長期優良住宅にして固定資産税が高くなるのは嘘?いくら減額されるのか?


長期優良住宅の魅力について耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

固定資産税が高くなるという噂も聞いたことがある方もいるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか。

 

この記事では、長期優良住宅にすることで固定資産税がどれだけ減額されるのかを詳しく解説します。

 

 

長期優良住宅の固定資産税の減額措置の概要を解説

「長期優良住宅の固定資産税が高くなる」という話を聞いたことのある人もいるかもしれません。ここでは、減額措置の実際のメカニズムと、家計にどのような影響を与えるのかを詳しく解説します。

 

長期優良住宅とは

長期優良住宅は、単に一般的な住宅よりも高い品質を持つだけではなく、国土交通省が設定した特定の認定基準をクリアしている住宅を指します。

 

この認定制度の要件として、まず長期にわたって安心して住める構造や設備を備えていることが挙げられます。また、住む方の生活品質や快適性を向上させるための居住環境への配慮が行われていることも不可欠です。

 

さらに、住宅の建築面積は一定以上である必要があり、維持保全の手段や期間も明確に定義されている必要があります。詳しい基準としては、建物の耐劣化性や耐震性、さらには省エネルギー性などの多岐にわたる条件が含まれているため、事前に確認しておきましょう。

 

これらの条件は、単に表面的なものではなく、具体的な細かな基準に基づいて評価・認定されるものであり、その全てを満たした住宅のみが長期優良住宅として認定されます。

 

長期優良住宅の固定資産税の減額措置とは

現代の日本において、住宅の短命化という課題が浮上してきています。一度建てられた住宅が短期間で取り壊され、新たなものに建て替えられる状況が続いています。

 

これに対応するため、国が推進しているのが長期にわたり利用できる「長期優良住宅」の普及を促進する政策です。この政策の特筆すべき取り組みとして、固定資産税の減税措置があります。

 

新築一般住宅と比較して、長期優良住宅は2年間追加で固定資産税の減税を受けられます。

 

減額措置を適用するための主な要件

長期優良住宅を所有している場合、固定資産税の減税措置を受ける権利が生じますが、この権利を享受するためには特定の要件を満たす必要があります。まず、その住宅が令和6年3月31日以前に新築されたものであることが前提となります。

 

さらに、住宅の延床面積、つまり実際に人が生活するためのスペースが50平方メートル以上で、かつ280平方メートル以下であることも重要な条件の一つです。

 

そして、最も大切なのは「長期優良住宅認定通知書」を手に入れていることです。この通知書は、住宅が長期優良住宅の基準を満たしているという証明となるもので、これを取得していることが減税措置の適用を受けるための絶対条件となります。

 

これらの条件をすべて満たし、最後に該当する住宅の所在地の自治体に対して固定資産税の減税措置の適用を申請する手続きを行うことで、減税の恩恵を受けることができます。

 

長期優良住宅の固定資産税の計算方法

新築の長期優良住宅を手に入れた際、その住宅所有者は固定資産税の特別な減税措置を享受することができます。

 

この減税措置は、住宅の価値を示す「固定資産税評価額」をもとに計算されますが、具体的にはどのように計算されるのでしょうか。

 

長期優良住宅の固定資産税は、次の式に基づいて計算されます。

 

  • 固定資産税課税標準額×税率×1/2

 

ただし、この減税措置は住宅の延床面積が120平方メートルまでの部分にのみ適用されるため、120平方メートルを超える部分の固定資産税は、通常の税率で計算されます。

 

固定資産税課税標準額とは、固定資産税評価額を調整した後の金額のことです。つまり、この課税標準額は、元々の固定資産税評価額とは異なる可能性があるため、固定資産税を計算する際、この点を考慮する必要があります。

 

 

長期優良住宅の固定資産税の節税効果をシミュレーション

長期優良住宅で、固定資産税の軽減がある前提で節税効果のシミュレーションを見てみましょう。新築の長期優良住宅の固定資産税は2分の1が5年間軽減されるという情報を基に進めます。

 

前提条件は以下の通りです。

  • 取得する一戸建ての面積:100平方メートル
  • 建物購入価格:2,000万円
  • 建物評価額:1,000万円(評価率50%)
  • 税率:固定資産税1.4%都市計画税0.3%
  • 固定資産税の評価替えは取得後3年目と仮定
  • 計算は取得から5年間

 

