水害に強い家が必要な理由は?特徴から具体的な対策まで徹底解説
近年、気候変動の影響で水害のリスクが高まっていると感じている方も多いのではないでしょうか。実際に、日本各地で大規模な浸水被害が発生し、家屋に甚大な被害をもたらしているため、水害に強い家づくりへの関心が高まっています。
この記事では、水害に強い家が必要とされる背景から、その特徴や具体的な対策方法まで詳しく解説します。これらの情報を知ることで、より安全で快適な住まいづくりに役立てることができるでしょう。
目次
なぜ水害に強い家が必要なのか?
近年、気候変動の影響で水害の発生頻度が増加し、その規模も大きくなっています。しかし、多くの方は自宅の水害対策が十分かどうか不安を感じているのではないでしょうか。
ここでは、水害に強い家が必要とされる背景や、水害リスクの現状について詳しく解説します。
水害リスクの現状
国土交通省の「河川事業概要2024」によれば、過去10年間で国内の約98%の市町村が水害や土砂災害を経験しています。気候変動の影響により、今後はより頻繁で激しい降雨が予想されており、40年前と比較して短時間強雨の発生回数が約1.5倍に増加しているのが現状です。
このような傾向から、水害の増加は避けられない状況となっています。そのため「安全」とされる地域であっても油断は禁物で、いつどこで大規模な水災害が起こっても対応できるよう、事前の備えが不可欠となっています。
内水氾濫と外水氾濫
水害は、大雨や台風による多量の降雨が引き起こす災害で、主に内水氾濫と外水氾濫の2種類があります。内水氾濫は、排水能力を超えた雨水が道路や建物に溢れる現象で、標高の低い地域でリスクが高まります。浸水速度は比較的遅く、人命への直接的な危険は低いです。
一方、外水氾濫は河川の増水による氾濫で、一般に「洪水」と呼ばれます。大量の水が一気に流れ込むため、建物の流失や人命に関わる被害につながる可能性があり、非常に危険です。河川周辺地域で特にリスクが高く、迅速な避難が求められます。
水害に強い家の特徴
水害に強い家を建てたいと考えていても、具体的にどのような特徴を持つ家が水害に強いのか、わからない方も多いのではないでしょうか。実は、水害に強い家には、いくつかの共通した特徴があります。
ここでは、かさ上げや高床式住宅、高い塀、防水性能の高い外壁材など、水害に強い家の代表的な特徴を詳しく解説します。
かさ上げ(盛土)
かさ上げ(盛土)は、住宅建設前に敷地を土でかさ上げする水害対策の一つです。この方法により、周囲より高い位置に家を建てることができ、浸水被害のリスクを大幅に軽減できます。さらに、道路からの視線を遮ることでプライバシーも確保できるメリットがあります。
一方で、不適切な施工による土砂崩れのリスクや、建築基準法の高さ制限に抵触する可能性などのデメリットもあるため、土地の事前調査が必要です。
高床式住宅
高床式住宅は、基礎部分を高くすることで水害対策を施す方法です。この方法により、庭が浸水しても住宅内部への浸水を防ぐことができます。また、住宅からの眺めが良くなり、床下空間を物置などに活用できるメリットもあります。
一方で、出入りの際の不便さや、耐震性確保のための追加コストが課題です。さらに、建築基準法の各種制限に抵触したり、隣家の日照に影響を与えたりする可能性もあるため、慎重な計画が必要です。
高い塀
高い防水性の塀で敷地を囲む方法は、水害対策として効果的な選択肢の一つです。この方法では、住宅自体の高さを変えずに浸水を防ぐため、建築基準法の高さ制限に抵触するリスクが低く、隣家の日照問題も回避しやすいメリットがあります。
ただし、塀の高さによっては自宅の日当たりが悪くなる可能性があるため、適切な高さ設定が重要です。
また、この対策の効果を最大限に発揮するには、門を常に閉じておくことと、敷地内の雨水を適切に排水する機能を設けることが不可欠です。
防水性能の高い外壁材
防水性能の高い外壁材を採用することは、水害対策として効果的かつ導入しやすい方法です。この手法では、外壁だけでなく、玄関や掃き出し窓にも防水性の高い素材を使用し、密閉性を向上させることで、家屋内への浸水を防ぐことができます。
盛土や高床のような大規模な工事を必要とせず、日照問題も生じないため、多くの家庭で取り入れやすい対策といえるでしょう。さらに、外壁の劣化も防げるメリットがあります。ただし、大きなヒビ割れには対応できず、耐用年数が比較的短いことから、定期的なメンテナンスが必要となります。
