地盤沈下で家が傾いたら?住宅への影響や補償の種類を解説!


家が傾くほどの地盤沈下は、建物を深刻に傷めてしまうだけでなく、日々の暮らしに大きな不安をもたらします。しかし、事前に補償制度や損害賠償の仕組みを知っておけば、万が一地盤沈下が起きたときに費用面や手続き面でスムーズに対処しやすくなるでしょう。

 

この記事では、地盤沈下の主な原因や被害を最小限にするためのポイント、損害賠償請求の流れ、さまざまな保険・保証制度の概要を幅広くまとめています。住宅の安全を守るために押さえておきたい情報をわかりやすく整理しているため、ぜひ最後までご覧ください。

 

 

地盤沈下の原因と住宅への影響

地盤沈下は、建物の基礎や構造に深刻な影響を与える可能性のある現象です。ここでは、地盤沈下の主な原因と、それが住宅にどのような影響を及ぼすかを解説します。原因を理解することで、適切な対策を取ることができるようになるでしょう。

 

地盤沈下の主な原因

地盤沈下は、大きく分けて自然災害と人為的要因の2つの原因によって起こります。自然災害では、地震や大雨が土壌に急激な振動や過剰な水分を与え、地盤が緩んで沈下につながることがあります。

 

一方で、周辺で行われる建設工事や道路工事による掘削や振動、地下水の過剰なくみ上げ、埋立地の未熟な地盤など、人為的要因がきっかけとなって地盤が下がるケースもあります。

 

さらに、もともと軟弱な地盤では建物の重量そのものを支えきれず、少しずつ沈んでいく「圧密沈下」が起こりやすいです。注文住宅を建てることを計画している場合は、まず土地の強度を詳しく調べ、必要があれば地盤改良工事を行うなど、早い段階での対策が欠かせません。

 

地盤沈下が住宅に与える影響

地盤が沈み、建物が傾くと、ドアや窓の開閉がスムーズにいかなくなるだけでなく、基礎部分や外壁にひび割れが発生しやすくなります。ひびが広がると雨水が侵入して構造を弱める恐れがあり、結果的に改修費用が高額になることもあるでしょう。

 

さらに、水道管やガス管がずれてしまうと、漏水やガス漏れといった重大なトラブルに直結します。加えて、住宅周辺の排水勾配が変化すると、大雨や台風シーズンに床下浸水が起こりやすくなる点にも注意が必要です。長期間にわたり建物が傾いた状態で生活していると、目まいや頭痛といった症状も出てくるため、早期の点検と補修が大切になります。

 

 

地盤沈下における補償の種類と責任の所在

地盤沈下が実際に起こった場合「誰がどのように責任を負うのか」「何を利用すれば補償を受けられるのか」を把握しておくことが重要です。まずは、住宅に関する法律で定められた瑕疵(かし)担保責任(契約不適合責任)や地盤保証制度について知っておきましょう。

 

さらに、近隣工事の影響による賠償請求が認められるケースや、地震が原因の場合にカバーしてくれる地震保険の仕組みも押さえておくと安心です。

 

住宅の瑕疵(かし)担保責任(契約不適合責任)

新築住宅では、法律により構造耐力上主要な部分などに欠陥があった際、引き渡しから10年間は売主や施工業者が修補費用を負担する義務を負います。雨漏りや基礎部分の不具合などが該当しやすく、地盤沈下で基礎に深刻な問題が生じた場合も、施工上の落ち度が認められれば保証を受けられる可能性があります。

 

中古住宅の場合は新築と同じ法律が適用されないことが多いですが、売買契約書の内容と実際の状態が明らかに違うなどの事情があれば、契約不適合責任を追及できる場合もあるでしょう。ただし、発見から通知までの期限が短いなど制限があるため、不具合を見つけたら速やかに行動するのが大切です。

 

地盤保証制度

地盤保証制度は、新築住宅を建てる際に地盤調査を行い、必要なら地盤改良を実施したうえで、建物に不同沈下が起きないよう保証する仕組みです。不同沈下とは地盤が沈下したことで建物が均等に沈下するのではなく、一方向に斜めに傾くような状態のことをいいます。多くの場合、10年から20年ほどの保証期間が設定されており、期間中に予期せぬ沈下が生じたとき、修繕費用や転居にともなう出費などがカバーされる場合があります。

 