長期優良住宅の場合は、以下のようになります。

  • 固定資産税:1,000万円×1.4%×1/2=7万円
  • 都市計画税:1,000万円×0.3%=3万円
  • 合計:10万円/年
  • 5年間の税額:10万円×5年間=50万円

 

通常の住宅の場合は、以下のようになります。

  • 固定資産税:1,000万円×1.4%×=14万円
  • 都市計画税:1,000万円×0.3%=3万円
  • 合計:15万円/年
  • 5年間の税額:15万円×5年間=75万円

 

以上の計算により、長期優良住宅の節税効果は5年間で約25万円となります。

 

長期優良住宅にする6つのメリット

長期優良住宅を選ぶことのメリットは、ただ固定資産税の減額だけではありません。ここでは、住宅ローン控除の優遇や金利の優遇など、6つの利点を明らかにします。

 

これらの情報があれば、より賢い住宅選びができるでしょう。

 

住宅ローン控除の優遇を受けられる

住宅ローンに関する税制優遇が実施されており、具体的には、13年間の住宅ローン残高の0.7%を年末時点で所得税から控除することが可能です。

 

この控除は、令和4年度の税制改正により、4年間延長され、2025年末までに新居に入居した場合にのみ適用される特例です。

 

さらに、控除の対象となる住宅ローンの金額には上限が設けられており、長期優良住宅の場合は5,000万円、一般の住宅では3,000万円が上限です。

 

この差により、もし上限までのローンを借り入れて10年間で返済する場合、長期優良住宅と一般住宅とでは、最大で約182万円の税制上の差が生じることとなります。このような制度は、住宅購入を検討する際の大きな魅力となるでしょう。

 

税金が優遇される

長期優良住宅の取得者は、複数の税制面での優遇を受けることができます。まず、登録免許税において、長期優良住宅は0.1%の税率が適用されるのに対して、一般住宅では0.15%の税率が適用されます。

 

登録免許税は、住宅取得時の公的手続きの際に必要となる税金であり、この差は購入コストに影響するでしょう。

 

さらに、長期優良住宅の取得者は不動産取得税の優遇も享受することができます。不動産取得税は、住宅や土地などの不動産を取得した際に発生する税金です。

 

長期優良住宅の場合、控除額が一般住宅の1,200万円から、1,300万円へと引き上げられるメリットがあります。そして、これらの税制優遇措置には適用期限が設けられており、令和6年3月31日までに長期優良住宅を新築・取得することで、これらの減税措置を受けることができます。

 

住宅ローンの金利が優遇される可能性がある

長期優良住宅の取得者は、住宅ローンの金利に関する多くの優遇措置を享受することができるのが特徴です。具体的には、人気の高い長期固定金利の住宅ローン「フラット35」を選択する場合、金利がさらに優遇されることが一つの大きなメリットとして挙げられます。

 

さらに、フラット35の加入者が適格となる「フラット35S」の利用を選べば、この金利優遇は一層強化されます。フラット35Sは、特定の期間においてさらに低い金利での借り入れが可能となる制度で、具体的にはAプランでは10年間、Bプランでは5年間の期間で金利が引き下げられるのです。

 

そして、更に柔軟な返済プランを希望する方には「フラット50」という選択肢も存在します。これは、住宅ローンの返済期間を最長50年とし、物件の売却時に次の購入者にローンの引き継ぎが可能です。

 

これにより、購入者の負担を大きく軽減することが期待されるため、長期優良住宅の購入を考える際の大きな魅力と言えるでしょう。

 

地震保険料が優遇される

長期優良住宅の取得は、住宅の安全性と経済性を両立させる大きな魅力を持っています。その最たる例が、地震保険料の大幅な優遇です。

 

長期優良住宅では、地震保険料が10〜50%割引される特典が享受できます。この優遇は、長期優良住宅の認定条件として設けられている耐震性が関連しています。

 

すべての長期優良住宅は、必ず耐震等級2以上の基準をクリアしているため、安全性が高まっていると言えるでしょう。この耐震等級2の基準を満たす住宅では、地震保険料の30%が割引されます。

 

さらに、耐震性がさらに高い耐震等級3の基準を満たす住宅の場合、なんと50%もの割引率が適用されます。耐震等級3は現行の制度での最高等級となっており、これに該当する住宅は最も高い地震に対する安全性を持つと認められています。

 

このように、長期優良住宅の取得は、住宅の安全性と経済的なメリットを手に入れる絶好の機会と言えるでしょう。

 

