長期優良住宅の省エネ基準とは?その他の認定条件についても徹底解説!
長期優良住宅の基準と省エネルギー性能は、住宅の長期的な価値と快適性を高めるための重要な要素です。長期優良住宅の省エネ基準とは何か、どのような認定条件が存在するのか知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、長期優良住宅の基準と省エネルギー性能について徹底的に解説します。この記事を読むことで、長期優良住宅の省エネ基準を正確に理解でき、より良い住宅選びの参考となるでしょう。
長期優良住宅とは
「長期優良住宅」とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」と定められています。ここでは、長期優良住宅の申請方法や対象物、2022年10月の見直しによる変更内容を具体的に解説します。長期優良住宅の基本的な概念を理解できるでしょう。
申請方法
長期優良住宅の認定を受ける工程は、建築及び維持保全計画を策定し、所管行政庁に提出することから始まります。この申請の一環として、登録住宅性能評価機関に対して確認申請を行います。住宅の長期的な使用に耐えうる構造であることを証明することが目的です。
対象物
長期優良住宅の認定対象には、新築や増築・改築、既存の住宅、木造軸組の新築戸建て、共同住宅などが含まれます。長期優良住宅としての認定を受けるためには、住宅の建築及び維持保全計画が以下の5つの要件を満たさなければいけません。
- 長期間にわたり住宅の構造と設備が良好な状態を保つための措置
- 適切な居住面積の確保
- 地域の居住環境に配慮した設計
- 維持保全計画の適切性
- 自然災害に対する防止、軽減措置
これらの要件を全て満たすことで、長期優良住宅としての認定が可能となります。
2022年10月の認定基準見直しによる変更内容
2022年10月に行われた、長期優良住宅の認定基準の見直しによる主な変更点は、災害に対する配慮と省エネ性能の強化です。災害に対する配慮の変更点は、2点あります。災害配慮基準の新設により、自然災害からの被害を防止または軽減する設計が認定基準に追加されました。また、建築行為を伴わない既存住宅の認定制度も新設され、新築基準や増改築基準が適用されるようになりました。
省エネ性能の強化に関する変更点は、2050年のカーボンニュートラルおよび脱炭素社会実現に向けたものです。省エネ性能の上位等級の設定や、省エネ対策の強化が行われました。これには、断熱性能の基準引き上げや一次エネルギー消費量性能の基準追加などが含まれます。より高い環境性能を持つ住宅の認定を促進する措置が取られています。
長期優良住宅と省エネ基準とその他の認定条件
長期優良住宅の認定を受けるためには、厳格な省エネ基準を満たす必要がありますが、それだけではありません。ここでは、省エネ基準の具体的な内容と、構造の安定性や耐震性など、その他の重要な認定条件についても詳細に解説します。省エネ基準やその他の認定条件を理解することで、自宅がどのような評価を受ける可能性があるか把握できるでしょう。
省エネルギー性
2022年10月1日からの長期優良住宅認定制度の省エネ基準改正は、ZEH基準までの大幅な引き上げを意味します。以前の基準では、断熱等性能等級4(6地域でUA≦0.87)のみが要求され、一次エネルギー消費性能に関する明確な基準は設けられていませんでした。しかし、改正により、断熱等性能等級5(6地域でUA≦0.60)と一次エネルギー消費量等級6(BEI≦0.8)の達成が必須となりました。
これは現行の建築物省エネ法で定められた基準よりもはるかに厳格で、実務上、省エネ性能を向上させるために多大な時間と労力を要します。特に、断熱等性能等級5を達成するためには、ダブル断熱のサッシやトリプルガラスへの変更が求められます。また、一次エネルギー消費量等級6の達成には、太陽光発電を含む設備の大幅な変更が必要になり、数百万円単位での費用増加は避けられないでしょう。
耐震性
地震対策として、大きな地震にも耐える構造の住宅を目指すために、改修の容易さと損傷の低減を重視する必要があります。これを実現するためには、以下の3つのうち、いずれかの措置が必要です。
まず1つ目は、「耐震等級3」を達成することです。これには、壁量や壁の配置、床の倍率、接合部の構造、横架材、基礎といったさまざまな要素のチェックが含まれます。次に、大規模地震時における建物の各階の安全限界変形の高さに対する割合を75分の1以下に保つことです。
これらの措置は、地震発生時に建物が受ける損傷の程度を低減し、その後の修復や改修を容易にするための対策です。地震に対する安全性を高めるために重要な要素となります。
維持管理・更新の容易性
住宅の耐久性と機能性を長期間維持するためには、構造躯体よりも耐用年数が短い内装や設備の維持管理が重要です。このためには、清掃や点検、補修、更新が容易に行えるような設計が求められます。具体的には、配管などの設備が構造躯体に影響を与えることなく、維持管理をしやすい配置を考慮する必要があります。
また、将来的な更新や改修作業が必要になった際に、工事の規模を最小限に抑えられるような設計が望ましいです。これには、交換が容易な部品の使用、メンテナンスに便利な配置などが含まれます。これらの措置は、長期的な視点で住宅の機能性と快適性を維持し、住宅所有者の負担を軽減するために欠かせません。
劣化対策
