いつかず、さらなる木材不足を招いています。このように、コンテナ輸送の不足と流通の混乱が、木材市場に大きな影響を与えています。
ウッドショックによる影響
ウッドショックは、木材の価格高騰や供給不足を引き起こし、私たちの日常生活や経済活動に多大な影響を及ぼしています。ここでは、具体的にどのような影響があるのか解説します。この内容を理解することで、どのように対策を講じるべきか知ることができます。
建築費が上がる
ウッドショックによる輸入木材の価格上昇は、特に戸建住宅の建築費に深刻な影響を与えました。ローコストの注文住宅や建売住宅では、輸入木材を原料とする木製建材を多く使用しています。
そのため、ウッドショックの影響を最も強く受けたのは、これらの住宅を建築・販売しているハウスメーカーや工務店でした。そして、それらの住宅を購入しようとする消費者層にも大きな負担となりました。
価格上昇により、手頃だった住宅が手に届きにくくなり、新築を検討していた多くの家庭が予算を見直す必要に迫られました。建築工事費の上昇は、資材費だけでなく、工期の延長や人件費の増加も引き起こしたのです。
結果として、住宅市場全体が混乱し、需要と供給のバランスが崩れたのです。ウッドショックは、家を建てる側と買う側の双方にとって、大きな課題となっています。
中古住宅の価格が上がる
ウッドショックの影響で新築住宅の建築工事費が上昇し、多くの方々が予算オーバーで新築を購入できなくなりました。その結果、中古の戸建住宅に注目が集まるようになりました。特に首都圏では、中古戸建住宅の需要が高まり、埼玉や千葉などの地域で価格が上昇しています。
新築住宅の価格高騰に伴い、中古住宅市場にも変化が生じ、多くの買い手が中古住宅に切り替えたためです。この傾向は、予算を抑えながらも住宅購入を検討する方々にとって、中古住宅が魅力的な選択肢となったことを示しています。
住宅の着工が遅れる
木材の価格高騰と不足により、住宅の着工が遅れる問題が顕在化しつつあります。家の重要な材料である木材がなければ、住宅建築は進められません。現状では、注文住宅の着工の遅れはまだ大きく表面化していません。ですが、一部のハウスメーカーから「着工が遅れる可能性があります」との連絡を受けた顧客の声が聞かれます。
ハウスメーカーは、独自の国産木材の入手ルートの活用や、代替可能な木材を調達したりするなど、さまざまな工夫で対応しています。それにもかかわらず、着工時期や納期に影響が出たのが現実です。木材の供給不安定が続く中で、住宅建設の日程に影響が出るケースが増えており、今後の動向が注視されています。
木材が不足する
住宅建築にはさまざまな種類の木材が使用されますが、現在、木材の不足が深刻化しています。ハウスメーカーによっては、柱や梁などの大きな構造材は確保できています。しかし、間柱や垂木といった小さな材料の確保が難しい状況に直面しているのです。
木材不足の中でも、比較的入手しやすい木材と、入手が難しい木材が存在するため、その違いを理解しておくことが重要です。
特に、ホワイトウッドやレッドウッドの集成材、ベイマツやスギの乾燥材などの木材は供給不足によって価格が高騰しています。これらの木材を使用する場合は、今後の市場動向に注意が必要です。
木材の供給不足と価格高騰は、住宅建築の日程や費用に大きな影響を与える可能性があります。
ウッドショックへの対策
ウッドショックの影響を受けて、多くの方が建築やリフォームの計画を見直さざるを得ない状況に立たされています。しかし、適切な対策を講じることで、ウッドショックの影響を最小限に抑えることが可能です。ここでの内容を理解することで、具体的な対策を知ることができます。
早めに契約をする
住宅の購入タイミングは、結婚や就職、転職、引っ越し、出産、子どもの入学など、人生の重要なイベントと密接に関わります。これらのイベントに合わせて住宅購入を計画する場合、ハウスメーカーと早めに契約を結ぶことを検討しましょう。
早めの契約は、ハウスメーカーが木材を確保する時期を前倒しにすることができます。このため、木材不足や価格高騰の影響を軽減する可能性があります。
現在、木材不足が深刻化しているため、早期契約はウッドショックの影響を最小限に抑えるための有効な手段です。特に、家族のライフイベントに合わせたスケジュールを確実に守るためにも、迅速な行動が求められます。早期に動くことで、木材調達のリスクを減らし、円滑な建築計画を実現できるでしょう。
補助金を活用する
住宅価格が上昇し続ける中、国や地方自治体は住宅取得を促進するための補助金制度を設けています。例えば、省エネ住宅や長期優良住宅、国産木材を使用した住宅建築に対して、さまざまな補助金が利用可能です。年度ごとに要件や申請期間、補助金額が変更されるため、詳細は各制度のWebサイトで確認することが重要です。
