道路沿いの家における排気ガス対策とは?健康への影響や対策グッズも紹介

道路沿いの家に住むことは、車移動のしやすさと引き換えに騒音や排気ガスといった問題と向き合う必要があります。特に排気ガスは目に見えないからこそ、その影響や対策について正しく理解することが大切です。
この記事では、道路沿いの家における排気ガスの健康への影響から、室内・室外の効果的な対策方法、さらには便利な対策グッズまで幅広く紹介します。便利なグッズや効果的な方法を具体的に知ることで、自分や家族の生活環境を快適に保ちやすくなるでしょう。
目次
道路沿いの家における排気ガスの問題と健康への影響
道路沿いの家に住むメリットは多いものの、日々発生する排気ガスはご家族の健康に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に小さな子どもや高齢者、呼吸器疾患を持つ方は、その影響をより強く受けやすいという問題があります。
排気ガスの影響を最小限に抑えるには、まずその成分や健康リスクを正確に理解することが大切です。ここでは、道路沿いの家における排気ガスの種類とその健康への影響について詳しく見ていきましょう。
排気ガスに含まれる有害物質と特徴
自動車から排出される排気ガスには、人体に悪影響を及ぼすさまざまな有害物質が含まれています。主にこのようなものがあります。
- 窒素酸化物(NOx):呼吸器系に悪影響を与える物質で、特にディーゼル車から多く排出されます。
- PM2.5:直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質で、肺の奥深くまで入り込む可能性があります。
- 一酸化炭素(CO):血液中の酸素の運搬を阻害する無色・無臭の有毒ガスです。
- 硫黄酸化物(SOx):酸性雨の原因となるだけではなく、呼吸器系にも悪影響を与えます。
これらの物質は、特に都市部の大気中に多く含まれており、科学的研究によって健康への悪い影響をおよぼすことが確認されています。また、都市大気中の粉塵は皮膚において酸化ストレスを誘導し、炎症を引き起こす因子であるインターロイキン1バイフ(IL-1β)やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現を上昇させます。
排気ガスに長期でさらされる健康・皮膚へのリスク
窒素酸化物やPM2.5といった微小粒子状物質が肺の奥深くまで入り込むと、気道に慢性的な炎症をもたらします。その結果、新たに喘息を発症しやすくなり、すでに喘息を抱える方では発作の頻度増加や夜間の咳・息苦しさが顕著に現れます。さらに、長期にわたる炎症が続くことで、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の進行が加速し、肺機能の低下を招く恐れもあるでしょう。
また、排気ガス中の微粒子や揮発性化学成分は皮膚表面に付着し、バリア機能を損なうことで抗酸化力を低下させます。その結果、酸化ストレスが増大しシミやシワなどの肌老化を促進するほか、接触皮膚炎やかゆみを伴う炎症性トラブルを悪化させます。
子どもや高齢者、呼吸器疾患を持つ人へのリスク
排気ガスの影響は、すべての人に平等に現れるわけではありません。
特に、子どもは体が小さく、発達段階にあるため、大人よりも排気ガスの影響を受けやすいと言われています。子どもの肺は未発達で、呼吸数も大人より多いため、体重あたりで計算すれば大人よりも多くの大気汚染物質を吸い込むことになります。幼い子どもほど影響を受けやすく、健康への配慮が必要です。
高齢者は免疫力が低下している場合が多く、排気ガスの有害物質から身体を守る機能が弱まっている可能性があります。また、すでに何らかの健康問題を抱えていることも多いため、排気ガスによる影響が重篤化しやすくなります。
道路沿いの家で実践できる室内の排気ガス対策
