外壁タイルのデメリットは?メンテナンス方法や選び方も具体的に解説


外壁タイルはモダンで高級感のあるデザインと耐久性の高さから、注文住宅やリフォームで人気の外壁材です。しかし、工事費用の高さや経年による剥離のリスク、固定資産税への影響など、いくつかの気になる点もあります。

 

この記事では、外壁タイルの基本的な知識から、具体的なメリット・デメリット、適切なメンテナンス方法まで詳しく解説します。また、素材の特徴や選び方のポイントも紹介するため、外壁タイルの採用を検討している方は参考にしてください。

 

 

外壁タイルについて

外壁タイルは、住宅の外観を美しく演出する人気の外壁材です。しかし、施工方法や素地、サイズなどが適切でないと、剥離や浮きなどの深刻な問題につながる可能性があります。

 

外壁タイルのデメリットを理解するには、まず基本的な特徴をしっかりと把握することが大切です。ここでは、外壁タイルの素地やサイズ、施工方法について詳しく解説します。

 

素地

外壁タイルは、素材の特性によって磁器質とせっ器質の2種類に大きく分類されます。石や土を約1,300℃という高温で焼き固めて作られるため、優れた強度と吸水性が低いのが特徴となっています。

 

特に磁器質タイルは吸水率が1%以下と非常に低く、水回りの壁や床に最適な素材として知られています。一方、せっ器質タイルは吸水率が5%以下で、素朴な風合いと独特の味わいを持ち、落ち着いた雰囲気を演出したい場所に適しているでしょう。

 

サイズ

外壁タイルのサイズは、レンガの長手面を基準とした227×60mmの二丁掛タイルが最も標準的です。この他にも、45×45mmの50角タイル、45×95mmの45二丁タイル、そして二丁掛タイルの高さを半分にした227×30mmのボーダータイルなど、用途に応じてさまざまな大きさが存在します。

 

なお、メーカーや商品によって目地幅を含んだサイズ表記をしているケースがあるため、実際の施工時には正確な寸法を確認することが大切です。

 

施工方法

外壁タイルの施工には、伝統的な湿式工法と現代的な乾式工法の2つがあります。湿式工法は、セメントと砂を水で練ったモルタルを使用し、職人が一つずつ丁寧に積み上げていく手法のため、天候に左右されやすく工期が長くなる傾向にあります。

 

一方、乾式工法は接着剤を使用してベース用サイディングにタイルを貼り付ける方法です。そのため、工期が短く、耐震性にも優れています。近年は接着剤の性能が飛躍的に向上したこともあり、多くの現場で乾式工法が採用されています。

 

 

外壁タイルの4つのデメリット

外壁タイルは、高級感のある住宅を実現できる外壁材として人気がありますが、いくつかのデメリットがあります。特に初期費用の高さや固定資産税への影響は、家計に大きな負担となる可能性があります。

 

また、経年劣化による剥離や剥落は、見た目だけではなく安全性にも関わる重要な問題です。ここでは、外壁タイルの4つのデメリットを具体的に解説します。

 

工事費用が高額になりがち

外壁タイル張りの最大のデメリットは、高額な初期費用です。施工が容易なサイディングと比較すると、タイル張りの初期費用はおよそ2倍になります。しかし、耐久性に優れたタイル張りは長期的な視点で見ると、経済的な選択肢です。

 

サイディングは約10年ごとに大規模なメンテナンスが必要で、30年後には全面張り替えも考えられます。一方、タイル張りは耐久性が高くメンテナンス頻度も少ないため、30年を超えて使用する場合、トータルコストではタイル張りの方が経済的と言えます。

 

固定資産税が高くなる

タイル張りの外壁は、高級感と耐久性だけではなく、固定資産税の評価額も高くなる特徴があります。住宅の維持費を計画する際には、固定資産税も考慮に入れる必要があるでしょう。この事実はあまり知られていませんが、長期的な家計への影響を考えると無視できない要素となります。

