注文住宅の照明の考え方と後悔しないためのポイント


家づくりをするとき、まずは広さや間取り、使用する素材や設備に目がいくものですが、居心地を大きく左右するのが照明です。

 

家を建てたあとに「明るすぎて落ち着かない」「照明の位置を間違えた」といった後悔を口にする人も少なくありません。照明の使い方は、家の居心地に大きく影響を及ぼします。

 

居心地のよい家を造るためには、間取りやインテリアを考えると同時に照明計画を立てなくてはなりません。くつろぎたい部屋、作業する部屋、寝室、部屋の特性や家族の暮らし方に合わせた照明を設置することで生活の質が高まります。

 

本記事では、照明計画の考えかたや選びかた、また、照明選びに失敗しないポイントや照明の費用を抑える方法までお伝えしますので、最後までご覧になってください。

 

 

注文住宅の照明計画の考え方

部屋での過ごし方やインテリアのイメージを確認する

照明計画とは、それぞれの部屋の目的や用途に合わせて照明の明るさや色、光の広がりかたをプランニングすることを言います。家の間取りやデザインが美しくても、部屋の雰囲気に合った照明を使用していなければ台無しと言っても過言ではありません。

 

照明計画は、家族の過ごし方やインテリアをイメージすることから始まり、以下の4点を加味して検討します。

 

リビングは場面によって調光・調色ができるように
子ども部屋・書斎は集中して作業できるように
寝室は明るさを抑えて落ち着きのある雰囲気に
和室はゲストルームにもできるよう部屋全体を照らせるように

 

リビングは場面によって調光・調色ができるように

リビングは家族が集まって日常生活の大部分で使われる場所です。そのため、目的に合わせて調節できるタイプの照明が適しています。

 

たとえば、家族で会話を楽しんだり個々人が本を読んだりする場合は、部屋全体を均一に明るく照らす光量が求められます。また、夜に映画を見たり就寝前のひと時を静かに過ごしたりとゆったり過ごしたいときは、暖色系の光や暗めの光量に切り替えれば心が落ち着きます。

 

子ども部屋・書斎は集中して作業できるように

子どもの部屋の照明は、明るければよいというものではありません。明るすぎる照明は気が散ってしまい集中力の低下を招きます。

 

子ども部屋の照明は、物を見るときに問題ない程度の明るさに抑えて、デスクに手元ライトを設置するとよいです。また、書斎も子ども部屋同様の照明が適しています。具体的には、目が疲れにくい明るすぎない照明や落ち着きを与える暖色系の色合いの照明がおすすめです。

 

寝室は明るさを抑えて落ち着きのある雰囲気に

寝室の照明は穏やかな雰囲気を意識するとよいです。明るすぎる照明は脳が覚醒してしまい、入眠の妨げになってしまいます。暖色系の柔らかな照明が適しています。

 

また、足元から室内全体をやさしく照らすフロアライトやベッド下に設置できるタイプの照明もおすすめです。

 

和室はゲストルームにもできるよう部屋全体を照らせるように

和室は、畳の質感が心地よく家族がくつろげる空間であると同時に、ゲストルームにも使用できる側面もあります。そのため、家族やゲストが心地よく過ごせるよう部屋全体を柔らかい灯りで適度に照らす照明が適しています。

 

また、床の間がある和室の場合は、床の間の置き物や掛け軸にスポットライトを設置することで和の要素が強調され幻想的な雰囲気を演出できます。

 

照明の種類・明るさ・色温度を決める

照明は部屋に合わせて種類や明るさ、色温度を使い分ける必要があります。色温度とは、ケルビンという単位で表され、ケルビンが低いとオレンジがかった温かみのある光になり、ケルビンが高くなるにつれて白っぽく、さらに高くなると青みがかった光になります。

 

照明の特徴を理解して、それぞれの部屋に合わせた照明を選ぶことが大切です。

 

シーリングライトやダウンライトといった種類を選ぶ

シーリングライトは天井に直接固定する照明器具のことで、部屋全体を明るく照らします。寝室やリビング、子ども部屋など、広い空間を均一に照らす必要のある場所に適しています。

 