「地盤保証制度に加入するかどうか」は、施工会社やハウスメーカーとの相談次第ですが、安心して暮らすためにはかなり重要なポイントです。将来の家の価値を守る意味でも、事前に保証の範囲や条件をしっかり確認しておくといいでしょう。

 

近隣工事の影響による損害賠償責任

自宅周辺で行われた大規模な建設工事や道路工事が原因で地盤が沈下した場合、工事を実施した業者に対して損害賠償を求めることのできる可能性があります。具体的には、振動や深い掘削が地盤へ影響を及ぼし、不同沈下を誘発したと認められれば請求が通ることもあるでしょう。

 

ただし、工事と沈下の因果関係を証明するには専門的な知識が必要になるため、弁護士や建築士のサポートを受けながら進めるのがスムーズです。工事の計画書や近隣住民への事前説明資料など、関連する書類を確保しておくと証拠として役立ちます。

 

地震保険の適用範囲

地震や噴火、津波による地盤沈下が生じた場合は、地震保険が適用される可能性があります。地震保険は火災保険とセットで加入する必要があり、建物の損害度合いに応じて保険金が下りる仕組みです。全損や半損、小半損、一部損などの区分によって支払われる金額が変わります。

 

液状化現象によって地盤が大きく沈んだケースもカバーされることが多く、地震対策としては非常に有用です。ただし、地震以外の原因で起こった沈下は補償対象外になるため、地盤改良や他の補償制度との併用を検討すると安心できるでしょう。

 

地盤沈下で被害を受けた場合の補償請求方法

地盤沈下の被害が発生した際、適切な手順を踏むことで補償を受けられるかどうかが大きく変わってきます。まずは原因を調べるために専門家の調査を依頼し、そのうえで状況に応じた請求を進めましょう。

 

ここでは、請求の流れや示談交渉、訴訟手続きなど、スムーズに補償を得るためのポイントを紹介します。

 

地盤沈下の原因調査

被害発生後は、最初に信頼できる調査会社や建築士に依頼し、地盤状態や建物の損傷箇所を詳しく調べてもらいましょう。地盤そのものが原因なのか、あるいは施工に不備があったのか、近隣工事が関係しているのかなどを明らかにするには、専門的な知識と機材が必要です。

 

原因が特定できないと補償請求が難しくなるため、早い段階で専門家を交えて調査することが大切です。

 

損害賠償請求の手続き

損害賠償を請求すると決めたら、内容証明郵便を使って相手方に被害状況を伝え、修繕費や仮住まい費などを含む補償を求める旨を通知するのが一般的な流れです。契約不適合責任の場合は「不具合を知った時から1年以内に連絡が必要」というように時効が定められているケースもあるので、動き出しが遅れないよう注意しましょう。

 

また、不法行為として賠償を請求する場合は、損害や加害者を知ったときから3年経過すると時効になることが多いため、手続きはなるべく早めに行うのが得策です。

 

業者との交渉・示談

請求先が施工業者や売主の場合、まずは話し合いによる解決を目指す場面が多いです。弁護士を通じて交渉を進めると、法的根拠を示しながらスムーズに示談がまとまる可能性があります。さらに、建築士などの専門家が建物診断書を作成して被害額を算定すると、客観的な根拠を示せるため交渉がしやすくなるでしょう。

 

話し合いがまとまれば、示談書や和解契約書を結ぶことで紛争は解決します。しかし、条件面で折り合いがつかない場合は別の手続きに進まざるを得ないため、やりとりの記録をきちんと残しておくことが重要です。

 

訴訟・調停・あっせん

示談が不成立に終わったときは、最終的に裁判を起こすかどうかを検討することになります。裁判では専門的な知識を要する資料提出や証拠の収集が必要となるため、弁護士の力を借りるのが一般的です。時間と費用はかかりますが、確実に責任の所在を明らかにしたい場合には有効な手段でしょう。

 

また、裁判外で第三者が間に入る調停やあっせんを利用すると、裁判よりも早く解決できる場合があります。お互いの合意を目指す話し合いを重視する方針なら、これらの方法も積極的に検討してみると良いでしょう。

 

保険会社への申請

地震保険や住宅瑕疵担保責任保険などに加入しているときは、保険金請求の手続きを並行して進めましょう。請求には被害の写真や修繕見積書などが必要となり、保険会社が現場調査を行う場合もあります。

 

申請から支払いまでには時間を要することが多いので、見積もりを取ったらなるべく早く保険会社へ連絡するのがおすすめです。契約内容によっては補償の範囲や限度額が異なるため、自分が加入している保険の内容をあらためて確認しておきましょう。