長期にわたって家族が安心して住める家を実現するためには、住宅の構造躯体が数世代に渡って使用可能であることが重要です。そのためには、劣化対策等級3相当の基準を満たすだけではなく、床下や小屋裏に点検口を設置することが必要です。点検口の設置は、住宅の重要な部分へ容易に到達でき、定期的なメンテナンスや必要に応じた修理を行うことを可能にします。
また、床下空間には330ミリメートル以上の有効高を確保することが推奨されます。これにより、配管や配線の点検・修理が行いやすくなり、住宅の健全な状態を維持しやすくなるでしょう。
住戸面積
良好な居住水準を保持するためには、住宅の広さが重要な要素です。具体的には、少なくとも75平方メートル以上の面積が2人世帯にとっての一般的な居住水準を満たすとされています。この基準は、快適で実用的な居住空間を提供するための最低限の要件です。また、住宅のうち少なくとも一つの階の床面積が40平方メートル以上であることも重要です。これは、各階が十分な生活空間を提供するための基準となります。
地域の実情に応じて、この基準の上限や下限を柔軟に調整することが可能です。しかし、どのような状況でも住宅の床面積は55平方メートルを下回らないように設定されています。これにより、住宅が最低限の居住要件を満たしつつ、地域の特性や住宅市場の状況に適応できるようになっています。
居住環境
良好な居住環境の維持と向上は、地域の特性に配慮した景観形成に密接に関連しています。そのため、新しい住宅や建築物は、その地域固有の景観を考慮し、周囲の環境に調和するように設計されなければなりません。これには、建物のデザインや色彩、建築材料、高さ、そして周囲の自然や文化的特徴との一体感などが含まれます。住宅が地域の特色を反映し、その魅力を高めるような設計が求められるのです。
良好な居住環境の維持と向上では、所管行政庁による審査が重要な役割を果たします。審査では、地域ごとに設定された基準に基づき、計画された建築物が地域の居住環境や景観にどのように貢献するかが評価されます。ただし、所管行政庁によって審査基準は異なるため注意しなければいけません。建築計画を進める際には、地域の具体的な要件と規制を理解し、それに沿った設計が不可欠です。
維持保全管理
住宅の建築時に将来を見据えた定期的な点検と補修に関する計画の策定は、住宅の長期的な安全性と機能性を維持する上で重要です。維持保全計画には、以下のような項目が含まれる必要があります。
- 建物の構造耐力上主要な部分
- 雨水の浸入を防止するための部分
- 給水・排水設備
これらの項目は、住宅の健全性を保つために不可欠な要素であり、定期的な検査と適切なメンテナンスが必要です。計画では、これらの重要な部分について少なくとも10年ごとの点検を実施することが求められます。また、自然災害の発生時にも迅速な対応が必要であり、地震や台風の後には臨時の点検を行うことが推奨されます。これにより、住宅がダメージを受けた場合に迅速に対処し、住宅の安全性と快適性を確保できるでしょう。
バリアフリー性
住宅の設計において、将来のバリアフリー改修への対応は重要なポイントです。特に共用住宅やアパートメントのような集合住宅では、共用廊下などの共有スペースに十分なスペースの確保が欠かせません。このスペースは、将来的に住宅を高齢者や身体障害者にとっても利用しやすい環境に改修できるようにするために重要です。
例えば、車いすが通行できる幅広の廊下や、バリアフリー対応のトイレやエレベーターの設置に必要なスペースを、初期設計段階で考慮することが求められます。ただし、このような配慮は集合住宅に限られ、個別の戸建て住宅にはこの要件は適用されません。
集合住宅におけるこのような設計は、長期的に住宅が多様な居住者のニーズに応えられるようにするための重要な準備です。この設計により、住宅の将来価値を高めると同時に、住宅がすべての方にとって快適で安全な場所となります。
可変性
躯体天井高さが2,650mm以上と定められていますが、共同住宅と長屋のみの適用となっています。
長期優良住宅にする4つのメリット
長期優良住宅には、経済的、環境的、生活の質の向上など、多方面にわたるメリットがあります。ここでは、長期優良住宅が提供する4つの主なメリットに焦点を当て、それぞれのメリットを詳しく解説します。長期優良住宅への投資が、将来にどのような利益をもたらすかを理解できるようになるでしょう。
住宅ローン控除の借入限度額額の拡大
長期優良住宅を建てることは、税金や住宅ローン控除といった面で大きなメリットをもたらします。住宅ローンを利用して家を購入した場合、年末のローン残高の0.7%が13年間、所得税と住民税から控除される住宅ローン控除の借入限度額が拡大します。一般住宅の場合、控除対象の限度額は3,000万円で13年間の控除総額が273万円です。長期優良住宅の場合、この限度額が5,000万円に引き上げられ、455万円まで控除可能となります。
長期優良住宅の建築を検討する際には、税制上のメリットを理解した上で、自身の税金負担や住宅ローンの状況を考慮することが重要です。このような税制の恩恵は、長期的な住宅投資において重要な要素となるでしょう。
税制優遇を受けられる
登録免許税においても、一般住宅と比べて長期優良住宅は税率がさらに低くなります。例えば、保存登記で一般住宅は0.15%ですが、長期優良住宅は0.1%です。さらに、不動産取得税では、長期優良住宅の場合、控除額が1,300万円となり、一般住宅の1,200万円よりも高く設定されています。
