擁壁工事とは?必要性や種類、費用などを解説
土地の購入を検討した際、「擁壁工事」という言葉を耳にするかもしれません。擁壁工事は、あまり身近なものではないため、詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、擁壁工事の必要性や種類、費用などを解説します。
擁壁工事とは
Point 土地の斜面が崩れないように安定させる工事のこと
擁壁工事は、「ようへきこうじ」と読み、高低差のある土地の斜面が崩れないように安定させるための工事です。
鉄筋コンクリートやブロックなどで斜面を壁状に覆い、土砂崩れを防ぎます。もともとあった崖や土地を造成する際に切土や盛土によって生じた高低差に対して擁壁工事を行うこともあります。
なお、切土とは傾斜や高い所にある土地の地面を削り取って平らな地盤を作ることを言います。一方、盛土は、傾斜や低い所にある土地に土を盛って平らな地盤を作ることを言います。
擁壁工事の必要性
Point 斜面の崩落リスクを減らすために必要
高低差のある土地は高い位置の土地にかかる建物の重みや、土の中に溜まった雨水の水圧など様々な圧力がかかります。
そのため、斜面が崩れることを防ぐために斜面の土を留める必要があります。擁壁とは、その土を留めるために設置する壁状の構造物で、斜面の崩落リスクを減らし建物を守る役割があります。
がけ条例
がけ条例は、敷地の安全を守り、がけ崩れなどによる被害から、建物内の人命を守るために制定されている条例です。自治体により様々な基準があります。
例えば、東京都では「東京都建築安全条例」を定め、高さ2メートルを超え、かつ傾斜2分の1の勾配を超える「がけ」に近接して建築物を建てる場合、建築物の安全性を確保するため、いくつかの規制が付加されています。
新たな擁壁の築造をする際は、建築基準法第88条により工作物の申請が必要となり、擁壁の完了検査を申請して検査済証の交付を受けなければいけません。
なお、維持管理が良好であっても検査済証がない場合は安全な擁壁だと判断されません。
また、新たな擁壁の築造が困難な場合は既存擁壁の安全性を確認します。もし安全性が確認できない場合は、崖および擁壁に構造耐力上不利な影響を与えないように深基礎または杭基礎などにする必要があります。
なお、申請には許可が下りるまで1ヶ月前後かかります。許可が下りてから建物の建築申請を行うため、余裕を持ったスケジュールにしましょう。
また、高低差の測り方やがけ条例の詳細な内容は、自治体によって異なるため、事前に確認するのも念頭に置いておきましょう。
擁壁の種類
Point 鉄筋コンクリート・コンクリートブロック・石の3種類があり、一般的なのは鉄筋コンクリート
擁壁の種類は、鉄筋コンクリート・コンクリートブロック・石の3種類があります。
鉄筋コンクリート
宅地造成等規制法施行令第6条では、擁壁は「鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造または間知石練積み造、その他の練積み造のものとすること」とされており、鉄筋コンクリートの擁壁が一般的に使われています。
鉄筋コンクリートの擁壁は構造計算がしやすく、擁壁を壁に対して真っ直ぐに立てやすいため、敷地を有効活用できるメリットがあります。
鉄筋コンクリートの擁壁は3種類に分けることができ、L型・逆L型・逆T型と呼ばれます。敷地を目一杯使いやすいL型や逆L型がよく使われますが、基本的には敷地条件によって使い分けられます。
コンクリートブロック
コンクリートブロックを積み重ねて擁壁を作ることもあります。一般的に、鉄筋コンクリートよりもコストが抑えられます。
石
間知石と間知ブロックを利用した「間知ブロック擁壁」は、5メートル程度の高低差がある壁でも施工可能です。斜めに積み重ねていく「矢羽積」や、水平に積み重ねていく「布積」があります。
また、石を積んで作った「石積み擁壁」もあります。セメントなどで石と石の間を固めた「練り石積み擁壁」は比較的強度がありますが、石と石の間を固めていない「空石積み擁壁」は強度の面で不安があるとされています。1950~1960年代頃によく作られた「大谷石積み擁壁」などが有名です。
擁壁工事の費用
Point 面積や土地の状態、周辺環境によって大きく変わってくる
一般住宅の場合、擁壁工事の費用は擁壁の高さや幅によって大きな違いが出てきます。面積の大きな傾斜地を工事するとなると、より工事費用は高額になります。おおよその目安にはなりますが、1平方メートル当たりの単価相場は約3~7万円程度とされています。
土地の状態や周辺環境により変わる
同じ面積の傾斜地でも土地の状態によって費用が変わります。
例えば、地盤が安定した緩やかな傾斜地であれば、比較的安価で工事することができます。一方で、急な傾斜地で土地が軟弱であれば擁壁を高く頑丈にしなければならず、その分費用が高くなります。
他には、擁壁工事を行う場所や工程も、費用が変わる要因になります。例えば、大きな重機が入らないような場所に擁壁工事する場合、小さい重機を使って工事することになります。その場合、重機の回送数が上がり、工程が伸びた結果、費用が高くなることもあります。
また、残土処理場までの距離が遠ければその分費用がかかります。その残土が汚染されている場合はさらに費用がかかるので注意が必要です。
このように条件次第で大きく異なるため、擁壁工事の費用は複数社から見積もりを出してもらうと良いでしょう。
助成金を受けられることもある
擁壁工事を行う場合、各自治体から助成金がもらえることがあります。例えば、東京都港区では、工事費用の2分の1が、上限500万円(土砂災害(特別)警戒区域内の場合は5,000万円まで)助成されます。助成金の内容は各自治体によって異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
まとめ
擁壁工事とは、高低差のある土地の斜面が崩れないように安定させる工事のことで、一般的に鉄筋コンクリートの擁壁が使われます。費用は面積や土地の状態、周辺環境などによっても大きく変わるため、複数社から見積もりを取るのが良いでしょう。
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