水害に強い家のための最適な土地選び
水害に強い家を建てるためには、適切な土地選びが非常に重要です。しかし、どのような点に注目して土地を選べばよいのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
ここでは、海や河川からの距離、周辺地域との高低差、埋め立て地の確認、ハザードマップの活用など、水害に強い家のための最適な土地選びのポイントを詳しく解説します。これらの情報を参考にすることで、より安全な場所に家を建てる計画ができるでしょう。
海や河川からの距離
水害に強い家を建てる上で、立地選びは非常に重要です。特に海や河川からの距離は、水害リスクに大きく影響します。海岸や河川近くは高潮や氾濫の危険性が高く、長年の水の影響で地盤が脆弱化している可能性もあります。
そのため、可能であれば海や河川から離れた場所を選ぶことが望ましいでしょう。ただし、十分な高さと強度を持つ堤防が整備されている地域では、近隣でも比較的安全な場合があります。
周辺地域との高低差
水害リスクを評価する際、周辺地域との高低差は極めて重要な要素です。水は常に高所から低所へ流れるため、周囲よりも低い土地は水害の被害を受けやすくなります。わずかな高低差であれば、盛土による対策で一定の効果が期待できますが、それでも周辺地域が水没した場合、自宅だけが孤立してしまう危険性があります。
そのため、理想的には周辺と同程度か、やや高めの場所を選ぶことが望ましいでしょう。土地選びの際は、地域の地形図や標高データを詳細に調査し、長期的な安全性を考慮することが大切です。
埋め立て地の確認
埋め立て地は水害リスクが高い地域の一つとして知られています。こうした土地は地盤が緩く、水害時に地盤沈下や液状化現象が起こりやすい傾向があります。そのため、可能であれば埋め立て地以外の場所に住宅を建てることが望ましいでしょう。
土地の成り立ちや潜在的な自然災害リスクを確認するには、国土地理院が提供する「ベクトルタイル「地形分類」」が非常に有用です。このツールを使用することで、埋め立て地かどうかだけでなく、その土地で想定される自然災害についても詳細な情報を得ることができます。
ハザードマップの活用
ハザードマップは、水害対策を考える上で不可欠なツールです。この地図には、予想される自然災害の被災地域や避難場所などの重要な情報が詳細に記載されています。ハザードマップは、自治体の役場窓口で入手できるほか、各自治体のWebサイトや国土交通省・国土地理院が運営する「ハザードマップポータルサイト」でも簡単に閲覧することができます。
住宅建築の候補地を検討する際は、これらのリソースを活用して複数の地点の安全性を比較検討することが重要です。特に、浸水想定区域や土砂災害警戒区域などの情報に注目し、長期的な視点で安全な土地を選ぶことが大切です。
水害に強い家を実現する4つの対策
水害に強い家を実現したいと考えていても、具体的にどのような対策を講じれば良いか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。実は、水害に強い家づくりには、いくつかの効果的な方法があります。
ここでは、浸水防止、建物の耐水性向上、設備配置の工夫、電気系統の対策など、水害に強い家を実現するための4つの具体的な対策を詳しく解説します。
浸水を防ぐ
水害に強い家を作るためには、浸水を防ぐことが極めて重要です。具体的な対策として、床を高くする「高床式」の採用や、建物の1階部分を駐車場やピロティにする工夫、建物の基礎の強化などによって浸水を防ぐことができます。また、排水溝や雨どいの定期的な清掃と点検を行い、適切に機能するよう維持管理することが大切です。
さらに、浸水の危険性が高い地域では、住宅の床下に防水シートを敷設したり、電気設備を高い位置に設置したりすることで、被害を最小限に抑えることが可能となるでしょう。
建物の耐水性を高める
建物の耐水性を高めるには、屋根や外壁の定期的なメンテナンスが欠かせません。例えば、年に1度は屋根の点検を行い、破損やひび割れがないか確認します。雨樋も落ち葉などで詰まりやすいので、季節の変わり目には必ず清掃しましょう。
外壁は5年に一度程度の塗り替えが推奨されており、この際にひび割れなども補修できます。エアコンの配管穴周りは、シーリング材の劣化に注意が必要です。