一方、ダウンライトは天井に埋め込まれた照明を指します。天井に出っ張りを作らないダウンライトは、部屋全体をスッキリ見せる効果があります。たとえば、リビングではシーリングライトをメインで、周辺にダウンライトを設置すれば部屋全体を効果的に照らします。

 

展示場やモデルハウスで実物をみて明るさと色温度を選ぶ

照明は実際に体感しないとイメージが掴みづらいです。たとえば、ハウスメーカーのモデルハウスを訪れて、自分や家族が快適に過ごせる明るさや色の感じ方を体験して色温度(ケルビン)の数値を確認してみましょう。

 

照明の配置を決める

ダイニングテーブルやTVボードといった家具との兼ね合いをみる

家具の配置によっては室内に影ができたり、照明を設置した目的が果たせなくなる場合もあります。たとえば、ダイニングテーブル上にペンダントライトを設置すれば、食事を美味しく見せる効果がありますが位置がズレると効果を得ることはできません。

 

また、テレビボードやテレビの後ろなどに間接照明を使うと、柔らかな光で画面と壁面の境界をぼかされて明度差が低くなるため目の疲労を減らす効果が期待できます。

 

使い勝手のよい場所にスイッチをつける

スイッチの位置によっては日々の小さなストレスを減らせます。たとえば、夜中にトイレにいくときもベッドサイドや廊下入り口にスイッチがあれば自然な流れでスイッチに触れられます。

 

また、高齢者や子どもがいる家庭では、手が届きやすい低めの位置にスイッチを設置するとよいです。

 

 

注文住宅の照明の種類と使い方

照明には多くの種類がありますが、照明によって適した使い方があります。家づくりにおいて採用される照明と注意点、また、間接照明の効果についてもお伝えします。使い方を理解すれば、居心地のよい空間への期待が高まります。

 

部屋の中心から全体を明るくする天井付けのシーリングライト

シーリングライトは読書や勉強など適度な明るさが求められる場所に適しています。光の強さや色の調整ができるモデルもあるため、その日の気分や目的に応じて部屋の雰囲気を変えられます。

 

また、大きな羽で部屋に空気の流れを作るシーリングファンと一体型のシーリングライトも存在します。シーリングファンライトを選ぶときは、部屋との一体感を考えてファンの色を壁や家具の色と合わせることをおすすめします。シーリングライトはカバーに虫が入り込んだりほこりがたまったりするので定期的な掃除が必要です。

 

すっきりしたデザインでどんなテイストにも合うダウンライト

ダウンライトは、天井に照明を埋め込むタイプの照明です。埋め込むため、天井に出っ張りがなくスッキリとした印象の部屋になります。

 

平面的に天井に馴染む形状は、モダンテイストや和テイストの部屋はもちろん、廊下やトイレなどにも導入しやすいです。ダウンライトは一部屋に複数個を設置する場合が多く、調光機能があれば部屋の中に明るい場所と暗い場所を作りだすことができます。

 

手元を照らす吊り下げ照明ペンダントライト

ペンダントライトは、天井からコードで吊り下げた照明を指します。低い位置を効果的に照らす特徴があります。そのため、補助的に使われる場合が多く、おしゃれな空間の演出に効果的です。

 

たとえば、ペンダントライトを食卓の上に設置すれば、料理が美味しそうに輝いて、毎日の食卓を魅力的に演出します。 デスクワークをするときもペンダントライトの下では手元が見えやすいです。

 

壁につけて壁面を照らすブラケットライト

ブラケットライトとは、壁面に取り付けるタイプの照明です。リビングやダイニングなど広い部屋に設置すると、視線を向けた壁や天井に明るさが増し、部屋を広々と見せる効果があります。壁面に連続して取り付ければ灯りが独自のリズムを作り出し部屋に新しい魅力を加えます。

 

ブラケットライトの効果を活かすポイントは、部屋のテーマカラーや壁の色との相性を考えることです。たとえば、テレビ周りの壁面を暖色系の照明で照らすと、テレビを見ているときに目が疲れにくくなります。ブラケットライトの適度な明るさが眼球の筋肉をリラックスさせるからです。また、壁一面を照らすことで統一感を持たせ、シアタールームのような空間を作ることもできます。

 