補助金の対象になることがある

国土交通省の採択を受けた中小工務店で木造の長期優良住宅を建築する際、特定の条件下で経済的なサポートを受けることが可能です。具体的には、地域型住宅グリーン化事業という制度が提供する補助金を活用することができます。

 

この補助金の取得により、住宅建築の負担を大きく軽減することが期待されます。最大の補助金額は、令和5年10月時点で140万円となっており、これは家を建てる際の非常に魅力的なサポートとなるでしょう。

 

さらに、この補助金のメリットは、使用する材料によってさらに増加する可能性があります。具体的には、建築に使用する木材が地域で生産された地域材を使用する場合、追加の補助金を受け取ることができる等が挙げられます。

 

高値で売却できる可能性がある

長期優良住宅は、その名の通り、長く快適に住み続けることができる高品質な住宅を指します。

 

これらの住宅は、国によってその品質が公式に認定されています。このような公的な認定を受けている住宅は、その価値が客観的に保証されていると言えるため、住宅購入者にとっては信頼性が高くなるでしょう。

 

住宅は多くの方にとって、生涯で最も大きな投資となることが多いため、その資産価値は重要です。特に、人生の予期せぬ変化や出来事により、建てた住宅を売却する必要が出てくることも少なくありません。

 

そのような場面で、長期優良住宅の認定を持っていれば、その住宅の高品質を明確にアピールすることができます。このようなアピールポイントは、売却の際に大きなアドバンテージとなり、良好な条件での取引を実現する手助けとなることでしょう。

 

長期優良住宅にする4つのデメリット

しかし、長期優良住宅にはデメリットも存在します。建築費用だけではなく、申請費用の発生や施工期間が長くなるという懸念もあります。

 

ここでは、4つのリスクを解説するため、後悔しない家選びができるでしょう。

 

建築費用が高額になりやすい

長期優良住宅の認定を受けるためには、特定の基準をクリアしなければなりません。基準として設けられている耐震性や居住快適性などを満たすためには、通常の住宅よりも高い建築技術や特別な材料の使用が求められます。

 

具体的には、高品質な材料の使用や特定の建築構造の採用が必要となり、これらの要因から建築コストが高まるリスクがあります。また、高い品質を確保するための工期の延長は、人件費の増加という形でコストアップの原因にもなるでしょう。

 

申請費用が発生する

長期優良住宅の認定を受けるためには、申請が必要です。この申請と審査に関わる費用は、所在地の行政庁によって異なりますが、一般的に5~6万円の範囲となることが多いです。

 

しかし、これだけでは完結せず、実際の申請書類の作成は多くの場合、住宅建設会社や工務店が行います。このサービスに関わる手数料を合わせると、全体のコストは20~30万円程度となることが一般的です。

 

長期優良住宅の認定には税金の控除や住宅ローンの優遇など、多くの経済的メリットが付随します。しかし、年収の状況によっては、これらの税金控除の恩恵を十分に受けることが難しい場合も考えられます。自身の金銭的な状況と諸費用、住宅の付加価値などのバランスをよく吟味して、検討する必要があるでしょう。

 

施工期間が長くなる

長期優良住宅の建築には一般住宅よりも複雑な手続きや注意点が伴います。

 

まず、建築を進める過程で、認定の手続きを同時に行う必要があるため、建築期間が伸びることが予想されます。具体的には、一般住宅と比べて、数週間から数カ月以上の追加の時間が要されるでしょう。

 

さらに、長期優良住宅を建築する際の手続きとして「維持保全計画」の提出が義務付けられています。この計画は、住宅の維持・保全に関する具体的な方針やスケジュールを示したもので、住宅の品質を長期間にわたって維持するための指針です。

 

住宅が完成した後も、この「維持保全計画」に基づいて、定期的な点検や必要な修繕を行うことが求められます。この計画に従わない場合、長期優良住宅としての認定が取り消されるリスクがあるため、持続的な管理が不可欠です。

 

まとめ|節税効果を最大限活用するためにも正しい知識を身に付けておこう

長期優良住宅は高品質な住宅で、税制上の優遇が受けられる特徴があります。固定資産税の減額措置は、一定の基準を満たすことで適用され、節税効果が期待できます。

 

メリットとして挙げられるのは、税金や住宅ローンの金利の優遇、地震保険料の優遇などです。一方、デメリットとして、建築や申請費用の増加、施工期間の長さ、定期的な点検や修繕の必要性が考えられます。

 

長期優良住宅は、初期投資は高くなるものの、長期的な利益を考慮すると魅力的な選択と言えるでしょう。

 

 

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