長期優良住宅とは?メリットやデメリット、2022年2月以降に適用された変更点についても解説
新築住宅について調べていると、「長期優良住宅」という言葉を見かけることがあります。今回は、住宅の特徴や、どんなメリットやデメリットがあるのかについて解説します。また、2022年の法律改正に伴う変更点についてもご紹介します。
長期優良住宅とは
Point 長期優良住宅とは長く住み続けられる住宅のことで、認定項目を満たす必要がある!
長期優良住宅とは、「国が、良好な状態で長期間住み続けられると認めた住宅」のことです。2008年に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が制定され、長期優良住宅として認定を受けるための基準も発表されました。日本では住宅を「つくって壊す」ことを繰り返していましたが、建築後もメンテナンスをして長く使い続けられるよう、国としての方針を定めました。
法律の制定から一戸建ての認定戸数は年々増加しており、2009年には5万7,083戸でしたが、2018年には10万8,085戸に上ります。
長期優良住宅の認定基準
長期優良住宅の認定を受けるためには、「長期に使用するための構造及び設備を有していること」「居住環境等への配慮を行っていること」「一定面積以上の住戸面積を有していること」「維持保全の期間、方法を定めていること」「自然災害への配慮を行っていること」の5つの措置が講じられる必要があります。
具体的には、以下の項目を満たす必要があります。こちらは2022年3月時点の情報ですが、国では「長期優良住宅認定基準の見直しに関する検討会」を開いていることもあり、今後変更される可能性もあります。
・劣化対策
数世代にわたり、住宅の構造躯体が使用できることが求められます。構造躯体とは住宅の骨組みにあたる部分のことで、基礎や壁、柱などを指しています。劣化対策等級の最も高い位である等級3を獲得し、なおかつ構造の種類に応じた基準をクリアする必要があります。
木造住宅なら床下空間の有効高さを確保した上で、床下・小屋裏に点検口を設置しなくてはなりません。鉄骨造住宅の場合は、柱、梁、筋かいに使用する鋼材の厚さ区分に応じた防錆措置をするか、木造と同じ基準を適用します。鉄筋コンクリート造の場合であれば、水セメント比を減らすか、鉄筋を覆うコンクリートの厚さを増します。
・耐震性
稀に発生する地震に対して、損傷レベルを低減させる措置を測ることが求められます。地震による揺れの被害にあった場合も改修工事をすれば住み続ける事ができるように、次の3つのいずれかを満たす必要があります。
1つ目は、「耐震等級の等級2」です。耐震等級では、等級1が「震度6強~震度7の、阪神淡路大震災クラスの揺れにも倒壊・崩壊しない」と定められています。等級2は、等級1の1.25倍の地震に耐えられる水準です。
2つ目は、「耐震等級の等級1かつ安全限界時の層間変形を1/100(木造は1/40)以下」です。安全限界とは、地震が起きたときに建物が完全に崩壊せず、人名確保ができる限界の状態のこと、層間変形角とは、地震などによる横揺れで建物が変形する時、各フロアの水平方向における変形の角度を指しています。
3つ目は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に定める免震建築物」です。地面と建物の間に免震装置を入れて地震による揺れの周期を変えることで建物自体や中にいる人を守る構造になっている建築物を指しています。
・維持管理、更新の容易性
構造躯体だけでなく、それより耐用年数が短い設備配管への対策も求められ、維持管理対策等級の等級3が必要です。維持管理対策等級とは、給排水管やガス管が清掃・補修しやすい対策が取られているか、排水管の更新工事軽減の対策が取られているかなどを評価したものです。等級3は、もっとも高い基準になります。
・省エネルギー性
エネルギー消費量を抑えるための性能が確保されているかという視点から、断熱等性能等級の等級4が必要です。できる限りエネルギーの使用量を削減しつつ冷暖房を行うにあたって、屋根や外壁、窓、床などの断熱措置が十分に取られていることが必要となります。この省エネルギー性に関しては、2020年10月から基準が引き上げられる予定になっています。
・居住環境
良好な景観を維持向上するために「建築をしようとする住宅が地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画、建築協定、景観協定等の区域内にある場合には、これらの内容と調和を図る」と定められています。居住環境基準といい、具体的な基準は各所管行政庁が要件を決定しています。