空間にアクセントを加えるスポットライト

スポットライトは、特定の場所に光を当て空間の一部を強調する照明です。ショップでは商品を目立たせたり、レストランでは料理を美味しそうに演出するために使われています。家庭でも、趣味の絵画や大切な思い出の写真、植物などをより鮮やかに見せるために使用される活用事例があります。

 

スポットライトには、天井に固定するタイプとレールに取り付けるタイプがあり、ライトの向きを変えられるタイプも存在します。たとえば、照明の角度により部屋の雰囲気をガラリと変えることもできますし、複数の小さなスポットライトを配置すれば、ナチュラルで落ち着きのある空間を楽しむこともできます。

 

高級感や上質感を演出する間接照明

折り上げ天井とあわせてホテルライクな空間を作り出すコーブ照明

折り上げ天井とは、天井の中心を周囲よりも一段高くとった天井を指します。また、折り上げ天井とコーブ照明を組み合わせると、明るくかつ広々としたリビングルームのような空間を作り出すことができます。

 

コーブ照明とは照明を天井の段差内部に設置し、天井全体に反射させる仕組みの照明で玄関やリビングに使われる場合が多いです。照明の効果により天井の輪郭がぼやけ、視界が開けることでより開放的な空間を実現しやすくなり、ホテルのロビーのような優雅な雰囲気を作り出せます。

 

タイルやアクセントクロスを美しく照らすコーニス照明

コーニス照明とは、天井にくぼみを造ったり水平な突起物を取り付けたりして照明を隠して、上から壁やカーテンを明るく照らす間接照明を指します。コーニス照明が壁やカーテンを照らすことにより、空間に奥行きや広がりをもたせ、部屋に高級感が生まれます。

 

また、アクセントクロスや美しいカーテンをコーニス照明で照らせば鮮やかに浮きたち、部屋の印象をガラリと変えるほどの効果があります。

 

注文住宅の照明でよくある失敗例

予想していたより暗かった

家づくりにおいての照明計画で、失敗例は少なくありません。家が完成したあとに改善するには、多くの時間や費用を費やす可能性が高いです。照明選びで失敗しないように対策案を紹介します。

 

全体と手元どちらを照らすかにあわせて器具を決める

全体を照らすために単純に照明の数を増やせば良いと考える人がいますが、何も考えずに照明を増やしただけでは部屋の雰囲気や使い勝手が損なわれる可能性が高いです。

 

たとえば、部屋全体を照らす照明と、手元を明るくするライトなど照明にはそれぞれの役割があります。用途が違う照明を組み合わせることで快適な空間が生まれます。

 

具体的には、キッチンで作業するときには細かい作業が求められるため、手元を直接照らすダウンライトが不可欠です。ダウンライトだけだと影ができやすいので、全体を照らす照明も併せます。

 

机の近くにはコンセントをつけておく

読書やパソコン作業など机に向かうときには集中力を必要としますが、照明不足が原因で作業効率が低下することがあります。照明不足の対策としては、机の近くにコンセントを設けて建築後でも照明を設置できるなど調整できるようにしましょう。

 

ダイニングテーブルやソファの上につけたかったのに位置がずれた

家具の寸法と照明の配置を事前によく検討する

照明は照らすだけでなく、部屋のインテリアとしてもおしゃれなアイテムになり得ます。特にダイニングテーブル上のペンダントライトはインテリアとして選ばれる事が多いです。しかし、ペンダントライトの位置がダイニングテーブルとズレてしまっては食卓を照らすことができないばかりか、頭にぶつかる危ない照明と化してしまう場合もあります。

 

照明の位置で失敗しないためには、テーブルのサイズを正確に把握して照明の位置を調整しなければなりません。

 

部屋全体を照らすダウンライトを採用する

家づくりの照明選びでは、部屋全体を照らすダウンライトを採用する家庭が多いです。ダウンライトは天井に埋め込む形の照明のため部屋がスッキリしますし、屋内の多くの場所で使いやすいです。

 

器具の位置を変えられるライティングレールを採用する

ライティングレールは、照明器具を自由に追加、取り外し、スライドできるレールです。専用のプラグを使えばライティングレール用の照明でなくても取り付けができるので、ペンダントライトを吊り下げることもできます。

 

たとえば、ダイニングテーブルの上にライティングレールを設置するとテーブルの位置に合わせてペンダントライトを調整できますし、読書のためのスポットライトも追加できるので室内の細かい明るさ調整には便利です。

