不動産の引き渡しで起こるトラブルとは?対策や解決策・相談窓口まで紹介!


不動産の引き渡し時には、思わぬトラブルが発生することがあります。不動産取引は高額で複雑なため、準備不足や確認漏れによって契約後に問題が発覚し、買主と売主の間で紛争に発展するケースも少なくありません。

 

こうしたトラブルは時間的にも金銭的にも負担となり、新生活のスタートに水を差す恐れがあります。しかし、あらかじめ典型的な事例や対策を知っておくことで、多くの問題は未然に防ぐことができます。

 

この記事では、不動産の引き渡しにおいて起こりがちなトラブルの種類と、その防止策や解決策、さらに困ったときに相談できる窓口について見ていきましょう。適切な知識と対策を身につけておけば、安心して不動産の引き渡しを迎えることができます。

 

 

不動産の引き渡しでよくあるトラブル

引き渡し時に発生する典型的な問題点は、物件の隠れた欠陥や境界線の認識違い、金銭決済の遅延、契約解除の争い、さらに付帯設備の取り扱いなどです。これらのトラブルは、事前の十分な調査や契約内容の明確化により防げる可能性が高いです。ここでは、不動産の引き渡しでよくあるトラブルを紹介します。

 

物件の瑕疵(かし)に関するトラブル

物件に隠れた瑕疵が見つかった場合のトラブルです。瑕疵とは、通常であれば備わっているべき品質や性能が欠けている状態、つまり欠陥や不具合のことです。引き渡し後に雨漏りやシロアリ被害、構造上の欠陥などが発覚し、買主が修繕費の負担や損害賠償を巡って売主と対立するケースが多く見られます。

 

中古住宅では経年劣化による不具合が潜んでいることがあり、売主が事前に把握していなかった問題が引き渡し後に明るみに出る場合もあります。売買契約では通常、売主には一定期間の瑕疵担保責任が定められていますが、どこまでが補償対象か認識にずれがあると紛争に発展しかねません。

 

境界に関するトラブル

土地の売買や戸建住宅の取引では、敷地の境界を巡るトラブルも起こりがちです。引き渡し後に隣地との境界線について認識の相違が発覚し、自分が思っていた土地の範囲と実際の範囲が異なるといった問題が典型例です。

 

たとえば、敷地の境界標である境界杭が見当たらず、後になって隣人から「フェンスの位置が越境している」と指摘されるケースがあります。また、購入後に境界の一部が公道や他人の土地にかかっていることが判明し、利用できる土地が想定より狭かったという例もあります。

 

支払いに関するトラブル

物件の引き渡し時には、売買代金の残金決済と物件引渡しが同時に行われるのが一般的ですが、この段階で金銭トラブルが起こることもあります。代表的なのは、買主の住宅ローン手続きの遅れなどで決済日に残代金を用意できず、引き渡しが延期・中止になるケースです。

 

期限までに支払いが行われない場合、売主は契約解除や違約金請求を検討せざるを得なくなり、双方にとって大きなトラブルとなります。また、引き渡し時には固定資産税や管理費等の精算も行いますが、清算金額について認識の違いから揉めることもあります。

 

契約解除に関するトラブル

売買契約が成立した後、引き渡しになる前に一方的な契約解除が発生してトラブルになることも少なくありません。買主側の事情で購入をやめたり、売主側が他に有利な売却先を見つけたりしてすでに結んである契約の解除を試みる場合、手付金の扱いや違約金を巡って紛争になることがあります。

 

契約書では通常、買主からの任意解除の場合は支払済みの手付金は支払ったままで契約を終了、売主の都合で解除する場合は手付金の倍額を返還するといった取り決めがあります。しかし、ローン特約の期限を巡る行き違いや、契約解除の正当性について双方の主張が食い違うと、手付金の返還を求める訴訟に発展することもあります。特に高額な不動産取引では、契約解除に伴う金銭的損失も大きく、解決に時間をかかる厄介なトラブルとなりがちです。

 