・住戸面積
良好な居住水準を確保するために必要な規模が定められており、一戸建て住宅の場合は75㎡以上を有することが基準になっています。また、階段部分を除いた1階の床面積が40㎡を超えている必要があります。地域の所管行政庁が別に定めている場合は、その面積要件が適用されます。
・維持保全計画
長期優良住宅の認定時には維持保全に関する計画を作成し、申請する必要があります。住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分、給排水のための設備について、点検項目と時期を定めることが求められます。また、認定を受けた後は、維持保全状況を記録し保存しなくてはなりません。
・災害配慮基準
2022年2月から新しく追加された項目です。自然災害は地震だけではありません。土砂災害や津波、洪水などに対するリスクも考慮する必要があります。そのため、災害の危険性が特に高い区域内に建築する住宅は原則として長期優良住宅として認定されないことになりました。具体的には「地すべり防止区域」「急傾斜地崩壊危険区域」「土砂災害特別警戒区域」「災害危険区域」などで、そのリスクの高さに応じて所管行政庁が対策措置を判断します。
長期優良住宅のメリット
Point 補助金や減税が適応されるなど、金銭的なメリットが大きい!
長期優良住宅と認められるには様々な項目を満たす必要がありますが、一般住宅に比べて金銭的なメリットが多数あります。
住宅ローン減税の限度額引き上げ
住宅ローン減税とは、住宅ローンを活用して家を購入する方の金利負担を軽減するための制度です。2022年の税制改正によって概要が以下のように変更されます。
新築住宅の場合、年末の住宅ローンの残高か住宅取得対価のうち、少ない方の金額の0.7%が、13年間にわたって所得税から控除されます。通常、控除対象になるローン借入限度額は4,000万円に設定されていますが、長期優良住宅であれば、その限度額が高くなります。
2023年12月末までに入居した場合、長期優良住宅であれば限度額が5,000万円に引き上げられ、控除限度額が35万円となっています。また、2024年から2025年までの間の入居の場合は長期優良住宅の限度額は4,500万円、控除限度額は31万5,000円になることも決定しています。
所得税の投資型減税
投資型減税とは、長期優良住宅を含む優れた住宅に適用される減税措置で、住宅ローンを組まなくても減税を受けられる制度です。住宅を購入する時、性能強化費用としてかかった金額の10%が所得税から控除されるもので、上限は65万円です。こちらも2023年12月末までに入居した場合が対象です。
なお、住宅ローン減税との併用ができないため、どちらの方が得をするかそれぞれ計算してから選んでください。
そのほかの税の特例措置の拡充
2024年3月末までに入居した場合、登録免許税・不動産取得税・固定資産税においても長期優良住宅であればメリットがあります。登録免許税であれば、登記ごとに税率の引き下げが受けられます。不動産取得税は、税率は同じ3%であるものの控除額の増額があり、1,300万円に拡大されます。固定資産税においては1/2減額の減税措置が適用される期間が5年間に延長されます。
住宅ローン金利引き下げ
長期優良住宅であれば、住宅ローンの金利引き下げを受けることもできます。住宅金融支援機構の「フラット35」では、長期優良住宅の認定を受けているかどうかで適用される金利が変わります。
2022年においては4月~9月までの申込の場合と10月以降の申込の場合で異なります。長期優良住宅の場合は「フラット35 S」が利用可能であり、組み合わせによって借入金利が引き下げられます。組み合わせが複数あり、なかには予算金額達成時に終了するものもあるので、詳しくはフラット35のサイトでご確認ください。
地震保険料の割引き
長期優良住宅は、耐震性が認められているので、地震保険の耐震等級割引、もしくは免震建築物割引が適用可能です。耐震等級割引は耐震等級によって割引率が異なり、等級2は30%、等級3は50%が引かれます。また、免震建築物については50%の割引率が適用されます。
長く住み続けられる
お金に関するメリットとは少し異なりますが、長期優良住宅という名前の通り、一般的な住宅よりも長く住みやすい点もメリットといえるでしょう。高性能な住宅は今後のスタンダードとして国が推進している住宅です。認定基準を満たすことで、子どもたちに引き継がれるような安心・安全な家をつくることができます。
長期優良住宅のデメリット
Point 申請に手間がかかり、金銭的なコストも発生する!
