長期優良住宅のメリットとは?おすすめな人と依頼先の選び方
長く安心して住み続けられる住宅を目指す長期優良住宅。国の基準をクリアすると認定され、認定により複数のメリットを得られます。しかし、長期的に見て本当にメリットが得られるのかわからず、長期優良住宅にすべきなのかわからない方は多いかもしれません。
そこで、長期優良住宅のメリット、長期優良住宅をおすすめする方、ハウスメーカーや工務店の選び方を紹介します。
長期優良住宅とは長持ちすることを目指す家
国土交通省が定める長期優良住宅の認定基準
「長期優良住宅」とは、長い期間にわたって良い状態で暮らすことを目指す家です。もともと新築が対象でしたが、既存住宅を増築や改築した場合でも申請でき、マンションのような共同住宅でも認定されます。
長期優良住宅は、国土交通省によって設けられた以下の認定基準をクリアすることで認定されます。
・住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
・住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
・地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
・維持保全計画が適切なものであること。
・自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。
引用元:国土交通省 長期優良住宅のページ
地震や台風に耐える構造、劣化が進まない耐久性、維持管理がラクな設計、省エネルギー性が高い仕様であることといった基準があります。
国土交通省によると、2021年度時点で新築戸建住宅の27.7%、つまり約4戸に1戸以上が長期優良住宅に認定されています。
参考:国土交通省 長期優良住宅の認定状況について(令和4年3月末時点)
ZEH(ゼッチ)や低炭素住宅との違いは認定基準
住宅購入を検討している場合は、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や低炭素住宅も気になるという方もいるかもしれません。
ZEHはエネルギー消費量を抑え、自家発電技術を活用して環境負荷を減らす家です。省エネ設備の導入や建物の高断熱化によってエネルギー収支ゼロを目指します。
また、低炭素住宅は「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく住宅です。二酸化炭素排出量を抑えることを目的とし、節水機能や太陽光発電の設置といった工夫が施されます。
長期優良住宅を含めて3つの家とも環境にやさしい家ではありますが、目的が異なるため認定基準に違いがあります。
長期優良住宅は、建物の耐久性や快適性を追求し、低維持費で長寿命を目指すための基準となっていますが、ZEHや低炭素住宅では省エネルギー性能について基準があります。
長期優良住宅のメリット
住宅への安心感が生まれる
長期優良住宅にすると、国が定めた基準をクリアしていることによる安心感が生まれます。
たとえば、長期優良住宅は耐震性が求められるため、地震による倒壊リスクを避けられます。地震が多い日本では、大きな揺れで家がダメージを受けることも少なくありません。耐震性の高さは、安心して暮らすためのポイントです。
また、省エネや断熱の性能が高いことで部屋ごとの温度差が少ないと、ヒートショックや健康リスクを減らせることも期待できます。
資産価値が高くなりやすい
長期優良住宅は資産価値が下がりにくい住まいです。災害に強く耐久性があり、省エネルギー性や快適性が高いことで、一般的な住宅より資産価値が高くなる傾向です。
長期優良住宅は、計画に沿って点検・修繕をおこなう必要があります。維持管理により建物が良好に保たれやすく、売却することになったとき、買い手にも安心感を与えられます。
減税や非課税枠が増額になる
長期優良住宅は、一般住宅とくらべると税制面で複数のメリットがあります。ひとつずつ確認していきます。
住宅ローン控除対象借り入れ限度額が増える
長期優良住宅のメリットに、住宅ローン控除対象の借り入れ額が増えることがあります。
具体的には、長期優良住宅の場合、対象となる借り入れ金額の上限が5,000万円で、一般住宅とくらべて2,000万円上限額が増えます。結果的に以下のように住宅ローンの返済期間中の節税効果が得られます。
長期優良住宅 | 一般住宅 | |
住宅ローン控除対象借り入れ限度額 | 5,000万円 | 3,000万円 |
控除期間 | 13年 | |
控除率 | 0.7% | |
年間最大控除額 | 35万円 | 21万円 |
最大控除額 | 455万円 | 273万円 |
(上記は2023年に入居する場合)
住宅ローンを組まず自己資金で購入する場合は、投資型減税があり、所得税額からの控除額は最大65万円です。
固定資産税が5年間2分の1になる
長期優良住宅は固定資産税が5年間2分の1に減額されます。一般住宅は固定資産税が2分の1になる期間は3年間で、減額期間が2年長くなります。
不動産取得税の控除額が100万円分大きくなる
不動産取得税の控除額において、一般住宅の1,200万円より長期優良住宅では100万円分大きくなります。
長期優良住宅が環境や省エネルギー性能に優れており、持続可能な住まいとして評価されることから、税制上の優遇措置が設けられています。適用期間は2024年3月31日までです。
登録免許税の税率が軽減される
長期優良住宅は、登録免許税は住宅を購入したときに発生する登録免許税が軽減されます。長期優良住宅の保存登記では0.05%に、移転登記では0.1%になります。
たとえば、住宅価格が5,000万円の場合、長期優良住宅の登録免許税は5万円で一般住宅では7.5万円のため、2.5万円安くなります。また、長期優良住宅では、住宅ローンを組むときの抵当権設定登記にかかる登録免許税も軽減されます。
登録免許税の軽減措置は2024年3月31日までの住宅取得についてです。
低金利の住宅ローン「フラット35S」の対象になる