水害に強い設備配置をする
水害に強い設備配置は、被害を最小限に抑える重要な対策です。具体的には、電気のメーターや分電盤を高い場所に設置することで、停電のリスクを軽減できます。また、エアコンの室外機や給湯器は地上から50cm以上高い場所に取り付けると良いでしょう。
さらに、寝室や貴重品を保管する部屋は2階以上に配置し、1階の床下には防水シートを敷くことで浸水被害を抑えられます。これらの対策を講じることで、水害時の被害を大幅に軽減し、迅速な復旧が可能となるでしょう。
電気系統の水害対策をする
電気系統の水害対策として、1階と2階のブレーカーを分離することは非常に効果的です。具体的には、分電盤内に1階用と2階用の独立したブレーカーを設置し、各階の回路を完全に分離します。
例えば、1階が浸水しても2階の電気は使用可能な状態を維持できるため、冷蔵庫や照明、通信機器などの重要な電化製品を稼働させ続けることができます。また、漏電による火災リスクも低減できるでしょう。
水害被害時に役立つ制度
水害に強い家づくりを目指す一方で、万が一の被害に備えることも重要です。しかし、水害被害時にどのような支援制度があるのか、また保険でどの程度カバーされるのか、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、国の公的支援制度や火災保険の水災補償について詳しく解説します。これらの制度や補償を理解しておくことで、水害に備えた安心感を高め、被害時の経済的負担を軽減することができるでしょう。
国の公的支援制度を活用する
水害などの自然災害で被害を受けた場合、国の公的支援制度を活用することができます。この支援金を受け取ることで、数百万円以上の補助を受けられることがあります。また「災害復興住宅融資」という低金利の融資制度も用意されており、住宅の早期復興を後押ししているため、いざというときのために覚えておきましょう。
火災保険の水災補償を理解する
火災保険の水災補償は、水害による被害から家屋や家財を守る重要な保障です。多くの民間保険会社が提供するこの補償は、一定の条件を満たす被害に対して保険金を支払います。
ただし、家財と建物は別々に扱われるため、契約時には注意が必要です。水害リスクの高い地域にお住まいの方は、家財と建物の両方を補償対象とすることで、より安心できる保障を得られるでしょう。
水害に強い家づくりのためにはハウスメーカー選びが重要
ハウスメーカーの選び方は、水害に強い家づくりの成否を左右する重要な要素です。まず、各ハウスメーカーの水害対策への取り組みを詳細に調査することから始めましょう。Webサイトや資料だけでなく、実際に展示場を訪れて、担当者から具体的な対策技術や実績について説明を受けることが有効です。
また、過去の施工例や顧客の評価を参考にするのも良い方法です。特に、水害の多い地域での建築実績がある場合は、その家の所有者から直接話を聞けると、より実践的な情報が得られます。
ハウスメーカーが提供する保証内容も重要な判断材料となります。水害後の補修や復旧に関する保証が充実しているかどうかは、長期的な安心につながるでしょう。
さらに、ハウスメーカーの財務状況や企業としての安定性も考慮に入れるべきです。水害対策は長期的な視点が必要なため、将来にわたってサポートを受けられる企業であることが大切です。地域の気候変動や災害リスクの変化に応じて、柔軟に対策を更新できる体制を持っているかどうかも確認しましょう。
まとめ|水害に強い家の特徴を理解し必要な対策を立てよう
水害に強い家づくりは、近年の気候変動による水害リスクの高まりを考えると、非常に重要です。この記事では、水害に強い家の必要性や特徴、具体的な対策方法について解説しました。
かさ上げや高床式住宅、高い塀、防水性能の高い外壁材などの特徴を理解し、適切な土地選びを行うことが大切です。また、浸水防止や耐水性の向上、設備の適切な配置など、具体的な対策を講じることで、水害に強い住まいを実現できます。
さらに、水害被害時に役立つ制度や火災保険の水災補償についても理解を深め、適切に活用することが重要です。水害に強い家づくりには、これらの特徴や対策を総合的に考慮し、信頼できるハウスメーカーと協力して計画を立てることが求められます。
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