 

地盤沈下で補償されるケースとは

地盤沈下による被害は、原因や建物の状態によって利用できる補償制度が変わります。ここでは、新築・中古の違いや近隣の工事による沈下、地震などの自然災害による沈下など、状況ごとに考えられる補償の違いを見ていきましょう。

 

新築住宅の地盤沈下の場合

新築住宅では、瑕疵担保責任と地盤保証制度が併用される可能性があります。住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)によって、引き渡しから一定期間は基礎や雨水侵入を防ぐ重要な部位に不備があった場合、売主や施工業者が修補責任を負う仕組みが整えられています。

 

加えて、建築前に地盤調査を行い、必要な改良工事を実施していた場合は、地盤保証会社が不同沈下を補償してくれることもあります。両方の補償をうまく活用すると、建物の修繕費や仮住まい費用を軽減できるでしょう。

 

中古住宅の地盤沈下の場合

中古住宅は品確法が適用されないことが多いため、基本的には民法の契約不適合責任が補償の根拠になります。売買契約書の記載とは違う重大な不具合が見つかった場合などは、売主に修補や損害賠償を求めることができる可能性があるでしょう。ただし、中古物件では責任を問える期間が短いこともあるため、契約書の特約や免責事項をよく確認する必要があります。

 

また、不動産会社が仲介した場合であっても、仲介責任が問われるかどうかは契約内容や状況次第です。中古住宅におけるリスクを下げたいなら、購入前に地盤調査を行い、専門家に物件をしっかりチェックしてもらう方法が有効です。

 

近隣の工事が原因で地盤沈下した場合

近隣の工事が自宅の地盤沈下を招いたと思われるときは、工事の施工業者に賠償を求めることができます。ただし、施工と地盤沈下の因果関係をはっきり示す必要があるため、工事の履歴や地盤調査の記録など客観的な資料の収集が欠かせません。

 

さらに、弁護士や建築士に相談して調査報告書をまとめると、交渉の際に根拠を示しやすくなります。早い段階で相手方と話し合いを始め、必要があれば示談や調停、訴訟などへ進むことを検討しましょう。

 

地震による地盤沈下の場合

地震がきっかけの地盤沈下は、地震保険が適用される可能性が高いです。地震保険は単独で加入できず、火災保険とセットで契約する形が一般的なので、すでに火災保険に入っている方は加入状況を一度チェックするとよいでしょう。建物の損害度合いによって支払われる金額が変わるため、専門家の被害認定をもとに保険会社へ請求する流れです。

 

また、液状化現象が発生して大きく地面が沈んだ場合でも、損害の状態によっては保険金が下りることがあります。地震大国といわれる日本だからこそ、地震保険に加入しておくメリットは大きいといえるでしょう。

 

地震以外の自然災害による地盤沈下の場合

地震以外の豪雨や洪水などで地盤が沈下した場合、一般的な火災保険ではカバーされないケースが多いです。ただ、住宅の施工に不備があったり、安全基準を満たす改良工事がされていなかったりするなら、瑕疵担保責任を問える場合があります。

 

また、地盤保証制度を利用していると、地震以外の自然災害による沈下でも保証されることがあります。どこまで補償されるかは契約内容次第なので、事前に保証会社に問い合わせて適用範囲を確認しておくと安心です。

 

まとめ|地盤沈下の補償の種類を把握しておこう

地盤沈下は家の傾きや基礎部分の破損、ライフラインの断絶など、生活全体に影響を及ぼす深刻な問題です。しかし、あらかじめ仕組みを理解して対策を立てておけば、被害を最小限におさえたり、必要な補償をスムーズに受けたりすることができます。新築であれば地盤保証制度や瑕疵担保責任、中古住宅なら契約不適合責任、さらに地震保険や近隣工事の賠償など、状況に応じたいくつかの制度をうまく活用できるでしょう。

 

もし異変を感じたら、まずは専門家に相談し、原因調査や必要な手続きの段取りを早めに進めてください。家の安全性は、日々の健康や暮らしの安心にも直結します。しっかり知識を得たうえで、いざというときに備えておきましょう。

 

また、ウチつくでは注文住宅を建てたいという方に向けて「オンライン相談サービス」を行っております。注文住宅が気になるけれど何から始めればいいのかわからない、自分に合う住宅メーカーの選び方を知りたいという方はお気軽にご相談ください。

 

 

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