長期優良住宅は、低金利の住宅ローン「フラット35S」の対象です。フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が共同で提供する住宅ローンで、長期固定金利が特徴です。なかでもフラット35Sは、高い住宅性能を持つ長期優良住宅に適用される金利優遇制度で、金利が一定期間低くなります。
具体的には、「フラット35S金利Aプラン」では、最初の10年間で金利が0.25%引き下げられ、「フラット35S金利Bプラン」では最初の5年間で金利が0.25%引き下げられます。金利Aプランを受けるためには、金利Bプランよりもさらに高い住宅性能が求められます。(2023年7月時点)
参考:フラット35
地震保険料が30〜50%割引になる
長期優良住宅では、地震保険料が30〜50%割引になります。地震保険は、建物の免震・耐震性能によって割引率が設定されており、建物の安全性が高いほど保険料が安くなります。
具体的には、免震建築物に該当する場合は50%割引、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)が3であれば50%、2であれば30%、1であれば10%割引になります。
複数の割引が適用される条件に当てはまる場合は、最も割引率の高い割引のみ適用されます。
補助金が利用できる可能性がある
地域型住宅グリーン化事業補助金なら最大105万円
長期優良住宅は地域型住宅グリーン化事業における補助金が利用できる可能性があります。
国土交通省に選ばれた中小工務店で木造住宅を建築すると、最大で105万円を受け取れます。また、地域住文化加算、バリアフリー加算、地域材加算、三世代同居加算といった加算が併用できる可能性もあります。
こどもエコすまい支援事業の補助金なら最大100万円
こどもエコすまい支援事業は、長期優良住宅を新築・購入をご検討の方に最大100万円の補助金が提供される制度です。子育て世帯、若者夫婦世帯が、節電・節水機能を備えた設備や、断熱・耐震性能が高い住宅を建てたりリフォームしたりすることで交付されます。なお、予算上限に達し次第、交付申請の受付が終了します。
長期優良住宅のデメリット3つ
申請に手間と費用がかかる
長期優良住宅の申請には手間と費用がかかります。長期優良住宅制度を利用するときは、認定申請書や図面など資料を揃える必要があります。また、申請には手数料として5〜6万円程度かかります。
自分でおこなうこともできますが、ハウスメーカーや工務店に代行を依頼する場合は、申請の手数料を含めて20〜30万円程度かかると言われています。
建築費用が上がり工期が長期化する可能性がある
長期優良住宅は耐震性や断熱性など高い性能が求められます。長期優良住宅にする場合、求められる条件に応じて認定基準をクリアするために、建築費用が上がり工期が長期化する可能性があります。
長期優良住宅が標準仕様となっていない中小工務店に依頼した場合では、一般住宅とくらべて20〜30%程度割高になり、工期も数週間〜数ヶ月長引くことがあると言われています。
定期点検を実施し記録保管しなければならない
長期優良住宅は、長期的な耐久性を維持するために入居後に定期的な点検が必要です。点検は建築前に提出した「維持保全計画」にしたがって実施し、必要に応じて修理や補修をおこなわなければなりません。維持保全計画では、点検のタイミングや内容が決められており、点検を怠ると長期優良住宅の認定を取り消されることがあります。
定期点検の実施日を記録し、記録は忘れずに保管しておきます。記録と保管は法令で義務付けられており、記録が不十分な場合は認定取り消しや補助金の返還請求のリスクがあります。
長期優良住宅がおすすめな人
快適な住まいに安心して長く住みたい人
長期優良住宅は、安心して長く住める家を求める方におすすめです。長期にわたって住み心地の良い家を目指すため、家族や将来の世代に住む場所を残せることが期待できます。
定期的な住宅の点検や修繕により、将来のトラブルを早期に発見できます。不具合が発生したとき、過去の点検記録を確認できれば早く対策できます。長期優良住宅は、無駄な出費を抑えながら世代を超えて家を継いでいきたいと考えている方におすすめです。
年収が高い人や借り入れ額が大きい人
年収が高い人や借り入れ額が大きい人にとって、長期優良住宅はメリットが大きい制度です。
長期優良住宅のメリットのひとつに住宅ローン控除があります。住宅ローン控除は、本来支払うべき所得税額から控除できるわけですが、年収が高いほど控除可能額を全額利用できる可能性が高くなります。
所得税が住宅ローン控除可能額より少ない場合は、控除可能額を控除しきれません。控除できなかった残りは住民税から控除されますが、上限が決まっています。所得税は年収が高いほど大きくなるため、年収が高い人ほど控除可能額を使いきれます。
また、住宅ローン控除額は、年末時点の住宅ローン残高によって決まりますが、残高が多いほど控除額が大きくなります。借り入れ額が大きい人ほど年末の住宅ローン残高も大きくなり控除額が大きくなります。
長期優良住宅にするときのハウスメーカー・工務店の選び方
長期優良住宅が標準仕様
ハウスメーカーや工務店を選ぶときは、長期優良住宅が標準仕様かを確認してください。
デメリットとして紹介した通り、長期優良住宅にするには基準を満たす設備や仕様にするため、建築費用が増える可能性があります。しかし、長期優良住宅の仕様が標準仕様となっているハウスメーカーや工務店であれば別途費用がかかることはありません。
国土交通省から選ばれた中小工務店
工務店に依頼するときは、国土交通省から選ばれた中小工務店を選んでください。
長期優良住宅では地域型住宅グリーン化事業の補助金が利用できることがありますが、利用するには国土交通省が選んだ中小工務店で木造住宅を建築することが条件です。
選ばれた工務店は、地域に密着し高品質な木造住宅を建設する目的で、国から補助金が支給される仕組みで運営されています。
対象となる中小工務店についての情報は地域型住宅グリーン化事業(評価)で紹介されているため、確認してみてください。
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