固定資産税に関しても、長期優良住宅は減税措置の適用期間が延長され、一戸建てで5年間、マンションで7年間となりました。これらの税制上の優遇措置は、長期優良住宅の所有者にとって大きな経済的利点をもたらします。(2023年11月時点)
住宅ローンの金利を下げられる可能性がある
「フラット35」は住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する住宅ローンです。特に良質な住宅に対しては、より低い金利が適用される「フラット35」Sがあります。
長期優良住宅に対しては、特にお得な金利Aプランが用意されています。当初10年間は0.25%の金利が引き下げられるプランです。金利が引き下げられることで、月々の返済額や総返済額が削減されるため、長期優良住宅の選択は大きな経済的メリットをもたらすでしょう。
また、長期優良住宅の所有者は「フラット50」ローンを利用することができます。これは最長50年間の返済期間を提供する住宅ローンで、特に注目すべき点はその柔軟性です。将来、住宅を売却する際には、新しい購入者がこの住宅ローンを引き継ぐことが可能です。売主にとっても購入者にとっても、住宅取引がより円滑に進むことが期待されます。
地震保険料が安くなる可能性がある
長期優良住宅は高い耐震性を有しているため、地震保険においてもメリットがあります。耐震等級に応じて保険料の割引が適用されるため、地震リスクが高い地域においても、保険料の負担を軽減することができるのです。
このように、長期優良住宅を選ぶことは、金融面や保険面での経済的な恩恵を受けることを意味し、長期的な住宅計画において大きな利点をもたらします。
長期優良住宅にする3つのデメリット
どのような選択肢にもメリットと同様にデメリットが存在します。ここでは、長期優良住宅にすることによる3つの主なデメリットを紹介します。認定を受ける手間や高額な建築費、維持管理の必要性について詳しく掘り下げることで、住宅計画や将来の家計計画にどのような影響を与えるのかが明らかになるでしょう。
認定を受けるための手間と費用がかかる
長期優良住宅の認定を受けるには、着工前の申請が必須です。申請には所定の手順があり時間がかかるため、計画段階で十分な時間を確保しなければなりません。申請手続きの際には、建築計画やその他の関連資料を準備し、所管行政庁に提出する必要があります。これらの資料は、住宅が長期優良住宅の基準を満たしていることを証明するために不可欠です。
加えて、申請の際には、所管行政庁や申請の状況によって手数料が発生します。手数料は地域や具体的な申請内容によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。このように、長期優良住宅の申請は計画的に進める必要があり、手続きの時間やコストについても予め検討しておくことが求められます。適切な準備と計画によって、スムーズに認定を受けられるでしょう。
建築費が高額になりやすい
長期優良住宅の認定を受けるためには、一連の厳格な基準を満たさなければいけません。基準には、高い耐震性能の確保、省エネルギー性能の向上、劣化に対する対策などが含まれます。要件を達成するためには、専門的な設計と高品質な建築材料の使用が必要です。
長期優良住宅は、耐久性と環境性能の両方に優れているため、一般住宅と比較して建設費が高額になる傾向にあります。しかし、長期的にはメンテナンスコストの削減や税制上のメリットを享受できる可能性があります。したがって、長期優良住宅の建設費は高いものの、長期的な住宅の品質と快適性を保証する、価値ある投資と考えることができます。
定期的なメンテナンスが必要
長期優良住宅の認定を維持するためには、建物が完成し入居した後も、維持保全計画に基づく定期的な点検とメンテナンスが必要です。維持保全計画では、住宅の維持に必要な期間を30年以上と定め、点検の間隔は10年以内に実施することが規定されています。点検により、住宅の良好な状態を長期的に維持することができます。
維持保全義務の怠慢や改善命令の違反があった場合、長期優良住宅としての認定が取り消される可能性があるため、注意が必要です。認定に伴う補助金や税金の優遇措置を受けていた場合には、返還を求められることもあります。これらの規定は、長期優良住宅の品質を維持し、そのメリットを長期にわたって享受するために重要です。住宅所有者としては、定期点検とメンテナンスを適切に行い、住宅の状態を良好に保つことが求められます。
まとめ|長期優良住宅の省エネ基準を正しく理解しておこう
長期優良住宅の省エネ基準とはエネルギー効率の高い住宅を指し、環境への影響を減らし、将来的なコスト削減にも貢献します。住宅の耐震性や劣化対策、維持管理の容易さなども重要な認定条件です。
また、住宅ローン控除の上限額拡大や税制優遇、金利の可能性、地震保険料の削減などがメリットとして挙げられます。しかし、認定取得のための手間や費用、高額な建築費、定期的なメンテナンスが必要な点も留意しなければいけません。2022年10月の見直しは、これらの基準やメリット・デメリットにも影響を及ぼしています。長期優良住宅の省エネ基準を正しく理解し、賢い住宅選びをすることが重要です。
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