長期優良住宅をメンテナンスしないリスクとは?定期点検の必要性・時期・内容
「自宅が長期優良住宅だけど、定期点検や修繕、修理が面倒」や「長期優良住宅の購入を検討しているが、どのような点検や修理が必要なのか気になる」という内容をよく耳にします。
現在、長期優良住宅に住んでいる方や、長期優良住宅に住む予定の方が気になる内容に「定期点検や修繕、修理」があります。
長期優良住宅に住むということは、普通の住宅では必要ない点検の報告や義務が生じるということ、義務を怠るとうまれる危険性について把握しておくべきです。
本記事では、長期優良住宅の点検や修繕、修理を怠った場合の危険性や、定期点検・修繕、修理の内容や時期の決め方について紹介していきます。
目次
長期優良住宅の点検・メンテナンスの必要性
長期優良住宅とは
長期優良住宅とは、国が制定した長期優良住宅認定制度の基準を持つ住宅のことです。
認定された家は、耐震性や劣化対策、維持管理や更新のしやすさ、省エネルギー性という項目を満たし、性能を維持し続けることで、家は長く良い状態で住み続けられます。また、認定された家は、税金の優遇や住宅ローンの金利が引き下げられるといった優遇が受けられ、優遇条件を受けるためには、家を建てる前に行政に申請して認定を受ける必要があります。
長期優良住宅は維持保全計画書通りの定期点検が必要(義務)である
長期優良住宅の認定を受けた家には、特定の点検や修繕をおこなう必要があります。初めての点検は家ができてから10年以内におこなう必要があります。
最低でも10年に1度の頻度で調査をおこなうことが義務付けられており、大地震や台風などの大きな自然災害があった場合は、迅速に点検をおこなわなければなりません。また、点検した結果をもとに、家の補強や修理が必要な場合は対策を実施する必要があります。
対策実施後、記録はすべて保管し、必要に応じて都道府県や市区町村に提出することを求められます。間違った報告をしたり、報告を怠ったりすると罰金が科されることもあります。
長期優良住宅を点検・メンテナンスしないと生じるリスク
都道府県や市区町村から改善が求められる
定期的な点検や修理を怠ったり、必要な記録がなければ、長期優良住宅の認定が取り消される危険性があります。都道府県や市区町村は、長期優良住宅として認定された家に安心して住むために、確認をおこなうことがあり、事前に定期的な点検や修繕を怠っていないか、確認を求められることがあります。
長期優良住宅の認定が取り消される
長期優良住宅の認定が取り消されると、経済的な損失だけでなく、住みやすさも失います。計画通りに維持管理をおこない、安心して長く住み続けるためにも定期的な点検と修理は欠かせません。
長期優良住宅は、計画通りに点検や修理をおこなわなかった場合、住宅の品質が落ちます。所管の行政庁が改善を命じる内容に従わなかった場合、長期優良住宅としての認定が取り消される恐れがあります。
認定が取り消された場合、住宅ローン減税や補助金など、認定が条件となる特典を受けていた場合、返還を求められることもあります。
補助金を利用していた場合は返金を求められる
補助金は、国や地方自治体が長期優良住宅の家を建てたい人を支援するために施行されています。補助金にはいくつかのルールがあり、守らなければ返金を求められます。具体的には、補助金を使った目的と異なる用途で使用したり、不正に申請した場合が該当します。
嘘の申請をして補助金を得たと発覚した場合、法律により処罰される場合もあります。
長期優良住宅の補助金を受けて、点検や修理をせずに住宅の状態が悪化した場合、提供された補助金を返還する義務が生じます。また、義務に違反すると、一定の罰則が適用されます。
報告を怠ったりウソの報告をしたりすると30万円以下の罰金が課される
長期優良住宅としての認定を維持するためには、点検や修理の記録を提出することが義務付けられており、役所からの点検記録や補修記録の提出を求められたときに、報告を怠ったりウソの報告をした場合、最大で30万円以下の罰金が科され、長期優良住宅としての認定が取り消される場合があります。
認定が取り消されると、補助金などの優遇措置の返還を求められるため、財政的な負担だけでなく、住宅としての価値も失います。
購入前に確認するべき長期優良住宅の注意点
決められたスケジュールで住宅の定期点検が必要である
住む家をいつまでも安全で快適に保つため、定期的に家の状態を確認し、必要な修繕や修理をおこなうことが大切です。特に、長期優良住宅では、最長でも10年に1回、30年以上の間に最低でも3回の点検が義務付けられています。
点検をおこなうことで、家の劣化を早期に発見でき、対策を講じることができるため、家が長持ちし、良い住み心地が長く続きます。
