長期優良住宅制度で建てる前に確認すべきデメリットと注意点


これからマイホームを建てる方の中には、長期優良住宅の認定を受けるべきか迷われている方も多いのではないでしょうか。

 

長期優良住宅とは、長い間快適に住み続けることを可能にする家です。しかし、詳しくわからず自分にとってメリットがあるのかわからないという方もいるかもしれません。

 

認定を受けるためには基準をクリアする必要があります。そのため、建築費用や維持費用が高くなるのではないか、申請方法が難しいのではないかと心配になることもあるはずです。

 

長い期間住むことになるマイホームを建てるなら、長期優良住宅の認定基準やメリット・デメリット、注意点を知っておく必要があります。

 

 

長期優良住宅は長く快適に住み続けることを目指す家

長期優良住宅とは、長い間にわたって快適に住み続けるための措置を講じた高性能の家のことです。長く快適に住み続けるための措置とは、以下です。

 

1. 長期に使用するための構造及び設備を有していること
2. 居住環境等への配慮を行っておこなっていること
3. 一定面積以上の住戸面積を有していること
4. 維持保全の期間、方法を定めていること
5. 自然災害への配慮を行っておこなっていること

 

引用元:一般社団法 住宅性能評価・表示協会

 

認定を受けるには、上記について対処し書類とともに所管行政庁(建築確認申請をおこなう公共団体)に申請します。また、入居後は、維持保全計画に基づく点検が必要です。長期優良住宅は国の審査を通過した、品質と耐久性に優れた住宅と言えます。

 

長期優良住宅への取り組みの背景には、消費高齢化による福祉負担が増えていることや廃棄物問題が深刻化していることがあります。住宅においても、いいものを長く使うというストック型に切り替えることが必要だと考えられ、取り組みがスタートしました。

 

国土交通省のサイトによると、2022年度(令和5年3月末時点)時点で新築の29.3%が認定を受けており、毎年割合が増えています。

 

参考:国土交通省 長期優良住宅の認定状況について(令和5年3月末時点)

 

 

長期優良住宅の認定基準

長期優良住宅の認定を受けるには、2009年から施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」における基準を満たさなければいけません。一戸建て住宅における基準をひとつずつ紹介します。

 

参考:長期優良住宅認定制度の概要について[新築版]

 

劣化対策

建築物の骨組みにあたる「構造躯体」については、住宅を数世代にわたって使えるように対策することが必要とされています。具体的には、劣化対策等級と呼ばれる基準で評価され、最も性能が高い「劣化対策等級3」の基準に適合しなければなりません。

 

また、木造・鉄骨造の場合は、床下空間の有効高さ確保および床下・小屋裏の点検口設置、鉄筋コンクリート造であれば、水セメント比を小さくするか、鉄筋からコンクリート表面までの距離であるかぶり厚さを厚くすることが必要です。

 

耐震性

長期優良住宅では、耐震等級2以上が求められます。耐震性は、地震の揺れに対抗する力を備えているかを示す指標で、地震が発生したときの住宅の安全性を図る基準です。基準として「耐震等級」が用いられます。耐震等級は1〜3の段階が存在し等級が高いほど、より大きな地震に耐えられる住まいということになります。

 

省エネルギー性

省エネルギー性能については以下の基準があります。

 

新築:断熱等性能等級5および一次エネルギー消費量等級6の基準に適合
増築:断熱等性能等級4(既存住宅)の基準に適合、または断熱等性能等級3(既存住宅)、一次エネルギー消費量等級4(既存住宅)の基準に適合

 

省エネルギー性とは、外壁や窓においてできるだけ熱を失わないように設計・施工されているかを示すものです。外壁が厚く窓が二重ガラスになっていれば、冬は家の中の暖かさが逃げず夏は屋外の熱気が伝わりにくくなり、冷暖房効率が良くなります。

 

省エネルギー性を高めることは、電気を使うことで排出される二酸化炭素の量が抑えられ、地球環境の保護にもつながります。

 

維持管理・更新が簡単におこなえるか

耐用年数が短い配管や内装、外装において、日常の点検・清掃・補修といった維持管理が簡単におこなえるための対策も必要です。

 

維持管理・更新が簡単におこなえるかを評価する項目として、「維持管理対策等級」があります。長期優良住宅では、等級3の基準に合わせることが求められます。

 

居住環境

住宅の良好な景観や住居環境の維持や向上について考えられているかどうかも求められます。
長期優良住宅が、将来にわたってまちなみの一部を形づくることを踏まえて、まちなみと調和が図られているかどうかで判断されます。

 

住戸面積

住居の健全性と快適性を保証するために、一定の広さが確保され空間が配置されていることが必要です。

 

長い期間にわたって居住の良好な水準を保つために必要な大きさとして、一戸建ての住宅は床面積の合計が75平方メートル以上、一つの階の床面積は、一定の生活空間を確保できることを目的として40平方メートル以上であることが求められます。

 

維持保全計画

長期優良住宅は、「維持保全計画」が必要不可欠です。定期的に点検し必要な改修や修理をおこなうことにより、住宅の価値を長い間保つことができます。

 

