断熱等級の調べ方とは?概要や高い等級の住宅のメリット・デメリットを解説!
自宅の断熱性能が快適さや節約にどれほど影響するのか、気になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、断熱性能等級の基本から、2025年から義務化される新規格までを解説します。等級の調べ方や、高い等級の住宅がもたらすメリットとデメリットについても紹介します。断熱等性能等級を正しく理解して、快適で健康的な住まいを実現しましょう。
目次
断熱等性能等級とは
断熱等級を理解することは、あなたの家の快適性やエネルギー効率に大きな影響を与えます。ここでは、断熱等級とそれが決まる要素を詳しく解説します。この知識を武器に、住環境を改善し、より快適でエネルギー効率の高い家を実現しましょう。
断熱等級が決まる要素
断熱等級は、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づいて設定された指標です。この指標は、住宅の熱の出入りを二つの観点から評価します。一つは、建物から外部への熱の流出のしやすさ、もう一つは外部からの日射熱の侵入のしやすさです。この基準を用いることで、住宅が外気温の変化にどの程度耐えられるかを判定できます。高い等級を取得した住宅ほど、優れた断熱性能を持つと言えるでしょう。
断熱等級の指標は、UA値とηAC値です。まず、建物が位置する地域の気候特性に基づいて定められた地域区分(1〜8)に応じて、UA値とηAC値それぞれの基準値が設定されています。実際の建物のUA値とηAC値を算出し、これらの値を地域ごとの基準と照らし合わせることで、それぞれの指標について等級が決定されます。
各等級の特徴
UA値は、建物から外部への熱の流出のしやすさを数値化したものです。例えば、東京などの6地域では、最も高い断熱性能を持つ等級7ではUA値が0.26以下となっており、これにより熱損失が大幅に抑えられ、暖冷房に必要なエネルギー消費が概ね40%削減されます。一方、等級1では基準が最も低く、断熱性能が限定的です。これらの等級は、環境への配慮だけではなく、エネルギー効率の向上にもつながり、居住者の快適性を大きく左右します。
これまでの最高水準
断熱等性能等級の導入は、1980年に始まり「省エネ法」に基づく基準で、当初は簡易な等級1と省エネ基準を満たす等級2のみが設定されていました。その後、環境意識の高まりと技術の進歩により、1992年と1999年にそれぞれ等級3と等級4が設けられ、2022年3月まで等級4が最高水準でした。
しかし、気候変動対策としてのさらなる効果を求め、2022年4月に等級5が導入され、その後10月にはさらに高性能な等級6と7が追加されました。これらの新等級は「2050年カーボンニュートラル」目標達成に向けた取り組みで、優れた断熱性能を通じて温室効果ガスの削減が期待されています。
2025年から断熱等性能等級4が義務化される
2025年4月から、日本の建築業界では新たな基準が設けられます。2022年6月に成立した建築物省エネ法の改正により、全ての新築建物に断熱等級4の適用が義務化されるのです。この変更は、以前最高水準だった断熱等級4が、新たな最低限の基準となることを意味します。
この法改正は、エネルギー消費の削減と環境への負担軽減を目指し、より高いエネルギー効率と快適な居住環境を提供することを目的としています。そのため、これから家を建てるまたは購入する際は、少なくとも断熱等級4を満たす住宅を選ぶことが重要であり、将来的な規制に適応することで、長期的なコスト削減にもつながるでしょう。
断熱等性能等級の調べ方
断熱性能の等級を知ることは、住宅選びにおける重要な要素ですが、多くの方にとってはその調べ方がわかりにくいものです。ここでは、どのようにして自宅や検討中の住宅の断熱等級を正確に調べることができるのかを説明します。これらの情報をもとに、あなたが最も快適でエネルギー効率の高い住宅を選ぶ手助けとなるでしょう。
性能評価書を確認する
断熱等性能等級は「設計住宅性能評価書」または「建設住宅性能評価書」で確認することができます。これらの評価書は、住宅性能表示制度に基づき、物件の断熱性能を含むさまざまな建築基準が記載されており、購入者や建築主が具体的な性能データを理解するための重要な書類です。
性能評価書は住宅会社や不動産会社から提供されることが一般的で、購入前にこれらの書類を確認することで、建物の品質と規格遵守の確実性が保証されます。したがって、住宅の購入や建設を検討している際には、これらの評価書を確認し、期待される性能基準に適合しているかを把握することが推奨されます。
