ZEH住宅とは?メリットやデメリットから申請方法までわかりやすく解説
住宅選びにおいて、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)という言葉を目にする機会が増えています。ZEHは環境に配慮しながら、快適な暮らしを実現できる住宅として注目を集めていますが、具体的な特徴や導入のメリット・デメリットがわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、ZEHの基準や種類から、光熱費の削減効果、快適な室内環境の実現、さらには利用できる補助金制度まで、わかりやすく解説します。ZEHについての理解を深め、これから住宅を建てる際の判断材料としてください。
目次
ZEHとは何かをわかりやすく解説
ニュースやSNSで「ZEH」という言葉を見かけるようになりましたが、具体的にどのような住宅なのか、基準や種類については詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。ZEHは省エネと創エネの仕組みを組み合わせることで、年間の消費エネルギーを実質ゼロにする住宅のことを指します。
近年、注目度は急速に高まっており、住宅メーカーもZEH住宅の提案を積極的に行っています。ここでは、ZEHの基準から主な種類、関心が高まっている理由を見ていきましょう。
ZEHの基準
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の認証基準は、年間のエネルギー収支をゼロまたはマイナスにすることを目指す住宅です。主な要件として、外皮の断熱性能(UA値)を地域ごとに定められた基準値以下にすること(例:1・2地域で0.4以下、4〜7地域で0.6以下)、高効率設備の導入によりエネルギー消費量を20%以上削減すること、そして再生可能エネルギー設備の設置が必要です。
これらの対策により、冷暖房・換気・給湯・照明におけるエネルギー消費量を100%以上削減することが求められます。ただし、生活家電のエネルギー消費量は計算の対象外です。全ての基準を満たすことで、ZEHとして認証されます。
ZEHの主な種類
「ZEH」は断熱性能と省エネ機器の導入により20%以上の省エネを実現し、太陽光発電などの創エネを含めた年間のエネルギー収支をゼロ以下にする住宅です。これに対して「Nearly ZEH」は、同じ省エネ性能を持ちながら、創エネを含めた削減率が75~100%となる住宅を指します。都市部の狭小地などに建てられる「ZEH Oriented」は、20%以上の省エネ性能がある住宅です。
さらに、断熱性能を25%以上に高め、HEMSによる制御機能なども備えているのが「ZEH+」です。「次世代ZEH+」と「Nearly ZEH+」は、再生可能エネルギーの自家消費の拡大を目指した高性能なHEMSを導入した住宅となります。
ZEH住宅への関心が高まる理由
近年、ZEH住宅への関心が急速に高まっています。その背景には、深刻化する地球温暖化問題があります。一般的に温室効果ガスの排出は企業活動によるものと思われがちですが、実は住宅でのエネルギー消費も大きな割合を占めているため、住宅分野での対策が重要です。
この状況を受けて日本政府は、2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現することを目標に掲げ、2050年にはカーボンニュートラルの達成を目指すことを表明しました。具体的な支援策として、ZEH住宅の建築に対する補助金制度を設けるなど、積極的な普及促進を行っています。
ZEH住宅の3つの特徴
ZEH住宅の特徴は、通常の住宅と比べてどこが異なるのか気になる方も多いでしょう。ZEH住宅には3つの大きな特徴があり、これらが組み合わさることで高い省エネ性能を実現しています。
ここでは、それぞれの特徴についてわかりやすく説明します。
断熱性能
ZEHの重要な要素である断熱性能は、UA値(外皮平均熱貫流率)という指標で評価されます。これは、住宅の壁や窓などが熱を通しにくい度合いを示すもので、数値が小さいほど断熱性能が高いとされ、ZEHでは0.4~0.6[W/㎡K]以下とすることが基準となっています。
