一軒家の相続税はいくらかかるのか?評価方法から具体例まで紹介!


一軒家の相続税に関する疑問と不安を抱えている人も多いでしょう。この記事では、一軒家の相続税の計算方法から具体的な税額まで解説します。家にかかる税額の例を通じて、相続税の実態を明らかにし、共有名義や生前贈与などの注意点も詳しく説明します。

 

 

一軒家の相続税評価額の算出方法

一軒家の相続税評価額を算出することは、相続税額を理解する上で重要です。ここでは、地価や建物の価値など、評価額に影響を与えるさまざまな要素を紹介します。また、税務署の評価方法や市場価格との違いについても解説するため、自宅の評価額を把握できるようになるでしょう。

 

建物の評価額

自宅の相続税評価額を計算する際は、家屋と土地の2つの要素に分けて考える必要があります。家屋の評価はシンプルで、地方自治体から発行される「固定資産税評価証明書」が主な資料となります。

 

この証明書は市役所などで申請して入手可能ですが、4月に配布される「固定資産税納税通知書」でも代用できます。この証明書に記載されている固定資産税評価額に1.0を乗じて計算されるため、「固定資産税評価額=相続税評価額」という等式が成り立ちます。

 

土地の評価額

自宅土地の相続税評価方法には「倍率方式」と「路線価方式」の2種類があり、倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法です。国税庁のWebサイトに「路線価図・評価倍率表」の見方が掲載されているので参考にしてください。

 

倍率方式

国税庁の「路線価図・評価倍率表」により「評価倍率の地域」とされる土地は、倍率方式での評価です。この方法では、土地の固定資産税評価額に、国税庁が定める特定の倍率を乗じて相続税評価額を算出します。

 

この方法の利点は、手持ちの「固定資産税評価証明書」や「固定資産税納税通知書」を使用することで、容易に正確な土地の相続税評価額を算出できる点にあります。これにより、土地の価値を適正に評価し、相続税計算の精度を高めることができるでしょう。

 

路線価方式

国税庁の倍率表で「路線」と記載された地域は、路線価方式によって土地の相続税評価額を算出します。路線価は公道沿いの土地の価値を示し、この価格に土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、土地の面積を乗じて評価額を求めます。

 

例えば、100平方メートルの土地が、路線価が1平方メートルあたり14万円の道路に面している場合、相続税評価額は1,400万円です。

 

しかし、土地の評価はこれだけでは終わりません。角地や不整形の土地、騒音がある環境などは評価額に影響します。税理士などの専門家へ相談することにより、これらの要因を考慮した額への変更が可能な場合があります。相続税が高額に感じられる場合、専門知識を持つ税理士に相談することで、適正な評価額への調整が見込めます。

 

 

一軒家の相続税はいくらかかる?

ここでは、一般的な一軒家の例を用いて、相続税がどのように計算されるのかを具体的に示します。ここでの計算は大まかなものであり、正確な税額を知るには、相続税の税率表や、具体的な控除などの詳細を確認する必要があります。また、税法は変更されることがあるため、最新の情報を確認しましょう。

 

前提条件は以下の通りです。

 

【前提条件】

  • 土地の評価額:3,000万円
  • 家族構成:配偶者・子ども二人
  • 現預金:1,000万円
  • 借入額:なし

 

1,000万円の家

建物が1,000万円の評価の場合は、以下のように税額を算出します。

相続財産の総額の算出

  • 土地の評価額:3,000万円
  • 建物の評価額:1,000万円
  • 現預金:1,000万円
  • 資産合計:3,000万円+1,000万円+1,000万円=5,000万円

 

法定相続人の数に基づく基礎控除の算出

  • 配偶者と子ども二人の場合、法定相続人は3人です。
  • 基礎控除額は「3,000万円 + (法定相続人数 × 600万円)」となります。
  • 基礎控除額:3,000万円+3人×600万円=4,800万円

 

課税対象額の算出

  • 課税対象額は「相続財産の総額 – 基礎控除額」で計算します。
  • 課税対象額:5,000万円−4,800万円=200万円

 

相続税の計算

  • 課税対象額200万円は、1,000万円以下の区分にあたるため、税率10%、控除額はありません。
  • 税額:200万円×10%

 

そのため、建物の評価額が1,000万円の場合の相続税額は20万円となります。

 

2,000万円の家

建物が2,000万円の評価の場合は、以下のように税額を算出します。

 