点検期間や修繕内容などは維持保全計画書に基づき、専門の建築業者に依頼することが多いです。点検は売主や工務店、点検業者がおこなうため、家の修理の知識が豊富でない方も安心しておこなえます。
定期点検・メンテナンスの記録を保管しないといけない
地域の行政機関が記録の提出を求めてくるため、定期点検や修繕、修理の内容は記録し保管しておきましょう。
具体的には、維持保全計画に基づいて定期点検をおこなう必要があり、修繕や交換が必要な部分について、いつ必要なのか、何を交換し修理や修繕をおこなったのか、詳細が綴られた記録を大切に保管しなければいけません。
定期点検・メンテナンスのに費用は自費負担である
長期優良住宅を建てる場合、頭金や住宅ローン以外にも、定期的な点検や修理の費用を把握したうえで資金計画を立てておく必要があります。住宅は時間と共に劣化するため、寿命を延ばすためには定期的な点検や修理をおこなう必要があります。
費用は自己負担となる場合が多く、具体的には、壁の補修費用、設備の点検費用、配管の清掃費用などが含まれます。また、住宅が特別な構造や素材でできている場合は、知識を持った業者に依頼する必要があり、依頼費用も確認しておく必要があります。
長期優良住宅に必要な定期点検・メンテナンスの内容
屋外部分
【点検箇所】基礎部分、外壁、屋根、雨どい、軒裏、バルコニー等
基礎部分、外壁、屋根、雨どい、軒裏、バルコニー等は定期的に確認し、問題箇所がないか見極めることで、予期せぬ問題を避け、生活品質を維持することができます。また、長い目で見れば修繕費用の節約にもつながるので、住宅の長寿命化を実現するためには必須の作業です。
基礎部分は、土壌の変化や湿気の影響で傷みやすく、外壁も風雨や日光により劣化が進みやすい部分です。また、屋根や雨どいは雨や雪の影響を直接受け、さらには蔚成などによる損傷も考えられます。軒裏やバルコニーは、建物の強度や耐久性に影響を与えます。
【点検内容】ひび割れや歪み、腐朽や雨漏りがないかなどをチェックする
屋外部分の点検や修理は、大事な役割を果たします。主な確認内容は、ひび割れや歪み、腐朽や雨漏りの有無です。いずれも住宅の構造を脅かす危険性があるので見逃せません。悪化する前に修理や補修をおこなうことで、家全体の寿命を延ばすことができます。
定期的な点検は、住んでいる地域の気候や住宅の状態によって頻度を調整し、建築士や建築設計士に依頼するのがおすすめです。
く体部分
【点検箇所】床組、室内側の壁、柱、梁、天井、屋根等
住宅の主な構造部分は、住宅の安全性と快適性を保つために必要不可欠な部分で、問題が放置されると、住宅の寿命が短くなり住みづらさが増します。
床組は劣化や傷みを発見しやすく、見つけた場合は、迅速に修理しましょう。
【点検内容】雨漏りや蟻害、サビや腐朽がないかなどをチェックする
屋根から雨漏りや蟻害、サビや腐朽がないかなどをチェックしましょう。屋根からの雨漏りは小さな穴からでも始まり、見逃すと木材などが腐食してしまいます。
蟻害は蟻によって木材が食べられ、家の強度を弱めます。サビや腐朽も金属や木材の強度を奪い、家全体の耐久性を落とします。
屋内部分
【点検箇所】床仕上げ、壁仕上げ、天井仕上げ等
床は日々の生活で直接使用するため、傷や凹み、色褪せなどがないか確認が必要です。壁や天井の点検では、経年劣化による色あせや汚れ、補修が必要な亀裂などがないか、壁紙のはがれを確認します。
【点検内容】凹凸や反り、きしみや割れ、カビや変色、はがれがないか等をチェックする
壁や床、天井などに凹凸が生じていないか、扉や窓に反りやきしみが出ていないか、割れや裂け目が見られないかなどを確認します。
特に湿度の高い浴室や洗面所などではカビや変色が起きやすいため、注意が必要です。
建具
【点検箇所】建物内部の建具、雨戸、網戸、窓枠、戸袋等
建具は、点検を怠ると腐食したり、劣化してしまう場合があります。建具部分を正しく保つことで、家全体の耐久性が保持され、住み心地が良くなります。
雨戸や網戸は、外からの風や雨を防ぐ大切な部分なので、壊れていないか、サビていないかを見ることが大事です。窓枠は、窓ガラスと一緒に外部から守る役割を果たすので、痛みがないか見つつ、すべての窓や戸袋が引っ掛かりなく開閉するか破損がないかを確認します。
【点検内容】開閉不良や隙間がないか、腐朽や建付不良がないか等をチェックする
開閉不良や隙間がないか、腐朽や建付不良がないか等をチェックしましょう。ドアや窓がうまく開閉しない場合、問題が発生しています。隙間がある場合、雨水や害虫が侵入することがあります。
設備
【点検箇所】電気設備、換気設備、給水管、排水管、ガス管、キッチン設備や洗面設備、浴室やトイレ等