維持保全計画は義務づけられているため、計画にしたがって行われた記録を保管しておくことが必要です。また、認定された住宅の状況については、所管行政庁から報告を求められることがあります。

 

家を長期間使うための定期点検や補修について、以下の3点における計画を立てることが必要です。点検は、30年以上にわたって10年以内に一度の間隔でおこないます。

 

住宅の構造耐力上主要な部分
雨水の浸入を防止する部分
給水又は排水に係る設備

 

災害への対処

長期優良住宅は、自然災害による被害の発生の防止や減らせるように対処する必要があります。

 

災害の危険性が高い地域では、災害の発生状況に応じた対策がされている住宅が認定されます。

 

たとえば、浸水想定区域であれば、所管行政庁の判断で浸水対策の実施が求められるといったことが考えられます。

 

長期優良住宅のメリット

将来にわたり快適な暮らせる

長期優良住宅の第一のメリットは、自分の夢を実現したマイホームで長く快適にそして安全に暮らせることです。

 

劣化対策のほか、地震への対策やエネルギー効率が考えられているため、長く住み続けることができます。

 

国が定めた基準に則って建てられ、家の寿命をなるべく長く維持するために、定期的な点検が義務付けられています。そのため、一般住宅より資産価値を保ちやすいため、将来的に売却予定がある場合にもおすすめです。

 

税の特例措置がある

住宅ローン減税の限度額が大きくなる

長期優良住宅では、住宅ローン減税の借り入れ限度額が、一般住宅より大きくなります。また、控除期間も一般住宅より長くなります。

 

入居年 控除率 控除期間 借り入れ限度額 最大控除額
2023年 一般住宅 0.7% 13年 3,000万円 273万円
長期優良住宅 5,000万円 455万円
2024、2025年 一般住宅 10年 0円※ 140万円
長期優良住宅 13年 4,500万円 410万円

※省エネ基準を満たさない住宅。令和6年以降に新築の建築確認を受けた場合、住宅ローン減税の対象外。(令和5年末までに新築の建築確認を受けた住宅に令和6・7年に入居する場合は、借入限度額2,000万円・控除期間10年間)

 

なお、住宅ローンを組まない場合(自己資金で購入した場合)は、投資型減税を受けることができます。投資型減税は、標準的な性能強化費用相当額の10%が控除され、65万円が最大控除額です。

 

不動産取得税が減税される

長期優良住宅では、一般住宅と比べると不動産を購入したときにかかる不動産取得税の控除額が多くなります。

 

一般住宅では1,200万円までの控除額が長期優良住宅では1,300万円までになります(2024年3月31日までに取得した場合)。不動産取得税は算定式で求めます。

 

不動産取得税額=(固定資産税評価額-1,200万円)×3%

 

控除額が100万円の差があるため、最大3万円(100万円×3%)安くなることになります。

 

登録免許税の税率が0.05%〜0.1%低くなる

長期優良住宅では、登録免許税が低くなります(2024年3月31日までに取得した場合)。登録免許税は、所有権保存登記や所有権移転登記のときに納める税金です。
購入した家や土地の所有は、所有権保存登記や所有権移転登記をおこなうことで公的に認められます。

 

一戸建ての場合 所有権保存登記 所有権移転登記
一般住宅 0.15% 0.3%
長期優良住宅 0.1% 0.2%

固定資産税の減税期間が2年間延長される

土地・家屋といった固定資産を持つと固定資産税を納付しなければなりません。

 

長期優良住宅では、固定資産税が2分の1に減税される期間が、通常より長くなります。一戸建てにおいては通常3年間ですが、長期優良住宅では5年間と、2年間長くなります(2024年3月31日までに取得した場合)。

 

ただし、 1戸あたり120平方メートルまでの部分のみ減額される、住宅面積が50平方メートル以上280平方メートル以下、居住部分の床面積が全体の2分の1以上といった決まりがあるため、細かい点は市町村に確認してください。

 

住宅ローン金利が引下げられる

住宅ローンには、住宅購入をサポートするために、住宅金融支援機構と民間金融機関が提供する「フラット35」があります。

 

長期固定金利の住宅ローン「フラット35」では、性能が高い住宅だと借り入れ金利が下がる「フラット35S」が適用される場合があります。

 

フラット35Sにはフラット35S金利Aプランと金利Bプランあり、金利が低くなる期間が異なります。

 

フラット35S金利Aプラン:当初10年間 年0.25%金利引下げ
フラット35S金利Bプラン:当初5年間 年0.25%金利引下げ

 

また、住宅ローンの返済期間が50年と長いうえに、売却するときローンを引き継ぐことができる「フラット50」を組める場合があります。

 

地震保険料の割引き

長期優良住宅では地震に耐えられる強度が求められ、定められた書類を提出すると耐震性に応じて保険料の割引を受けられます。割引には以下があります。

 

耐震等級割引き:30%〜50%
免震建築物割引き:50%

 

補助金が受けられる

新築の場合は140万円

長期優良住宅を建てるときに、地域型住宅グリーン化事業の採択を受けた中小工務店などが整備すると最大140万円の補助金を受けられます。

 