相続財産の総額の算出

  • 土地の評価額:3,000万円
  • 建物の評価額:2,000万円
  • 現預金:1,000万円
  • 資産合計:3,000万円+2,000万円+1,000万円=6,000万円

 

法定相続人の数に基づく基礎控除の算出

  • 配偶者と子ども二人の場合、法定相続人は3人です。
  • 基礎控除額:3,000万円+3人×600万円=4,800万円

 

課税対象額の算出

  • 課税対象額:6,000万円−4,800万円=1,200万円

 

相続税の計算

  • 課税対象額1,200万円は、1,000万円を超え3,000万円以下の区分にあたるため、税率15%、控除額50万円を適用します。
  • 税額:1,200万円×15%−50万円

 

そのため、建物の評価額が2,000万円の場合の相続税額は130万円となります。

 

3,000万円の家

建物が3,000万円の評価の場合は、以下のように税額を算出します。

 

相続財産の総額の算出

  • 土地の評価額:3,000万円
  • 建物の評価額:3,000万円
  • 現預金:1,000万円
  • 資産合計:3,000万円+3,000万円+1,000万円=7,000万円

 

法定相続人の数に基づく基礎控除の算出

  • 配偶者と子ども二人の場合、法定相続人は3人です。
  • 基礎控除額:3,000万円+3人×600万円=4,800万円

 

課税対象額の算出

  • 課税対象額:7,000万円−4,800万円=2,200万円

 

相続税の計算

  • 課税対象額2,200万円は、3,000万円以下の区分にあたりますので、税率15%、控除額50万円を適用します。
  • 税額:2,200万円×15%−50万円

 

そのため、建物の評価額が3,000万円の場合の相続税額は280万円となります。

 

4,000万円の家

建物が4,000万円の評価の場合は、以下のように税額を算出します。

 

相続財産の総額の算出

  • 土地の評価額:3,000万円
  • 建物の評価額:4,000万円
  • 現預金:1,000万円
  • 資産合計:3,000万円+4,000万円+1,000万円=8,000万円

 

法定相続人の数に基づく基礎控除の算出

  • 配偶者と子ども二人の場合、法定相続人は3人です。
  • 基礎控除額:3,000万円+3人×600万円=4,800万円

 

課税対象額の算出

  • 課税対象額:8,000万円−4,800万円=3,200万円

 

相続税の計算

  • 課税対象額3,200万円は、3,000万円を超え5,000万円以下の区分にあたるため、税率20%、控除額200万円を適用します。
  • 税額:3,200万円×20%−200万円

 

そのため、建物の評価額が4,000万円の場合の相続税額は440万円となります。

 

一軒家を相続する際の5つの注意点

一軒家を相続する際には、税金の計算だけではなく、法的手続きや他の相続人との調整など、多くの注意点があります。ここでは、5つの注意点を掘り下げます。これらの情報を知ることで、相続を円滑に、トラブルなく進めることができるでしょう。

 

共有名義はトラブルになる可能性がある

自宅を複数の親族で「共有で相続」する場合、将来的な問題が発生するリスクがあります。共有名義で相続すると、不動産の売却や処分には全共有名義者の同意が必要となり、意思決定が複雑化するでしょう。

 

さらに、共有名義者の一人が亡くなると、その方の親族が新たな共有名義者になり、名義人が増えていくこともあります。これにより、関係性の薄い親族が不動産に関わるケースも出てきます。

 

そのため、自宅を相続する際には、共有名義を避ける方法が望ましいです。例えば、一人が自宅を単独で相続し、他の相続人には現金や預金を相続させる、あるいは自宅を相続する方が他の相続人に代償金を支払う「代償分割」を行う方法が考えられます。

 

親の認知症に注意

相続の話を親が健在のうちに行うことは、決して不謹慎ではありません。特に、親が認知症などの意思決定に問題を引き起こす状態になる前に相続計画を立てることは、後のトラブルを防ぐために必要です。認知症などの病気を発症すると、その方の法的な意思決定能力が認められなくなることが多く、この状態で行われる法律行為は無効とされることがあります。

 

そのため、親の意思決定能力があるうちに、誰がどの財産を相続するかを決め、公正証書遺言の作成などの準備を進めることが大切です。さらに、相続に関するトラブルを未然に防ぐため、家族信託や民事信託のような手法を利用することも有効な方法の一つです。

 

生前贈与は贈与税がかかる可能性がある

親が健康なうちに生前贈与を行うことは、相続税の節税戦略として有効です。特に、孫への贈与は相続税の節税に効果的で、これは「一代飛ばし」の原則を活用し、孫に直接資産を贈与することで相続税の負担を軽減する手法です。