長期優良住宅の点検や修理で、電気設備の点検は電気の使用状況や安全性を確保するために大切です。換気設備は、住まいの空気をきれいに保つために必要で、給水管や排水管は水道の使い方や水漏れの有無を確認します。
ガス管の検査は、ガスの漏れを防ぎ、キッチン設備や洗面設備、浴室やトイレ等の日常的に使う場所は、使い勝手の良さや清潔さを維持するためにも定期的な点検が必要です。
【点検内容】水漏れやガス漏れ、器具の異常や作動不良がないか等をチェックする
安全な暮らしを守るために、水漏れやガス漏れの有無といった確認が必要です。たとえば、キッチンのガス器具や浴室の水栓を確認し、異常がないか目視で点検します。
また、水道管やガス管などの設備は、見えない部分にあるため、特に注意が必要です。作動不良の兆候が見つかった場合は、地元の水道事業者またはガス会社などに早めに相談しましょう。
長期優良住宅に必要な定期点検・メンテナンスのスケジュール
定期点検は少なくとも10年ごとに30年間必要である
長期優良住宅の定期点検は、住宅の問題点を早めに発見し、対処するための大事な役割を果たします。具体的には、建築後初めて10年以内に初期の点検をおこない、その後も最低10年ごとに点検をし続ける必要があります。
定期的な点検だけでなく、大地震や台風などの大規模な自然災害が発生した場合は、臨時の点検が必要です。建築後30年間で最低3回の定期点検が規定されていますが、実際には数倍の回数で点検を実施することも珍しくありません。
台風や地震が起きれば臨時点検が必要である
台風や地震が発生した場合、定期点検のスケジュールを優先して臨時の点検を実施しなくてはいけません。自然災害は、屋根や壁などの家の構造に損傷を与えることがあり、特に、強風による屋根の破損や地震による家の揺れが激しい場合は、迅速に点検員を呼び、点検後の対策を考える必要があります。
定期点検の結果によってメンテナンス(調査・修繕・補修)が必要である
家は日々の使用によって、自然と劣化していきます。定期的な点検をおこない、結果に基づいて修繕や補修をおこなうことで、住宅の性能を維持し快適に生活できます。
定期点検の日程を確認し、必要な点検や修理がおこなわれているか詳細に確認することが大切です。
また、点検や修繕、補修の結果は記録として保管しておきましょう。
住宅の劣化状況に応じて、維持保全計画の見直しが必要である
長期優良住宅で暮らしていくためには、住宅の劣化状況を見ながら定期的に家を確認し、維持保全計画を見直すことが大切です。気候条件、使用頻度、材料の経年劣化などを把握したうえで確認しましょう。
劣化が進行すると、修理や補修がより高額になります。定期的な点検と保守によって、費用を抑えるための予防的な措置は、後で大規模な修復が必要になることを防ぐのに役立ちます。
長期優良住宅の定期点検の方法
家の持ち主が自分で点検する
家の検査は、建築士に依頼することが主ですが、家の持ち主自身が点検をおこなうこともできます。
床下や屋根裏の確認できない場所の状態を調査するのは知識がなければむずかしく、記録を取るのも手間がかかります。
自分でおこなう場合の定期点検方法について紹介します。
屋根の点検 | 屋根の表面を視覚的に確認 破損、ひび割れ、外れた瓦など 雨どいや雨樋の詰まりや損傷を確認 |
外壁の点検 | 外壁に亀裂、剥離、劣化した塗装など シーリング材の状態を確認 |
窓とドアの点検 | 窓とドアのシールやガラスに損傷がないか確認 ドアと窓が正しく閉まることを確認 |
基礎の点検 | 基礎に亀裂や浸透した水の兆候がないかを確認 |
内部の点検 | 壁や天井に亀裂や漏れ、湿気の兆候を確認 配管や配線の問題がないかを確認 |
空調と暖房システムの点検 | 空調や暖房システムのフィルターを定期的に交換 システムの不具合や異常な音を確認 |
防火設備の点検 | 煙感知器と火災報知器のテスト 消火器の有効期限を確認 |
温水器とガス管の点検 | 温水器やガス管に漏れがないかや不具合を確認 |
家を建てたハウスメーカーや工務店が点検する
自宅を建てた会社に依頼すると、新築当初の施工内容や住宅の構造を熟知しているため、はじめての点検はお願いしましょう。点検内容によっては自社の施工不良を見つけにくいという弱点もあるため、大きな不具合が発生した場合は第三者の建築業者に再度点検してもらうことがおすすめです。
第三者の建築士などに点検を頼む
建築知識豊富な建築士やホームインスペクション業者などの第三者に、定期的な点検を依頼することもおすすめです。建築士やホームインスペクション業者は、不動産取引において大切な役割を果たすプロの業者で、住宅の状態や潜在的な問題の深い知識と経験を持っています。
RANKING
ランキング
PICK UP
おすすめ記事