 

剥離・剥落のリスクがある

外壁タイルの剥離・剥落は、マンションでの事故のニュースなどで耳にすることがありますが、実際にはきわめてまれな現象です。多くの古い物件でも、適切な素材選定と施工が行われていれば、タイルが剥がれ落ちることはほとんどありません。

 

さらに、近年は外壁タイル用の弾性接着剤の性能が飛躍的に向上し、タイル業界では「Q-CAT」という品質認定制度を設けています。この制度により、外装タイルと接着剤の最適な組み合わせが明確になり、より安全性の高い施工が実現できるようになりました。

 

経年劣化を考慮する

外壁タイルは耐久性に優れていますが、いくつかの経年劣化に注意が必要です。代表的なものとして、モルタルやコンクリートの成分が表面に染み出して白く固まる「白華現象」があり、これは無釉タイルで起きやすく、通常2~3年で自然に収まります。

 

また、下地の劣化や施工不良による浮きや剥がれ、ひび割れなどの症状が現れることもあります。これらの補修にはエポキシ樹脂の充填やシーリング材の使用など、症状に応じた適切な対処が必要です。

 

塗装メンテナンスは基本的に不要ですが、クリア塗料による撥水加工やツヤ出しも可能です。劣化が見つかった場合は、建物への影響を防ぐため、早めに点検・補修を実施しましょう。

 

外壁タイルの3つのメリット

外壁タイルには工事費用の高さや剥離のリスクといったデメリットがありますが、それを上回る魅力的な特徴も備えています。特に重厚な高級感は他の外壁材では実現が難しく、資産価値の向上にもつながるでしょう。

 

ここでは、外壁タイルの3つの主なメリットを詳しく解説します。

 

重厚な高級感がある

土と石を高温で焼き上げたタイルは、自然素材ならではの味わい深い表情を持ちます。陶芸品のように、一枚一枚が世界に一つだけの表情を見せ、住まいに重厚な高級感をもたらしてくれるでしょう。

 

近年は、ナチュラルやモダン、和風など、さまざまなテイストに対応できるデザインが豊富に取り揃えられています。長く付き合う住まいの表情を決める大切な外壁材だけに、実物を見て、その質感や色合いを確かめることをおすすめします。

 

耐久性が高い

タイルは、非常に硬い性質を持つため、砂などが風で吹き付けても傷がつきにくいのが特徴です。吸水率が低く、水が染み込みにくいため、凍結と融解による亀裂や破損も防げます。適切な施工が行われていれば、一般的な外壁材のような張り替えや定期的な塗り替えも必要ありません。

 

さらに、紫外線や風雨による劣化も少なく、雨で汚れが流れ落ちやすい特性も備えているため、美しい外観を長期にわたって保てる理想的な外壁材といえるでしょう。

 

メンテナンスにかかる負担を減らせる

外壁タイルは耐久性に優れ、汚れにも強いため、サイディングなどで必要な定期的な塗装メンテナンスが不要です。日常的なお手入れは年1回程度の水洗いで十分で、専門業者による高圧洗浄で美観を保てます。

 

目地部分のシーリング補修など、10年に1度程度のメンテナンスは必要になりますが、その費用は約50万円と、サイディング外壁の塗装メンテナンス費用140万円と比べてかなり抑えられます。トータルコストで考えると、メンテナンス負担の少ない経済的な外壁材と言えるでしょう。

 

外壁タイルの選び方

外壁タイルを採用する際は、デメリットを最小限に抑えるための選び方が重要です。特に素材や風合い、サイズの選択を誤ると、耐久性の低下や予期せぬコスト増加につながる可能性があります。

 

ここでは、外壁タイルを失敗なく選ぶためのポイントを具体的に解説します

 