築年数から予測する
建物の築年数は、その断熱性能を推測する際の重要な手がかりとなります。2000年4月以降に建てられた住宅では、住宅性能表示制度の導入により断熱等級4が一般的です。また、1992年に等級3が導入されたことから、この年以降の建物では断熱性能が向上していると見られています。
具体的には、2000年以降の建物は等級4、1992年から1999年の間に建てられた建物は等級3、そして1991年以前の建物は等級2以下が目安です。しかし、古い建物であっても、リノベーションにより断熱性能が大幅に向上している場合があります。そのため、実際の断熱性能を確認するには、販売元に直接問い合わせることが最も確実な方法です。
断熱等性能等級が高い住宅のメリット
断熱性能の高い住宅を選ぶことには多くのメリットがありますが、具体的な利点とそれがどのように日常生活に影響を与えるのかを理解するのは容易ではありません。ここでは、断熱等級が高い住宅から得られるメリットに焦点を当て、その理由について解説します。これらの情報をもとに、より良い住環境選びが可能となり、長期優良住宅の認定を受ける道も開かれます。
快適な暮らしができる
断熱等性能等級が向上すると、その住宅の快適性も大きく向上します。等級が高い家では、室内と外気の熱の出入りが格段に減少し、結果としてエアコンの効率が向上します。これにより、夏場は室内が涼しく保たれ、冬場は暖かさが逃げにくくなるため、一年中快適に過ごすことが可能です。
さらに、吹き抜けや高天井のある家では、暖かい空気が室内の上部に溜まりがちですが、高い断熱性能を持つ住宅ではこの暖かい空気を効果的に活用し、室温の均一化が容易になります。
ヒートショックのリスクが減る
ヒートショックは、部屋間の温度差によって血管が急激に収縮し、健康リスクが増す現象です。特に冬場、暖かい居間から寒い廊下や脱衣所に移動するとき、10度以上の温度差があると、このリスクが顕著に高まります。
寒いエリアには暖房器具を設置するなどの対策が求められますが、根本的な解決策としては、断熱等性能等級の高い住宅を選ぶことが有効です。断熱等級が高い住宅では、室内の温度が均一に保たれるため、寒暖差が少なく、ヒートショックのリスクを大幅に減らすことが可能です。
健康に良い影響がある
高断熱化された住宅は、健康面においても多くのメリットがあります。例えば、断熱性が高いと室内の温度が安定し、のどの痛みや手足の冷えなどの寒さに関連する健康問題の軽減です。
また、湿度管理が容易になり、カビやダニの繁殖を抑制し、アレルギーや呼吸器系の問題のリスクを下げます。空気の質も向上し、外部からの汚染物質の侵入が減少します。さらに、安定した室温は睡眠の質を向上させ、健康状態に良い影響があると言えるでしょう。
長期優良住宅の認定を受けられる
2022年10月から、長期優良住宅の認定基準に「断熱等性能等級5以上」が新たに加わりました。この基準を満たすことで認定された住宅は、多岐にわたる金銭的なメリットを受けることができます。例えば、認定を受けた住宅所有者は、住宅ローンの金利優遇を受けることができ、これにより長期にわたる住宅のランニングコストが大幅に軽減されるでしょう。
節電につながる
断熱等級が高い住宅は、外気の温度変化から内部環境を守り、エアコンなどの冷暖房装置の効率を向上させることができます。このため、エアコンの設定温度を低めに設定しても室内は快適に保たれ、結果として電力消費が大幅に削減されます。確かに断熱性能を高める初期費用はかかりますが、長期的には電気代の節約が可能です。
さらに、節電により化石燃料の使用量も減少するため、環境への負荷を低減し、持続可能な住環境の構築に貢献します。このように、断熱性能の向上は個々の家庭の経済的なメリットだけではなく、地球環境への配慮にもつながるでしょう。
断熱等性能等級が高い住宅のデメリット
断熱性能が高い住宅には多くのメリットがありますが、完璧な選択肢ではありません。ここでは、断熱等級が高い住宅がもたらすいくつかのデメリットに焦点を当て、それらが生じる原因と対策について詳しく解説します。これらの問題を理解し、適切に対処することで、長期的に快適で健康的な住環境を実現することが可能です。
建築費用が高くなる
断熱対策を行う際には、精密な設計と高度な施工技術が必要とされるため、通常の建築よりもコストが増加する傾向にあります。特に、断熱等級が高くなるほど、使用する断熱材の質や量が増え、それに伴い材料費も上昇します。これにより、全体的な建築費用が高額になります。