 

また、現金のような流動性の高い資産を生前贈与することで、親の相続財産総額を減らし、結果として相続税を低減することができます。しかし、注意が必要なのは、特に不動産など高価な資産を贈与する場合、贈与税の負担が大きくなる可能性がある点です。

 

贈与税は贈与された資産の価値に基づいて計算されるため、特に自宅などの高価な資産を生前贈与する際は、多額の贈与税が発生するリスクがあります。そのため、税理士などの専門家と相談し、賢明な贈与計画を立てることが重要です。

 

配偶者居住権の検討をする

2020年4月から施行された「配偶者居住権」は、配偶者に先立たれた方が自宅に住み続けることができる新しい民法上の権利です。この権利は相続財産の一部とみなされ、残された配偶者は建物の所有権を持っていなくても、居住権を取得することで住み続けることができます。この制度を利用することで、居住者が亡くなった後の二次相続において相続税額を大幅に減少させることが可能になり、そのため相続税対策として非常に注目されています。

 

しかし、配偶者居住権はまだ導入されて間もないため、その具体的な運用方法や生じうる問題点については未知数であると言わざるを得ません。そのため、この権利を利用する際には、相続税の専門知識を持つ税理士事務所や会計事務所に相談し、適切な相続税対策を行えるよう注意しましょう。

 

相続税に詳しい税理士を探す

相続税の申告は、税理士に依頼せず自分で行うことも可能ですが、安易に考えてはいけません。確かに税理士への依頼は費用がかかりますが、自己申告で節税を図る場合、相続税の複雑な計算や法律の理解が必要です。

 

一方で、税理士に依頼すると、その専門知識を活用し、結果として税理士費用以上に相続税を節約できることがあります。また、遺産分割に関する専門的なアドバイスも受けられます。ただし、全ての税理士が相続税に精通しているわけではないため、相続税の申告を検討している場合は、特に「相続税に強い税理士」を選ぶことが重要です。

 

専門知識や経験豊富な税理士に依頼することで、適切な申告が行えるだけではなく、相続税の適正な節税も実現可能です。自分で申告する場合と税理士に依頼する場合、それぞれのメリット・デメリットをしっかり比較検討するようにしてください。

 

一軒家を相続する際の支払いまでの流れ

相続税支払いまでの手続きは、初めて経験する方にとっては複雑に感じられます。ここでは、税金申告の準備から税金の納付方法まで、一連の流れを解説します。具体的な流れを把握することで、安心して相続税の支払いを行えるようになるでしょう。

 

死亡届を提出する

遺族が最初に行うべき手続きは、故人の死亡届の提出です。死亡届は故人の死亡を市区町村役所に公式に報告するための書類で、これにより戸籍に死亡の記載がなされます。死亡が発生したことを知った日から7日以内に、故人の本籍地、死亡地、または届出人の住所地の役所に提出する義務があります。死亡届の提出には、医師によって発行される「死亡診断書」や「死体検案書」が必要となり、これらは故人の死亡を医学的に証明する書類です。

 

遺言書を確認する

故人が遺した遺言書の有無を確認する作業は、遺族にとって重要な作業です。故人が誰にも遺言の存在を明かさずに亡くなった場合、遺族は遺言書を探す必要があります。自筆で書かれた遺言書や手紙のような形式のものが家の中に隠されている可能性があるため、家の隅々まで探しましょう。

 

もし家の中で遺言書を見つけられなかった場合、故人が生前に信頼を寄せていた弁護士、司法書士、税理士、信託銀行などの事務所に保管されている可能性も考えられます。そのため、故人の名刺リストや連絡先リストを参考にして、これらの専門家に連絡を取り、遺言書の有無を確認することが重要です。

 

相続人と相続財産を把握する

遺言書の探索を始めると同時に、相続人と相続財産の確認も重要です。相続人を特定するためには、故人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本などを集める必要があります。これらの戸籍には故人の結婚、離婚、子ども、養子縁組、転居履歴などが記録されており、時には予期せぬ相続人が明らかになることもあります。

 

同時に、故人の遺した財産の確認も行います。まずは故人の預金通帳や郵便物から調査をしましょう。預金通帳を確認することで資金の流れが把握でき、財産の概算が確認できます。

 

