工務店倒産の原因・倒産件数・起こりうるリスク・事例・対処法


工務店に住宅の建築を依頼しようと考えている方のなかには、「工務店に注文住宅を依頼したら完成前に倒産した」などの口コミを見て不安になっている方もいるのではないでしょうか。工務店の倒産件数は減少傾向にありますが、工務店の倒産の可能性はゼロとはいえないため、万が一の事態に備えて知識をつけて対策しておいたほうが安心です。

 

本記事では、工務店が倒産する原因や、倒産による施主への影響、工務店倒産への対処法について解説します。倒産しやすい工務店を選ばないようにするために、ぜひ参考にしてみてください。

 

 

工務店倒産のおもな原因

利益は出ているが手持ち資金が尽きる(黒字倒産)

黒字倒産の原因1.代金回収までに時間がかかるため

代金回収までの間、工務店は工事費や経費を支払いながら運営を続けなくてはならないため、資金繰りに苦戦してしまうことがあります。結果、利益を上げている状態でも、手元に資金がないために経営が成り立たなくなるということがあります。

 

黒字倒産の原因2.住宅の完成までに経費を立て替える必要があるため

立て替えている経費が多いと、利益が出ている工務店でも倒産する危険性があります。工務店が家を建てるときには、工事が終わるまで費用が発生します。しかし、家が完成するまでの間に発生した費用は、工務店が自前で立て替えています。

 

工務店は完成した家を売って初めて費用を回収することができます。しかし、工事の数が増えれば増えるほど、立て替えの費用も増えてしまいます。

 

立て替えの費用が多いと、工務店の負担は大きくなります。たとえ売り上げがあっても、支払いが苦しくなり、最悪の場合、倒産することもあるのです。

 

黒字倒産の原因3.資金繰り計画が甘いため

会社が儲けているにも関わらず、月によっては出ていくお金の方が多くなってしまうといった状況があります。原因は、売上が入るのが遅いのに対して、お金を支払うタイミングが先に来てしまうからです。

 

たとえば、ものづくり関連の業者が多く関わる工務店では、建物を作るための材料や人件費などの経費が発生します。しかし、対価となるお金は建物が完成して初めてもらえるため、資金繰りに苦労するのです。

 

ウッドショック(木材価格の高騰)や増税などの外部環境の変化

高騰する木材価格や増税など、外的要因が工務店の経営に影響を与えて倒産の一因となることがあります。木材の価格が急騰するウッドショックや増税などは、拡大する住宅需要を満たそうとする工務店にとって、経営を圧迫する大きな原因となっています。

 

ウッドショックは、新型コロナウイルスの影響で世界的に変わった状況や、木材輸出国での伐採制限などが絡み合って起こった現象です。また、税金の増加も工務店の経営にとって大きな負担となり、経営破綻に繋がる可能性があります。

 

建設業界の人材不足による後継者難

現在、建設業界では労働者が不足しているという問題があります。理由としては、高齢化による労働力の減少や、若者の建設業界への就職意欲の低下が考えられます。

 

建設業界の労働者不足は、後継者問題や工務店の倒産リスクと直結しているので、人手が足りていなさそうな工務店は注意しましょう。

 

 

工務店倒産によって起こりうるリスクや悪影響

工務店が破産した場合

請負契約解除の場合は破産した工務店または自身で新たな施工業者を見つける必要がある

新築住宅の工事請負契約を解除するときの法的手続きは複雑なので、家を建てている途中で工務店が倒産して工事が中断されることは避けたい事態です。工務店が倒産した場合、施主自身が別の施工業者を見つけ工事を引き継がなければなりません。

 

また、既に施工された箇所の報酬を工務店に支払う義務があります。

 

前払金は返金されるが損害賠償は全額請求できない可能性がある

工務店を選ぶときは工務店の経済的な健全性や継続的な事業運営の可能性もチェックすることが大切です。依頼する工務店が倒産した場合、すべての損害を賠償してもらえない可能性があります。

 

前払金は返金されることが多いものの、追加でかかる費用などすべては補償されないこともあります。なぜなら、工務店が倒産すると、まず法律に従い資産を使って借金を返し、残金で我々の損害賠償が支払われるからです。

 

工務店が民事再生などの再建をした場合でも請負解除となる可能性がある

契約をするときは倒産リスクをカバーする条項や条件が契約に含まれているかなどを確認し、慎重に進めましょう。もし契約した建築会社が倒産し、再建を選択した場合でも施主にはリスクがあります。