付帯設備に関するトラブル

物件に付帯する設備の引き渡しを巡るトラブルも発生しやすいです。売買契約時に取り交わす「付帯設備表」や「物件状況報告書」に基づき、どの設備を残し、その動作状態がどうであるかを確認しますが、記載漏れや認識違いがあると後に問題化します。

 

典型例として、引き渡し後にエアコンが故障して使えないことが判明したり、カーテンや照明器具が残されているはずが撤去されていたりするケースが挙げられます。買主は設備の修理・交換費用の負担について不満を抱き、売主に補償を求める一方、売主は中古設備はサービス品扱いで契約締結後に壊れたり、傷ができてもそのまま引き渡す現状有姿渡しだったと主張して対立することもあるでしょう。

 

 

不動産の引き渡しで起こるトラブルを防ぐための対策

トラブルを未然に防ぐためには、契約前から引き渡し直前まで一貫して入念な確認と準備が必要になります。重要事項説明から始まり、ホームインスペクションと呼ばれる住宅診断や契約書の念入りな確認、そして最終確認を通じ、双方の認識を一致させることが解決策となります。事前の手続きと確認作業により、引き渡し後のトラブルを大きく減らすことができるとともに、安心して不動産取引ができるメリットが得られるでしょう。

 

契約前の重要事項説明をしっかり確認する

売買契約の締結の前に、宅地建物取引業者の宅地建物取引士によって重要事項説明が行われます。重要事項説明書には、物件の法的な権利関係や用途地域などの基本情報から、設備の状況や境界に関する事項、さらに過去のトラブルや告知事項まで、取引に重要なあらゆる項目が細かく記載されています。

 

買主はこの説明を形式的に聞き流さず、一つ一つ内容を確認することが重要です。たとえば、境界標の有無や位置の説明が明確か、シロアリ被害歴など瑕疵に関する告知事項がないか、設備の保証範囲はどうなっているかなど、疑問点があればその場で確認し、契約前に解消しておくことがとても大切です。

 

物件状況確認とインスペクションを実施する

契約前には、売主による物件状況の確認・報告と、必要に応じた専門家によるホームインスペクションを行うことが重要です。ホームインスペクションとは、専門家が屋根裏や床下を含め家屋の状態を調査するもので、数万円程度の費用がかかりますが、素人にはわからない隠れた瑕疵があとから見つかるリスクに比べたら安い投資といえるでしょう。

 

物件状況報告書には、雨漏りや給排水設備の不具合など、売主が把握している物件の不良箇所が記載されます。買主側でも目視で物件を細かくチェックし、気になる点は売主に確認することが大切です。

 

契約書の内容を詳細にチェックする

売買契約書に記載された内容を細部まで確認することも欠かせません。契約書には物件の引き渡し条件や代金の支払条件、特約事項などが明記されています。付帯設備表で取り決めた設備の引き渡し条件や、万が一瑕疵が見つかった場合の補修・賠償の取り扱い、ローン特約の期限や手付金の扱いなど、重要な事項がきちんと盛り込まれているかを確認することが必要です。

 

口頭で合意した内容が契約書に反映されていないと、後から「聞いていない」と主張しても証拠がなく不利になります。また、専門用語や法的な表現で理解が難しい箇所は、そのままにせず不動産会社や専門家に確認することが大切です。契約内容を事前に正しく把握しておけば、思い違いや説明不足によるトラブルを防ぐことができます。

 

引渡し前の最終確認を徹底する

物件の最終引渡し前に、現地での最終確認を行うことは非常に重要です。買主と売主が立ち会い、物件の状態や設備の動作を確認します。具体的には、雨漏りや水漏れがないか、設備機器が正常に作動するか、鍵がすべて揃っているか、不要な家具や電気製品が置きっぱなしになっていないかなどをチェックしましょう。

 

契約時には問題がなかった箇所でも、引き渡し直前までに不具合が発生している可能性もあるため、念入りな確認が必要になります。もし不備が見つかった場合、その場で双方が不備の内容を共有し、必要に応じて引き渡し前に修繕対応することが望ましいでしょう。

 