 

使いづらい位置にスイッチをつけてしまった

スイッチは部屋の複数箇所につける

照明のスイッチは、少なすぎても無駄な移動が増えて不便ですし、多すぎても壁面がスッキリしないというデメリットが生じます。

 

たとえば、2方向から出入りできるような部屋や廊下では、一つしかスイッチがないと不便です。このような場所では複数のスイッチを設置して、それぞれの場所から操作できるようにすると良いです。

 

部屋に出入りする動線をシュミレーションする

家づくりにおける照明設置は、家族の暮らし方をイメージすることが大切です。家族の動き方をシミュレーションすれば、ストレスなくスイッチに触れられる位置を想定できるからです。

 

たとえば、リビングから寝室へ移動するときを考える場合は、リビングの照明を消すスイッチをリビングから出る手前に設置して、寝室の照明を点けるスイッチは寝室に入ってすぐ内側に配置すれば、移動しながら自然とスイッチを操作できます。

 

部屋の中の色温度の統一感がなかった

照明を複数つける部屋は色の組み合わせを考える

色温度やデザインのバランスが悪いと部屋に統一感が生まれず、落ち着かない空間になってしまう場合があります。とはいえ、実際に設置してみなければ光のバランスをイメージすることはむずかしいです。

 

照明専門店やモデルハウスを参考にする方法もありますが、照明は部屋の内装や家具の色によって印象が変わる場合も多いので注意してください。

 

色温度が調節できる器具を採用する

家づくりにおける照明選びでは、部屋ごとの明るさに加えて、照明の色温度も考えることが必要です。具体的には、リビングでは家族がくつろげる落ち着いた雰囲気を作り出すために電球色を選んだり、キッチンでは食材の色合いが確認しやすい白色がよいです。

 

しかし、部屋を使用する時間帯や個々の落ち着ける灯りが異なる場合もあります。照明は場面によって使い分けられるように、あらかじめ明るさや色温度を調節できる照明器具にしておくと便利です。

 

照明の位置が悪くて眠るときに目に入って気になる

ベッドの寸法を調べて照明の配置を決める

寝室の照明配置は、眠りの質を大きく左右します。明るすぎる照明を設置すると脳が興奮して入眠を妨げますし、暗すぎても入眠までの時間を心地よく過ごすことができません。

 

そのため、明るさや色温度を調節できるダウンライトや間接照明を使う場合が多いです。しかし、ダウンライトの真下に横になると明るさを抑えた設定だとしても眩しく感じる場合があります。コーニス照明を採用した寝室だとベッドの位置によっては照明を直視する場合もあります。

 

寝室の照明を固定型にする場合はベッドの寸法を測ったうえで設置場所を決め、頭側に照明を配置しないよう気を付けなければなりません。

 

調光できる器具を枕元につける

寝室は眠るためだけの部屋ではなく、就寝前の時間を心地よく過ごすための空間にするための工夫も必要です。眠る1〜2時間ほど前から明るさを抑えた落ち着いた空間で、好きな音楽を聞いたり本を読んだりなどリラックスした時間を設ければ心地よい入眠を誘います。

 

入眠前のリラックスタイムは、明るさを微調整できる読書用ランプをベッドボードに置くと重宝します。夜間にトイレへ起きたときにも、眩しすぎずに足元を照らすことができます。また、ベッドボードの背後に間接照明を設置する方法もあります。

 

注文住宅の照明で費用を抑えるコツ

子ども部屋や寝室はシーリングライトを採用する

シーリングライトは価格が安いものが多いです。購入価格は抑えられるものの、部屋を均等に明るく照らすことができるので部屋の使いやすさを高めてくれます。子ども部屋では学習をすることも多いため、勉強がしやすい環境を整えるためにもシーリングライトはおすすめです。

 

一部分は工務店やハウスメーカーに器具を依頼せず施主支給する

施主支給は工務店やハウスメーカーを通さず自分自身で照明器具などを用意する方法です。用意する照明は、多くの部屋に合わせやすく、明るさや色温度を調節できるシーリングライトがおすすめです。施主支給を活用すれば、照明器具にかかる費用を大幅に削減できます。

 

 

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