 

たとえば工務店と施主の工事請負契約が解除される可能性があります。また、民事再生期間中に、管財人の判断で請負契約が取り消されるケースもあります。

 

また、未完了の工事を引き継いでくれる新しい建築会社を探す必要がでてきます。

 

工務店の倒産件数は150件(2021年データ)

帝国データバンクが発表したデータによると、2021年における木造建築工事業の倒産件数は150件でした。木造建築工事業は工務店などの業者です。

 

倒産理由は新型コロナウイルスの影響や、建築資材の高騰、消費税の増税などの要因が複雑に絡み合ったためです。日本全体の人口や世帯数の減少にあわせて、注文住宅を建築するニーズも年々下がっています。

 

工務店倒産の事例紹介

日天建設:受注不振と資金繰り悪化により倒産

日天建設は新築やリフォームなどの木造住宅を主に取り扱っていました。しかし、工務店の競争激化と資金繰り悪化により事業停止を余儀なくされてしまいました。

 

富士ハウス:不動産バブル崩壊のダメージや業績悪化により倒産

富士ハウスは、不動産バブルの崩壊や業績の悪化により、自己破産申請をすることとなり、多くの住宅購入者が被害を受け、訴訟となる事態に至りました。業績の悪化については、設備への過剰な投資が原因とされています。

 

設備投資が必要なパネル工法を多用していたため、営業範囲を全国に広げる策も功を奏さず、経営の悪化を招く結果となりました。不動産バブルの崩壊による影響や、業績の悪化が富士ハウスに大きな打撃を与えました。

 

アーバンエステート:施工不良や品質不良によって悪評が広まり倒産

アーバンエステートという工務店は施工や品質の問題と厳しい資金繰りの状況から、最終的に倒産しました。

 

倒産するときは約500棟の未完成物件があり、大きな社会問題になりました。多くの人々がアーバンエステートの倒産により大きな痛手を受け、一部の人々は集団訴訟に訴えるほどでした。

 

工務店倒産への対処法

潰れるリスクが高そうな工務店の特徴を押さえておく

不動産の値引額が他社とくらべてあまりにも大きい

他社とくらべて大幅な値引きを提案する工務店には注意しましょう。大幅な値引きは工事品質やサービスに問題がある可能性があります。

 

また、成約価格と物件の品質が釣り合っていなければ、構造的な問題を隠されたり、水漏れ、早々の劣化などの問題が後から発覚する可能性があります。

 

複数の工事が中断している現場がある

工務店が倒産するタイミングとして多くの現場で工事が途中で終わることがあります。工事が止まる理由は、倒産した工務店が資金難に陥るためや、工務店が引き受けていた他の工事の資源が不足するためです。

 

具体的には、倒産した工務店が資金難で材料購入や労働者への給料支払いができず、工事が途中で止まってしまう場合があります。依頼者は新たな工務店を探す必要があったり、契約の解除や新たな工務店との契約手続きも発生します。

 

また、工事が途中で止まってしまうと、建物が風雨に晒され品質劣化の可能性なども考えられます。工務店倒産時、工事が中断してしまわないように、多くの現場で工事が途中で終わってしまっていないかなどの確認をしましょう。

 

評判・口コミが悪い

工務店選びは、口コミを集めることも大切です。なぜなら、評価がや口コミが悪い工務店を選ぶと、工事の品質問題やスケジュールの遅れ、最悪のケースでは工務店が倒産してしまうなどのリスクがあるからです。

 

住宅完成保証制度が適用されるか請負契約時に確認する

工務店が倒産した時に保証会社が前払金や工事費用を保証してくれる制度

安心して工務店と契約するためには住宅完成保証制度の有無を確認することが大切です。

 

なぜなら契約を結んだ工務店が何らかの理由で倒産した場合でも、住宅完成保証制度が保険として機能し、あらかじめ支払っていた金額や未完成な工事に必要な発生費用などが保証されるためです。

 

工務店が倒産した場合は手続きと種類を確認のうえ弁護士に相談する

工務店が倒産したときは、まず手続きと種類を確認のうえ法的支援を求めることが大切です。また、倒産した工務店との契約を正当に終了するための法律的な手続きにも精通している必要があります。

 

弁護士などの専門家は手続きの進め方や注意点を具体的に教えてくれてサポートをしてくれます。

 

 

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