不動産の引き渡しでトラブルが起きた際の相談窓口

万が一、不動産の引き渡し段階でトラブルが発生してしまった場合は、早めに専門家や公的機関に相談することが重要です。自己判断で抱え込まず、第三者の助言を仰ぐことで適切な解決策が見えてくることも少なくありません。ここでは、不動産取引のトラブルが起こった時に頼りになる主な相談先を紹介します。

 

宅地建物取引業者への相談

まずは取引を仲介した宅地建物取引業者に相談するのが基本です。宅地建物取引業者は取引の経緯を把握しており、売主・買主双方とのパイプ役でもあります。多くの場合、現場を知る担当者が間に入ることで、誤解の解消や円満な解決が期待できるでしょう。

 

たとえば、設備不良に関する行き違いであれば、不動産会社が売主に働きかけて修理対応してもらえるケースがあります。また、重要事項説明の不備など業者側に原因があるトラブルでは、宅地建物取引業法に基づき業者が責任を問われる可能性もあります。業者としてもトラブルを放置すれば行政指導や信用低下につながるため、誠意をもって対応してくれるでしょう。

 

消費者センターへの相談

各地の消費者センターは、不動産取引に関する相談も受け付けています。消費者センターでは、契約内容や法律の観点から問題点を整理し、消費者の立場で適切なアドバイスを提供してくれます。

 

たとえば、契約書の条項について疑問がある場合や、売主・業者との交渉が難航している場合に、第三者の視点から助言をもらうことで解決の糸口が見つかることがあるでしょう。必要に応じて、より専門的な窓口や裁判外紛争解決機関であるADRを紹介してもらえる場合もあります。

 

弁護士への相談

法的な見解が必要なトラブルや、当事者同士の話し合いでは解決が難しい場合、弁護士に相談することが有効です。不動産取引に詳しい弁護士であれば、契約書の内容や関連する法律を踏まえて、どのような権利主張が可能かアドバイスしてくれます。

 

売主に修補義務を履行させるための法的手段を取ったり、損害賠償請求の交渉代理を行ったりと、弁護士が介入することで事態が前進するケースも多くあります。弁護士費用はかかりますが、トラブルの金額が大きい場合や納得のいく解決を図りたい場合には、裁判も見据えて早めに弁護士を頼ることが望ましいでしょう。

 

不動産鑑定士への相談

トラブルの内容によっては、不動産鑑定士に相談することも考えられます。不動産鑑定士は土地や建物の適正な価値を評価する専門家であり、主にトラブルの原因が金銭面にある場合に力を発揮します。

 

たとえば、瑕疵によって物件の価値がどの程度下がったかや、境界問題で土地面積が減少したことによる損失額などを客観的に算出してもらいましょう。その評価額をもとに、売主に減額交渉を行ったり損害賠償額の根拠としたりすることで、解決への道筋が見えてきます。

 

国土交通省の相談窓口

国土交通省が所管する公的な相談窓口も活用できます。代表的なものに「住まいるダイヤル」があり、住宅に関する幅広い相談を電話で受け付けています。住まいるダイヤルは、専門の相談員がトラブル内容に応じて適切な助言を行ってくれるのが特徴です。

 

引き渡し時のトラブルについても、どのように対処すべきかアドバイスを受けられるでしょう。また、トラブルの相手が宅地建物取引業者で対応に不満がある場合は、業者の免許行政庁である国土交通省の担当部署に相談することもできます。

 

まとめ|不動産の引き渡しのトラブルは未然に防ごう

不動産の引き渡しにまつわるトラブルは、事前の確認と準備によって大半を未然に防ぐことができます。契約前の重要事項説明の理解や、インスペクションの活用、契約書の綿密なチェック、そして引き渡し前の立ち会い確認といった対策を講じることで、リスクを大幅に減らせるでしょう。

 

万が一トラブルに直面した際には、適切な相談窓口や専門家に早めに相談することが重要です。高額な不動産売買の最後をトラブルで台無しにしないよう、十分な備えと冷静な対処に努めれば、円滑な引き渡しを実現できるでしょう。

 

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