排気ガスのリスクを理解したところで、道路沿いの家で実践できる室内の対策方法について見ていきましょう。適切な対策をすることで、室内の空気環境を大幅に改善できます。
窓の選び方と設置位置の工夫
窓は外部と内部をつなぐ重要な経路であり、排気ガス対策においても大きな役割を果たします。
交通量の多い道路に面している場合は、その方向に開閉できる窓をつくるのは避けることが望ましいです。代わりに開閉できないFIX窓をつくることで、太陽の光だけを取り込む工夫をすると良いでしょう。これにより、光は取り入れつつも、排気ガスの侵入を防ぐことができます。
また、窓の位置とフェンスの高さを工夫することも有効です。たとえば、高低差を利用して通行人からの視線を遮断しつつ、室内に十分な自然光を取り込むことができます。これによりプライバシーを確保しながらも、明るい室内環境を維持できます。
効果的な換気システムの導入と活用法
適切な換気は、室内の空気環境を維持するために不可欠です。
多くの住宅に導入されている24時間換気システムを有効活用しましょう。24時間換気システムとは、機械的に換気扇を24時間連続で稼働させて室内の汚れた空気を排出して新鮮な外気を取り込むことで常に快適な室内環境を維持する設備です。ただし、換気システムの設置場所によっては外気を取り込む際に排気ガスを室内へ吸い込んでしまうおそれがあるため、注意が必要です。できれば道路と反対側に給気口を設けるなどの工夫をしましょう。
より高度な対策としては全熱交換換気システムの導入があげられます。このシステムは排出する室内の空気と取り入れる外気との間で熱交換を行うことで、室内の温度を維持しながら換気を行うことができます。
また、排気ガスが特に多い時間帯や大気汚染警報が出ているような日には、一時的に換気口をふさぐことも選択肢の一つです。ただし、長時間の換気停止は室内の二酸化炭素の濃度上昇などの問題を引き起こす可能性があるため、バランスを取ることが重要です。
高性能空気清浄機の選び方と設置ポイント
空気清浄機は室内の空気環境を改善するための効果的なアイテムです。
排気ガス対策には、HEPAフィルター付きの空気清浄機を選びましょう。HEPAフィルターとは、High Efficiency Particulate Airの頭文字を取ったもので「高性能な微粒子エアフィルター」のことです。
PM2.5などの微小粒子を99.97%以上も集めることができるとされており、排気ガスに含まれる粒子状物質の除去に効果的です。加えて、活性炭フィルターが含まれているモデルであれば、ガス状の汚染物質の除去にも有効です。
空気清浄機の設置場所としては、窓際や空気循環システムの側に置くことで効果を高めることができます。特に排気ガスが侵入しやすい窓の近くに設置することで、室内に入ってきた直後の汚染物質を捕捉できます。
排気ガスの多い場所では、空気清浄機のフィルターが通常よりも早く汚れるため、フィルター交換の周期が短くなる点に注意が必要です。メーカーが推奨する交換時期よりも早めに定期的なフィルター交換を行うことで、空気清浄機の性能を維持できます。
洗濯物の室内干しの工夫
道路沿いの家では、外に干した洗濯物に排気ガスやほこりが付着するリスクがあります。いくつかの工夫によって、この問題を解決できます。
最も効果的な方法は、浴室乾燥機、除湿機、布団乾燥機などを使って洗濯物を室内で乾かすことです。特に浴室乾燥機は密閉された空間で乾燥させるため、外部からの汚染を完全に防ぐことができます。
浴室乾燥機がない場合でも、部屋干しを工夫することで対応できます。室内用の物干しスタンドや、窓から離れた場所に設置した物干し竿を利用すると良いでしょう。部屋干しの際には除湿機を併用すると、乾燥時間を短縮し、室内の湿度上昇を防ぐことができます。
どうしても外干ししたい場合は、早朝や深夜などの交通量の少ない時間帯に干し、乾いたらすぐに取り込むようにしましょう。また、外干しする際には、できるだけ道路から離れた場所や、高い位置に干すことで、排気ガスの影響を最小限に抑えることができます。