高い断熱性能を実現するためには、高性能な断熱材を壁に使用したり、複層ガラスや断熱サッシを採用したりするなどの工夫が必要です。このような対策により、夏は外からの熱を遮断し、冬は室内の暖かさを逃がさないため、少ないエネルギーで快適な室温を保つことができます。
省エネ設備
ZEHの実現には、高い断熱性能に加えて、省エネ設備の導入が不可欠です。具体的には、エアコンや照明、給湯器、換気システムといった住宅設備において、省エネ性能の高い機器を採用し、エネルギー消費量を20%以上削減する必要があります。
省エネ率は、太陽光発電などの創エネ設備を除いた場合のエネルギー消費量の削減割合を表します。高性能な省エネ設備の導入は、快適な暮らしを維持しながら、エネルギー消費を大幅に抑えられるでしょう。
創エネ設備
ZEHの最大の特徴は、エネルギー消費をゼロまたはマイナスにすることです。そのために欠かせないのが、太陽光発電システムや家庭用燃料電池(エネファーム)などの創エネ設備の導入です。
これらの設備で発電した電力を活用し、消費エネルギー削減率100%以上を達成する必要があります。創エネ設備は家庭のエネルギー収支をプラスにする重要な役割を果たします。
ZEH住宅の4つのメリット
ZEH住宅は環境にやさしいというイメージはありますが、具体的にどんなメリットがあるのかわからない方も多いのではないでしょうか。実は、ZEH住宅には光熱費の大幅な削減から快適な室内環境の実現、さらには災害時の電力確保まで、4つの大きなメリットがあります。
ここでは、ZEH住宅に住むことで得られる具体的なメリットを詳しく解説します。
光熱費を削減できる
ZEHの大きな魅力の一つとして、光熱費の大幅な削減効果が挙げられます。一般社団法人住宅生産団体連合会の試算によると、従来の住宅とZEH基準相当の省エネ住宅では、年間光熱費に大きな差が表れます。たとえば、東京のような温暖地では年間約12万円、札幌のような寒冷地では約18万円もの削減が期待できるでしょう。
高い断熱性能による冷暖房効率の向上と、省エネ設備の導入によるエネルギー消費量の減少、さらに太陽光発電などの創エネ設備による自家発電により光熱費が削減されます。特に創エネ設備で発電した余剰電力は電力会社に売ることができ、場合によっては収支がプラスになることもあるため、家計の負担軽減に大きく貢献します。
室内環境を向上する
ZEHの優れた断熱性能により、夏でも冬でも快適な室温を保つことができます。高気密・高断熱により、リビングと脱衣所の温度差をわずかに抑えられるため、ヒートショックの危険性が大幅に減少します。
また、従来の住宅では冬場に床付近と天井付近で大きな温度差が生じやすいのに対し、ZEHでは室内の上下の温度差を抑制できるのもメリットです。さらに、高気密の設計により壁の表面結露の発生を防ぎ、カビやダニの増殖を抑えることで、子どもや高齢者の健康を守ることができます。
資産価値の維持につながる
BELSは建物の省エネ性能を評価する制度で、ZEHは最高評価の6つ星を獲得できます。この評価により、10年後、20年後の売却時でも高い資産価値を維持することが可能です。
実際に、BELS認証を受けた住宅は、同じ築年数の一般住宅と比べて高い価格で取引される傾向にあります。また、省エネ性能が数値化されているため、中古住宅市場でも買い手にわかりやすく、不動産仲介会社からの評価も高くなります。
災害時に非常用電源を備えられる
ZEHに設置される太陽光発電と蓄電池の組み合わせは、災害時の非常用電源として大きな安心感を生み出します。地震や台風による停電時でも、蓄電池に貯めた電力で冷蔵庫やエアコンなどの重要な家電製品を稼働させることが可能です。
さらに、その電力は電気自動車の充電にも活用でき、万が一の避難時の移動手段も確保できます。日本は自然災害が多い国であるため、このような非常用電源の確保は、災害に強い住まいづくりの重要な要素となっています。
ZEH住宅の4つのデメリット
ZEH住宅は環境性能が高く、光熱費の削減など多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。ここでは、ZEH住宅の4つのデメリットとその対処方法について見ていきましょう。
初期費用の負担がある
ZEH住宅の建設には、通常の住宅と比べて多くの費用がかかります。これは、高性能な断熱材や太陽光発電システム、エネルギー効率の高い給湯器などの設備導入が必要なためです。