相続放棄を検討する

相続においては、故人が残した財産だけではなく、借金や負債などのマイナスの財産も相続の対象となるため、相続人は故人の借金や負債を引き継ぐことになります。しかし、相続は強制されるものではなく、相続人には相続放棄という選択肢があります。相続放棄は、受け取る予定の財産と相続税額を慎重に比較検討した上で決めましょう。

 

家庭裁判所における相続放棄を行う事で、負債も資産も一切相続しない選択をすることができます。ただし、相続放棄を行うには、相続の開始を知ってから3か月以内に手続きを行う必要があるため、注意しましょう。

 

準確定申告をする

準確定申告は、故人の生前の収入に対して行われる確定申告で、相続人全員が共同で行います。故人の生前の所得に基づき、税金の納付または還付が発生することがあり、その責任は相続人にあります。相続財産の整理をする過程で、確定申告の必要性が明らかになることもあるでしょう。

 

準確定申告には普通の確定申告と同じように申告期限と納付期限があり、故人の死亡から4ヶ月以内に完了する必要があります。相続人が複数いる場合、代表者を選出して一人が申告を行うか、あるいは相続人各自が申告を行う方法があります。

 

遺産分割協議を行う

遺産分割協議は、故人から遺された財産を相続人同士でどのように分割するか決めるための話し合いです。この過程はスムーズに進むこともあれば、相続人間の意見の違いからトラブルに発展し、決定に時間がかかることもあります。重要なのは、相続人全員の合意がなければ、遺産分割協議は完了しないという点です。

 

特に、相続財産に不動産が複数含まれる場合、相続税の支払額が大きくなる可能性が高まります。そのため、相続が発生した後は早急に税理士に相談し、相続人の数、相続財産の詳細、そして相続税額の試算を依頼することが重要です。相続税額が高額な場合、預貯金だけでは支払いが困難なケースもあり、相続放棄や不動産の売却を検討する必要が出てきます。

 

遺産分割協議書の作成をする

遺産分割協議が成立した後、相続人間の合意内容を正式に記録するために「遺産分割協議書」を作成します。この書類は、どの相続人がどの財産を受け継ぐかを詳細に記載し、相続過程の透明性と正確性を保証するものです。遺産分割協議書は、相続人全員が作成者であるため、すべての関係者の署名と実印の押印が必要です。また、印鑑証明書も添付し、相続人全員が同じ物を1通ずつ所持します。これにより、協議書が全員の合意に基づくものであることが確認されます。

 

相続登記をする

遺産分割の方法が決定した後、次のステップは相続財産を相続人の名義に変更することです。主に不動産、株式、銀行口座などが名義変更の対象となります。不動産の場合、相続人は法務局で「相続登記(名義変更)」の手続きが必要です。

 

株式については、遺産分割協議書を基に名義変更を行い、相続人名義の証券口座を開設してそこに株式を預けます。この手続きは金融機関によって異なるため、必要書類などの確認が必要です。

 

銀行口座の場合、預貯金を相続した方は、遺産分割協議書を持って金融機関へ行き、名義変更や解約払い戻しの手続きを行います。これも金融機関によって必要書類が異なるので、事前の問い合わせが重要です。

 

相続税の支払いをする

相続の全ての手続きが完了した後、最後の手続きとして相続税の申告を行い、相続した財産に対する税額を支払います。この税金は、相続発生から10ヶ月以内の支払いが必要です。これらの手続きは、相続人の中の誰かが行うことも、税理士などの専門家に依頼することも可能ですが、専門家に依頼する場合は別途報酬の支払いが発生します。

 

相続税は原則として現金で一括支払いするため、現金が不足している場合は、支払い期日までに準備を整える必要があります。時には、相続した不動産などの売却を行って税金を支払うケースもあるでしょう。不動産は現金化に時間を要するため、売却が必要な場合は早期に行動を開始することが重要です。売却には通常6ヶ月以上の時間を見積もり、相続税の支払い期日より前に資金化する計画を立てる必要があります。

 

まとめ|一軒家の相続税額を知るために正しい知識を身に付けておこう

一軒家の相続税は、家の評価額と相続人の状況に応じて決まります。相続税の計算には建物と土地の価値が影響し、家の価格帯によって税額が変動します。重要な留意点としては、共有名義のトラブル、親の健康状態、生前贈与の影響、配偶者居住権、そして税理士の選定があります。

 

手続きは死亡届の提出から始まり、遺言の確認、相続人と財産の把握、相続放棄の検討、遺産分割協議、登記、税金の支払いに至ります。相続に関するプロセスを理解し、適切に準備することで、相続税の問題に対応できるでしょう。

 

 

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