道路沿いの家で実践できる室外の排気ガス対策
室内対策とともに、住宅の外側からも排気ガス対策を行うことで、より効果的に問題を解決できます。ここでは、室外で実践できる対策方法を紹介します。
植栽を設置する
植栽による緑化は自然な空気浄化バリアとして機能するだけではなく、視覚的にも心地良い環境を作り出します。
庭や敷地周辺に木や低木を植えることで、排気ガスの一部を捕捉し、空気中の汚染物質を減らすことができます。また、植物の葉は大気中の微粒子を捕捉する作用があり、シダ類やアイビーなどの特定の植物は特に大気浄化能力が高いです。
植栽は、音を吸収したり視界を遮る役割も果たすため、騒音や視線対策としても有効です。加えて、植物がもたらす緑の景観には心理的な癒し効果も期待できます。ストレスを軽くする効果があるため、排気ガスによる心理的ストレスの緩和にも役立ちます。
具体的には、生け垣として常緑樹を植えたり、フェンスに先ほどもあげたようなつる性植物を這わせたりするなどの方法が効果的です。ただし、植物の選択や配置には専門的な知識が必要な場合もあるため、造園業者や外構工事会社に相談すると良いでしょう。
高めの塀やフェンスを設置する
物理的なバリアは、排気ガスの流入を直接的に遮断する効果があります。
道路からの騒音や排気ガスを物理的に遮断するため、高めの塀やフェンスの設置が効果的です。これにより、特に地表近くを流れる排気ガスの影響を軽減できます。また、プライバシーの確保にも役立つため、一石二鳥の対策となります。
外構で目隠しを作らないと敷地内の様子が外から見えてしまうため、特に道路沿いの住宅ではフェンスやゲートの設置が必要不可欠です。これにより、外からの視線を遮ることができ、自宅の庭やバルコニーでリラックスできるようになります。
敷地内のこまめな水撒きや清掃をする
日常的な手入れも、排気ガスの影響を軽減するために重要です。
道路の粉塵が舞い上がるのを防ぐため、敷地内や歩道に水を撒くことが効果的です。特に乾燥した日には、粉塵が再び舞い上がりやすくなるため、定期的に水撒きをしましょう。
また、定期的にベランダなどを清掃することも大切です。舞い上がったホコリやススが物干し竿やベランダの柵に付着しがちなので、湿らせた布で拭き取るなどの清掃を行いましょう。この時、乾いた布で拭くと粉塵が再び舞い上がるため、濡れた布や専用のクリーナーを使用するとより効果的です。
駐車スペースの配置を工夫する
自宅の駐車スペースの配置も、排気ガス対策の一環として考慮すべき点です。
駐車スペースを道路から離れた位置に配置することで、自家用車のエンジンをかけた際の排気ガスが直接室内に入り込むことを防げます。可能であれば、駐車スペースを大通り沿いに面していない方角に設置することが望ましいです。
また、十分な駐車スペースを確保することで、路上駐車の頻発を防ぐことができます。路上駐車は通行の妨げになるだけではなく、アイドリング状態の車両からの排気ガスが住宅内に侵入するリスクを高めます。
道路沿いの家で窓からの排気ガスの侵入を防ぐグッズ
窓は外気と室内をつなぐ重要な経路であり、排気ガス対策においても重点的に取り組むべき部分です。ここでは、窓からの排気ガス侵入を防ぐための効果的なグッズを紹介します。
窓用隙間テープ
窓の隙間は、気づかないうちに多くの排気ガスや外気を室内に取り込む経路となっています。そんな窓の隙間を埋めて密閉性を高めるには窓用隙間テープがおすすめです。隙間から侵入する排気ガスを効果的に遮断でき、かつ比較的安価で手に入るため、手軽に導入できる対策グッズです。
さらに、隙間テープには冷暖房の効率がよくなるという排気ガス対策とは別の効果もあります。室内の温度を一定に保ちやすくなるため、エネルギー効率が向上し、光熱費の削減にもつながるでしょう。
また、隙間テープには防音効果も期待できます。道路沿いの住宅では騒音も大きな問題となるため、排気ガス対策と同時に騒音対策にもなる点は大きなメリットです。