数多くのメリットがある長期優良住宅ですが、デメリットが2つあります。1つ目は、手間がかかることです。申請時に準備する資料が多くあり、認定申請書のほかに認定基準を満たしていることの根拠となる設計内容説明書、設計内容説明の通りに設計されていることがわかる各種図面・計算書、技術的審査の結果を示す確認書・住宅性能評価書などを用意しなくてはなりません。そして、認定が下りるまでには数週間から数か月の時間がかかるため、建築期間が長くかかることになります。
また、住宅が建ってからも定期点検をする義務があります。長期優良住宅の所有者は、先に説明した維持保全計画に沿った点検を行います。「建てれば終わり」ではなく、長期的な管理も必要になるため、少し面倒に感じてしまう方もいるでしょう。とはいえ、家のメンテナンスは安心して住むために必要なことなので、やっておいて損はありません。
2つ目は、コストがかかることです。上記のように申請の際には様々な資料を提出しなくてはなりませんが、これらを発行するための手数料がかかります。また、住宅メーカーを通して申請すると代行手数料が発生し、20〜30万円ほどかかるとされています。
また、「長期優良住宅の認定基準」で説明した通り、多くの項目を満たさなくてはなりません。性能が高い建材や設備の導入が必要なため、一般住宅を建てるよりも建築コストが高くなりやすいです。長く快適に住むための投資と考えられるかどうかがポイントと言えます。
長期優良住宅の申請手順
Point 申請には各種書類が必要で、工事完了後も点検をしなくてはならない!
最後に、長期優良住宅の申請と居住の流れを解説します。まず、申請者は登録住宅性能評価機関に対して技術的審査を依頼します。審査を実施する依頼先は、一般社団法人住宅性能評価・表示協会のサイトから検索可能です。必ず着工前に行います。
この機関が住宅を確認し、長期優良住宅として有効だと判断すれば、確認書・住宅性能評価書が発行されます。なお、2022年2月以前に発行されていた適合証は、現在は提出書類として認められていないため注意しましょう。
次に、発行された確認書・住宅性能評価書と認定申請書などの必要書類をそろえて、所管行政庁に申請します。適合審査が行われ、認定されると認定通知書が交付されるという流れです。申請先は住宅を建てる地域によって変わるため、前述した協会の検索システムを使って事前に調べておきましょう。
認定されてから着工し、住宅の完成を待ちます。工事が終われば、維持保全計画に基づく点検を行いながら住むことになります。点検時期の間隔は10年以内と定められており、地震や台風があった場合は臨時点検を行う必要があります。住宅の劣化状況に応じて計画を見直したり、必要に応じて修繕や改良を行ったりして、それらをすべて記録します。
まとめ
長期優良住宅として認められるには、様々な認定項目をクリアし、費用や時間をかけて申請することになります。しかしその分、減税などの金銭的なメリットがあり、次世代にも引き継ぐことができる安心・安全な住宅にすることができます。
長期優良住宅の普及の促進に関する法律が改正され、新たな基準が2022年2月20日から施行されています。適用開始・終了となる期間は項目によって様々であり、今後も認定基準が変わる可能性があるため、常に最新の情報を知っておきましょう。
馴染みのない専門的な用語も多く、全てを理解するには難しく感じる方も多いと思います。もし「長期優良住宅の最新の情報をもっと知りたい」「メリットやデメリットについて、住宅のプロに直接相談したい」という方は、住宅メーカーに問い合わせることがおすすめです。専門的な知識を持った担当者が、詳しく教えてくれます。問い合わせの際は、ぜひ当サイトの「おすすめ住宅メーカー」を参考にしてください。モデルハウスの見学予約も可能です。
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