リフォームでも250万円

長期優良住宅にリフォームする場合でも補助金の対象になります。要件は以下のとおりです。

 

① リフォーム工事前にインスペクションを行うとともに、維持保全計画及びリフォームの履歴を作成すること。
② リフォーム工事後に次の性能基準を満たすこと。
<必須項目>劣化対策、耐震性(新耐震基準適合等)、省エネルギー対策の基準
<任意項目>維持管理・更新の容易性、高齢者等対策(共同住宅)、可変性(共同住宅)
③ 上記②の性能項目のいずれかの性能向上に資するリフォーム工事、三世代同居対応改修工事、
子育て世帯向け改修工事、防災性・レジリエンス性の向上改修工事のうち一つ以上行うこと

 

長期優良住宅で後悔したくないなら知っておくべきデメリット

認定を受けるのに時間と費用がかかる

認定を受けるには定められた手順を踏まなくてはならず、一般住宅を建てるより数週間〜1カ月ほどかかります。

 

また、申請においては手数料が発生します。手数料は地域によって異なります。

 

一般住宅より費用が高くなる

長期優良住宅は高い性能を備える必要があるため、設計や使用する材料、作業員の人件費において、一般住宅より高くなる傾向です。

 

長期優良住宅には税の特例措置はありますが、年収によっては税金控除の効果が大きくないケースも少なくありません。

 

建設費が高くなることを考えると費用面でのメリットが少ないと感じる方もいるかもしれませんが、資産価値が高くなることが大きなメリットです。

 

建てた後も点検と修繕が必要

長期優良住宅は建てて終わりではありません。認定を受け続けるために、計画にしたがって定期的に点検をおこなわなければなりません。

 

点検を怠る、あるいは改善の命令を受けた場合にしたがわないと、認定を取り消され、優遇を受けた税金や補助金を返還しなければならない場合があります。

 

長期優良住宅の申請の流れ

申請手続きは、建築主がおこないますが、住宅建設会社や工務店といった施工事業者が代理でおこなうことが多くなっています。施工事業者が代理でおこなう場合、書類の作成費用や手数料を含めて、10〜30万円ほどかかります。

 

1.登録住宅性能評価機関の審査

長期優良住宅の認定基準に達しているかどうかについて、登録住宅性能評価機関の審査を受けます。登録住宅性能評価機関とは、国から認定された専門機関のことで、住宅の品質や性能を公平に評価します。

 

登録住宅性能評価機関に対して以下のような書類を提出します。

 

確認申請書または設計住宅性能評価申請書
添付図書(設計内容説明書、各種図面、計算書)

 

2.登録住宅性能評価機関から確認書等の交付

登録住宅性能評価機関の技術的審査を通過すると、確認書等(長期使用構造等であることの確認書、確認の結果が示された住宅性能評価書)が交付されます。

 

3.所管行政庁の適合審査

所管行政庁に認定申請書と、確認書や図面といった添付図書を提出し、適合審査を受けます。審査をおこなう所管行政庁は、通常は各都道府県や市区町村の建築課などが担当します。

 

4.認定通知書の交付

審査に通ると認定通知書をもらえます。認定通知書は長期優良住宅であることの証明になります。

 

所管行政庁に、確認書等を交付してから認定通知書をもらえるまでは1〜2週間程度です。

 

参考:一般財団法人 住宅金融普及協会 長期優良住宅業務手続きの流れ

 

長期優良住宅にする際の注意点

工事着手前に申請が必要

建築中の住宅については認定を受けられません。 工事着手前に申請が必要です。

 

なお、認定通知書を受け取る前に工事をスタートさせていた場合、工事の前に申請していれば、工事後でも認定を受けられます。

 

手間と費用も含めて検討

長期優良住宅は、一般住宅とくらべて建築費が高くなり点検にも手間がかかります。また、申請することによって工事開始までに遅れが生じたり、申請をハウスメーカーや工務店に代行してもらうことで代行手数料が発生したりします。

 

一方で、高い耐震性能や省エネ性を備えているため、修理費用が少なく済んだり光熱費が安くなったりすることもあります。

 

後悔することがないように、今後何年家に住むのかといった将来設計をしたうえで検討してください。また、初期費用だけでなく、長い目で見たメリットを考えることをおすすめします。

 

ハウスメーカーや工務店を選ぶときは実績を確認

長期優良住宅を建てる場合にポイントになるのが、ハウスメーカーや工務店選びです。選ぶときには、長期優良住宅をこれまでどのくらい建築しているか、建築実績を確認してください。

 

また、技術力がある住宅会社が安心です。長期優良住宅では、耐震構造や省エネルギー性能への対応といった国の基準に即した住宅を建てる必要があるため、技術力や対応力が求められます。

 

ウチつくでは、家を建てたいと思いはじめた方に、こだわり条件や予算に合わせた住宅会社をご紹介しています。自分にぴったりな住宅会社の選び方がわからない、複数の住宅会社があって悩んでいるといった場合はご相談ください。

 

 

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