「子育てエコホーム支援事業」は、エネルギー価格の高騰に対応します。このため、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象に、高い省エネレベルを持つ新築住宅の取得を支援する制度です。補助額は住宅の種類や地域によって異なり、ZEH住宅には80万円、長期優良住宅には100万円の補助が提供されます。
「戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」は、CO2排出量の削減を目指す事業です。ZEH住宅には55万円、ZEH+住宅には100万円の補助が提供され、追加補助も可能となります。
「地域型住宅グリーン化事業」は、高い省エネ性能を持つ新築住宅を取得する際に支援する制度です。この制度は、省エネ性や耐久性に優れた木造住宅を地域の木材で建築する場合、事前に登録された工務店で建てることが条件です。このような条件がありますが、140万円の補助金が支給されます。
これらの補助金制度を活用することで、住宅購入の負担を軽減し、環境に配慮した高品質な住宅を手に入れることができます。
施工会社に相談をする
新型コロナウイルスの影響が徐々に収まりつつある海外では、リモートワークの定着とともに建築ラッシュが続いています。この状況により、今後も木材価格の高騰が予想され、住宅の値段も上昇すると見られます。そのため、住宅購入を検討している方は、早めにハウスメーカーに相談することがおすすめです。
早めの相談は、価格がさらに上昇する前に最適な計画を確保するために重要です。施工会社と早期に会話を取り、予算内で理想の住宅を建築するための計画を立てることができます。また、今後の木材供給や価格動向についての最新情報を得ることができ、必要に応じて代替材料や設計の変更も検討できるのです。
さらに、早めに相談することで、施工スケジュールの調整や補助金制度の利用など、さまざまなメリットを活用できます。ハウスメーカーと密に連携し、最適なタイミングで住宅購入を進めることが、成功へのカギとなります。
購入時期を変更する
注文住宅の購入時期に余裕がある場合、木材価格の高騰が落ち着くのを待つという選択肢も考えられます。しかし「ウッドショック」がいつ収束するのか、木材価格がどのように推移するのかを予測するのは難しいのが現実です。価格が落ち着くまで長期間を要する可能性もあるため、その点を考慮する必要があります。
また、購入時期を延ばしたからといって、必ずしもより良い状況で購入できるとは限りません。木材価格が下がる一方で、他の材料や施工費用が上昇する危険性もあります。そのため、購入時期を見直す際には、全体的なコストと市場動向を慎重に検討することが重要です。
施工会社やハウスメーカーと相談し、最新の市場情報や価格動向を把握しながら、最適なタイミングで購入を進めることが賢明です。柔軟な対応と長期的な視野を持つことで、理想の住宅を手に入れるための最善な選択を見つけることができるでしょう。
材料を変更する
注文住宅の大きなメリットの一つは、その自由度の高さです。木材が大幅に高騰し、供給が不足しても、木材の種類を変更したり、木材以外の材料に切り替えたりすることで対応できます。この柔軟性が、木材高騰時の対策を円滑に進めるカギとなります。
まず、ハウスメーカーとの綿密な会話を通じて、入手しやすい木材の使用を検討することが重要です。例えば、手に入りやすい国産材に切り替えるなどの方法があります。
木材の種類を変えたくない場合や、予算をオーバーしたくない場合には、設計を見直すことも一つの解決策です。具体的には、梁の数を減らしたり、床面積を縮小するなどの方法が考えられます。
注文住宅を購入する際には、自分たちがどこにこだわるのか、何を優先するのかを明確にすることが大切です。優先順位を決めて調整していくことで、満足度の高い住宅を手に入れることができます。ハウスメーカーや設計士と相談しながら、自分たちの理想の家を現実にするための最適な方法を見つけましょう。
まとめ|ウッドショックについて理解しよう
ウッドショックは、新型コロナウイルスの影響や米国・中国の建築ラッシュで、世界的な木材不足と価格高騰を招いています。さらには、コンテナ輸送の不足もその要因です。
この現象は、建築費の上昇や中古住宅価格の高騰、住宅着工の遅れ、木材の供給不足など、多岐にわたる影響をもたらしています。対策としては、早期契約や補助金の活用、施工会社との相談、購入時期の見直し、材料の変更などが考えられます。
ウッドショックの背景と影響を正しく理解し、適切な対策を講じることが、現在の状況に対処するために重要です。これらの情報を活用し、今後の建築計画に役立ててください。
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