光熱費の大幅な削減により、長期的な目で見ると費用が回収できる可能性がありますが、頭金やローンの返済額は増加するため、慎重に予算計画を立てるようにしましょう。
メンテナンス費用がかかる
ZEH住宅では、太陽光発電システムや蓄電池など、高性能な省エネ設備の設置に多額の費用がかかります。各設備を長期間効率よく使うためには、定期的なメンテナンスも必要です。
太陽光パネルの清掃や点検、蓄電池の性能チェックなど、設備の種類に応じた保守管理が欠かせないため、継続的な費用負担があります。
設計の制限がある
ZEH住宅では高い断熱性と太陽光発電パネルの設置が求められるため、設計上の制限が生じることがあります。例えば、気密性を確保するために大きな開口部を設けにくく、窓の数や大きさが制限されるため、開放的な空間づくりが困難です。
また、太陽光パネルを効率よく設置するために、屋根の形状も片流れや切妻などシンプルなデザインに限定される傾向があります。そのため、理想とする間取りやデザインを実現できるかどうか、設計の初期段階でハウスメーカーとしっかり相談することが大切です。
天候の影響を受ける
太陽光発電を導入するZEH住宅では、気象条件が発電効率に大きく影響します。晴天が多く気温が安定している地域では十分な発電量を期待できますが、曇りや雨の多い地域では発電効率が低下するため、光熱費の削減効果が限定的になる可能性があります。
また、近隣に高層ビルや大きな樹木がある場合、パネルに影がかかって発電量が減るため、土地を選ぶ際は日当たりの良さだけではなく、将来的な周辺の開発計画まで確認しましょう。
ZEH住宅で利用できる補助金制度
ZEH住宅は、一般的な住宅と比べて初期費用が高くなる傾向がありますが、実は国や自治体からさまざまな補助金を受けることができます。ここでは、ZEH住宅で利用できる主な補助金制度から、具体的な申請方法まで、わかりやすく解説します。
主な補助金制度
ZEH住宅の建築を支援する主な補助金制度は「ZEH支援事業」「子育てエコホーム支援事業」の2つです。ZEH支援事業は、個人・法人を問わず利用でき、ZEHの種類に応じて55万円か100万円が交付されます。
2024年3月下旬からは、子育て世帯や若者夫婦世帯向けの「子育てエコホーム支援事業」も始まり、ZEH住宅の場合は80万円の補助金を受けられます。ただし、この制度は登録された事業者を通しての申請が必要です。
申請手順
「ZEH支援事業」の補助金申請は先着順で決定されるため、公募開始後の素早い対応が重要です。申請の流れとしては、まずZEH認定ビルダーに相談して住宅の設計を進め、補助金の申請と審査を経て交付が決定されたら着工に入り、完成後は実績報告書を提出して補助金が入金される仕組みとなっています。
申請はSIIが提供する「ZEHポータル」で行う必要があるため、こちらのマニュアルを参考にしてアカウント登録をしましょう。申請の際は、地域の断熱基準や再生可能エネルギーシステムの導入条件など、細かな要件を満たすことが必要です。
申請時の注意事項
ZEH住宅の補助金申請には、いくつかの重要な注意点があります。まず、補助金を利用するためには、制度に登録済みのハウスメーカーを選ぶ必要があるため、契約前に必ず確認することが大切です。
また、補助金の交付申請後は設備や間取りの変更が原則として認められないため、申請前に希望する仕様を細部まで決定しておく必要があります。さらに、複数の補助金制度を利用する場合は、併用できない組み合わせがあることも。、返還を求められるトラブルを避けるためにも、事前に担当窓口で詳しく確認するようにしましょう。
まとめ|ZEHのメリット・デメリットを理解したうえで建築計画を立てよう
この記事では、ZEH住宅の基準や種類から、具体的な特徴、メリット・デメリット、さらには補助金制度まで詳しく解説しました。ZEH住宅は断熱性能や省エネ設備、創エネ設備を備えることで、光熱費の削減や快適な室内環境の実現、さらには災害時の非常用電源としても活用できます。
一方で、初期費用の負担やメンテナンス費用、設計の制限など、デメリットも存在します。しかし、国や自治体が用意する補助金制度を活用することで、費用面での負担を軽減することが可能です。ZEHのメリットとデメリットをしっかりと理解し、補助金制度も活用しながら、環境にやさしく快適な住まいづくりを検討しましょう。
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