二重窓用簡易キット
二重窓用簡易キットは、排気ガス対策と防音対策の両方に効果的なグッズです。
DIYで二重窓を設置できるこの簡易キットは、既存の窓を活かしながら断熱性・防音性を向上させることができます。市販の簡易キットを使えば、専門業者に依頼せずとも比較的簡単に設置できます。
二重窓の最大のメリットは、断熱性、防音性の向上です。窓と窓の間に空気層ができることで、外部の音や汚染物質の侵入を大幅に抑制します。特に冬場は結露防止にも効果があります。
また、二重窓用簡易キットは既存の窓に後付け可能なため、大規模なリフォームを必要としない点も魅力です。本格的な対策としては、窓ガラスを二重ガラスや防音ガラスに変更する方法も有効です。これにより、外部の騒音が室内に侵入するのを大幅に軽減できます。ただし、こちらはDIYではなく専門業者による施工が必要になります。
窓用防音・防塵シート
窓用防音・防塵シートは、専門的な工事を必要とせず、簡単に導入できる対策グッズです。
窓に貼るだけで防音・防塵効果を得られるシートは、排気ガスに含まれる粒子状物質の侵入を軽減する効果があります。特にPM2.5などの微小粒子の侵入抑制に役立ちます。多くの窓用シートには紫外線カット効果もあり、家具やフローリングの日焼けを防いだり、夏場の室温上昇を抑えたりする効果も期待できるでしょう。
窓ガラスに防音透明シートを貼ることで、ガラスの振動を抑え、外部の音を減らせる効果もあります。これは、道路沿いの住宅における騒音対策としても有効です。
高密度メッシュの網戸フィルター
通常の網戸は虫の侵入は防げても、排気ガスに含まれる微小粒子の侵入を防ぐことはできません。ここで役立つのが、高密度メッシュの網戸フィルターです。
網戸に取り付けて細かい粉塵の侵入を防ぐ高密度メッシュフィルターは、通常の網戸よりも目が細かく、PM2.5などの微小粒子を防ぐ効果があります。排気ガスに含まれる粒子状物質が室内に侵入するのを抑制します。
また、このフィルターは花粉対策にも有効です。花粉症の方にとっては、排気ガス対策と同時にアレルギー対策にもなるため、一石二鳥でしょう。
さらに、高密度メッシュは一般的な網戸よりも虫の侵入も効果的に防ぐため、夏場の虫対策としても役立ちます。小さな虫も通しにくいため、特に夜間の照明に集まる微小な虫の侵入防止に効果的です。
マグネット式窓用フィルターカバー
取り付けや取り外しが簡単なマグネット式窓用フィルターカバーは、季節や状況に応じて柔軟に対応できる対策グッズです。
マグネットで簡単に取り付け、取り外しができるこのタイプのフィルターは、使用したい時だけ窓に取り付けられるため、風の強い日や空気が澄んでいる日には取り外して通気性を確保できます。特に季節の変わり目など、状況に応じた柔軟な対応が可能です。
定期的に清掃をすることで、フィルターの性能を維持できます。また、製品によっては定期的な交換が推奨されているものもあるため、使用前に確認しておくと良いでしょう。
まとめ|道路沿いの家でも健康で快適に暮らしをしよう
道路沿いの家に住むことで排気ガスの影響は避けられないものの、適切な対策をすることで健康リスクを最小限に抑え、快適に暮らすことは十分に可能です。
道路沿いの家に住む場合、設計する段階からの対策が最も効果的です。窓の配置や間取りの工夫、排気ガス対策を考えた外構など、家づくりの計画時に排気ガス対策を盛り込むことで、より健康的で快適な住環境を実現できます。
家づくりを検討中の方で、このような排気ガス対策を住宅の設計に取り入れたい場合は、要望にきちんと応えてくれる住宅メーカー選びが重要になります。どのように住宅メーカーを選べばいいかわからない方は、家づくりの専門家が無料でアドバイスする、ウチつくの「オンライン相談サービス」がおすすめです。専門家と一緒にあなたの健康と快適さを両立できる住宅づくりを始めましょう。
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