素材や風合いで選ぶ

外壁タイルは素材の質感や風合いによって空間の印象が大きく変わります。磁器質タイルは表面が滑らかで光沢があり、モダンでスタイリッシュな印象を与えます。一方、せっ器質タイルは自然な色むらと落ち着いた質感が特徴で、温かみのある和風や自然派住宅に調和するでしょう。

 

表面の仕上げも重要な選択ポイントです。つやのある釉薬を施したグロス調は高級感を演出し、マット仕上げは上品で落ち着いた雰囲気を作り出します。また、凹凸のある石目調やレンガ調は、より豊かな表情と立体感を外観にもたらします。

 

家の外観の色合いに合わせる

外壁タイルを選ぶ際は、建物全体の外観デザインとの調和が重要です。屋根材や外壁材、サッシなど他の外装材との色のバランスを考慮しましょう。白やグレーなどのニュートラルカラーは、どんな外観にも馴染みやすく、建物の品格を高めます。アースカラーは落ち着いた雰囲気を、ブルーやグリーンは爽やかな印象を与えます。

 

仕上がりと予算で決める

外壁タイルの工法は、仕上がりと費用に大きく影響します。湿式工法では、職人が下地のモルタルにタイルを一枚一枚丁寧に張り付けるため、目地とタイルが自然になじみ、高級感のある仕上がりになります。

 

一方、乾式工法は窯業系サイディングの上に接着剤でタイルを張り付けるため、均一な仕上がりになりますが、目地が通って見えてしまうでしょう。費用は乾式工法が安価ですが、デザイン性を重視する場合は、数十万円高くなっても湿式工法がおすすめでしょう。

 

サイズで決める

外壁タイルのサイズは多様で、予算や好みに応じて選べます。最近の主流は227mm×60mmの二丁掛タイルで、種類が豊富です。

 

高級感を演出したい場合は、227mm×30mmのボーダータイルやレンガ調のブリックタイルがおすすめですが、1平方メートルあたり12,000円以上と価格は上がります。また、45mm×45mmの50角タイルは、他のタイルとの組み合わせで個性的な表情を作り出せるでしょう。

 

コストとデザインのバランスを考える

外壁タイルを選ぶ際は、コストとデザインのバランスが重要になります。最も経済的なのは、45二丁タイルや50角タイルなどをシート状にまとめたユニットタイルです。

 

一方、平物タイルは長方形や正方形の基本的な形状で、コーナー部分に使用するL字型の役物タイルは平物タイルの1.5倍ほどの価格になります。

 

予算を抑えたい場合は役物タイルの使用を最小限に抑えますが、デザイン性を重視する場合は、壁面のアクセントとして効果的に使用できるでしょう。

 

外壁タイルのメンテナンス方法

外壁タイルの寿命を延ばし、美しさを保つには適切なメンテナンスが欠かせません。基本的な手入れは年1回の水洗いで、柔らかいスポンジやブラシで汚れを落とします。

 

頑固な汚れには高圧洗浄機が効果的です。外壁タイルと下地の接着力は時間とともに低下するため、5~8年ごとに浮き上がりの点検と補修が必要になります。

 

また、タイル同士をつなぐ目地のシーリング材は10年を目安に点検し、劣化している場合は詰め直しを行うことで、タイルの損傷を防ぐことができるでしょう。

 

まとめ|外壁タイルのデメリットを把握して家に合った外壁タイルを選ぼう

この記事では、外壁タイルの基本的な特徴から、メリット・デメリット、選び方のポイントまで詳しく解説しました。外壁タイルには工事費用の高さや固定資産税への影響、剥離のリスクといったデメリットがあります。

 

しかし、重厚な高級感や耐久性の高さ、メンテナンスの負担が少ないといったメリットもあるため、一概に避けるべき外壁材とはいえません。外壁タイルを選ぶ際は、素材や風合い、サイズ、コストなどを総合的に検討し、定期的なメンテナンスを行うことが大切です。

 

自分の家に合った外壁タイルを選び、適切な維持管理を心がけることで、美しい外観を長く保つことができます。

 

 

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