しかし、高断熱の住宅は冷暖房費の削減、さらには補助金や税金の控除などの政策による支援があるため、長期的に見れば金銭的なメリットが大きいと言えます。そのため、建築費用の初期費用だけではなく、将来の光熱費の節約や補助金などを含めたトータルの費用を考慮して断熱対策の導入を検討しましょう。
内部結露が発生する可能性がある
高気密・高断熱の住宅では、断熱材の取り扱いに細心の注意が必要です。これらの住宅では、壁や床、天井の内部で結露が発生するリスクがあり、その主な原因は断熱材の不適切な取り付けです。特に、断熱材を設置する際に発生するわずかなすき間から冷たい外気が侵入し、内部の温かい空気と接触することで水蒸気が凝結し、結露となります。
この状態が続くと、カビの発生や建材の腐食につながる可能性があります。この問題を防ぐためには、断熱材の設置に豊富な経験と専門知識を持つ施工会社に依頼することが最も効果的です。経験豊富な施工会社は、断熱材の隙間を正確に埋める技術を持っており、これによって結露リスクを大幅に減少させることができるでしょう。
断熱等性能等級が高い住宅で寒さを感じる時の対処法
断熱等級が高い住宅は一般的に寒さを感じにくいとされていますが、それでも冷たい空気が感じられる場合があります。ここでは、断熱性が高い住宅で寒さを感じた際の効果的な対処法を詳しく解説し、それぞれの方法がどのように効果を発揮するのかを説明します。これらの対策を適切に実行することで、断熱性能の高い住宅でもさらに快適な室内環境を確保することが可能です。
断熱カーテンを使用する
断熱カーテンを使用することは、家庭のエネルギー効率を向上させる手軽な方法です。これらのカーテンは、特殊な裏地加工によって熱の伝達を抑制し、室内の温度を一定に保つのに役立ちます。夏は外からの熱を遮断し、冬は室内の暖かい空気を逃がさないため、エアコンやヒーターの使用を抑え、エネルギー消費を削減できます。
さらに、断熱カーテンは見た目にも配慮されているため、インテリアの一部としても機能するでしょう。その効果を最大限に活かすためには、窓全体を覆うようにカーテンを設置することが重要です。この小さな工夫だけで、年間を通じて快適な室内環境を維持しつつ、光熱費の節約にもつながります。
断熱ボードを使用する
断熱ボードの利用は、住宅の断熱効果を効率的に高める方法の一つです。これらのボードは、窓のサイズに合わせてカットされ、窓枠に簡単にはめ込むことができます。特に冷暖房の効率を向上させたい場合や、外部からの熱の侵入を防ぎたい時に効果的です。
断熱ボードを設置することで、室内の暖かい空気が外に逃げるのを防ぎ、冷気が内部に入り込むのを最小限に抑えることができます。これにより、エネルギーコストの削減につながり、また、居住空間の快適性が向上します。
隙間テープで空気の出入りを減らす
隙間テープは、家の断熱と気密性を向上させる簡単な方法です。特に窓やドアの周囲にある小さな隙間からの空気の流入や流出は、室内の温度を不快にする原因となります。隙間テープをこれらの部分に適切に貼ることで、空気の漏れを大幅に減らし、冷暖房効率を向上させることができます。
窓の場合は、特にサッシの周辺に、ドアの場合はドア枠と床の接触部にテープを施すのがおすすめです。この手法は、100円ショップなどで容易に入手可能な隙間テープを使用するため、コストを抑えつつも、室内の快適性を一層高めることが可能です。
廊下や脱衣所でも暖房器具を使用する
廊下や脱衣所、トイレのように寒くなりやすい空間には、小型の暖房器具を設置することが有効です。これらの場所では通常の生活空間よりも暖房が行き届きにくいため、専用の暖房器具を使用することで快適な室温を維持できます。
特に、冬場の寒暖差はヒートショックのリスクを高めるため、これらの寒い空間を適切に暖めることが重要です。市場には脱衣所専用の暖房器具が多数あり、省エネタイプや壁掛け式など、さまざまなモデルがあるため、空間の大きさや使用頻度に合わせて選ぶことが可能です。
まとめ|断熱等性能等級を正しく理解して取り入れよう
断熱等性能等級を正しく理解し、それを活用することは、エネルギー効率の高い快適な住環境を実現するために重要です。この記事では、断熱等級がどのように決まるのか、その調べ方、そして高い等級の住宅がもたらすメリットとデメリットを詳しく解説しました。
高い断熱性能を持つ住宅は、快適な室内環境を提供し、ヒートショックのリスクを軽減、さらに健康面でもメリットがあります。一方で、初期費用の増加や内部結露の問題も理解しておくことが大切です。2025年からは断熱等性能等級4が義務化されるため、今後の住宅選びではこれらの情報がより一層重要になります。適切な知識と対策で、より快適でエコな住まいを実現しましょう。
RANKING
ランキング
PICK UP
おすすめ記事